管理職から突然退職したいと言われたら?後任がいないリスクや対応策とは
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今まで会社に貢献してくれていた管理職の突然退職は、経営上大きなリスクになります。後任者がいない場合、業務が滞ったり会社全体に影響が出たりする可能性があります。
一方で、例え管理職であっても、雇用契約を結んでいる以上は様々な理由や背景から退職を希望されることは避けられません。
今回のコラム記事では、管理職の突然退職に備えるための対策と事前準備、退職リスクをできるだけ軽減するための取り組みをご紹介いたします。管理職の突然退職に備えて、ぜひ参考にしてください。
矢野 貴大
TSUMIKI社会保険労務士事務所/代表・社会保険労務士
金融機関・社会保険労務士法人・国内大手コンサルティング会社を経て大阪で社会保険労務士事務所を開業。
25歳で社労士資格を取得した後、社会保険労務士・経営コンサルタントとして延べ200社を超える企業・経営者をサポートする。その経験を活かし「想いを組み立て、より良い社会環境を形づくる」というMISSIONに向かって日々活動中。
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管理職の退職後、後任がいない会社はどうなる?
今まで従業員のマネジメントを行っていたり、取引先との調整などで会社へ貢献してくれている管理職が突然退職するとなると、会社にとっては大きなリスクです。
一般的に管理職は、部下や部門の業務を統括する役割を担っています。そのため、管理職が突然退職すると、業務が滞ったり、会社全体に影響が出たりする可能性があります。
どういったリスクがあるのか、また退職理由としてよくあるパターンは何なのか確認しておきましょう。
管理職が退職した場合の会社へのリスク
管理職が突然退職する場合、次のような問題が発生しうる可能性があります。
- 部下のモチベーションや士気が低下する
- 業務の引き継ぎが十分に行われず、業務が遅延する
- 新規プロジェクトの立ち上げや、既存プロジェクトの見直しが遅れる
- 顧客からのクレームや問い合わせへの対応が遅れる
特に管理職の後任者がいない場合は顕著になりますので注意が必要です。
部下のモチベーションや士気が低下する
管理職の突然退職は、部下にとって大きな不安要素となります。例えば今までマネジメントをしてくれた上司がいなくなりますので
- 仕事の指示やサポートが受けにくくなる
- 自分の所属している部署や仕事の将来性に不安が生じる
- 部署全体の雰囲気や方向性が変わる可能性があり、戸惑う
こういった状況に陥ることが考えられます。
業務の引き継ぎが十分に行われず、業務が遅延する
管理職が退職する際に、後任に業務を引き継ぐ必要があります。
しかし、突然の退職の場合は、十分な引き継ぎを行う時間がない場合もあります。また、後任が管理職としての経験やスキルが不足している場合も、業務の引き継ぎが十分に行われない可能性があります。
新規プロジェクトの立ち上げや、既存プロジェクトの見直しが遅れる
新規プロジェクトの立ち上げや、既存プロジェクトの見直しを担っている場合、管理職が退職することで
- プロジェクトの進捗が遅延する
- プロジェクトが止まり、失敗していまう
- 新規事業の立ち上げができないまたは競合他社に先を越される
このような悪影響が考えられます。メンバー、アソシエイトなどプロジェクトメンバーの一員であれば、別の従業員をアサインすることでプロジェクトを進行することができますが、統括している管理職が抜けてしまうと厳しい状況になってしまいます。
顧客からのクレームや問い合わせへの対応が遅れる
管理職は、顧客からのクレームや問い合わせへの対応も担うことがあるでしょう。案件によっては「上司と話をしたい」ケースもあるため、管理職が退職するとこれらの対応が遅れる可能性があります。
顧客からの不満増加や取引先からの信頼低下などにつながると、会社としての業績にも波及する恐れがあります。
管理職の退職理由とは?
会社の重要なポジションである管理職が退職する理由は、大きく3つの要因が考えられます。
- キャリアアップや転職
- 家庭の事情
- 会社への不満
これらの退職の理由を把握しておくことで、適切な対応が可能になります。
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例えば、キャリアアップや転職が理由であれば、管理職との交渉次第では後任の選定や育成に時間をかける余裕があるかもしれません。一方、家庭の事情が理由であれば、後任の選定や育成を早急に進める必要が出てくるかもしれません。
キャリアアップや転職
管理職がキャリアアップや転職を希望する理由は、以下のとおりです。
- より大きな裁量権や責任を持ちたい
- 管理職は、会社の中で重要な役割を担っているため、より大きな裁量権や責任を持ちたいという思いを持つ人が多くいます。そのため、より高いポジションや、より大きな責任を任される環境を求めて転職するケースがあります。
- より高い給与や待遇を求めたい
- これまで以上に高い給与や待遇を求める場合、同業他社などからよい待遇を提示されると転職するケースもあります。
- 新しいことに挑戦したい
- 管理職としてさまざまなキャリアや経験を積んでいるため、新しいことに挑戦したいという思いを持つ人もいます。この場合新しい環境、新しいことに挑戦できるような求人を求めて転職することがあります。
- 自分のスキルや経験を活かせる環境を求めたい
- 管理職としてこれまでのキャリアで培ったスキルや経験を活かせる環境を求めることもあります。
家庭の事情
管理職は、残業や出張など、仕事の負担が大きいことも少なくありません。そのため、家庭の事情を理由に退職するケースもあります。よくある要因は次のようなものがあります。
- 子育てや介護などの家庭の事情
- 子育てや介護などの家庭の事情で、仕事に集中できないと感じる人が多くいます。負荷の高い業務を続けることが難しくなり、家庭の事情を理由に退職するケースがあります。
- 自身や家族の健康問題
- 自身や家族の健康問題で、仕事を続けることが難しくなるケースもあります。また、自身の健康問題の理由や背景が管理職としてのストレスが要因になっていることも考えられます。
会社への不満
管理職として会社に貢献をし続けてくれたとしても、会社への不満を理由に退職するケースもあります。
- 給与や待遇への不満
- 給与や待遇が不満足と感じている人もいるでしょう。この場合、給与や待遇を改善するなどの対応がなければ、退職につながる可能性があります。
- 仕事内容への不満
- 管理職のようなマネジメント業務については、特にその仕事内容が自分に合っていないと感じている人もいます。仕事内容を変更するなどの対応がなければ、退職につながる可能性があります。
- 人間関係への不満
- 会社と部下の間で板挟みになり、人間関係がうまくいかず、ストレスを感じ、退職を選ぶことも考えられます。
- 会社の経営方針への不満
- 例えば管理職として会社を支えていたとしても、会社の経営方針に納得できない場合は退職リスクが高まります。
管理職から突然退職を申し出られた場合にやるべきこと
管理職の突然退職にどのように対応すればよいか、
- 退職に備えた全体的なスケジュール
- 退職後の業務調整
- 管理職の後任の選定
上記3つの観点で解説いたします。万が一退職を申し出られたことを想定し、確認しておきましょう。
管理職の退職に備えた全体的なスケジュール
退職の意思表示から退職日までの流れを把握しておきましょう。
管理職問わず、退職の意思表示から退職までは原則として2週間とされており、会社のルールで期間を設けられたとしても1〜3か月程度が限度となります。退職の申し出から退職日まで残された期間で後任の選定や育成に必要な期間を見積もっておきましょう。
退職理由や状況をヒアリングする
管理職として会社に貢献してくれているメンバーが退職希望をするとなると、会社としても受け止めにくい場合もあるでしょう。しかしながら、今後も会社を成長させていくためには必要な痛みとして、しっかりと管理職の気持ち、考えをヒアリングすることが大切です。
管理職の退職日を決定する
管理職の従業員から退職の申し出があった場合、重要なのは退職日の決定です。退職日までの期間がある程度調整できるのであれば、会社として後任の選定や教育、業務の引き継ぎなど慎重に進めることが可能です。
一方で退職日として最短のスケジュールを希望された場合、会社も早急に動く必要があります。退職意思が固まっているのであれば退職日の調整をしましょう。
後任の選定方法を検討する
管理職の後任について、社内から選ぶか、社外から採用するか、選定方法を検討しなければなりません。社内から選ぶ場合は、候補者の選定基準を明確にしておきましょう。
社外から採用する場合は、募集要項を作成して、求人をする必要がありますが、希望する人材に出会うまでに時間が要することも少なくありません。採用するのであればスピート感を持って求人を進めましょう。
後任の育成計画を立てる
後任に業務をスムーズに引き継ぐために、後任の育成計画を立てましょう。業務の引き継ぎだけでなく、管理職としてのスキルを育てることが重要です。
退職者との連絡を継続する
退職後も連絡を取り合い、円満な関係を保ちましょう。元々管理職として組織に貢献していたとしても、退職後は会社と一般人の関係になりますので、業務依頼などはできません。しかし、引き継ぎが不十分な場合などにおいて情報共有を求めることは可能なため、良好な関係性を保っておきましょう。
退職後の業務調整
管理職の退職が決定した場合、管理職が現在抱えている業務を調整することで、業務の滞りを防ぐことができます。後任の業務量を考慮して、業務の調整を開始しましょう。
業務調整として
- 退職者の担当業務を他の従業員で分担する
- 業務の一部を外部に委託する
- プロジェクトのスケジュールを調整する
こういった対策が考えられます。
退職者の担当業務を他の社員で分担する場合は、業務量やスキルを考慮して、適切な担当者を選定しましょう。また、業務の一部を外部に委託する場合は、信頼できる業者を選ぶことが大切です。プロジェクトのスケジュールを調整する場合は、退職者の担当業務の影響を最小限に抑えることを意識しなければなりません。
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退職者の退職後に、業務が滞っていないか、定期的に確認しましょう。
管理職の後任を選定する
管理職が突然退職するとなると、まず後任の選定・育成を進めなければなりません。
後任の選定は
- 社内から管理職の後任を選ぶ
- 社外から管理職の後任を採用する
上記の2つの方法が一般的です。それぞれどのような観点で後任を選ぶのか解説いたします。
社内から管理職の後任を選ぶ
社内から選ぶ場合は、以下の基準を明確にしておく必要があります。
- 業務スキル
- マネジメントスキル
- リーダーシップ
- コミュニケーションスキル
- 人間性
管理職はマネジメント業務が主となることもありますが、向き不向きもあります。例え優秀なプレイヤーであっても、マネジメントに不向きの場合は組織全体がマイナスになりますので慎重に判断しましょう。
社外から管理職の後任を採用する
社外から採用する場合は、募集要項を作成して、応募者を募集しましょう。管理職の求人としては
- 職種
- 年収
- 業務内容
上記3つの内容について、求職者から「魅力のある求人かどうか」を判断される傾向があります。管理職として責任が求められる役職・ポジションだからこそ、そこに見合った待遇が提示できることが重要です。
管理職の退職を防ぐためにできること
管理職とはいえ、雇用契約を結んでいる以上は仕事を続ける権利も、退職して別の道を選ぶ権利もあります。
しかしながらキャリアアップを目的とした退職の場合、管理職の「働き甲斐」を高めることができると退職が防げる可能性も高まります。
また、後任者の育成を早期から着手することで万が一管理職が退職することになったとしても、引き継ぎの負担が軽減できます。
管理職の突然退職は、会社にとって大きなリスクとなります。しかし、早期に対応することで、リスクを軽減することができます。今回ご紹介した対策を参考に、万が一の際に備えておきましょう。
管理職の働き甲斐を高める
キャリアアップを目的とした退職の場合、「管理職におけるキャリアパス」を明確にし、働き甲斐があることを感じられる環境整備を目指しましょう。
管理職の役割や責任を明確にする
管理職の役割や責任が明確になっていないと、管理職としてのやりがいを感じにくくなります。管理職の役割や責任を明確にすることで、管理職としての自覚を高め、働きがいを向上させることができます。
管理職のスキルアップを支援する
管理職として求められるスキルを可視化・言語化することで、管理職としてのキャリアアップや活躍の可能性を高めることができます。加えて、会社としても管理職のスキルアップを支援することで、管理職としてのモチベーションを維持させることができます。
後任の育成を早期から行う
管理職の退職を防ぐためには、後任の育成を早期から行うことも大切です。後任の育成を早期から行うことで、管理職の退職に備え、スムーズな引き継ぎを実現することができます。
管理職候補者を早期から育成しておく
管理職候補者を早期から育成しておくことで、後任の育成にかかる負担を軽減することができます。
そのためには役職や等級ごとのキャリアパスを作成し、どういったスキルや能力が必要なのか分かりやすく整備することが大切です。
管理職候補者へのOJTや研修を実施する
OJTや研修を実施することで、管理職としてのスキルや経験を身につけさせることができます。特にマネジメントスキルは一朝一夕で身につくものではありません。将来の幹部候補として優秀な従業員がいるのであれば、3〜5年後を見据えた人材育成も重要です。
まとめ
管理職の突然退職は、会社にとって大きな損失になります。特に後任がいない場合は、業務が滞ったり、会社全体に影響が出たりする恐れもあるでしょう。
しかしながら、雇用契約を結んでいる以上、例え管理職であっても退職してしまうリスクは常にあります。管理職から突然退職したいと申し出があったとしても、会社として焦らず、慎重に対応を進めましょう。
- 退職の意思を確認する
- 管理職として登用している以上、優秀な人材であると思います。引き止めができるのであれば良いですが、一度退職の意思が固まっている場合は難しいでしょう。退職理由や状況と向き合い、退職の意思を確認します。
- 退職日を決めて全体のスケジュールを確認する
- 退職日が決まりましたら、後任の選定から業務の引き継ぎまでどのようなスケジュールで行うべきか整理します。
- 後任の選定方法を検討する
- 社内から選ぶか、社外から採用するか、後任の選定方法を検討しましょう。社内から選ぶ場合は、候補者の選定基準を明確にしておく必要があります。また、社外から採用する場合は、募集要項を作成して、早急に求人活動を始めます。
- 後任の育成計画を立てる
- 後任に業務をスムーズに引き継ぐためには、後任の育成計画を立てることが大切です。育成計画として「育成の目的」「育成期間」「育成内容」「育成方法」をしっかりと検討しましょう。
- 退職者との関係性は円満に
- 退職後も連絡を取れるように円満な関係を保つことで、万が一の際に外部からヘルプを受けられる可能性もあります。近年ではアルムナイネットワークを企業側で推進することもあります。