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週の始まりは何曜日?法律で定められた基準と実務上の解釈とは

本記事ではこのようなお悩みを解決いたします
  • 「週の始まり」の法的定義と実務上の扱いの違いがわからない
  • 業種に適した「週の始まり」の設定方法がわからない
  • 「週の始まり」の設定が労務管理や給与計算にどう影響するか知りたい

「週の始まりは何曜日なのか?」一見単純な疑問かもしれませんが、労務関係の実務をされている方からすると、意外に答えがだしにくい複雑さがあります。

結論、労働基準法においては特定の決まりがない場合は日曜日を週の始まりとしています。一方で、ビジネスの場では月曜日を週初めとして捉えることがあります。

今回のコラム記事では、法律で定められた基準、実務的な解釈について解説いたします。加えて、国際的な基準や業界の慣習もご紹介しますので、労務管理や給与計算業の参考になれば幸いです。

執筆者プロフィール

矢野 貴大

TSUMIKI社会保険労務士事務所/代表・社会保険労務士

金融機関・社会保険労務士法人・国内大手コンサルティング会社を経て大阪で社会保険労務士事務所を開業。

25歳で社労士資格を取得した後、社会保険労務士・経営コンサルタントとして延べ200社を超える企業・経営者をサポートする。その経験を活かし「想いを組み立て、より良い社会環境を形づくる」というMISSIONに向かって日々活動中。

このページの概要

法律における「週の始まり」の定義

労働法規において「週の始まり」は重要な概念です。

労働時間や休日の管理、給与計算など、様々な労務管理の基準となるため、正確な理解が欠かせません。ここでは、労働基準法の解釈と就業規則での定め方について、実務的な観点から詳しく解説します。

労働基準法の解釈と「1週間」の考え方

労働基準法では、1週間の労働時間を40時間以内と定めていますが、「1週間」の起算日については明確な規定がありません。

しかし、厚生労働省の通達により、特段の定めがない場合は「日曜日から土曜日まで」の暦週が1週間とされています。

なお、一週間とは、就業規則その他に別段の定めがない限り、日曜日から土曜日までのいわゆる暦週をいうものであること。また、一日とは、午前〇時から午後一二時までのいわゆる暦日をいうものであり、継続勤務が二暦日にわたる場合には、たとえ暦日を異にする場合でも一勤務として取り扱い、当該勤務は始業時刻の属する日の労働として、当該日の「一日」の労働とするものであること。

改正労働基準法の施行について(昭和六三年一月一日)(基発第一号、婦発第一号)

この解釈には重要な意味があり、例えば、週の途中で月をまたぐ場合、単純に月単位で労働時間を計算すると、週40時間の規制を見落とす可能性があります。特に月末月初をまたぐ週の労働時間管理には細心の注意が必要でしょう。

また、シフト制を採用している企業では、月単位でシフトを組む際に、前月末の労働時間も考慮に入れる必要があります。これを怠ると、知らず知らずのうちに法定労働時間を超過し、予期せぬ残業代の発生や、労働基準監督署からの是正勧告につながる可能性があります。

就業規則での「週の始まり」の定め方

就業規則で1週間の起算日を明確に定めることは、労務管理の効率化と法令遵守の観点から非常に重要です。起算日を定める際は、下記4点に注意をしましょう。

就業規則での「週の始まり」の定める場合の4つのポイント
  1. 業務の特性に合わせた設定
    • 例えば、土曜日を起算日とすることで、土曜出勤時の振替休日を同一週内に設定しやすくなります。
  2. 明確な記載
    • 「1週間の起算日は○曜日とする」と明確に記載することで、解釈の余地をなくします。
  3. 従業員への周知
    • 就業規則の変更時は、従業員への十分な説明と同意が必要です。特に、不利益変更となる場合は慎重な対応が求められます。
  4. 法定休日と所定休日の区別
    • 週1日の法定休日を超える休日は所定休日として明確に区別することで、割増賃金の計算を適切に行えます。
社会保険労務士 矢野貴大

就業規則の作成・改定時には、これらの点を十分に考慮し、企業の実情に合わせた最適な規定を設けることをお勧めします。適切な就業規則の整備は、労務トラブルの予防と、効率的な労務管理の両立につながります。

実務上の「週の始まり」の考え方

実務における「週の始まり」の捉え方は、法律や文化、そして実際の業務形態によって大きく異なります。

日本と諸外国では、週の始まりに対する認識に違いがあり、これらの違いは業務や国際的なコミュニケーションに影響を与えることがあります。ここでは、日本と海外の週の始まりに関する考え方を比較し、その背景や影響について詳しく見ていきましょう。

日本における一般的な週の始まり

日本では、実務上の週の始まりは一般的に月曜日としているケースが多いのではないでしょうか。これは、企業や学校が月曜日から金曜日までを平日とし、土曜日と日曜日を週末として扱う慣習に基づいていると考えられます。

一方で、カレンダー上では日曜日始まりが主流であり、この不一致が時として混乱を招くことがあるでしょう。WEB辞書「Weblio辞書」においては、週という言葉の定義では

日曜日から土曜日までの7日を1期とした時間の単位。

Weblio辞書「

とされており、日曜日を軸として解説されています。

社会保険労務士 矢野貴大

労働基準法以外では、特に週の始まりを規定している法律は見当たらず、ビジネスの現場以外では月曜日・日曜日どちらが週の始まりになるのか、個人の感覚に依るかもしれません。

諸外国における週の始まりの違い

近年、インバウンドや人材不足の影響で外国人の方を雇用する企業は増えております。日本以外では、週の始まりについてどのように定義しているのか確認してみましょう。

キリスト教圏での日曜始まり

キリスト教の影響が強い国々、特にアメリカでは、日曜日を週の始まりとする傾向が強いです。これは、キリスト教の教義に基づいており、イエス・キリストの復活が日曜日であったことから、この日を週の最初の日としているようです。

この考え方は、カレンダーの表記や日常生活にも反映されており、多くのアメリカ製カレンダーが日曜始まりになっています。ただし、実務上は月曜日から仕事が始まるため、ビジネスの文脈では月曜始まりの認識も一般的です。

EUにおける月曜始まりの採用理由

EUでは、多くの国が月曜日を週の始まりとしています。これには以下のような理由があります。

EUにおける月曜始まりの採用理由
  1. ISO 8601規格の採用
    • 1988年に制定されたISO 8601は、国際的な日付と時刻の表記規格であり、週の始まりを月曜日と定められています。
  2. 実務との整合性
    • 1988年に制定されたISO 8601は、国際的な日付と時刻の表記規格であり、週の始まりを月曜日と定められています。
  3. 週末の連続性
    • 土曜日と日曜日を週末として連続して表示することで、休日の計画が立てやすくなります。
  4. 統一性の確保
    • EU内での取引や交流が活発化する中、日付や週の概念を統一することで、ビジネスや行政の効率化を図っています。

専門家の視点から見ると、この統一化は国際ビジネスにおいて非常に重要です。例えば、プロジェクト管理やスケジュール調整において、週の始まりが統一されていることで、誤解や混乱を防ぐことができます。

また、グローバル企業で働く方々にとっては、この違いを理解し、適切に対応することが求められます。特に、日本企業が海外展開する際には、現地の慣習に合わせたカレンダー管理や業務スケジューリングが必要となるでしょう。

「週の始まり」が労務管理に与える影響

「週の始まり」の設定は、一見些細なことのように思えますが、実際には労務管理に大きな影響を及ぼします。適切に設定することで、法令遵守を確実にし、従業員の労働時間を正確に把握できるだけでなく、効率的な人員配置や残業管理にもつながります。ここでは、週の始まりが労務管理に与える具体的な影響と、その重要性について詳しく解説します。

週40時間労働制と週の始まりの関係

労働基準法では、原則として1週間の労働時間を40時間以内に制限しています。この「1週間」の起算日をどこに設定するかによって、労働時間の計算方法が大きく変わってきます。例えば、月曜日を週の始まりとした場合と日曜日を週の始まりとした場合では、以下のような違いが生じます。

  1. 残業時間の計算
    月曜始まりの場合、金曜日までの残業が40時間を超えなければ割増賃金の対象にならない可能性がありますが、日曜始まりだと土曜日の勤務で40時間を超えやすくなります。
  2. 変形労働時間制の運用
    1ヶ月単位の変形労働時間制を採用している場合、週の始まりによって各週の所定労働時間が変動し、残業の発生タイミングが変わる可能性があります。

労務管理者は、これらの点を考慮して、自社の業務形態に最適な週の始まりを設定する必要があります。

給与計算時の注意点

給与計算において、週の始まりの設定が影響することがあります。特に次の4つのポイントは押さえておきましょう。

週の始まりと給与計算時の注意点
  1. 割増賃金の正確な計算
    • 週40時間を超える労働に対しては、25%以上の割増賃金を支払う必要があります。週の始まりの設定によって、この40時間の区切りが変わるため、割増賃金の発生タイミングも変化します。
  2. 月末月初の処理
    • 月をまたぐ週の労働時間計算では、特に注意が必要です。月末で締めるのではなく、週の単位で正確に計算することが重要です。
  3. 変形労働時間制の適用
    • 変形労働時間制を採用している場合、週の始まりの設定によって、各週の所定労働時間が変動する可能性があります。これにより、残業時間の計算も影響を受けます。
  4. 休日出勤の取り扱
    • 法定休日と所定休日の区別を明確にし、それぞれの出勤に対する割増賃金を正確に計算する必要があります。

月をまたぐ週の労働時間計算

実務的な観点ですが、月をまたぐ週の労働時間計算は、特に注意が必要になります。以下の手順で計算を行うとミスが防げますので、ご参考ください。

  1. 週の始まりから月末までの労働時間を計算する
  2. 翌月1日から週の終わりまでの労働時間を計算する
  3. 上記1と2を合算して、その週の総労働時間を算出する
  4. 40時間を超える部分があれば、割増賃金の対象として計算する

例えば、週の始まりが水曜日で、月末が火曜日の場合、水曜日から火曜日までを1週間として計算します。この際、月をまたいでいても、1週間の労働時間として連続して計算することが重要です。

専門家が解説:効果的な「週の始まり」の設定方法

「週の始まり」の設定は、一見些細なことのように思えますが、実は労務管理や業務効率に大きな影響を与える重要な要素です。適切に設定することで、従業員の労働時間を適切に管理し、業務の生産性を向上させることができます。ここでは、業種別のおすすめ設定や変形労働時間制との関連性について、専門家の視点から詳しく解説します。

業種別におすすめの週の始まり設定

業種によって業務の繁忙期や特性が異なるため、それぞれに適した週の始まりを設定することが重要です。以下に、代表的な業種ごとのおすすめ設定を紹介します。

小売業:土曜日始まり

週末に売上が集中する小売業では、土曜日を週の始まりとすることで、繁忙期を週の前半に設定できます。これにより、人員配置や在庫管理を効率的に行うことができます。

製造業:月曜日始まり

多くの製造業では平日操業が一般的であるため、月曜日を週の始まりとすることで、生産計画と実績管理を行いやすくなります。

飲食業:火曜日始まり

多くの飲食店が月曜日を定休日としているため、火曜日を週の始まりとすることで、スタッフのシフト管理や仕入れ計画を立てやすくなります。

まとめ:法律と実務の両面から見た「週の始まり」の重要性

「週の始まり」の設定は、一見些細な問題に思えるかもしれません。しかし、専門家の立場から見ると、「週の始まり」の設定は、単なる曜日の選択以上の意味を持っており、企業の法令遵守、業務効率化、そして従業員の働きやすさを左右する重要な要素なのです。

最適な「週の始まり」は、企業ごとに異なります。業種、事業規模、従業員の働き方、さらには企業文化までを考慮に入れて決定する必要があります。また、一度設定したら終わりではなく、定期的に見直しを行うことも重要です。事業環境や労働法制の変化に応じて、柔軟に調整していくことが求められます。最後に、「週の始まり」の設定を検討する際は、

  1. 就業規則への明確な記載
  2. 従業員への十分な説明と理解の促進
  3. 労働時間管理システムとの整合性の確保

上記の観点を念頭において進めると効果的かと思います。

適切な「週の始まり」の設定は、法令遵守と業務効率化の両立を可能にし、結果として企業の持続的な成長と従業員の満足度向上につながります。この重要性を十分に理解し、自社に最適な設定を行うことが、現代の労務管理において不可欠なのです。

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