顧問社労士を変更・お探しの方は100社以上のサポート実績を持つTSUMIKI社会保険労務士事務所へ

労働基準監督署の指導や是正勧告を無視するとどうなる?呼び出しに応じない場合は?

労働基準監督 指導 是正勧告 呼び出し 無視
本記事ではこのようなお悩みを解決いたします
  • 労働基準監督署から是正勧告を受けたが、対応をしないリスクを知りたい
  • 労働基準監督署の呼び出しに応じる必要があるのか気になる

経営者・人事労務担当者の方であれば労働基準監督署の名前は聞いたことがあるのではないでしょうか。一般的には、

  • 就業規則
  • 36協定(時間外・休日労働に関する届出)

上記のように、労働基準監督への届け出義務のある書類を作成したタイミングで関わることになりますが、それ以外の場合に労働基準監督とやり取りをするケースは少ないと思います。

一方で、労働基準監督は企業が労働関係法令の理解を深め、労働条件や安全衛生の基準を適切に守れるように立ち入り調査を実施しています。そのため「労働基準監督から呼び出しを受けた」という経営者の方もおられると思います。

今回は「労働基準監督署の指導や是正勧告を無視するとどうなる?呼び出しに応じない場合は?」と題して、労働基準監督とのやり取りを無視するリスクや対応方法を解説いたします。

執筆者プロフィール

矢野 貴大

TSUMIKI社会保険労務士事務所/代表・社会保険労務士

金融機関・社会保険労務士法人・国内大手コンサルティング会社を経て大阪で社会保険労務士事務所を開業。

25歳で社労士資格を取得した後、社会保険労務士・経営コンサルタントとして延べ200社を超える企業・経営者をサポートする。その経験を活かし「想いを組み立て、より良い社会環境を形づくる」というMISSIONに向かって日々活動中。

このページの概要

労働基準監督署とは?

そもそも労働基準監督署とは

  • 労働基準法
  • 労働安全衛生法
  • 最低賃金法
  • じん肺法
  • 家内労働法
  • 賃金の支払の確保等に関する法律

上記をはじめとする労働に関する法令を専門とし、厚生労働省の出先機関として企業が労務管理を適切にしているのか監督指導を行う役割を持っています。書類の確認やヒアリング調査をするために企業にアポイントを取る場合もあり、突然連絡が来るということもあります。

連絡がくる可能性のある労働基準監督署はどこにある?

労働基準監督署の運営状況を公表している「令和2年労働基準監督年報」によると、現在労働基準監督は全国で321署設置されています。

「都道府県ごとに一つではないのか?」と思う方もおられるかもしれませんが、日本全国を網羅的に対応するため一定の担当エリアが割り振られており、都道府県の主要とする市区町村ごとに置かれているのです。

企業の住所によって所轄の労働基準監督署は異なりますので、自社を担当する監督署がどこになるのか予め確認しておきましょう。

労働基準監督署から呼び出し・指導・是正勧告を受けるシーンとは?

では、労働基準監督から、呼び出し、指導や是正勧告を受けるシーンについて具体的に確認してみましょう。主に

  • 労働関係法令への違反がないか調査をする場合
  • 労働関係法令への違反が見受けられた場合

上記のように、企業の労務管理の状況に応じて労働基準監督とやり取りが発生することになります。労働関係法令が遵守できていると全く問題はないのですが、少しでも不安がある経営者の方は注意しておきましょう。

主に労働関係法令への違反がないのか調査を目的とした「呼び出し」

企業の労務管理に労働関係法令の違反がないのか確認・調査をするために労働基準監督から連絡が来たり、突然事業所へ訪問されることがあります。

労働基準監督の調査にはいくつか種類があり、呼び出し・訪問については「定期調査」や「申告調査」の場合が多いと考えられます。

定期調査とは?申告調査とは?
最も一般的な調査

毎年定める監督計画に基づき、その対象企業・対象業種に対して労働諸法令全般を確認予告なしで事業所に調査に行くこともあるが、事前に調査日程の連絡を送ることが多い
労働者から申告・告発があった場合に実施

労働基準法違反等が疑われる場合、申告内容を確認するための調査

申告調査の中でも労働者保護のため「労働者からの申告を明らかにしないケース」と「労働者からの申告であると明らかにするケース」がある
定期調査と申告調査の違い

その他企業内で労働災害が発生してしまうと「災害調査」が実施されます。これは一定以上の規模で労働災害があった場合で、発生原因・再発防止の目的としています。

調査を実施した後に指導・是正勧告が行われる

前述しました「定期調査」や「申告調査」において、労働関係法令への違反行為の有無に対して指導・是正勧告が行われることになります。

指導・是正勧告はどう違う?
  • 指導:現時点で違反状態ではないが、改善をしていくべきと判断された場合
  • 是正勧告:違反状態があり、直ちに改善する必要があると判断された場合

上記のように「現時点で違反な状態なのか?」というのが一つ基準にはなりますが、指導・是正勧告のどちらであったとしても、指摘された事項についてどのように対応するのか、もしくは改善をしたのか労働基準監督に報告しなければなりません。

労働基準監督署の呼び出し・指導・是正勧告を無視するリスク

従業員の方が働きやすい環境を整備していかなければ、経営の安定化・成長は難しいと考えておりますが、「日々忙しく、対応を忘れてしまった」という経営者の方もおられるかもしれません。

労働基準監督からの呼び出し連絡や、指導・是正勧告を無視するとどうなるのでしょうか?法的観点やリスクについて確認しておきましょう。

労働基準監督署の調査は法律上断ってはいけない

労働基準法では、労働基準監督署の臨検について拒否をした場合は30万円以下の罰金に処するとされています。

第百二十条 次の各号のいずれかに該当する者は、三十万円以下の罰金に処する。

四 第百一条(第百条第三項において準用する場合を含む。)の規定による労働基準監督官又は女性主管局長若しくはその指定する所属官吏の臨検を拒み、妨げ、若しくは忌避し、その尋問に対して陳述をせず、若しくは虚偽の陳述をし、帳簿書類の提出をせず、又は虚偽の記載をした帳簿書類の提出をした者

引用元:e-gov「労働基準法120条4号」

そのため、調査に応じないこと自体が違反行為に該当してしまいます。

また、調査の連絡に従わない場合「法令違反をしているのではないか?」とよりマイナスな方向に判断される可能性があります。最終的には強制調査をされることも考えられますので、連絡を無視せずに真摯に応じましょう。

ただし、労働基準監督の調査を企業だけで対応することはかなり大変ですので、調査の連絡を受けたらすぐに社会保険労務士に相談し、準備を進めることをオススメいたします。下記のコラム記事にて、社労士に依頼するメリットや選び方について解説しておりますのでご参考にしてください。

指導や是正勧告はどのような意味がある?法的な拘束力は?

結論、指導票と是正勧告書への対応や拘束力は次のようになります。

スクロールできます
指導標是正勧告書
交付の目的法令違反ではないが
改善の必要があると判断された場合
法令違反があった場合
法的な拘束力なしなし
対応しない場合再監督・再調査の可能性がある再監督・再調査に加えて
悪質な場合は書類送検

労働基準監督の調査後に、場合に応じて「指導」および「是正勧告」が実施されるとお伝えしましたが、正確には「指導標」と「是正勧告書」という書面を用いる行政指導として行われます。

行政指導なため法的には拘束力はありませんが、労務管理状況に問題があるために交付されますので、しっかりと対応されることをオススメいたします。また、悪質な場合には「再監督・再調査」が実施されたり、書類送検のリスクがあることは念頭に置いておきましょう。

是正勧告を受けて放置・その後に書類送検された事例
  • 違反内容:最低賃金法への違反
    • 最低賃金を下回る賃金を支払っていた最低賃金法違反容疑で、貸しおしぼり業者と同社の取締役を東京地方検察庁に書類送検
  • 事件の概要
    • 東京都最低賃金以上の賃金を支払っていなかった
    • 最低賃金不足額は総額で約79万円であり、不足賃金を支払うよう行政指導を行っていたが、この行政指導に応じなかったため、書類送検に踏み切った

参考:東京労働局「送検事例」より

まとめ:労働基準監督署の対応は社会保険労務士に依頼しよう

労働基準監督からの呼び出しによる調査や、その後に交付される指導・是正勧告への対応は、経営者からすると大変な負担になりえます。しかし、積極的に応じなければ相応のリスクにも繋がりますし、従業員が安心して働く環境の整備ができません。

労働基準監督から連絡を受けた場合や、指摘事項に対する改善方法に少しでも不安がある方は、社会保険労務士に相談や依頼をして進めていきましょう。

このページの概要