憚られる(はばかられる)の意味と使い方とは?例文・類語・正しい敬語表現も解説

「憚られる(はばかられる)」という言葉は、日常会話ではあまり頻繁に使われないものの、ビジネスシーンや文章表現で目にする機会の多い言葉です。そのため、正しい意味や使い方を理解していないと、誤解を招いたり不自然な表現になったりする恐れがあります。
本記事では、「憚られる」の意味をはじめ、具体的な使い方や例文、類語との違い、そして丁寧な敬語表現についても詳しく解説しますので、ご参考になれば幸いです・
「憚られる」って何?:意味・読み方を確認しよう
「憚られる(はばかられる)」という表現は、ある行動や発言をためらったり、遠慮したりする際に用いられる日本語独特の表現です。少し古風な印象もある一方で、ビジネスやフォーマルな場面では今も使われることが多く、その意味や成り立ちを理解しておくと表現の幅が広がります。
「憚られる」の読み方と基本意味
「憚られる」は「はばかられる」と読みます。
これは動詞「憚る(はばかる)」の受け身・可能・自発の形であり、主に以下のような意味を持ちます。
- 周囲の目や状況を気にして行動をためらう
- 差し障りがあって控える
- 遠慮する、慎む
「発言するのが憚られる」のような使い方がされ、他人や状況に配慮して自由に行動できないニュアンスを含みます。
「憚る」と「憚られる」の違いは?
「憚る」は動詞で、主語が自分自身である場合に使われることが多いです。一方で「憚られる」はその受け身または自発的な意味合いを持ち、「自然と遠慮してしまう」や「そうせざるを得ない状況」を表現する際に適しています。
- 憚る
- 自分が能動的に遠慮する
- 例:口にするのを憚る
- 憚られる
- 状況的・心理的に遠慮してしまう
- 例:人前では発言が憚られる
つまり、「憚る」は主観的な意志を、「憚られる」は環境や相手の存在による自発的な反応を強調する形と言えるでしょう。
「憚られる」の正しい使い方:どんな場面で使う?
「憚られる」は、やや硬い言い回しではありますが、日常会話からビジネス、さらには文学的な表現に至るまで幅広く使われています。ただし、使う場面や相手との関係によっては誤解を招く可能性もあるため、文脈やニュアンスに注意が必要です。ここでは具体的な使用例を通して、「憚られる」の自然な使い方を見ていきましょう。
日常会話での使い方例(一般的な文脈)
日常の会話では、少し気を遣う場面や言いづらいことを話すときに「憚られる」が使われることがあります。例えば、以下のような言い回しが自然でしょう。
「憚られる」の日常会話での使い方例
- 「こんなことを言うのは憚られるけど、正直に話すね。」
- 「彼の前ではその話題を出すのはちょっと憚られるよね。」
このように、相手に対する配慮や場の空気を読む姿勢を表し、直接的な表現を避けたいときに役立ちます。
ビジネスシーンでの使い方例
ビジネスシーンでは、「憚られる」はより丁寧で控えめな表現として重宝されます。特に、相手に対して失礼のないよう言葉を選びたいときや、言及を避けることが礼儀とされる状況で使われます。
「憚られる」の日常会話での使い方例
- 「こんなことを言うのは憚られるけど、正直に話すね。」
- 「私の立場で申し上げるのは憚られますが、現場では混乱が生じているようです。」
敬意や配慮を込めて控える意図を伝えるときに使うと効果的でしょう。
「憚られる」を使う際のニュアンスと注意点
「憚られる」は相手や状況に対する「配慮」や「ためらい」を表現する言葉ですが、以下の点に注意する必要があります。
- 過度に使うと回りくどく感じられる
- 日常会話ではストレートな言い回しのほうが適する場面も多いため、使いすぎには注意しましょう。
- 場にそぐわないと不自然に響く
- 「気まずい」や「言いづらい」といった口語的表現の方が自然な場面では、あえて「憚られる」を使うと堅苦しく感じられる可能性があります。
- 本音をぼかす表現になることもある
- 意図が曖昧にならないように、補足的な説明を添えるとより丁寧です。
「憚られる」は日本語ならではの間接的な表現を体現した言葉です。場面に応じた適切な使い分けが求められるでしょう。
「憚られる」の具体的な例文:シーン別の使い分け方法とは
言葉の意味や使い方を理解するうえで、実際の使用シーンを想定した例文は非常に有効です。「憚られる」は慎重な気持ちや配慮を示す言葉であるため、さまざまな状況に応じて微妙に使い方が異なります。ここでは、意見表明、依頼、日常会話といったシーンごとに例文を挙げ、その使いどころを解説します。
意見を述べる時に使う例文
人前で意見を述べる際、相手への配慮や場の空気を読みながら話す必要がある場合に「憚られる」は効果的です。
意見を述べる時に使う場合の「憚られる」の例文
- 「このような場で発言するのは憚られますが、どうしてもお伝えしたいことがあります。」
- 「皆さんの前で反対意見を述べるのは憚られますが、率直に申し上げます。」
発言に対する遠慮の気持ちを込めつつ、自己主張する場面で役立ちます。
依頼やお願いをする時の言い回し
何かをお願いする際にも「憚られる」を使うことで、より丁寧で控えめな印象を与えることができます。
意見を述べる時に使う場合の「憚られる」の例文
- 「ご多忙のところ誠に憚られますが、こちらの件についてご確認いただけますでしょうか。」
- 「お願いするのも憚られるのですが、明日の会議に同席していただけないでしょうか。」
このように、依頼を丁重に伝えたいときに効果的で、相手への配慮が感じられます。
その他「口にするのも憚られる」など日常例文
日常生活においても、「憚られる」は慎みや気遣いの場面で自然に使えます。
ビジネス以外でも使える「憚られる」の例文
- 「あまりに悲惨な出来事で、口にするのも憚られる。」
- 「失礼かとは存じますが、正直申し上げるのが憚られるような状況でした。」
- 「そんなことを本人の前で言うのは、さすがに憚られるよ。」
このように、他人の感情や状況に配慮した発言をする際に「憚られる」を用いることで、言葉に奥行きと丁寧さを加えることができます。
「憚られる」の類語・言い換え表現:他にはどんな言葉がある?
「憚られる」という表現は非常に繊細なニュアンスを持っており、場面や相手に応じて他の言葉に置き換えることも重要です。言い換えの幅を知っておくことで、より自然で効果的なコミュニケーションが可能になります。「憚られる」と近い意味を持つ類語や表現との違いを明確にし、適切な使い分けのポイントをご紹介いたします。
「ためらわれる」や「遠慮」などの類語との違い
「ためらわれる」は個人の感情、「遠慮」は社会的なマナー、「憚られる」はその両面を含んだバランスの取れた表現で、下記のように整理することができます。
| 表現 | 意味の特徴 | 主なニュアンス | 使用場面の例 |
|---|---|---|---|
| 憚られる | 相手や場の空気に配慮して控える | 外的要因による自発的なためらい | フォーマルな会話、ビジネス、謝罪表現 |
| ためらわれる | 心の中で迷いや不安があり行動を躊躇する | 内面的な迷い、心理的抵抗 | 自己判断や選択を述べるとき |
| 遠慮 | 礼儀やマナーとして控えめにする | 社会的・対人的な配慮 | 会食の場、順番を譲る、断る場面など |
「恐縮」「控え」「出過ぎたこと」などの置き換え表現
「憚られる」と似た意味を持ち、状況によって置き換え可能な表現には「恐縮」「控え」「出過ぎたこと」などがあります。これらはすべて丁寧さや配慮を示す言葉ですが、それぞれに微妙な違いがあり、誤用すると印象が変わってしまう可能性も。次の表はそれぞれの表現の特徴と使い分けを比較してみました。
| 表現 | 意味の特徴 | 主なニュアンス | 使用場面の例 |
|---|---|---|---|
| 憚られる | 相手や状況に配慮して控える、自発的に遠慮する | 外的な要因による慎重さ・ためらい | 目上への発言、配慮が必要なシーン |
| 恐縮 | 相手に迷惑をかけたり、依頼したりすることへの謝意 | 申し訳なさ、へりくだり | ビジネスメール、謝罪、依頼時の前置きなど |
| 控え | 行動を抑制すること、自ら進んで控える | 行動や発言を控える姿勢 | 会見、発言自粛、公式な発表など |
| 出過ぎたこと | 自分の立場を越えた言動をしてしまうこと | おこがましさ、出しゃばりの懸念 | 目上への意見、提案時の前置き「出過ぎたことながら…」 |
これらはいずれも「憚られる」との置き換えが可能なケースが多く、特にフォーマルな場では柔軟な言い回しとして重宝します。
使い分けのポイントと例文で比較
「憚られる」と類似する表現には多くのバリエーションがありますが、それぞれ微妙に意味や使い方が異なります。正確に使い分けるためには、ニュアンスの違いを理解し、文脈に応じて選択することが大切です。
代表的な表現について、使い方のポイントと具体例を一覧表にして比較しました。実際の文章にどのように当てはまるかを確認しながら、適切な言葉選びの参考にしてください。
| 表現 | 主な使い方のポイント | 使用例文 |
|---|---|---|
| 憚られる | 外的要因に配慮して控える、自発的・慎重な態度 | 「このようなことを申し上げるのは憚られますが、ご確認ください。」 |
| ためらわれる | 心理的な迷いや不安により行動を控える | 「強く言うのはためらわれました。」 |
| 遠慮 | 社会的マナーとして控えめにする、相手に譲る気持ちを示す | 「お先にいただくのは遠慮します。」 |
| 恐縮 | 相手に迷惑をかけることへの謝意・へりくだりを示す | 「恐縮ですが、資料の再送をお願いできますか。」 |
| 控え | 公的・公式に行動や発言を控える意思を示す | 「本件については、コメントを控えさせていただきます。」 |
| 出過ぎたこと | 自分の立場以上の発言・行動を慎んでいることを示す | 「出過ぎたことを申し上げるようで憚られますが、ご意見を伺いたく…」 |
文脈に合わせて適切に使い分けることで、より自然で説得力のある表現が可能となるでしょう。
「憚られる」のよくある誤用・NG表現
「憚られる」は丁寧な印象を与える一方で、意味や文脈を誤って使われることも少なくありません。特に「憚る」との混同や、慣用句の誤用、若者言葉との不自然な組み合わせには注意が必要です。ありがちな誤用・NG表現の例をご紹介いたします。
「憚る(はばかる)」との混同ポイント
「憚る」は「憚られる」の語源でありながら、使い方に違いがあります。以下のような混同に注意しましょう。
| 誤用例 | 言い換え例 |
|---|---|
| 「あの人は部下に意見を憚っていた。」 | 「あの人は部下に意見するのを憚られていた。」 |
| 「憚る」は能動的に「控える・気にする」の意味で使われますが、「憚られる」は受動的・自発的なニュアンスが強くなります。文脈に合った形を選ぶことが大切です。 | |
違う意味で使われやすい場面(例:「世に憚る」など)
「世に憚る」という表現をしたとき、「世間を恐れる」という意味ではなく、むしろ「はばをきかせる」「いばる」という意味で使われます。
このように、「憚る」が「遠慮する」や「ためらう」とは違うニュアンスで使われるケースもあり、「憚られる」の意味と混同すると真逆の解釈になる可能性があります。
若者言葉やカジュアルすぎる使い方に注意
「憚られる」はやや格式ある表現であるため、カジュアルな会話や若者言葉との併用は不自然になりがちです。
不自然な「憚れる」の使い方
- 「マジで憚られるんだけど(笑)」
- 「憚られるからガチ無理」
このような使い方は、言葉の重みや本来の意味を損なってしまいます。フォーマルな場面や丁寧に表現したいときに限定して使うことで、正確な印象を与えることができるでしょう。
まとめ:憚られるの意味と使い方を正しく理解しよう
「憚られる(はばかられる)」は、相手や場の空気に配慮して言動を控えるときに使われる、日本語ならではの繊細な表現です。丁寧で控えめな印象を与える一方で、誤用や不自然な使い方をしてしまうと逆効果にもなりかねません。
本記事では、基本的な意味や語源から始まり、日常やビジネスでの具体的な使用例、類語との違い、注意すべき誤用パターンまでを詳しく解説しました。
ポイントを押さえて使い分ければ、より洗練された日本語表現が可能になります。「憚られる」を正しく活用して、思いやりのある丁寧なコミュニケーションを心がけましょう。



