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規程と規定の違い:正しい使い分けと実務での活用法

本記事ではこのようなお悩みを解決いたします
  • 「規程」と「規定」の違いがわからず、文書作成時に困っている
  • 法律文書や社内規則で適切に用語の使い分けをしたい
  • 「規程」と「規定」の誤用を避けるために言葉の定義を確認したい

「規程」と「規定」は、ビジネスや法律の世界でよく使われる言葉ですが、多くの人がその違いを正確に理解していません。

弊社でも企業様の就業規則をはじめとする「社内規程」や「社内規則」の作成を多くご支援しておりますが、お客様によっては「就業規定」「社内規程」のように、タイトルにおいても「規程」と「規定」が混じっている場面を見かけます。

今回のコラム記事では、「規程」と「規定」の言葉の意味について確認しながら、実務での正しい使い分けにつなげていただければと思います。

執筆者プロフィール

矢野 貴大

TSUMIKI社会保険労務士事務所/代表・社会保険労務士

金融機関・社会保険労務士法人・国内大手コンサルティング会社を経て大阪で社会保険労務士事務所を開業。

25歳で社労士資格を取得した後、社会保険労務士・経営コンサルタントとして延べ200社を超える企業・経営者をサポートする。その経験を活かし「想いを組み立て、より良い社会環境を形づくる」というMISSIONに向かって日々活動中。

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規程と規定の基本的な違い

「規程」と「規定」は、法務、人事や総務といったバックオフィスに携わる方であればよく利用する用語かと思います。人事担当者の方から「規程と規定は何か違いがあるのですか?」とご質問いただくことがありますので、まずは基本的な違いを明確にし、それぞれの定義、特徴、そして相互の関係性について見ていきましょう。

規程の定義と特徴

「規程」とは、特定の目的のために定められた一連の条項の総体を指す言葉です。具体的には、組織や団体の運営方針や手続きを定めた文書全体を表す際に用いられます。

規程の特徴
  • 複数の条文や規則を「まとめた包括的な」文書
  • 組織全体や特定の部門に適用される
    • 例:賃金規程、出張規程、退職金規程
  • 通常、章立てや条文形式で構成される

規程表現が使われる文書例:会社規程

会社規程は、組織全体や特定の部門に適用される包括的な文書です。法律上で作成が必要な規程もあれば、ルールを統一管理する観点から整備されている規程もあります。

一般的に作成されている会社規程の例
  1. 賃金規程:従業員の賃金や手当、残業代などの計算方法を定める規程です。
  2. 育児介護休業規程:育児や介護を理由とした休業の取り扱いを定める規程です。
  3. ハラスメント防止規程:パワハラ・セクハラ・マタハラといった各種ハラスメントを防止するための規程です。
  4. 情報セキュリティ規程:会社の情報資産の保護と管理に関する基本方針を定める文書です。

規定の定義と特徴

「規定」は、法令や規則の個々の条文や決まりを指す言葉で、規程を「構成する個別の要素」と表現することができます。

規定の特徴
  • 具体的な「一つの決まりや条文」を指す
  • より詳細で具体的な内容を定める
    • 例:就業規則内の労働時間に関する条文
  • 通常、「第◯条」という形式で表される

規定表現が使われるシーン例

個々の条文や決まりを「規定」と呼びますが、下記のようなシーンで用いられることが一般的です。

一般的に作成されている会社規程の例
  1. 民法第90条の公序良俗規定:公の秩序または善良の風俗に反する法律行為を無効とする規定です。
  2. 労働基準法第36条の時間外労働規定:いわゆる「36協定」に関する規定で、時間外労働の上限を定めています。
  3. 会社法第27条の定款記載事項規定:株式会社の定款に記載すべき事項を定める規定です。
  4. 品確法(住宅の品質確保の促進等に関する法律)第94条・95条の瑕疵担保責任規定:新築住宅の請負契約および売買契約における瑕疵担保責任について定める規定です。

規程と規定の関係性

規程と規定は「全体と部分の関係」にあります。規定が集まって規程を形成すると考えるとわかりやすいでしょう。

関係性の例としては

  • 就業規則(規程)の中に、労働時間や休憩時間に関する個別の条文(規定)が含まれる
  • 会社の経理規程(規程)には、経費精算や予算管理に関する具体的な決まり(規定)が記載される

この関係性を理解することで、文書作成時や法令解釈時に適切な用語を選択できるようになります。

社会保険労務士 矢野貴大

規程は全体的な枠組みを、規定は具体的な内容を示すものだと覚えておくと良いと思います!

実務での使い分け方

「規程」と「規定」の違いを理解することは、ビジネスの現場で正確な文書作成を行う上で非常に重要です。この章では、就業規則、法律文書、社内文書といった実務で頻繁に遭遇する場面での正しい使い分け方を詳しく解説しますので、文章作成時のスキルとしてぜひお役立ちいただければ幸いです。

就業規則における規程と規定

就業規則は、「規程」と「規定」の両方が登場する代表的な文書です。そのため、表現が混在してしまうことが見受けれれますが、次の観点を押さえておくと整理がしやすいと思います。

  • 「就業規則」や「賃金規程」のように、文書全体を指す場合は「◯◯規程」と表現する
  • 一方で、就業規則内の「個別の条文や決まり」を「規定」と呼ぶ

例えば、「当社の就業規程第10条に規定された休憩時間は、1時間とする」というように使用します。

法律文書での正しい表現

法律文書においても「規定」が使われるケースは上記の就業規則と同様でして、

  • 条文を指す場合は「第○条の規定」と表現する
  • 「第○条の規程」という表現は誤り(誤用)

法律や条例を引用する際にも「民法法第△条の規定により」のように使用します。この正しい表現を覚えておくことで、法的文書の作成や解釈の際に誤りを避けることができます。

社内文書作成時の注意点

社内文書を作成する際であっても、各種法律文を引用したり、社内規程を作成する場合には「◯◯条の規定において」といった文面を作成することがあります。的確な文章作成のためには、次の4つのポイントを意識するとより良い社内文章になると思いますので、ご確認ください。

規程・規定に関する社内文章作成時の3つのポイント
  1. 一貫性の維持:文書内で「規程」と「規定」の使用方法について、統一します。
  2. 明確な表現:誰が読んでも理解しやすい、曖昧さのない言葉で記載しましょう。
  3. 誤字脱字の確認:誤字脱字は文書の正確性を損ないます。作成後は複数回の確認や、他の社員による校正を行い、ミスを防ぐ工夫をしましょう

規程・規定と規則の違いは?使い分けはどうする?

規程と規定の違いについては「規定が集まって規程を形成する」とお伝えいたしましたが、ビジネスシーンでは「規則」という似た言葉が使われることもあります。この「規則」とはどのような意味合いで使われるのでしょうか?

正しい用語を選択して利用できるよう、「規程・規定」と「規則」の違いについて確認しましょう。

規則の定義と特徴

「規則」とは、人々が従うべきルールや決まりを指します。主に文章によって規定され、行為や事務手続きがそれに基づいて行われるように定められたものといえるでしょう。

規則の特徴
  • 広範囲の行為や手続きに適用される
  • 組織や社会の秩序を維持するための基本的な枠組みを提供する
    • 例:就業規則、学校規則

    その他、市役所等の行政においても「規則」が制定されることがあります。この場合の規則は、地方自治法第15条に基づき地方公共団体の長(法令が認める行政委員会)が法令の範囲内で制定する法形式の名称として利用されています。

    第十五条

    普通地方公共団体の長は、法令に違反しない限りにおいて、その権限に属する事務に関し、規則を制定することができる。

    e-GOV「地方自治法

    規程・規定・規則の使い方比較表

    改めて、規程・規定・規則の用語について整理をしますと、下記表のように違いを表すことができます。

    用語定義特徴
    規程特定の目的のために定められた一連の条項の集合。内部的な規律や組織運営に関するものが多い。賃金規程、服務規程
    規定法律や規則などにおける個々の条文や決まり。具体的で個別的な内容を指す。労働基準法第36条の規定
    規則行為や事務手続きなどが、それに基づいて行われるように定めた事柄。決まり。広範囲の行為や手続きに適用される。職員採用試験規則、学校規則

    これらのポイントを押さえることで、適切な用語を選択し、より正確で専門性の高い文書作成が可能になります。また、組織内でのコミュニケーションがスムーズになる効果も期待できます。

    よくある誤用と対策

    「規程」と「規定」の使い分けは、苦手としている方も多いと思います。頻繁に見られる誤用のパターンを紹介し、それらを防ぐための具体的な対策についてもお伝えいたします。特に変換ミスや意味の混同による誤りを理解し、効果的な校正方法を身につけることで、より正確で信頼性の高い文書作成につなげていただければ幸いです。

    誤用される2つのシーン

    「規程」と「規定」を誤用するシーンとしては

    • 変換ミス
    • 意味の混同

    上記2つが主な理由と考えられます。

    変換ミスは、「規程」と「規定」が同じ読み方「きてい」であることが要因です。

    一方で、両言葉の意味合いを正しく把握できていない場合は、意味を取り違えてしまい

    • 個別の条文を指す際に「規程」を使用
    • 文書全体を指す際に「規定」を使用

    このような誤用が生じてしまいます。

    誤用を防ぐ校正のコツ

    文章作成における校正は、誤用を防ぐための大切な作業です。校正のコツとしては

    • 印刷してチェックする:画面上よりも誤りを見つけやすい
    • 音読する:目と耳の両方で確認することで、誤りを発見しやすくなる
    • 時間を置いて再確認する:新鮮な目で見直すことで、見落としを防ぐ
    • 複数人でチェックする:他者の視点を取り入れることで、より確実な校正が可能

    上記のような方法が一般的でしょう。

    正確な文書作成は、ビジネスにおける信頼性と専門性の向上につながります。日々の実践を通じて、これらのスキルを磨いていくことが重要です。

    Q&A:規程と規定に関するよくある質問

    「規程」と「規定」の使い分けについて、多くの人が疑問を抱いています。この章では、よくある質問に答えることで、両者の違いをより深く理解し、正確な使用方法を身につけることを目指します。読み方の違いから英語表現まで、実務で役立つ知識を分かりやすく解説します。

    規程と規定の読み方の違いは?

    「規程」と「規定」は、読み方が同じ「きてい」のため口頭でのコミュニケーションでは注意しなければなりません。

    • 規程(きてい):全体的な規則や方針を指す場合に使用
    • 規定(きてい):個別の条文や決まりを指す場合に使用

    上記のように使い分けるポイントを押さえておきましょう。

    「規程する」という表現は正しい?

    「規程する」という表現は一般的には使用しません。正しい表現としては次のいずれかになります。

    • 規定する:個別の事項を定める場合に使用します。
    • 定める:規則や方針を設定する場合に使用します。

    例えば、「就業規則で労働時間を規定する」や「会社の方針を定める」といった使い方が適切です。「規程する」ではなく、「規程を設ける」や「規程を制定する」といった表現を使用しましょう。

    まとめ:正確な文書作成のために

    正確な文書作成能力は、ビジネスパーソンにとって必要なスキルです。とはいえ、「規程」と「規定」は、呼び方は同じにも関わらず、意味合いが異なるため、ややこしいと感じている方もおられると思います。

    本記事で解説しました「規程」と「規定」の違いとしては

    • 「就業規則」や「賃金規程」のように、文書全体を指す場合は「◯◯規程」と表現する
    • 一方で、就業規則内の「個別の条文や決まり」を「規定」と呼ぶ

    上記を押さえておくと、良いのではないでしょうか。

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