『出来かねますのでご了承ください』の正しい使い方と失礼にならない伝え方【例文あり】

ビジネスメールや顧客対応の場面でよく使われる表現のひとつに「出来かねますのでご了承ください」があります。しかし、「本当にこの使い方で正しいのか？」「相手に失礼にあたらないか？」と不安になる方も多いのではないでしょうか。

本記事では、「出来かねますのでご了承ください」の正しい意味と使い方、さらに丁寧で失礼にならない言い換え表現や例文まで詳しく解説します。適切な表現を身につけることで、相手に配慮しながらもきちんと断るビジネススキルが身につくでしょう。

「出来かねますのでご了承ください」の意味と使い方

ビジネスシーンでは、要望を断る際に「出来かねますのでご了承ください」という表現を使うことがあります。

丁寧さを意識した表現ではあるものの、使い方を誤ると冷たく聞こえてしまう可能性もあります。ここでは、このフレーズの正確な意味と使う際の注意点を詳しく見ていきましょう。

「出来かねます」の正確な意味とは？

「出来かねます」は、「できません」を丁寧かつ婉曲に言い換えた敬語表現です。「かねる」は「〜することが難しい、できない」という意味を持ち、「〜かねます」はその丁寧な形です。たとえば、「対応できません」というよりも「対応しかねます」とすることで、やんわりと断る印象を与えることができます。

「出来かねます」の使用例

「申し訳ございませんが、その件につきましては対応いたしかねます。」

このように、「出来かねます」はあくまで相手に配慮しつつも、明確に「できない」意思を示すための表現として使われます。

「ご了承ください」を使うときの注意点

「ご了承ください」は「理解して受け入れてください」という意味を持ちます。ビジネスにおいては丁寧な言い回しの一つですが、注意しなければ「一方的に押しつけている」という印象を与える可能性もあります。

特に「出来かねます」と組み合わせると、「それでも了承しろ」と命令的に聞こえてしまうことがあります。よって、文全体のトーンや前後の表現によっては、別の言い換えを検討することが望ましい場合もあります。

「出来かねますのでご了承ください」の丁寧さと使う場面

「出来かねますのでご了承ください」は、形式的なやり取りや文書の中でよく使われます。

例えば、商品の返品やキャンセルなど、規定により対応ができない場合や、サービス提供の範囲外の依頼を受けたとき、社内ルール上応じられない要望に対してレスポンスする際に用いることが多いでしょう。

出来かねます」の使用例

このように、相手に敬意を払いながらも毅然と断るために使われる表現ですが、トーンや文脈に応じて慎重に使用する必要があると言えるでしょう。

「出来かねますのでご了承ください」の正しい例文・NG例文

「出来かねますのでご了承ください」は、敬語として定着している一方で、使い方を間違えると不快感を与えるリスクもある表現です。ここでは、具体的なシーン別の正しい例文と、NG例・改善方法を紹介し、より自然で丁寧な言い回しを身につけていただけます。

正しい使い方の例文集（ビジネス・日常編）

「出来かねますのでご了承ください」は、実際にどのような文脈で使えばよいのか迷うことも多い表現です。

ビジネスシーンと日常的なやり取りの両面から、失礼なく伝えるための具体的な例文を紹介しますので、ご確認ください。

ビジネスシーンでの使用例

• 「誠に申し訳ございませんが、お電話での対応は致しかねますのでご了承ください。」
• 「規約上の都合により、再発行は出来かねます。何卒ご了承のほどお願い申し上げます。」
• 「大変恐縮ではございますが、納期短縮のご依頼には対応致しかねますので、ご了承くださいませ。」

日常的なやり取りでの使用例

• 「恐れ入りますが、本日中の対応は出来かねますのでご理解ください。」
• 「個別の事情につきましてはご対応いたしかねます。ご容赦くださいますようお願いいたします。」

あらかじめ「恐れ入りますが」「誠に申し訳ありませんが」といったクッション言葉を加えることで、より柔らかく相手に伝えることができます。

失礼にあたるNGな例文と改善方法

「出来かねますのでご了承ください」は一見丁寧な表現ですが、使い方を誤ると相手に不快感を与えてしまうこともあります。特に、言葉足らずだったり、断定的すぎる言い回しは注意が必要です。

NG例①：「それは出来かねますのでご了承ください。」

文面に配慮やクッションがなく、命令的・冷たく感じられる表現となっています。そのため、

改善案：「大変申し訳ございませんが、その件につきましては対応致しかねます。何卒ご了承いただけますと幸いです。」

丁寧語や気遣いを加えることで印象を柔らかくすることが重要です。

NG例②：「無理なのでご了承ください。」

「無理」など直接的すぎる言葉は、相手に不快感を与える可能性があります。

改善案：「恐れ入りますが、現状ではご希望には添えかねます。ご理解賜りますようお願いいたします。」

あくまで丁寧で婉曲的な表現を意識しましょう。

類語で言い換える時の注意点

「出来かねますのでご了承ください」の代わりに、別の表現を使うことも可能ですが、選び方によっては意味合いや印象が大きく変わってしまうため注意が必要です。

主な言い換え表現：「ご希望に沿えず申し訳ございません」や「お力になれず心苦しく存じます」

言い換え表現	ニュアンス・特徴	使用例
対応いたしかねます	最も一般的でフォーマルな言い回し	「ご要望には対応いたしかねます。」
ご希望に沿えず申し訳ございません	共感と謝意を示す柔らかい表現	「ご希望に沿えず申し訳ございませんが…」
お応えできかねます	少しカジュアルだが丁寧な印象	「その件にはお応えできかねます。」
お力になれず心苦しく存じます	気持ちを込めた謙譲表現	「お力になれず心苦しく存じます。」
難しい状況でございます	否定をやわらげる間接的表現	「現時点では難しい状況でございます。」

上記のように、「出来かねますのでご了承ください」に代わる表現は複数存在し、それぞれにニュアンスの違いや適した使用シーンがあります。「対応いたしかねます」は最も一般的かつフォーマルな表現で、公的な文書や顧客対応メールなどで広く使われています。一方、「ご希望に沿えず申し訳ございません」は、相手の期待に応えられなかったことへの謝意を前面に出しており、特に丁寧な印象を与えたい場合に有効です。

また、「お応えできかねます」は多少カジュアルながらも礼儀を保った表現で、内部の連絡や親しい取引先とのやり取りにも適しています。「お力になれず心苦しく存じます」は、自分の立場をへりくだり、相手に寄り添う姿勢を示す表現で、より感情を込めた対応が求められる場面で効果的です。さらに、「難しい状況でございます」は、断定を避けながらも現実的な制約を伝える婉曲的な表現であり、クレーム対応やデリケートな交渉などで重宝されます。

これらの表現を使い分けることで、状況に応じた柔軟な対応が可能となり、相手に与える印象も大きく向上するでしょう。

「出来かねますのでご了承ください」の使い方に関する疑問を解決

「出来かねますのでご了承ください」という表現は、丁寧な言い回しでありながらも、その使いどころや伝え方によって印象が大きく左右されます。ここでは、よくある3つの疑問に対してわかりやすく解説し、使い分けやシーン別の適切な対応方法を整理します。

「出来ません」との違いや使い分け方は？

「出来ません」は端的でストレートな否定表現であり、一方で「出来かねます」はより丁寧かつ婉曲的な言い回しです。以下のようにニュアンスや使う場面に違いがあります。

表現	ニュアンス	適した場面
出来ません	直接的・明確	社内のカジュアルな会話や緊急の場面
出来かねます	丁寧・柔らかい	上司・取引先・顧客などへの正式な回答

たとえば、上司に「この件は無理です」と伝えるよりも、「こちらの件は対応いたしかねます」と伝える方が、敬意と配慮を感じさせる表現となります。

上司や取引先に使っても失礼じゃない？

結論から言えば、「出来かねますのでご了承ください」は丁寧な表現であるため、基本的には上司や取引先に使っても問題ありません。ただし、言葉の選び方や前後の文脈によっては、やや事務的・突き放した印象を与えることもあります。

特に、取引先とのコミュニケーションでは

• 「申し訳ありませんが」「恐れ入りますが」などのクッション言葉を添える
• 断る理由を明確に伝える
• 代替案やフォローを用意する

上記のような配慮が必要になるでしょう。

例：「誠に申し訳ございませんが、規定により対応いたしかねます。ご理解賜れますと幸いです。」

相手に敬意を払いつつ誠実に理由を伝えることで、円滑なコミュニケーションが可能になります。

メールや電話での伝え方のポイント

「出来かねますのでご了承ください」は、メールでも電話でも使える表現ですが、媒体ごとに注意すべきポイントがあります。

メールの場合

上記のポイントを踏まえた例文が下記となります。

平素より大変お世話になっております。
ご依頼いただきました件につきまして、誠に申し訳ございませんが、弊社規定により対応いたしかねます。
ご希望に沿えず恐縮ではございますが、何卒ご了承くださいますようお願い申し上げます。

電話の場合

上記のポイントを踏まえたコミュニケーション例が下記となります。

「いつもお世話になっております。恐れ入りますが、その件につきましては弊社では対応いたしかねます。大変恐縮ですが、何卒ご理解のほどよろしくお願い申し上げます。」

このように、状況に応じた言い回しや声のトーンに気を配ることで、「出来かねますのでご了承ください」も相手に配慮した丁寧な表現として効果的に使えるようになります。

「出来かねますのでご了承ください」の言い換え表現とマナー

「出来かねますのでご了承ください」という表現は丁寧ではありますが、使い方によっては堅すぎたり、相手に冷たい印象を与えてしまうこともあります。

ここでは、よりやわらかく丁寧に伝えるための言い換え表現やマナーについて、実践的な文例とともにご紹介します。

「出来かねます」以外のやわらかい伝え方（丁寧語・謙譲語）

「出来かねます」は形式的で硬い印象を与えるため、もう少しやわらかく、相手への配慮が伝わる表現に置き換えると、より自然なコミュニケーションが可能になります。

丁寧語・謙譲語を活用した言い換え例

表現	ニュアンス・特徴	使用例
お応えいたしかねます	丁寧で控えめな断り表現	「恐れ入りますが、そのご要望にはお応えいたしかねます。」
ご希望に沿えず申し訳ございません	相手の期待に添えないことへの謝意を強調	「ご希望に沿えず、誠に申し訳ございません。」
お力になれず心苦しく存じます	共感や申し訳なさを伝える表現	「お力になれず、心苦しく存じます。」
難しい状況でございます	否定をやわらかく表現する間接的な言い方	「現時点では対応が難しい状況でございます。」
ご容赦くださいますようお願い申し上げます	相手の理解と許しを丁重に求める表現	「誠に恐縮ですが、ご容赦くださいますようお願い申し上げます。」

了承をお願いするときの自然な表現集

「ご了承ください」は形式的で一方的に感じられることがあるため、相手の立場や気持ちを尊重する自然な言い換えを用いることで、より円滑な印象を与えることができます。

より自然な了承表現例

表現	ニュアンス・特徴	使用例
ご理解いただけますと幸いです	柔らかく理解を求める基本表現	「ご不便をおかけしますが、ご理解いただけますと幸いです。」
ご容赦くださいますようお願い申し上げます	相手の許しを丁重にお願いする	「誠に恐縮ですが、ご容赦くださいますようお願い申し上げます。」
ご了承賜れますようお願い申し上げます	フォーマルかつ丁重な了承依頼	「対応いたしかねますこと、ご了承賜れますようお願い申し上げます。」
ご協力のほどよろしくお願い申し上げます	理解＋行動を促す依頼型の表現	「ご理解とご協力のほど、よろしくお願い申し上げます。」
何卒ご了承のほどお願い申し上げます	丁寧で無難、広く使える表現	「システムメンテナンス中のため、何卒ご了承のほどお願い申し上げます。」

このように、「ご了承」という単語を柔らかく置き換えることで、相手への配慮がより伝わりやすくなります。

相手に不快感を与えない言い方のポイントとコツ

相手の依頼を断るという行為は、どうしてもネガティブに受け取られがちです。だからこそ、言葉の選び方や伝え方に工夫をすることが重要です。

単に断るのではなく、「相手の立場を思いやる姿勢」を文章全体で表現することが、信頼感と好印象につながるのです。

まとめ：『出来かねますのでご了承ください』を使ってコミュニケーションを円滑に進めよう

「出来かねますのでご了承ください」は、ビジネスシーンで相手に丁寧に断りを伝える際に便利な表現ですが、使い方を誤ると冷たく感じられてしまう可能性もあります。

• 「出来かねます」は「できません」の丁寧表現で、特にフォーマルな文面で使用される。
• 「ご了承ください」は一方的に聞こえる恐れがあるため、クッション言葉や代替案を添えることで印象が柔らかくなる。
• より丁寧に伝えたいときは、「ご理解いただけますと幸いです」や「ご容赦くださいませ」などの表現が有効。

断る場面こそ、言葉選びや表現の工夫で相手への誠意が伝わるチャンスです。適切な言い回しを身につけ、信頼を損なわずにスマートな対応を心がけましょう。