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労務管理でよくある相談とは?事例を解説【社労士に寄せられる労務相談とは?】

労務相談 社会保険労務士
本記事ではこのようなお悩みを解決いたします
  • 労務管理をする上で気をつけておくべきことを知りたい
  • 他社が労務管理でどのような課題を抱えているのか気になる
  • 今後労務管理を見直すために、よくある問題や悩みのポイントを確認したい

従業員を雇用すると

  • 労働・社会保険への加入手続き
  • 毎月の給与計算業務(残業代の計算・保険料や税金の計算)
  • 健康で働けるように安全衛生の管理

このように、従業員が安心して働ける環境を整えるために労務管理をする必要があります。このような労務管理をする上で、

  • 労働基準法
  • 労働契約法
  • 健康保険法
  • 厚生年金保険法
  • 所得税法
  • 地方税法

こういった法律を理解しなければ、労務管理を円滑かつ安心に進めることはできません。このようなときに、社外の専門家として社会保険労務士と顧問契約を結び、サポートをするケースがあります。

今回の記事では、「労務管理上よくある相談事例」を元に、労務相談をすべきタイミングを8つに分類して解説いたします。他社が労務管理をする上でどういった悩みを抱えているのか記載しておりますので、ぜひご一読ください。

執筆者プロフィール

矢野 貴大

TSUMIKI社会保険労務士事務所/代表・社会保険労務士

金融機関・社会保険労務士法人・国内大手コンサルティング会社を経て大阪で社会保険労務士事務所を開業。

25歳で社労士資格を取得した後、社会保険労務士・経営コンサルタントとして延べ200社を超える企業・経営者をサポートする。その経験を活かし「想いを組み立て、より良い社会環境を形づくる」というMISSIONに向かって日々活動中。

このページの概要

労務管理でよくある相談とは?

労務相談は「何かトラブルがあってから」いただくことが多くあります。

トラブルは起こらない環境作りをしておくことで、余計な悩みは減りますので、今は問題がなくとも「自社だったらどうだろうか?」の視点で参考にしていただけますと幸いです。

今回ご紹介する8つのタイミングは、下記となっております。

労務相談が発生する8つのタイミング
  1. 面接・採用時に発生する相談
  2. 退職・解雇時に発生する相談
  3. 賃金・残業代に関する相談
  4. 労働時間・休憩・有給休暇に関する相談
  5. ハラスメントに関する相談
  6. 福利厚生・その他待遇に関する相談
  7. 労働保険・社会保険に関する相談
  8. 就業規則・その他人事労務に関する相談

また、質問内容をクリックいただけると当事務所による参考回答が見えますので、併せて参考にしてください。

相談事例をクリックしてください

参考となる回答内容が表示されます

面接・採用時に発生する相談

1つ目に確認しておきたいのは「面接」や「採用」時のよくある注意点です。

「労務管理は従業員を雇用した後に行うものではないのですか?」と考えられる方もいらっしゃるかもしれませんが、実は従業員を雇用する前にもトラブルは発生します。特に面接ではうっかり発言したことが実は法令違反につながることもありますのでチェックしておきましょう。

面接に関する具体的な事例

採用面接で、何気なく質問をしたつもりが応募者から「それは面接で聞いてはいけないのではないでしょうか?」と言われました。
面接で聞いてはいけないことは法律で決まっているのでしょうか?

採用活動をする際に「どのような人材を採用するのか」会社が自由に決めることはできます。そのため、求職者との面接では採用の可否を決めるために様々な質問をしますが、実は法律違反になりかねない質問もありますので、注意が必要です。

例えば、求職者の緊張をほぐすために「◯◯さんは大阪府出身なのですね。どういった生活環境で育ったのですか?」という何気ない質問であっても、面接では聞いてはいけないこととされているのです。

厚生労働省から、「就職差別につながるおそれがある 14事項」として注意すべき内容が挙げられておりますので、採用活動をする際は必ず確認しておくことをおすすめいたします。

採用活動は従業員の雇用をするための手段であり、会社に合流し活躍してもらうことが目的です。手段から間違えてしまわぬようにしましょう。

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本人に責任のない事項の把握本来自由であるべき事項の把握採用選考の方法
本籍・出生地に関するこ
家族に関すること

住宅状況に関すること

生活環境・家庭環境などに関すること
宗教に関すること
支持政党に関することの把握
人生観・生活信条などに関すること
尊敬する人物に関すること
思想に関すること
労働組合、学生運動などの社会運動に関すること
購読新聞・雑誌・愛読書などに関すること
身元調査などの実施
本人の適性・能力に関係ない事項を含んだ応募書類の使用
合理的・客観的に必要性が認められない採用選考時の健康診断の実施
参考:厚生労働省「事業主・採用選考担当者・求職者のみなさまへ

採用に関する具体的な事例

採用したばかりの女性従業員が、産前産後休暇に入る可能性があります。
リモート面接をしていたため、妊娠していることに気が付かず、入社初日の出社日で発覚しました。試用期間中なのですが、どうすればいいのでしょうか?

試用期間であっても、産前産後休業の申請があった場合は休ませる必要があります。産休制度自体、母体の健康管理のために必要不可欠なものであり「働いているすべての女性」に認められる権利ですので、ご理解ください。

とはいえ、「産前」「産後」で対応方法がことなりますのでそれぞれ確認しておきましょう。

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産前休業請求があった場合にのみ取得させる必要がある

出産予定日の6週間前から取得可能(多胎児妊娠の場合は14週間前)
産後休業請求の有無問わず必ず取得させる必要がある
出産後8週間取得できる
出産後6週間経過後は女性の請求によって、医師が支障がないと認めた業務にのみ就労可能

退職・解雇時に発生する相談

会社と従業員の間に発生する労務トラブルで多いケースは「退職」や「解雇」のタイミングです。お互いに円満な退職であれば問題はないのですが、不満があって退職をする場合、会社と揉めてしまうことは少なく有りません。

また、解雇については従業員からすると「給与=生活に欠かせないお金が急に無くなってしまう」ことは死活問題なため、

不当解雇ではないのか?として労働基準監督署や弁護士に相談された結果大きなトラブルに繋がることもあります。

労使間でトラブルの種をできるだけ減らすためにも、「退職・解雇」周りの労務管理は慎重に行っていきましょう。

退職に関する具体的な事例

従業員の退職の申し出について、「退職日から3ヶ月前」という期間設定をすることは問題ないのでしょうか?
最近「来月退職するので、それまで有給休暇を取得します」と業務の引き継ぎをせずに退職する従業員がいて、困っています。

退職日より3ヶ月前に、退職願を提出する」というルールを設けることは可能です。ただし、従業員に義務付けることはできませんので、あくまでも「お願い」という形で周知しましょう。

従業員からの退職申入れがあった場合、民法627条にて「申入れから2週間を経過することによって雇用契約が終了する」と定められているため、3ヶ月以内の退職願いを断ると労働基準法違反に問われてしまう可能性が高く、トラブルになってしまいます。

そのため「他の従業員に迷惑を掛けないためにも、できるだけ早く・引き継ぎ期間に余裕を持たせるために3ヶ月前の申入れをお願いします」という規定にし、従業員に理解してもらうようにしましょう。

解雇に関する具体的な事例

部長が部下に向かって「明日から来なくていい」と伝えたことで、部下は解雇をされたと思ったようです。
会社としては一時的なトラブルであり、解雇をするつもりはありません。どのように従業員を説得すればいいのでしょうか?

人事に関する権限を部長が持っているのかどうか?が一つのポイントになると考えられますが、本来部長の一存で部下を解雇する権限はないケースが多いです。

そのため会社としての「解雇の意思表示」はされていないと考えられますので、改めて部長・部下を含めて和解するようにしましょう。なお、「解雇の意思表示」があったとしても過去の通達では「自由な判断によって同意を与えた場合」は取り消すことができるとされています。

労働者が具体的事情の下に自由な判断によって同意を与えた場合には、取消すことができるものと解すべきである。

(昭和25.39.22 基収第2824号、昭和33.2.13 基準発第90号)

賃金・残業代に関する相談

賃金や残業代を巡るトラブルは、一歩間違えれば大きな経営リスクになりますので注意が必要です。また従業員の生活に直結しますので、慎重に進めなければ会社も従業員も不幸になりえます。

賃金や残業代の管理に少しでも不安がある場合は、専門家を頼ることをおすすめいたします。残業代の計算は特に間違えやすい領域でもありますので「事前にご相談をいただければトラブルが大きくなることはなかった」ということもありますので、悩む前にご相談しましょう。

賃金に関する具体的な事例

20歳のアルバイトを採用したのですが、「給与はPayPay経由で振り込んでもらうことは可能か?」と質問がありました。銀行振り込みよりも手間が少ないため前向きに考えたいのですが、法律的に大丈夫なのでしょうか?

結論、今はできません。給与の支払いをする上で

  • 通貨払いの原則:必ず現金で、使える通貨(日本円)で支払う必要がある
  • 直接払いの原則:従業員本人に支払う必要がある
  • 全額払いの原則
  • 毎月1回以上払いの原則
  • 一定期日払いの原則

この5つの原則を必ず確認しておく必要があり、この中でご相談事例に関係するのは「通貨払いの原則」です。労働基準法上においてPayPayは「通貨」と定義がされていないため、法律的に問題が生じるわけです。

しかしながら、デジタル給与については2023年以降に解禁される可能性がありますので、その結果「給与をPayPay経由で支払う」ことが問題ない未来も遠くないかもしれません。

ちなみに、一般的にされている「銀行振り込み」は従業員の同意があれば認められているだけなので、併せて確認しておきたいですね。

残業代に関する具体的な事例

遅刻をした従業員にも、残業代を支給する必要はありますか?
弊社の所定労働時間は10時から19時なのですが、先月12時に出社し21時まで働いていた従業員がいます。休憩込みで1日8時間のため、遅刻による控除はしない代わりに残業代も支払っていなかったのですが、「残業したのだから、残業代が出ないのはおかしい」と申し出がありました。

注意する必要があるのは、会社の規定(就業規則・賃金規程)がどのようになっているのか、です。

労働基準法の観点では1日8時間・1週40時間を超えて労働があった場合に法定の割増賃金が発生することになりますので今回のご相談事例では「残業代は不要」なのですが

会社の規定で「19時以降の勤務時間については、25%増の割増賃金を支給する」のように定めがされている場合は、規定の内容が優先されてしまうので19時から21時の労働時間に残業代を支払う義務が生じてしまいます。

そのため自社の規定を確認しておきましょう。もし支払う必要がある規定になっている場合、遅刻せずに真面目に働いている従業員と不公平な取り扱いになりますので早急に就業規則・賃金規程の修正をおすすめいたします。

労働時間・休憩・有給休暇に関する相談

労働時間や休暇、有給休暇については従業員からすると日々の生活や健康に影響がありますので、労務管理上重要な観点となります。

労働時間は法律で定められた1日8時間・1週40時間が基本とされており、この時間内で収まっているとトラブルになることは少ないですが、「生活のために必要のない残業をしている従業員がいる」「納期が迫っているため残業の指示をしたが、予定があるといって断られた」など従業員と揉めるケースがあります。

有給休暇についても「従業員の権利は理解しているが、業務が忙しいときに申請されては他の従業員の負担にもなるため困っている」という労務相談もよくお聞きします。

このように、労働時間や有給休暇は仕事とプライベートに関係する領域であるため、些細なことからトラブルになりやすいの気をつけておきましょう。

労働時間に関する具体的な事例

弊社は残業をする際に所属長の承認制度としています。残業の申請が面倒なのか「自己研鑽で残っています。残業をしているわけではないので、残業代もいりません」という従業員がいます。
実態としては残業をしているようなのですが、会社として管理をする必要はありますか?

労働時間や残業について自己申告制度を採用していた場合、

  • タイムカードで退勤打刻をした後に引き続き仕事をしている
  • 実態よりも過小に残業時間を申告している

といった問題はよく発生します。例え従業員が「残業ではないので、残業代はいりません」となっていても、「仕事をしていることを黙認している」と判断されてしまうと、労働基準監督署の調査を受けた際に未払い残業の旨を指摘される可能性があります。

また、健康管理の問題から従業員の労働時間は可能な限り適切に把握する必要がありますので、

  • 会社の許可なく、就業時間後に会社に残ることを禁止する
  • 会社内において、会社の許可なく業務と関係ない活動を禁止する
  • 勤務時間に関する手続きや申請を怠り、又は偽ることを禁止する

こういったルールを設け、会社としても「業務時間」と「業務時間外」の線引を明確にするように管理することに努めましょう。

※厚生労働省「労働時間の認定に係る質疑応答・参考事例集の活用について」を参考に作成

休憩に関する具体的な事例

お昼の休憩時間以外でも、喫煙のため5分程度持ち場を離れる従業員がいます。当社としては、喫煙自体は従業員同士のコミュニケーションに繋がると考えているため、容認していますが、喫煙をしない従業員から「タバコを吸わない人からすると、サボっているのと同じにしか見えない」と不満の声が上がっており困っています。

本来は「職務専念義務」がありますので、定められた休憩時間以外に持ち場を離れるなどして他の従業員の業務に支障をきたすことは禁止する、などのルール化が望ましいですが、会社として多少の喫煙を容認する場合には、不平等感につながります。

このようなケースでのご提案として

お昼の休憩時間とは別に、15分程度の休憩時間を導入する」ことはいかがでしょうか?

  • 所定労働時間を15分短くすること(休憩時間が増えただけだと、会社に拘束される時間が15分余計に増えたことになるため)
  • 給与の発生する時間として扱うが、従業員は自由に使えるようにすること(喫煙、昼寝、スマホのゲーム等)
  • この時間以外は「タバコ休憩」は不可とすること(行った場合は、回数に応じて懲戒処分の対象とする等)

この上記3点を注意しながら制度化することで、不平・不満の声は減らせると考えています。

有給休暇に関する具体的な事例

会社として重要なイベントの日に有給休暇の申請がありました。断ることはできるのでしょうか?

まず前提として、有給休暇の申請を断ることはできないことを知っておきましょう。

しかしながら、有給休暇の申請があった日に「出社してもらわなければ、損害が発生する」ような場合にのみ「有給休暇の申請日を別の日に代えることができる(時季変更権)」があります。そのため、今回のご相談である

会社として重要なイベントが、

  • 該当の従業員がいないと成り立たないのか
  • 他の従業員では代替できないのか

こういった観点を考える必要があり、基本的に有給休暇の申請を断ることは難しいと考えられます。

ハラスメントに関する相談

ハラスメントは、会社にとっても重要な問題になっています。例えば令和3年度における民事上の個別労働紛争の相談件数※として、年間延べ352,914件寄せられている中で「いじめ・嫌がらせ」に関する相談件数が86,034件(24.4%)と最多の相談件数※となっています。

非常に多くの相談が発生していることから、どの会社にも潜在的にリスクがある可能性がありますので、ハラスメントについては会社として対応方針を決めておきましょう。

※厚生労働省「「令和3年度個別労働紛争解決制度の施行状況」を公表します」より参照

パワーハラスメントに関する具体的な事例

パワハラ防止のために企業が実施すべきことは何でしょうか?
法律が代わり、パワハラ防止対策が義務化と聞きました。

2022年4月より、中小企業・大企業問わずパワーハラスメント防止措置が全企業に義務化されています。

対応すべき内容は大きく4つ※ありまして

  1. 事業主の方針等の明確化および周知・啓発
    • 職場におけるパワハラの内容・パワハラを行ってはならない旨の方針を明確化し、労働者に周知・啓発すること
    • 行為者について、厳正に対処する旨の方針・対処の内容を就業規則等の文書に規定し、労働者に周知・啓発すること
  2. 相談に応じ、適切に対応するために必要な体制の整備
    • 相談窓口をあらかじめ定め、労働者に周知すること
    • 相談窓口担当者が、相談内容や状況に応じ、適切に対応できるようにすること
  3. 職場におけるパワーハラスメントに係る事後の迅速かつ適切な対応
    • 事実関係を迅速かつ正確に確認すること
    • 速やかに被害者に対する配慮のための措置を適正に行うこと
    • 事実関係の確認後、行為者に対する措置を適正に行うこと
    • 再発防止に向けた措置を講ずること
  4. 上記3つに併せて講ずべき措置
    • 相談者・行為者等のプライバシーを保護するために必要な措置を講じ、その旨労働者に周知すること
    • 相談したこと等を理由として、解雇その他不利益取扱いをされない旨を定め、労働者に周知・啓発すること

上記が義務化となっています。

基本的に多くの企業では

  • 就業規則・ハラスメント規程の見直し
  • ハラスメントの相談窓口の設置
  • ハラスメント防止のための社内研修

が急務になっていますので、ご注意ください。

※厚生労働省「職場におけるパワーハラスメント対策が事業主の義務になりました!」より参照

セクシュアルハラスメントに関する具体的な事例

社内でセクハラがあったと会社の通報窓口に報告がありました。慎重に調査を行ったのですが、セクハラの事実が確認できませんでしたがこの場合はどうすればいいのでしょうか?

通報を行った従業員や、セクハラを受けたと感じている従業員に対して、調査内容の報告が必要です。

どういった調査を行ったのか、その結果をどう判断したのか、報告をしなければ従業員からすると「会社が隠蔽しているのではないか?」と不信感を抱いてしまう可能性があります。

また、今回の調査でセクハラの事実が確認できなかっただけで、実際に社内でハラスメントが発生していないとは言えません。

いつ、誰が、どのようなハラスメントを行っているのかわかりませんので、社内での管理体制を強化しておきましょう。

福利厚生・その他待遇に関する相談

従業員が働きやすい環境を整備する際に「福利厚生」や「従業員の待遇の見直し」は必要不可欠です。どのような制度を導入すべきか、会社の方針や実態に応じて検討しましょう。

また「求職活動では福利厚生が充実しているのか確認している」方も多いため、優秀な人材を確保するという観点でも見直すことは大切です。

福利厚生に関する具体的な事例

離職率を下げるために、従業員に喜ばれる福利厚生制度を考えています。何かおすすめの制度はありますか?

おすすめの福利厚生の制度として

  • 健康診断時のオプションで人間ドックの受診費用補助
  • 住宅・家賃補助
  • 特別休暇制度(リフレッシュ休暇・バースデー休暇・アニバーサリー休暇等)

の3つはいかがでしょうか。

独立行政法人 労働政策研究・研修機構が実施した「企業における福利厚生施策の実態に関する調査」によると

従業員に対し、勤務先での制度・施策の「ある」「ない」にかかわらず、自分にとって「特に必要性が高いと思うもの」という質問に対して、「人間ドック受診の補助」(21.8%)、「家賃補助や住宅手当の支給」(18.7%)、「リフレッシュ休暇制度」(16.1%)という結果であり、ニーズが高いことがわかります。

また、福利厚生制度を導入する場合では

  • 費用について会社がどの程度負担できるのか
  • 管理や見直しは誰が担当するのか

しっかりと決めた上で進める必要がありますが、先程の3つの制度は比較的導入がしやすい分野になります。

せっかく福利厚生制度を導入しても、この辺りが曖昧になっていると従業員も利用がしにくく、制度が形骸化してしまう恐れがありますので注意をしておきましょう。

その他待遇に関する具体的な事例

同一労働同一賃金について、どういった場合に気をつけるべきか教えてください。

正社員(正規雇用労働者)と契約社員やパート(非正規雇用労働者)の間に、待遇や福利厚生の格差がある場合、見直すことをおすすめします。格差自体が

  • 能力や成果に応じた違い
  • 職種や役職、責任に応じた違い

であれば問題ありませんが、

「正社員には支給するが、パートだから支給しない」といった雇用形態だけが格差の理由になっていると不合理としてトラブルの種になってしまいます。

待遇差が職務の内容・配置の変更の範囲などの違いに応じたものであると説明できる必要がありますので、給与や福利厚生の内容を整理しておきましょう。下記のシートは当事務所で作成した待遇・福利厚生の違いを簡単に比較できる表になりますのでぜひご活用ください。

待遇・福利厚生に関する比較早見シート

もっと詳細に整理する場合は、厚生労働省のHP「不合理な待遇差解消のための点検・検討マニュアル(業界別マニュアル)」に、同一労働同一賃金対策に活用できるワークシートがありますので確認することをおすすめいたします。

労働保険・社会保険に関する相談

労働保険や社会保険は、従業員を雇用する際に必ず知っておくべき制度です。一方で制度は複雑であり、

  • 書類の作成が煩雑
  • 期日管理をしなければいけない
  • どういった要件の場合に適用されるのか専門的な知識が必要

なため、経営者や人事労務担当者の方はよく頭を悩まされております。また、正確に業務ができていない場合、従業員の方の保険料に悪影響を及ぼす可能性があり、トラブルに繋がるケースもありますので注意が必要です。

過去に「従業員の社会保険の加入が漏れており、1年間さかのぼって保険料を支払う必要があると年金事務所に指摘された。会社側のミスのため、従業員の保険料も会社で負担することにした」という事例もありますので、正確に対応しましょう。

労働保険に関する具体的な事例

テレワークをしている従業員から「家の中にあるデスクでずっと仕事をしているせいで、腰を痛めてしまった。会社の指示でテレワークをしているのだから、労災になりますよね?」と言われました。この場合は労災になるのでしょうか?

労災に該当するのかどうか?という点においては

  1. 業務遂行性:仕事中に起こってしまったのか?
  2. 業務起因性:仕事に関係しているのか?

という2つの観点からその症状・事故の発生を考える必要があり、

在宅勤務によりデスクワークの時間が増えた結果、腰痛を患ってしまった場合は労災認定になる可能性がある一方で、「自宅における私的行為が原因であるものは、業務上の災害とはならない※」とされています。

従って、今回のケースではテレワークの場合は判断が難しい部分もありますが業務起因性として「業務時間中にデスクワークをどの程度していたのか?」を把握することが重要になると考えられますので、一度精査することをおすすめします。

加えて厚生労働省は「腰痛の労災認定」という基準を発表しており、該当している場合は可能性が高いといえるでしょう。

※厚生労働省「情報通信機器を活用した在宅勤務の適切な導入及び実施のためのガイドラインの改訂について」より引用

社会保険に関する具体的な事例

2022年10月から、一部のパートやアルバイトは社会保険に加入する必要があるとお聞きしました。
どういった要件の場合、加入させる必要があるのでしょうか?

2022年10月からは、従業員数が101名以上の企業においては社会保険の適用拡大の対象となり、次の要件すべてに該当する従業員はパート・アルバイトであっても社会保険の加入が義務付けられました。

  • 週の所定労働時間が20時間以上30時間未満
  • 月額賃金が8.8万円以上
  • 2ヶ月を超える雇用の見込みがある
  • 学生ではない

この適用拡大により「今まで通りの働き方だと、社会保険に加入しなければいけないのでもう少しシフトを減らしてほしい」という要望が増えることが想定されますので、パート・アルバイトの働き方には注意が必要になります。

厚生労働省の特設HPでは、社会保険適用拡大によりどの程度会社の負担が増えるのか試算できる「社会保険料かんたんシミュレーター」が公開されていますので、今後の資金繰りの参考にしておきましょう。

就業規則・その他人事労務に関する相談

昨今、インターネットやSNSの普及により、会社のルールや自身の労働条件に問題がないのか、身近に調べられる時代になりました。

「面接時に何か質問はないか?と聞いたところ、応募者から就業規則を見せてほしいと言われて驚いた」と経営者の方からお聞きしたこともありますが、自身の働く会社のルールがどのようになっているのか、気になる従業員の方も増えております。そのため、就業規則の内容に不備があると不信感につながってしまいます。

就業規則は一度作って終わりではありません。会社の実態に応じて適時アップデートをしていかなければ、適切な労務管理ができませんので注意をしましょう。

就業規則に関する具体的な事例

就業規則は過去にインターネットでダウンロードしたものを利用しています。
最近法律が色々と変わった様子ですが、何か問題はありますか?

企業の実態や、規模・業種によって本来記載されるべき内容は異なりますので、そのまま利用すると経営に悪影響を及ぼす場合があり、法改正の情報ももちろん反映がされていないことが多いです。

インターネットでダウンロードできるものは、いわゆる「ひな形」と呼ばれており、労働者保護に手厚い内容になっていますので、しっかりと自社で対応ができるのか見極める必要があります。

また、労働時間や休日といった働くルールであったり、会社風紀を守るための服務規律の内容が会社の実態にあっていない可能性が高いため、必ず見直しておきましょう。

就業規則を見直す際、当事務所では無料WEB診断を実施しておりますのでご活用ください。

その他人事労務に関する具体的な事例

労務管理を正しく行うコツは何がありますか?

まず、会社が下記のどのフェーズにいるのか把握されてみてはいかがでしょうか。

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フェーズ職場環境1.0職場環境2.0職場環境3.0
状況法令遵守が
できていない
最低限の法令遵守は
できている
適法かつ従業員に有利な
制度運用ができている
確認ポイント未払い賃金の有無
有給休暇の取得率 等
従業員の
離職率
従業員の
エンゲージメント
必要な取り組み法律の理解・遵守衛生要因の向上会社・従業員の相互理解

中小企業では、「職場環境1.0」のフェーズもしくは「職場環境2.0」を目指すフェーズにあることが多いです。そのため、まず行っていただくべきアクションとしては

  • 法律の理解(守るべき指標を知る)
  • 会社の方針と社内ルール(就業規則・労使協定・雇用契約書)の整理
  • 実態をそのまま把握すること(会社都合の方向性で捉えず、実態として受け入れる)

この3つを最低限意識して労務管理を行うべきだと考えております。とはいえ、最初からすべての対応は難しいため、優先順位をつけて取り組みましょう。

労務管理を相談する際に必要なことは?

労務管理上、問題があった場合や不安が生じたときに専門家へ労務相談を行いますが、以前お問い合わせをいただいた方から「何を準備しておけばいいのでしょうか?」とご質問をいただきました。

労務相談自体は、

  • どういったお困り事があるのか?
  • どういった経緯でそのような問題になったのか?
  • 会社としてどう対応していきたいと考えているのか?

など、状況をお聞かせいただきながら、解決方法を考えていきます。その中でも「会社のルール」や「実態証拠」がわかるものとして

  • 就業規則やその他の規程
  • 給与明細書
  • タイムカードや出勤簿
  • その他判断材料になる書類

などをご用意いただけると、よりスムーズな解決につなげることができます。とはいえ、最初から多くの書類を準備することは難しいと思いますので、まずはお気軽に相談してみましょう。

労務トラブルはとてもセンシティブで、対応方法を一歩でも間違えてしまうと、更に別の問題まで発生してしまうことがありますので、少しでも困ったことがありましたら社会保険労務士にご相談されることをご提案いたします。

労務管理で困ったときは

「労務管理」は、労働基準法や労働契約法といった労働に関する法律が関わっているため、業務を行うためには注意すべきポイントがたくさんあります。自社のみで対応することに不安がある場合は専門家に相談することをおすすめいたします。TSUMIKI社会保険労務士事務所では無料相談会を実施しておりますのでお気軽にご相談ください。

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まとめ・労務管理に悩んだときは

今回は「労務管理でよくある相談事例」について、実際に私が社会保険労務士としてご相談いただいた事例を交えつつ、解説さえていただきました。

改めて次の9つのタイミングと各事例については、中小企業・大企業問わずよくお受けするご相談内容となっていますので、自社で同様の不安がないか、似たようなお悩みがないのか参考にしてください。

労務相談が発生する8つのタイミングと事例に基づく労務管理チェックリスト
  1. 面接・採用時
    • 面接時に聞いてはいけないことを聞いていないか?
    • 採用直後であっても産前産後休業は取らせているか?
  2. 退職・解雇時
    • 退職の申入れ日について退職日より3ヶ月前にすることを義務付けていないか?
    • 解雇の基準について理解をしているか?
  3. 賃金・残業代に関して
    • 給与をPayPayなどデジタル払いしていないか?
    • 遅刻をした従業員の残業代について正確に対応できているか?
  4. 労働時間・休憩・有給休暇に関して
    • 退勤後の隠れ残業を禁止しているか?
    • 休憩時間を平等に考えているか?
    • 有給休暇に関する会社の権利を理解しているか?
  5. ハラスメントに関して
    • ハラスメント防止のための取り組みを実施しているか?
    • ハラスメントの通報に対して適切に対応できているか?
  6. 福利厚生・その他待遇に関して
    • 離職率低下に繋がる福利厚生制度の導入を検討しているか?
    • 同一労働同一賃金対策はできているか?
  7. 労働保険・社会保険に関して
    • テレワーク(在宅勤務)時の労災の考え方を知っているか?
    • 社会保険の適用拡大について社内でシミュレーションを行っているか?
  8. 就業規則・その他人事労務に関して
    • 就業規則は会社のルールに沿った内容になっているか?(雛形をそのまま使っていないか?)
    • 労務管理をどのように行うべきか整理しているか?

トラブルの解決をよりスムーズにするためには、トラブルの火種が小さいときから対処することに尽きます。そのため、少しでも不安に感じられる場合は自社で対応することは辞めて、すぐに専門家に頼りましょう。

TSUMIKI社会保険労務士事務所では、経営者や人事労務担当者の方からのご相談対応を積極的に受け付けております。

労務管理を通じてよりよい会社作りにするために、サポートを行っておりますのでお気軽にお問い合わせください。

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