【社労士監修】自社にあった社会保険労務士の選び方・探し方とは?
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私たち社会保険労務士は、
- 労務管理を通じてお客様の企業を良くするためには何が必要なのか
- お客様の課題を解決するための提案は何が最適なのか?
このような、お客様の満足度を第一に考えて日々仕事に取り組んでいます。しかしながら、お客様である経営者の方から
「今顧問契約を結んでいる社労士は、ちょっと自社にあっていないと感じる。レスポンスが遅く、対応に不安がある」というようなお声を聞くことは少なくありません。
もしかしたら、ご契約先の社労士は相談内容をしっかりと精査・分析しているために時間が掛かっている可能性もあります。こういった場合、お互いの考えにズレが生じているため、両者ともに不幸になってしまいます。
本記事では、現場の社労士から見た 「良い社労士の選び方と探し方」について解説いたします。
昨今、社労士の顧問変更・解約について相談をいただくことが増えておりますので、社会保険労務士を探されている方はご参考いただけると幸いです。
矢野 貴大
TSUMIKI社会保険労務士事務所/代表・社会保険労務士
金融機関・社会保険労務士法人・国内大手コンサルティング会社を経て大阪で社会保険労務士事務所を開業。
25歳で社労士資格を取得した後、社会保険労務士・経営コンサルタントとして延べ200社を超える企業・経営者をサポートする。その経験を活かし「想いを組み立て、より良い社会環境を形づくる」というMISSIONに向かって日々活動中。
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社会保険労務士の選び方について
同じ社会保険労務士であっても、 士業もサービス業に近いため、業務内容や品質は当然異なります。
そのため社労士を選ぶ際に確認しておきたい点は、下記の5つです。
- 顧問報酬・料金体系
- 業務領域(得意とする分野、苦手とする分野)
- 事務所の規模
- 人としての信頼性
- ITツールやクラウドシステムへの対応力
- レスポンス・返信速度
- 情報提供
- 相性・コミュニケーション
また、「コストはいくらかけられるのか?」「どのような業務を依頼したいのか?」こういった方向性について明確にすることで 自社に適する社会保険労務士を選ぶ近道になります。
では、社労士の選び方の5つのチェックリストを順番に解説していきますので、ご参考にしていただけますと幸いです。
選び方①「顧問報酬・料金体系」の分かりやすさ
一番目は「顧問報酬・料金体系」がしっかりと明確になっているか?分かりやすく説明があるのか?という点です。
社労士事務所での基本的なサービス範囲は
- 労務相談顧問
- 労働社会保険手続き代行の顧問
- 給与計算代行の顧問
- その他別途発生する単発(顧問とは別)
このように大きく4つに分類することができます。その他別途発生する単発報酬とは、就業規則の作成や助成金の申請サポートといった、コンサルティング業務等が上げられます。
だたこういった社労士の業務について、報酬をいくらにするのか明確な基準はなく、各事務所ごとに料金設定を行っております。そのため、社会保険労務士をWEBで探しているときであっても「料金を知りたいのに、この事務所のHPには詳細が書かれていない」ケースがよくあります。こういった場合、顧問報酬の内容を知るためには実際に問い合わせをする必要があります。
事務所のHPに記載がない場合、理由としては
- 料金の単価が決められていない
- 顧問契約で提供するサービス内容が曖昧になっている
- 他の社会保険労務士事務所に知られたくない
という可能性が高いため、実際に契約した後で「その依頼については別途料金が必要になります」となることもございますので、「顧問報酬・料金体系が明確になっているのかどうか」注意をすることをおすすめします。
選び方②「業務領域」がニーズと合っているか
2つ目に確認しておきたいポイントは依頼したい「業務領域」のニーズを満たしてくれるのか?という点です。
1つ目の「顧問顧問・料金体系」でも説明をしましたが、同社会保険労務士事務所であっても、サービス内容は自由に決められるため、当然業務領域も異なります。そのため受け付けている業務名は同じであっても、
- 業務内容
- 業務の幅
- 業務の品質・対応力
についてはそれぞれの事務所によって違うのです。例えば「給与計算業務」を依頼する場合、
給与計算 | 社会保険労務士事務所A | 社会保険労務士法人B |
---|---|---|
業務内容 | タイムカードを渡すだけで、 月次の勤怠を集計してくれる | 会社側でタイムカードを集計し、 そのデータを渡さなければ計算をしてくれない |
業務の幅 | 紙の明細書のみ | WEB明細書に対応している |
品質・対応力 | ミスが発生することが多々あるが、コミュニケーションが取りやすい | 特にミスすることもないが、担当者とコミュニケーションが取りにくい |
このような大きな違いが生じることが多々あります。そのため依頼する前に「どのような領域を社労士に外注したいのか」しっかりと整理しておくことで、ニーズを満たしてくれる専門家に出会える可能性が高くなります。
また、社労士事務所の経営方針として
- 得意とする業界(飲食・医療介護・IT業界・建設および建築・運送)
- 注力する業務(助成金や人事評価制度、労務改善コンサルティング)
- 障害年金や遺族年金のサポートのみを行う
- 給与計算の業務範囲を制限することで安価な料金で行う
業務領域に特色を打ち出しているケースもあります。私たち社会保険労務士も、お客様に選んでいただけるようにサービスに強みを作っているためですので、自社がどのような方向で社会保険労務士と契約をしていきたいのか考えることが重要になるというわけです。
社会保険労務士は「人」の領域で経営をサポートするための専門家です。
しかしながら、先述したようにサポート内容は事務所によって異なりますので、「契約している社労士は、手続き業務しかしてくれない」「従業員と未払い残業代のトラブルになっているので相談したが、法律の解説だけで参考にならなかった」こういった不満に繋がらないように、会社の状況や課題に対して、寄り添ってくれるのかどうか、しっかりと見極める必要があります。
選び方③「事務所の規模」
次に重要になるポイントは「事務所の規模」をどう考えるのかになります。社労士事務所の規模、つまり従業員の人数が一般的に何名程度かご存知でしょうか?
株式会社エムケイシステムの2022年3月期の決算資料によると、
- 大規模事務所……10名以上(2,963事務所)
- 中規模事務所……2〜9名以上(8,729事務所)
- その他事務所……0〜1名(14,761事務所)
のように区分されており、全国にある26,453の社労士事務所のうちどの程度の割合で規模が別れているのか、業界の分析があります。
私も実際に社労士事務所を運営しているため、多くの同業の先生方とお会いすることがありますが、概ねこの数字は正しいと感じます。
ここで、事務所の規模について考えたときに「大きな事務所の方が仕事が多く、その分対応力もあるのでは?」と思われる方もいらっしゃるのではないでしょうか。
注意いただきたいのは社労士事務所に限らず、士業全体は資格業であり、知識のサービス業ということです。
そのため重要になるのは「職員の数」ではなく「職員の質の高さ」ということはぜひ念頭に置いてください。
顧問社労士を選ぶ上で、社労士事務所のHPを色々と見比べていると、事務所の規模をメリットとして上げるケースはあっても、デメリットと捉えていることはありません。一般的に考えられる事務所の規模のメリット・デメリットは次のように分類しお伝えしますので、事務所選びの参考にしてください。
大規模事務所に依頼するメリット・デメリットとは?
小模事務所に依頼するメリット・デメリットとは?
選び方④「歴史・経験」ではなく「スタンス」
4つ目のポイントは、専門家としての「スタンス」です。社会保険労務士の資格は、制度ができてから50年程度でありますが、当時の話を聞くと「労働保険・社会保険の手続き代行」が主な業務内容だったようです。
しかしながら平成・令和と時代が変わるにつれて「過重労働問題」「働き方改革関連法」「職場におけるハラスメント」「SNSでの会社バッシング・炎上」「新型感染症と向き合いながらどう仕事をするのか?(在宅勤務やテレワーク制度)」等、人事労務のトレンドは大きく変わっています。
そのため
- 答えがない問題であっても、経営者に寄り添って真剣に考えてくれるのか?
- 時代を振り返るのではなく、時代を先読みして提案やアドバイスをしてくれるのか?
こういった観点でしっかりと考え、経営に有効なアドバイスができる専門家とご契約ください。
選び方⑤「ITツール・クラウドシステム」の理解力
5つ目に押さえておきたいのは「ITツール・クラウドシステムに理解力があるのか?」ということです。昨今、デジタル庁が発足されるなど、国の方向としても「デジタル化」に向かって歩みだしています。
しかしながら、社会保険労務士業界ではまだデジタル化に出遅れており、実際ご相談をいただく経営者の中には
- 今の社労士がシステムに弱く、ペーパーレスに対応をしてくれない
- SmartHRやマネーフォワードといったクラウドシステムの相談をしたが、取り扱っていないと言われた
- 書類のやり取りが紙であり、郵送が手間。わざわざ会社に行かなければやり取りできないため不便
こういったデジタル対応ができていない不満の声がございます。
実際、行政への提出書類について、社会保険労務士が関わっている「労働・社会保険分野」に関する電子申請についてはわずか21.6%(約1億5,000万件中約3,200万件)と全体の1/5程度しか活用されていない事例もあり、業界全体としてIT・デジタル化に対応が遅れているのです。
こういった電子申請に対応できていない事務所の場合は、
- 各手続きの作成を依頼する都度、押印のやり取りが必要になる
- 社労士事務所、行政機関(ハローワークや年金事務所)ともに郵送のやり取りのため手続きが完了するまで時間がかかる
- 手続き完了後、返却される資料も当然「紙」のためペーパーレス化とは真逆の動きになる
デメリットばかりなのです。また、電子申請が普及していない背景には「ITツールに疎い」という理由が考えられます。そのため、クラウドシステムを活用した労務管理の効率化について相談をしても、期待する回答は得られにくいのではないでしょうか。しっかりとITやデジタルに強いのか、確認しておくことをおすすめいたします。
選び方⑥「レスポンス・返信速度」は期待どおりか?
社会保険労務士に相談をしたいと思うタイミングは主に
「従業員が急に退職願いと有給休暇の申請をしてきて、対応に困っている 」「従業員から未払い賃金の請求がきており、すぐに相談したい」 このような緊急度合いが高いケースが一般的ではないでしょうか。
そんな中、相談相手である顧問社労士の反応・レスポンス速度が遅いと不安になりませんか?
また、課題が解決しなければ、本業に集中することもできずに無用な心配に時間を費やすことになります。
相談したいときに気軽に相談できるのでなければ、スピード感を持った経営ができなかったり、従業員の方からの信頼を失うことにもなりますので、社労士事務所のレスポンス速度は大事なポイントとなります。
選び方⑦「情報提供」はされているか
7つ目のチェックポイントは「情報提供」の有無です。
- 顧問契約をしているのに、何ヶ月も顧問社労士と連絡やコミュニケーションを取っていない
- 労働保険や社会保険手続きや、給与計算はきちんと行ってくれているが、法改正の情報はニュースで知った
- 助成金の案内や就業規則の見直しの案内など行ってくれない
顧問社労士の方がいらっしゃる経営者の方から、こういった声は多くいただきます。働き方改革をはじめとして、近年は法改正が度重なっているため、対応が漏れやすく、その分経営リスクは大きくなってしまいます。
また、助成金の情報など有益な情報共有がどの程度されているのか、見極めることも重要です。
選び方⑧「相性・コミュニケーション」が合うのか
8つ目、再度のポイントとなるのは「社会保険労務士事務所の経営者と相性が良いのか」です。
「依頼している仕事はミスなく完了してくれるが、ちょっと相談がしにくい」 「いつ電話しても忙しそうにしていて、何となく相談がしにくい」 「いつも上から目線で、接しにくい雰囲気がある」など、人としての相性・コミュニケーションが合うのかどうか押さえておきましょう。
顧問契約を結んでいても、気軽に相談ができなければ契約している意味がありません。また、ビジネスパートナーとしても不安につながります。
「確かにコミュニケーションの取りやすさは重要だと思うが、契約してみなければ分からない」という方もいらっしゃるかと思います。社会保険労務士事務所の多くは、初回面談は無料で行っているケースがありますので、しっかりとその時間を利用して「自分にあった経営者なのか?」見極めていきましょう。
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社労士に相談したときに「法律は◯◯なので、◯◯してください」と法律論のアドバイスしかしてくれなかった、というお悩みはよくお聞きします。専門家として法律はたしかに重要ですが、経営者や従業員の気持ちにしっかりと寄り添い、解決策を探すことも大切だと考えております。そのためコミュニケーションの質は重要視しておきたいところです。
自社にあった社会保険労務士の探し方とは?
会社にあった社会保険労務士の選び方について、お伝えさせていただきましたので 具体的に信頼できる社会保険労務士の探し方を解説いたします。
- WEBで検索をする
- 経営者の繋がりを活用する
- 税理士や金融機関への紹介依頼
社労士を見つける方法は大きく分けて上記の3つになります。それぞれ注意が必要なこともありますので確認をしていきましょう。
探し方①「WEB」で調べる
WEBを活用して社労士事務所を調べる場合は
- 社労士事務所が運営する自社サイト
- 社労士の紹介サイト
この2パターンがあります。
社労士事務所が運営する自社サイト
社労士事務所のWEBサイトを探す場合のポイントとしては、
- WEBサイトがしっかりと更新されているのか?(最後の更新が何年も前になっていないか?)
- サービス内容がしっかりと書かれており、わかりやすいのか?
- 無料相談を実施しているのか?
上記3つを意識いただけると、最低限問題はないかと思います。IT・デジタル化の時代の中、WEBサイトが更新されていない場合は情報発信力に弱みにつながってしまいます。そのため顧問契約を結んだとしても満足のいく情報提供が受けられない可能性があります。
また無料相談には多くの事務所が取り組んでいると思いますが、WEBサイトを見ただけでは自社にあったサポートがしてくれるのか見抜くことはできません。
そのため、まずは気軽に無料相談に申し込み、話を聞くことをおすすめします。当事務所でも「他の事務所とどう違うのか、色々と調べております」と無料相談にお申し込みをいただくことがございますので、ご安心ください。
社労士の紹介サイトには注意が必要
WEB検索する場合に、
「東京 社会保険労務士」や「大阪 社会保険労務士」のように、自社の所在地名称と、社会保険労務士というキーワードで調べる方も多いのではないでしょうか。
その際、【大阪のおすすめ社会保険労務士事務所○選】や【社会保険労務士比較・紹介サイト】といったページを見ることがあります。
このコンテンツを発信しているのは社会保険労務士事務所とは関係のない会社であることが多々あります。これはビジネスモデルとしては
- 紹介サイトを経由して契約が発生した場合に報酬の◯%を社労士事務所が紹介サイト運営元に支払う
- 紹介サイトに月◯万円の掲載費用を支払っている
といったことが考えられます。そのため、本当に有料な社労士事務所を紹介してくれているのか?という疑問がありますので、注意をしておきましょう。
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実際に紹介会社の記事に登録経験のある社労士の先生とお話をしたことがありますが「何も依頼をしていないのに勝手に掲載をされていた」というケースもあるようです。ヒアリングもせず実態が分からないにも関わらず「おすすめ」という表記は信頼性に欠けるため気をつけてください。
探し方②「経営者の繋がり」を活用する
WEBサイトを利用しない場合、知り合いの経営者の顧問社労士を紹介してもらうケースです。第三者の評価、つまり実際に顧問契約をしている経営者の評判を聞くことで顧問契約後のイメージができるため失敗はしにくいでしょう。
ただし、紹介依頼をする際に気をつけていただきたいポイントは
商談後に「ちょっとイメージと違った」「顧問報酬が思っていたよりも高かった」と感じても契約を断りにくいことです。事前にどのようなサポートを受けているのかしっかりと確認し、依頼元の経営者と価値観をすり合わせておきましょう。
探し方③「金融機関」への紹介依頼
社会保険労務士だけでなく、司法書士、税理士を探すときにも有効なのが、 取引先の銀行や信用金庫への紹介依頼です。 士業は業務上金融機関と連携をしていることがあります。
社会保険労務士の場合は、助成金制度を活用してアライアンスを組んでいたり、案件の紹介をしていることがありますので、金融機関の担当者に相談してみましょう。
注意点としては、金融機関の担当者は人事・労務の専門家ではありません。そのため連携をしている社労士事務所がどのような強みを持っているのか把握できていない懸念があります。
まとめ・社会保険労務士の選び方・探し方について
最後に、今回解説をさせていただきました社会保険労務士の「選び方」と「探し方」のそれぞれのポイントを再度お伝えいたしますので、ぜひご参考にしてください。また、当事務所でも無料相談を随時実施しておりますので、お気軽にお問い合わせいただけますと幸いです。
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