【2024年4月最新】雇用保険料率は引き上げられる?給与・賞与計算の注意点も解説
従業員の給与計算を行う際、雇用保険や社会保険料の計算は欠かせないものであり、従業員の給与から直接天引きしますので正確な金額算出が求められます。
雇用保険料の計算根拠となる「雇用保険料率」は定期的に見直しが行われており、引き下げ・引き上げどちらの可能性もあります。
直近では2023年4月に新しい雇用保険料率になりましたので、給与計算実務に携わっている方は注意が必要になります。
本記事では雇用保険料率について、
- 給与計算
- 賞与計算
の計算において、いつから反映すべきなのか詳しく解説いたします。今までの計算方法が正しくできているのかぜひご一読ください。
矢野 貴大
TSUMIKI社会保険労務士事務所/代表・社会保険労務士
金融機関・社会保険労務士法人・国内大手コンサルティング会社を経て大阪で社会保険労務士事務所を開業。
25歳で社労士資格を取得した後、社会保険労務士・経営コンサルタントとして延べ200社を超える企業・経営者をサポートする。その経験を活かし「想いを組み立て、より良い社会環境を形づくる」というMISSIONに向かって日々活動中。
結論:2024年4月以降の雇用保険料は据え置き
2024年4月(令和6年4月1日)から2025年3月(令和7年3月31日まで)の雇用保険料率は、前年と同率のため変更はありません。
2024年4月から一年間の雇用保険料率は変わりませんので、給与計算上設定変更は必要なさそうですね!
【2023年4月】雇用保険料率が引き上げ!会社経営者・人事労務担当者必見
従業員が雇用保険に加入している場合、毎月給与計算時に雇用保険料を控除する必要があります。雇用保険料の計算元になる雇用保険料率は定期的に見直しが行われており、2023年4月から新しい料率になっています。
会社経営者や人事労務担当者の方は、給与や賞与を計算するにあたって注意しなければいけません。引き上げ後の雇用保険料率で正しく計算しないと、納付すべき保険料に過不足が生じてしまう可能性がありますので、新しい保険料がいくらなのか、どのタイミングで反映すべきなのか確認をしておきましょう。
2023年4月から適用される雇用保険料率
2023年4月1日から、2024年3月31日まで従業員および事業主の負担が
- 一般の事業:6/1,000(=0.006%)
- 農林水産、清酒製造の事業:7/1,000(=0.007%)
- 建設の事業:7/1,000(=0.007%)
と変更されます。事業主負担の内訳や、2022年10月から2023年3月までの保険料については、下記表でご確認ください。
2023年4月以前の雇用保険料率(直近分)については、それぞれクリックでご覧いただけます。
参考:令和3年度の雇用保険料率
参考:令和4年度(4月1日〜9月30日)の雇用保険料率
参考:令和4年度(10月1日〜令和5年3月31日)の雇用保険料率
2023年4月からなぜ雇用保険料率が引き上げに?
2023年4月から雇用保険料が再び引き上げられる背景は、結論「雇用保険の財源確保」です。
雇用保険料は、
といった支援を行うための財源として、従業員・会社の双方に負担を求めているものです。
元々雇用保険料率は引き下げられる方向性でしたが、新型コロナウィルス感染症の影響で「雇用調整助成金」により多くの企業が助成を受け、雇用保険の財源が厳しいものになったため、引き上げる方向性にシフトしたとされています。
実際、雇用保険料が引き上げになると、従業員・会社ともに収める保険料が増えることになりますので、保険料引き上げについては避けるべきという意見もあったようですが、雇用に関するセーフティネットを維持するためにも、2023年4月からも新しい保険料になっています。
雇用調整助成金の支給決定額が6兆円を超えたというニュースは非常にインパクトがありました。確かに雇用保険制度の財源がなくなってしまうのも頷けます。
新しい雇用保険料率を給与・賞与計算に反映するタイミング【行政確認済み】
2023年から適用される新しい雇用保険料率は、給与・賞与で反映するタイミングが若干ことなる場合がありますので、具体的に解説いたします。また、今回の記事を執筆するにあたり労働局に問い合わせて確認をしておりますので、ご安心ください。
前提として「雇用保険料=賃金総額×雇用保険料率」で算出されます。この賃金総額の考え方については「労働保険対象賃金の範囲」をぜひご確認ください。
給与計算へ反映するタイミングは?
給与計算へ新しい雇用保険料が適用される時期ですが、給与計算の締め日が基準になり、「2023年4月1日」以降に締めて計算される給与から雇用保険料率を「6/1,000(もしくは7/1,000)」に変更しなければいけません。
一般の事業会社において、
- 20日締め・当月末日払い
- 月末締め・翌月25日払い
上記の2つの締め日・支払い日をもとに、タイミングについて確認していきましょう。
20日締め・当月末日払いの雇用保険料変更のタイミング
締め日 | 支払日 | 雇用保険料率 |
---|---|---|
3月20日 | 3月31日 | 5/1000 |
4月20日 | 4月30日 | 6/1000 |
月末締め・翌月25日払い雇用保険料変更のタイミング
締め日 | 支払日 | 雇用保険料率 |
---|---|---|
3月31日 | 4月25日 | 5/1000 |
4月30日 | 5月25日 | 6/1000 |
上記のように、給与計算の締め日によって雇用保険料率の適用時期が異なりますので注意が必要です。給与計算の締め日・支払日の考え方は下記コラム記事で詳しく解説していますので、併せてご一読ください。
賞与計算へ反映するタイミングは?
一方で、賞与計算の場合は「賞与の金額が確定した日」によって、適用すべき雇用保険料率が異なります。
この賞与金額の確定日とは、いわゆる「賞与の計算対象期間」と「賞与の確定日」が関連しています。
例えば、2023年4月30日に支払う賞与であっても、新旧保険料のどちらが適用されるのか、賞与の金額が確定した日によって雇用保険料率が違いますので、注意をしましょう。
5/1,000の保険料で計算するケース | 6/1,000の保険料で計算するケース |
---|---|
計算対象期間:2022年10月1日〜2023年3月31日 賞与金額の確定日:3月31日 | 計算対象期間:2022年10月1日〜2023年3月31日 賞与金額の確定日:4月1日 |
労働局に問い合わせて確認したところ、賞与金額の決定時期は会社によって異なり、実務上曖昧になる場合があるそうです。この場合「計算確定日が証明できるのかどうか」がポイントになると教えていただきましたので、ご参考ください。
まとめ・雇用保険料率に注視しながら給与計算を
雇用保険料率は、各給付・助成金の活用状況や雇用保険の財源をもとに、見直しが行われています。2023年4月から、従業員負担も増加することになり、給与計算のチェックが煩雑になっていると思います。
今後も雇用保険料率の動向として、
- さらに引き上げられる可能性
- 新型コロナウイルス感染症をはじめ引き続き失業保険や助成金の利用が活発化する可能性がある。
- 経済の成長が鈍化し、雇用情勢が悪化する可能性がある。
- 引き下げられる可能性
- 企業の負担増が経営に影響を与える可能性がある。
- 国民の負担感を軽減する必要がある。
どちらになってもおかしくありません。とはいえ雇用保険料率が変更となる場合は予めアナウンスがありますので注視しておきましょう。
雇用保険料率を正しく把握して、給与・賞与を適切に計算しましょう
雇用保険料は、従業員の賃金に雇用保険料率を乗じて計算します。毎月必要な作業であり、雇用保険料率が間違っていると、過払いまたは不足払いが発生してしまいます。
過払いの場合は、会社が払い過ぎた保険料を返金しなければなりません。不足払いの場合は、従業員の同意の元で不足分を控除するか、会社側が負担することになります。
そのため、会社経営者や人事労務担当者は、給与計算や賞与計算を行う際に、
- 最新の雇用保険料率を把握する
- 雇用保険料の計算式を理解する
- 給与計算や賞与計算のシステムやソフトを利用する場合、雇用保険料率の自動更新機能があるかどうか確認する
こういった取り組みが大切になります。
とはいえ、「給与計算のミスを防ぎたい」「アウトソーシングを検討しているが、具体的なメリットや選び方が知りたい」といったお悩みを抱える経営者の方もおられると思います。
TSUMIKI社会保険労務士事務所では、給与計算のアウトソーシングも対応しておりますので、まずはお気軽にご相談ください。