「不明確」と「不明瞭」の違いとは?意味・使い方をわかりやすく解説!

言葉の使い分けに迷う日本語表現の中でも、「不明確」と「不明瞭」は特に混同されやすい言葉の一つです。
どちらも「はっきりしない」という意味を含みますが、実は使われる場面やニュアンスには明確な違いがあります。
本記事では、ビジネスシーンや日常会話でも頻出するこの2語の意味と使い方を比較し、それぞれの違いをわかりやすく解説します。正しい日本語表現を身につけ、伝わるコミュニケーション力の向上につながれば幸いです。
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「不明確」と「不明瞭」の基本意味
「不明確」と「不明瞭」は、どちらも「はっきりしない」という意味を持つ言葉ですが、それぞれが表す“曖昧さ”の性質は異なります。まずは両者の定義とニュアンスを押さえた上で、具体的な使われ方を見ていきましょう。
不明確の定義とニュアンス
「不明確(ふめいかく)」は、「物事の意味や内容、方針などが明確でない状態」を指します。主に論理的・概念的な内容に対して使われ、理解や判断が難しいと感じられる状況に適用される表現です。
ロジックや内容が曖昧なケースに使われる
「不明確」は、主に以下のようなシーンで使われます。
- 説明や指示が曖昧で、意図がつかめない場合
- 結論や方針が明示されていない文章や議論
- 論理の流れが整っていないプレゼンテーション
つまり、「情報そのものの中身がはっきりしない」ことに起因する曖昧さが「不明確」なのです。
ビジネスや契約文書での具体例
ビジネスや法的な文書では、曖昧な表現はトラブルのもとになります。以下のようなケースにおいても「不明確」が用いられます。
- 「契約書の条文が不明確で、解釈が分かれる可能性がある」
- 「不明確な指示のせいで、業務の進行が遅れた」
- 「目標設定が不明確では、成果を測定しにくい」
このように、「不明確」は論理的整合性や情報の明示性を問う場面で使われる言葉とも言えます。
不明瞭の定義とニュアンス
「不明瞭(ふめいりょう)」は、「視覚や聴覚など、五感を通じて受け取る情報がはっきりしない状態」を意味します。物理的に見えにくい・聞き取りにくい、あるいは表現が曖昧で印象がつかみにくいときに使われることが多い言葉です。
視覚・聴覚的に伝わりにくい状態
「不明瞭」は、以下のようなケースで使われます。
- 発言が小さくて聞き取りづらい
- 字がかすれて読みにくい
- 音声や画像がぼやけて判別しにくい
このように、「不明瞭」は物理的・感覚的な“見えにくさ・聞こえにくさ”を表す表現です。
日常会話や書類・音声での例
日常生活やビジネスの場でも、「不明瞭」は頻繁に使われます。
具体例としては、
- 「マイクの音が不明瞭で、プレゼン内容が伝わりにくかった」
- 「書類のコピーが不明瞭で、読めない部分がある」
- 「発言の意図が不明瞭で、誤解を招いた」
このように、「不明瞭」は外的要因によって情報の受け手が困難を感じるときに適した言葉です。
「不明確」「不明瞭」の違いを視覚的に比較
「不明確」と「不明瞭」はどちらも“はっきりしない”状態を指しますが、その“はっきりしなさ”の種類が異なります。この章では、感覚的か論理的かという観点から整理し、さらに類義語との違いも含めて視覚的にわかりやすく比較していきます。
感覚と論理の観点から見てみよう
まずは、「不明瞭」と「不明確」の違いを感覚と論理という切り口から見てみましょう。
不明瞭=ぼんやり・聞き取りにくい
「不明瞭」は、目や耳で感じる情報が“ぼんやりしている”状態を表します。例えるなら、視界が霞んでいて対象物が見えにくい、あるいはノイズで会話が聞き取りにくいような状況です。
- 見た目や音がはっきりしない
- 五感に訴える情報の受け取りが困難
- 表現がぼやけて印象が弱い
不明確=目的・意図がはっきりしない
一方で、「不明確」は物事の意図や論理構造が“整理されていない”状態に使われます。説明があっても核心が伝わらない、方針が定まらず判断に迷う、などのケースです。
- 概念や内容の整理不足
- 意図・指針・目的が曖昧
- 判断や行動の指針にならない
類義語との違い整理
「不明確」「不明瞭」のような曖昧さを表す言葉には、他にも「曖昧」「不透明」「不確か」などがあります。それぞれの違いを整理することで、より的確な言葉選びが可能になります。
曖昧・不透明・不確かとのニュアンス比較
| 用語 | 意味の特徴 | 主な対象 |
|---|---|---|
| 不明確 | 論理的に整理されていない | 情報・指示・内容 |
| 不明瞭 | 感覚的に認識しづらい | 音声・画像・文字 |
| 曖昧 | 意図的・非意図的に意味が二重 | 表現・意図 |
| 不透明 | 背景や内情が見えない・判断できない | 仕組み・組織・政策 |
| 不確か | 信頼性に欠ける・根拠が弱い | 情報・データ |
使用場面の使い分け方法
不明瞭・不明確・曖昧・不透明・不確かをどのようなシーンで使い分ければいいのか迷う方もおられると思います。ビジネスシーンを想定して使い分け例を整理しましたので、ご参考になれば幸いです。
- 会議で「伝わりにくい発言」→ 不明瞭
- 契約条件が「解釈できない」→ 不明確
- 意見が「二通りに取れる」→ 曖昧
- 方針の背景が「読み取れない」→ 不透明
- 情報源が「信頼できない」→ 不確か
このように使い分けを意識することで、言葉の精度がぐっと高まり、誤解のない明確なコミュニケーションが可能になるでしょう。
例文で学ぶ使い分け方法
「不明確」と「不明瞭」の違いを正しく理解していても、実際にどう使えばよいか迷うことは少なくありません。この章では、両語を自然に使えるようになるための例文を通して、具体的な使用感を身につけましょう。
不明確を使った例文5選
「不明確」は、主に考えや内容、方針、目的などがはっきりしていない場合に使います。論理や内容の整理が求められる場面で登場することが多い言葉です。
「方針が不明確で…」「契約内容が不明確で…」
- 新年度の目標が不明確で、チーム全体の動きが鈍くなっている。
- 契約書の条項が不明確で、どちらの責任か判断できなかった。
- 上司からの指示が不明確だったため、作業内容にズレが生じた。
- 議論の論点が不明確で、結論がまとまらなかった。
- 授業の評価基準が不明確で、学生の不満が高まっている。
職場・学校・家庭での実例
- 職場:プロジェクトの目的が不明確で、メンバーの間に温度差が生まれた。
- 学校:試験範囲が不明確だったため、全体的な得点が低下した。
- 家庭:「何をしてほしいのか」が不明確だと、すれ違いの原因になります。
不明瞭を使った例文5選
「不明瞭」は、声や音、文字、表現がはっきりと認識できない状態を表します。感覚的に“受け取りにくい”状況で使用されることが特徴です。
「文字が不明瞭で…」「発言が不明瞭で…」
- 発表中のマイクの音が不明瞭で、内容がほとんど聞き取れなかった。
- コピー機の調子が悪く、文字が不明瞭になってしまった。
- プレゼン資料の図解が不明瞭で、理解しにくかった。
- 録音したインタビュー音声が不明瞭で、書き起こし作業が難航した。
- 相手の発言が不明瞭で、真意を読み取ることができなかった。
プレゼンや書類・録音での実例
- プレゼン:話し方が早口で不明瞭な部分が多く、聴衆の反応が鈍かった。
- 書類:スキャン画像が不明瞭で、再提出を求められた。
- 録音:雑音が多く、録音内容が不明瞭になっていた。
このように、状況や対象に応じて「不明確」と「不明瞭」を正しく使い分けることで、言葉の精度と伝達力が格段に向上するでしょう。
「不明確」と「不明瞭」をビジネスや日常で使い分けるポイント
「不明確」と「不明瞭」は、正しく使えば相手に的確な指摘ができる便利な表現ですが、使い方を誤ると誤解や不快感を招くこともあります。ここでは、メール・会議・報告などの場面での適切な使い方と、誤用を避けるためのポイントを紹介します。
場面別の適切表現(メール・報告・会議)
「不明確」と「不明瞭」を正しく理解していても、実際のビジネス現場ではどちらを使えばよいか迷うことがあります。特にメールや会議、報告書といった場面では、表現ひとつで印象や伝わり方が大きく変わりますので、場面ごとに最適な言い回しと使い分けのコツをご紹介します。
「説明が不明瞭です」と「内容が不明確です」の違い
両者は一見似ているようで、意味する対象が異なります。
- 説明が不明瞭です:発言が聞き取りにくい、話し方が曖昧、声が小さいなど、感覚的に伝わらないケース
- 内容が不明確です:説明の論点が定まっていない、情報が足りない、目的が見えないといった論理的な問題
たとえば会議で、
- 「先ほどの説明はやや不明瞭でしたので、もう一度お願いします。」
- 「ご提示いただいた資料の意図が不明確です。目的を明示していただけますか?」
このように、何が原因で伝わらなかったのかを明確にすれば、相手も改善しやすくなります。
相手に伝わる言い換えフレーズ集
| 状況 | 誤解を避ける言い換え例 |
|---|---|
| 声や発言が聞き取りづらい | 「少し聞き取りにくかったので、もう一度お願いできますか?」 |
| 論理や目的が伝わらない | 「この部分の意図が見えにくいのですが、もう少し具体的に教えていただけますか?」 |
| 文書の表現が曖昧 | 「こちらの表現は少し曖昧に感じます。具体例を加えるとより明確になると思います」 |
避けるべき誤用と改善例
「不明確」と「不明瞭」は便利な表現ですが、意味を取り違えたまま使ってしまうと、相手に誤解を与えたり、不自然な印象を与えたりすることもあります。ありがちな誤用例と、その場にふさわしい自然な言い換え表現をご紹介します。
「時間は不明確/不明瞭」はNG?正しい表現とは
「時間」という具体的・客観的な情報に「不明確」「不明瞭」を使うと、不自然な表現になります。代わりに以下のような言い回しが適切です。
- NG:「集合時間が不明確です」
- → OK:「集合時間が記載されていません」「はっきりしていません」
- NG:「開始時刻が不明瞭です」
- → OK:「開始時刻が読み取りにくいです」「確認できません」
このように、具体的な状況に合わせて語彙を選ぶことで、文章の自然さが増します。
建設的な指摘にする言い回し
指摘を柔らかく、かつ前向きに伝えるには、以下のような表現が効果的です。
- 「少しわかりにくいと感じたのですが、~ということで合っていますか?」
- 「この部分、もう少し具体的に説明いただけると助かります」
- 「念のため確認ですが、この意図で合っているでしょうか?」
相手に配慮を示しつつ、内容の明確化を促すことで、良好なコミュニケーションが築けるでしょう。
まとめ:正しく使い分けて印象アップ
「不明確」と「不明瞭」は、いずれも「はっきりしない」という共通点を持つ言葉ですが、その使いどころを誤ると、伝えたい内容がぼやけてしまったり、相手に違和感を与えたりすることがあります。最後に、使い分けのポイントをもう一度整理し、実践に活かせるようまとめましょう。
不明瞭/不明確、どちらを選ぶ?
「不明確」と「不明瞭」、どちらも“はっきりしない”という意味を持ちますが、実際の会話や文章でどちらを使えばよいか迷うことは少なくありません。意味の違いをふまえた上で、具体的な判断基準と選び方を確認しましょう。
音や見た目の“伝わりにくさ”なら不明瞭
「不明瞭」は、主に五感を通じた“物理的な伝わりにくさ”に対して使います。
- 声が小さくて聞き取りづらい
- 文字がかすれて読みにくい
- 図表や発言の印象がぼやけている
このような状況では、「不明瞭」という言葉を選ぶことで、問題の本質がより的確に伝わります。
意図や基準の“はっきりしなさ”なら不明確
一方で「不明確」は、情報や意図、方針などの“論理的な曖昧さ”に対して使われます。
- 目的や方向性が定まっていない
- 内容が抽象的すぎて理解しにくい
- 判断基準が説明されていない
このような場面では、「不明確」という表現を用いることで、改善点を具体的に指摘できます。
言葉を適切に使い分けることは、情報を正しく伝えるだけでなく、相手に与える印象や信頼感にも大きく関わります。特にビジネスやフォーマルな場面では、一語の違いがコミュニケーションの成否を左右することも少なくありません。この記事を参考に、場面ごとのニュアンスを意識しながら、正確かつスマートな日本語表現を身につけていきましょう。
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