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服務規程は必要?判例や条文例を解説【就業規則・服務規律の違いとは?】

服務規程 就業規則 服務規律
本記事ではこのようなお悩みを解決いたします
  • 服務規律を整えたいが、どのような内容を定めるべきなのか知りたい
  • 最低限の身だしなみは整えてほしいけど、ルールに定めても問題ないのか?
  • 服務規律のトラブル事例を知りたい

服務規程とは、会社で大切にする働き方や遵守すべき事項を「行動規範」として定めた書類になります。

経営者からすると、従業員の方に「無断で遅刻や欠勤せずに真面目に働いてほしい」「同じ職場で働くメンバーと協力して頑張ってもらいたい」このような想いがあるかと思いますが、そこを支えるルールとして服務規律を言語化し、規程と定めることが大切になります。

今回は従業員トラブルの防止・対応時の一つの基準となる服務規程について、事例を含めて解説いたします。

執筆者プロフィール

矢野 貴大

TSUMIKI社会保険労務士事務所/代表・社会保険労務士

金融機関・社会保険労務士法人・国内大手コンサルティング会社を経て大阪で社会保険労務士事務所を開業。

25歳で社労士資格を取得した後、社会保険労務士・経営コンサルタントとして延べ200社を超える企業・経営者をサポートする。その経験を活かし「想いを組み立て、より良い社会環境を形づくる」というMISSIONに向かって日々活動中。

服務規律や就業規則の内容にお悩みがある経営者様へ

人事・労務の悩みは、従業員を雇用している限り常に発生する可能性があります。中小企業であっても、大企業であっても経営に必要な資産は「ヒト」ですので、人事・労務の悩みには向き合っていかなければいけません。

TSUMIKI社会保険労務士事務所では、経営を支えるコンサルタントとして人事労務領域の最適化・効率化につながるサポートをいたします。社会保険労務士をお探しの方はお気軽にお問い合わせください。

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このページの概要

服務規程とは?必要性や法律を確認

会社と従業員の間で

  • 仕事に対する姿勢や取り組み方針
  • 職場での過ごし方や注意事項

上記のような約束事として「服務規律」を作成しなければ、従業員を雇用する中でトラブルが起きやすくなります。服務規程とは、会社で働く際の行動規範・服務規律を整理し、会社のルールブックとして一つにまとめた大切な書類といえますので、必要性をしっかりと確認しておきましょう。

服務規程の必要性

服務規程の作成は法律上作成する義務はありませんが、整備しておくことで

  • 企業秩序を保つ
  • コンプライアンス意識を向上させる
  • トラブル発生時に円滑な対応ができる

主に3つのメリットがありますので、それぞれどのような観点なのか確認してみましょう。

企業秩序を保つ

服務規程で定める内容は働く従業員が守るべき最低限のルールです。

例えば

  • 社内施設の私的利用の禁止
  • 貸与PCの個人利用の制限
  • 遅刻や早退を行う際の諸手続き

こういったルールは社会人の一般常識ではあるものの、ルールを整理・作成しておかなければ問題社員の発生が懸念されます。最低限度の企業秩序を保つためにも、凡事徹底の観点で服務規程の作成は大切といえるでしょう。

コンプライアンス意識を向上させる

服務規程として文章にしておくことで従業員に服務規律の内容の周知・説明が容易になります。

「こういった働き方は禁止されているのであれば注意しなければならない」「守れていない従業員がいると会社に報告しよう」

従業員も会社が求めている働き方が把握できるため、会社に対する信用度が高まるだけでなく、結果として従業員自身のコンプライアンス意識を高めることが可能です。

トラブル発生時に円滑な対応ができる

企業秩序を保つためにはトラブル発生の予防だけでなく、トラブルが起こってしまった後に円滑・適切な対応が求められます。

トラブル内容によりますが、一般的に服務規程等で遵守すべき服務規律・違反時には懲戒処分になることを定めて置かなければ、問題社員に対して懲戒処分ができずに社内秩序が更に悪化する恐れがあります。

懲戒処分の内容についても会社が受けた被害・損失に応じて変動しますが

  • ハラスメントを行う従業員に対して減給の措置を取る
  • 業務時間中にも関わらず、社用PCでインターネットで遊んでいる管理職を降格処分とする

トラブル発生時の然るべき措置も服務規程内に定めておくことで、問題社員の対応が適切に行える点は大きなメリットになります。

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懲戒処分を行うためには一定のルールがあります。後ほど具体的に準備すべき事項を解説いたします。

服務の規律に関する法律

服務規程の作成自体は法律上義務ではありませんが、労働契約において従業員側・会社側ともに一定の責任があります。こういった背景から服務規程を作成しておくことが望ましいのです。

【従業員】職務専念義務

従業員は労働契約上で「職務専念義務」があるとされているため、下記について遵守しなければなりません。

職務専念義務について簡単に解説
  • 趣旨は?
    • 業務時間中は仕事に集中しなければならないこと
  • 具体的にやっていけないことは?
    • 会社に許可なく勤務中に職場を離れてコンビニに行く
    • 在宅勤務のため休憩時間外であってもスマホでゲームや株式取引などを行う
  • 一般的に許容されていることは?
    • 一息つくための数分程度のコーヒーブレイク
    • コミュニケーションを兼ねた同僚との雑談

ただし、会社によって「やってはいけないこと」「許容していること」は様々ありますので、従業員が遵守すべき職務専念義務の内容をより具体的に服務規程で定めておくことが大切です。

【会社側】安全配慮義務

会社側には「安全配慮義務」というものが課せられています。

安全配慮義務について簡単に解説
  • 趣旨は?
    • 従業員が安全・健康に仕事ができる環境づくりが求められること
  • 具体的には?
    • 会社は作業環境や健康管理を行う責任をもつ
    • 近年ではメンタルヘルスやハラスメント対策を講じて従業員の心の病のフォローが必要とされている

作業環境や健康管理については服務規律と直接的な関係性はありませんが、ハラスメント等は従業員が体調を崩し、仕事に支障をきたす可能性があるトラブルです。

服務規程を作成し、

  • ハラスメントにあたる禁止事項
  • ハラスメントを行った従業員に対する懲戒処分の内容

を明文化することが安全配慮義務を遵守する観点で必要不可欠となります。

【会社・従業員】企業秩序遵守

その他、会社・従業員に対して「企業秩序遵守義務」があります。

企業秩序遵守について簡単に解説
  • 趣旨は?
    • 円滑な事業運営のために必要不可欠なもの
  • 具体的には?
    • 会社:事業を円滑に続けていくために、従業員に対して社内秩序の遵守させる義務
    • 従業員:会社が指示する内容に誠実に従わなければならない

つまり、会社側としては「企業秩序を維持させるために、従業員には一定のルールを課すこと」ができます。

従業員の行いにより企業秩序が乱されるだけでなく、社会的評価が毀損される行為についても制限可能なため、服務規程は秩序維持のため重要な書類と言えます。

服務規程と就業規則に違いはある?

服務規程の必要性について解説いたしましたが「社内ルールを整備するのであれば、就業規則を作成することが良いのではないか?」「服務規程と就業規則はどのような違いがあるの?」こういった疑問もあるかと思います。

そのため

  • 服務規程と就業規則がどのような関係にあるのか
  • 服務規程と就業規則のどちらを作成すべきなのか

上記について解説いたします。

服務規程と就業規則の関係とは

結論から申し上げると服務規程も就業規則の一種です。

厚生労働省から就業規則の定義について下記のように解説がされており

「就業規則」とは、労働者が就業上遵守すべき規律及び労働条件に関する具体的細目について定めた規則類の総称

厚生労働省 「労働契約法のあらまし」より

服務規程で定める内容は「就業上遵守すべき規律」そのものになりますので、服務規程は就業規則の一種として考えなければなりません。

服務規程と就業規則はどちらを作成すべきなのか

服務規程が就業規則の一種であることを踏まえると「就業規則とは別に服務規程を作成しても問題ないのか?」という点です。

実は平成11年に実施された法改正前では、就業規則と別規程で作成できるのは

  • 賃金 (退職手当を除く)
  • 退職手当
  • 安全及び衛生
  • 災害補償及び業務外の傷病扶助

上記に関する事項に制限がありましたが、現在は撤廃されているため就業規則の内容を別規程化することは問題ありません

そのため、服務規程も就業規則とは別に作成することは何ら問題はありませんので、

  • 就業規則の中に服務規律を定める
  • 服務規程として就業規則とは切り離し、服務規律を定める

どちらを選ぶのか、会社の方針や状況で判断をしましょう。

中小企業では就業規則内に定めるケースが多い

就業規則の中に服務規律も併せて作成すると、会社も従業員も「就業規則を確認すればルールがわかる」ため、運用がしやすいメリットもあります。

また従業員が少ない会社や、ルールを細分化していない中小企業では、服務規律を定めても1、2ページ程度に収まることが多いため、別規程に切り分けると管理が煩雑になります。

大企業では服務規程を個別に定めるケースもある

一方で、従業員数が多い会社や、多拠点展開をしている大企業の場合、就業規則自体のボリュームが何十ページに渡ることもあります。一つの就業規則にまとめてしまうと

  • 就業規則を確認する際、どの箇所を見ればいいのか分かりにくい
  • 一つの条文を修正するだけでも、大変な手間が発生する

このようなデメリットにもつながってしまいます。服務規程として就業規則とは別に作成しておくと

「トラブルが発生したらか、服務規律を見直したい」場合、規程修正の作業がスムーズに実施可能です。従って、会社の状況によっては別規程化が望ましいケースもあります。

社会保険労務士 矢野貴大

従業員が1000名を超える企業では「就業規則」はシンプルに定め、ルールの詳細は「別規程」として具体的に記載することもあります。作成する規定の数にもよりますが、就業規則を適時見直すのであれば別規程化するメリットは大きいですね。

就業規則・別規程化の判断基準

会社の方針によって「服務規律は就業規則に含める」「別規程として作成する」どちらが最適なのか異なります。判断基準となるポイントを下記にまとめておりますので、ぜひ参考にしてください。

スクロールできます
就業規則に含める別規程として作成する
従業員数中小企業
(500名以下)
大企業
(501名以上)
規程の見直し回数少ない
(数年に1回まとめて実施する)
多い
(毎年定期的に実施する)

服務の規程・規律違反を行う従業員への対応方法

会社で定める服務規律に違反する行為があった場合、その該当する従業員に対して一定の懲戒処分を実施することが可能です。とはいえ、誤った形で懲戒処分を行うと「不当な処分だ」とトラブルを招く恐れがありますので注意が必要です。

服務規律違反の対応では

  1. 服務規程・規律違反の罰則として懲戒処分の対象としておく
  2. 適切な手順で懲戒処分を実施する

上記2つは大切になりますので、確認しておきましょう。また併せて服務規程・規律違反に関する判例もご紹介します。

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万が一裁判になった場合、裁判所がどういった観点で判断しているのか非常に参考になります。

就業規則・服務規程を作成・周知する

懲戒処分を行うためには、予め就業規則や服務規程に

  • どのような行動が懲戒の対象となるか
  • どのような懲戒処分が実施されるのか

上記を定めるだけでなく、従業員に周知しておかなければなりません。

使用者が労働者を懲戒するには、あらかじめ就業規則において懲戒の種別及び事由を定めておくことを要する(最高裁昭和54年10月30日第三小法廷判決〈国労札幌支部事件〉)。そして、就業規則が法的規範としての性質を有する(最高裁昭和43年12月25日大法廷判決〈秋北バス事件〉)ものとして、拘束力を生ずるためには、その内容を適用を受ける事業場の労働者に周知させる手続が採られていることを要するものというべきである。

厚生労働省「就業規則に関する主な裁判例」より

また、懲戒の対象となる事由は具体的に記載しておきましょう。

適切な手順で懲戒処分を実施する

就業規則・服務規程が適切に整備されていたとしても「その規程を守らない問題社員は簡単に解雇できる」わけではありません。一定の順序を踏まなければ「懲戒処分の権利が濫用されている」として懲戒処分自体が無効になる場合があります。

懲戒処分を行う際の手順
  1. 事実確認・意見聴取・処分内容の検討
  2. 弁明の機会を設ける
  3. 処分内容の決定・処分の実施
社会保険労務士 矢野貴大

懲戒処分の懸念がある従業員がいるのであれば、社労士等の専門家に相談されることをオススメいたします。自社だけで対応しようとすると予期せぬトラブルにつながる恐れもあります。

事実確認・意見聴取・処分内容の検討

服務規律に反する問題行為が発覚した場合には「事実確認」と「意見聴取」を行います。問題行為が本当に起こっているのか、それはどの程度の大きさなのか調べることからはじめましょう。

従って、

  • 通報者や被害を受けた従業員といった関係者への事実確認
  • 関係者の周りにいる従業員等への客観的事実の確認
  • 文章・写真・録音データといった物的証拠の収集
  • 問題行為を行ったとされる従業員本人への聞き取り確認

服務違反と見られる行為を慎重に精査し、就業規則・服務規程の内容と照合しながら懲戒処分の重さを判断していきます。

弁明の機会を設ける

懲戒処分の方向性がある程度決まったら、問題行為者である従業員本人に「弁明の機会」を設けることが必要です。弁明の機会としては

  • 直接話しを聞く
  • 書面で提出させる

上記いずれかの方法が一般的ですので、問題行為の内容に応じて柔軟に対応しましょう。

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弁明の機会を設けることが就業規則や服務規程に記載されていない場合、必ずしも行う必要があるとは言えませんが、従業員本人の意見を聞くことは懲戒処分の判断の検討材料になります。弁明の機会はできるだけ設けることが無難です。

処分内容の決定・処分の実施

違反行為の事実確認、従業員本人からの弁明を聴いた後、就業規則に記載してある懲戒処分の内容からどの処分を下すのか決定することになります。このとき、懲戒処分の重さには注意が必要です。

例えば「1か月に2回遅刻をしたから懲戒処分として減給を行う」「業務時間中にも関わらずタバコ休憩を勝手に取っている従業員がいたため、懲戒解雇とした」このような場合、懲戒処分が権利の濫用だとして無効となります。

問題行為をした従業員に責任があるとしても、情状酌量の余地があるのかしっかりと検討すべきです。

懲戒処分の内容が妥当だとして確定した場合は従業員本人に

  • 懲戒処分の対象となる問題行為
  • 懲戒処分の根拠となる就業規則や服務規程の条文
  • 懲戒処分の内容

これらを書面にて通知しましょう。

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懲戒処分自体は口頭で伝えても問題ありませんが、懲戒処分を従業員本人に自覚してもらうことが大切なため、しっかりと書面で通知すべきだと考えています。

服務規程・規律違反の判例紹介

従業員の問題行為に対してどのような懲戒処分が適切なのか、判断に悩むこともあるでしょう。懲戒処分を行う際の判断の基準について、判例をもとに処分の妥当性を確認しておきましょう。

服務規程・規律違反の事例【公務員】

公務員に対する服務規律違反としてトラブルになった事例では「京都市(児童相談所職員)事件(京都地判令元・8・8)」があります。

裁判に至った背景・問題点

【トラブル事由】

児童相談所に勤務していた職員が、児童の記録データを個人情報を外部に持ち出した。停職3日の懲戒処分が行われたが、従業員はこの懲戒処分が無効であると訴えたことで裁判に至った。

【裁判所のポイント】

停職3日の懲戒処分は重いと、下記2点を主な理由として判断した。

  1. 対象行為前後の態度
    • 従業員本人は軽率な行為であったことを素直に認めており、一定の反省の態度を見て取ることができる
  2. 従業員の懲戒処分歴
    1. これまで懲戒処分歴は存在しない
    2. 人事評価においては、いずれの評価項目も良好な評価を得ており、かつ、日頃の勤務態度についても、児童に対して熱心に対応しており、業務面においては特段の問題はないとの評価を得ていた
    3. 京都市児童相談所の職員としての職責を果たすべきとの自らの有する職業倫理に基づいて行ったものであるから、大いに軽率な面があったことを踏まえてもなお、上記の懲戒処分歴や勤務態度といった事情は、酌むべき事情として考慮すべき
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機密情報の持ち出しについても、職責を果たすために起こった行為であるのであれば情状酌量の余地があるべきという考えもできますね。

服務規程・規律違反の事例【銀行】

銀行員に対する服務規律違反としてトラブルになった事例では「みずほ銀行事件(東京高判令3・2・24)」があります。

裁判に至った背景・問題点

【トラブル事由】

銀⾏に勤める従業員が情報を漏洩させた結果、懲戒解雇および退職金が全額不支給となった。従業員は懲戒解雇および退職金全額不支給の処分が無効として裁判に至った。

【裁判所のポイント】

裁判所は下記をポイントとして懲戒解雇および退職金全額不支給が適法だと判断した。

  1. 社内の情報セキュリティ対策
    1. セキュリティ規程において、安全管理措置を講じており、情報資産の持ち出しについて承認手続きを経た場合以外は原則禁止とされていた
  2. 悪質性の高さ
    1. 重要な情報を少なくとも15件の情報を常習的に漏洩したもので企業秩序に対する重⼤な違反⾏為であった
    2. 情報漏洩⾏為によって会社の社会的評価を相応に低下させていたこと

服務規程を作成する際に定めておきたい具体例

服務規程や就業規則では、服務規律をより具体的に定めることが大切になります。また、昨今では働き方は多様化・複雑化していますので常に見直すことが求められます。

今回は、最低限整備しておくべき条文例を紹介いたしますので、服務規程の作成・見直し時のポイントとしてご活用ください。

社会保険労務士 矢野貴大

会社の状況や方針によって作成すべき条文内容は異なりますので、あくまでも参考として確認ください。TSUMIKI社会保険労務士事務所では、貴社に沿ったオーダーメイドな条文作成も承っておりますのでお気軽にご相談ください!

髪型・服装・身だしなみの遵守事項

従業員がどのような格好・ファッションをするのか、基本的には事由です。とはいえ業種・職種によっては業務に支障をきたす場合もあるでしょう。例えば

  • 飲食業で長い髪の毛やネイルをしていると、お客様から衛生面に不安が生じる
  • 金融業界ではお客様からの信頼・信用が大切なため、金髪や無精ひげは禁止したい

こういった状況であれば、制限を設けることが可能です。

ただし、企業の円滑な運営上必要であり、合理的な範囲でなければこの制限自体が違法となる恐れもあります。従業員への配慮もしつつ、業種・職種に応じて慎重に検討しましょう。

髪型・服装・身だしなみに関する条文例

第◯◯条(勤務時の身だしなみ)
  1. 従業員は、勤務時間中の服装および身だしなみについて、会社の品位を保つために職種・職場にふさわしいものでなければならない。
  2. 前項に定める服装および身だしなみは、就業場所を問わず適用する。ただし、在宅勤務中において私服の着用等を上司から許可を得た場合はこの限りではない。
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近年ではテレワーク・在宅勤務も一般的になりました。出社時はスーツ着用を指示している場合も、在宅時ではカジュアルな服装を許可する会社もありますので、こういった配慮も考えたいですね。

職場での過ごし方(職場環境・コミュニケーション)の遵守事項

社会人として当たり前のルールにはなりますが、トラブルを防止するために規定化が大切です。例えば

  • 仕事時間中に飲酒をする
  • 禁煙としているオフィス内で勝手に喫煙をする

ことは一般常識として行われないと思いますが、会社としては規律化しておかなければ問題社員を処罰ができない場合もあります。

職場での過ごし方(職場環境・コミュニケーション)に関する条文例

第◯◯条(職場環境の維持)
  1. 従業員は、職場の整理整頓に努め、気持よく勤務ができるように、常に職場の清潔を保たなければならない。
  2. 従業員は、次の各号に定める内容は禁止とする。
    1. 他の従業員との円滑な交流に努め、人間関係の構築を心がけること
    2. 酒気を帯びて勤務しないこと
    3. 会社が許可した場所以外で喫煙をしないこと

連絡(遅刻・早退)に関する遵守事項

会社では仕事の始業・終業時刻を定めて、その時間帯は従業員に業務を命ずることができます。従って、

  • 始業時刻よりも遅れて出社する従業員
  • 終業時刻よりも早く退勤しようとする従業員

理由のない上記のような行いは禁止したいのではないでしょうか。

社会人として遅刻・早退を繰り返す従業員は、ビジネスマナーの面でも問題があると考えられますので、適切に指導・注意し、頻度が多い場合は懲戒処分を検討できるように規程を整備しておきましょう。

連絡(遅刻・早退)に関するルールの条文例

第◯◯条(遅刻・欠勤)
  1. 遅刻、早退、欠勤をするときおよび勤務時間中にやむを得ない事情で私用外出するときは、あらかじめその理由および時間を、会社所定の手続きにより申請しなければならない。事前に申し出ることができないときは、事後速やかに届け出なければならない。
  2. ただし次の各号に定める事由について、会社の承認を得た場合は遅刻、早退、欠勤の取り扱いから除外する。
    1. 公共交通機関の遅延又は通勤途上道路の交通事故等、やむを得ない理由がある場合
    2. 台風、公共交通機関の運行停止その他のやむを得ない事情がある場合
    3. その他、従業員の安全を守る必要があると会社が判断する事情がある場合

ハラスメント(パワハラ・セクハラ・マタハラ)遵守事項

近年法改正により、パワーハラスメントを防止するための取り組みが大企業・中小企業に義務化されました。その他セクシュアルハラスメントやマタニティハラスメントについても、一定の対策を取る必要があります。

社内でハラスメント行為が発生し、従業員がうつ病等になってしまった場合、加害者だけでなく会社側も訴えられる可能性があります。ハラスメント行為防止のための取り組みおよび発生時には厳罰に対応する姿勢を、就業規則・服務規程で明文化しておきましょう。

ハラスメント(パワハラ・セクハラ・マタハラ)に関する条文例

第◯◯条(ハラスメントの防止)
  1. 会社の内外を問わず、悪口、侮辱、流言、暴力など、他人に迷惑となる行為をしないこと
  2. セクシャルハラスメントやパワーハラスメント、モラルハラスメントなどの行為により、他の従業員に不利益を与えないこと
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ハラスメントの防止については、就業規則や服務規程とは別に「ハラスメント防止規程」として定める企業が増えています。山形労働局の「雇用環境・均等室 ハラスメント対策・各種規定例ダウンロード」ページに、ハラスメント防止規程の雛形がアップされていますので参考にしてください。

インターネット・SNS利用時の遵守事項

近年インターネットやSNSの普及により情報発信が容易になっています。この影響もあり従業員の不適切な画像や動画投稿により企業ブランドに傷がつく報道を見たことがある経営者の方も多いのではないでしょうか。

  • アルバイト社員が勤務先である飲食店の厨房で不衛生な行為をしている動画が拡散された
  • 有名ホテルでフロント業務を行っている従業員が、プライベートで訪れた有名人の名前をTwitterで投稿した

このようなSNSをきっかけとしたトラブルは大企業・中小企業問わずに発生する可能性があります。従って、インターネットやSNSの取り扱いを服務規程で定めることが大切です。

また、業務時間に関わらず社用PCで私的にインターネットを閲覧したり、個人的なメールの送受信していると、ウィルス感染の恐れもあり機密情報が漏洩してしまうことも考えられますので、PCの利用についても併せて制限することが望ましいです。

インターネット・SNS利用時に関する条文例

第◯◯条(インターネット・SNS利用時における禁止事項)
  1. 従業員は、会社に備え付けのパソコンおよび貸与パソコンの利用について、次の各号を遵守しなければならない。ただし、会社の許可を得た場合はこの限りではない。
    1. 業務以外の目的で利用をしないこと
    2. 業務以外の目的で電子メールやチャットの送受信をしないこと
    3. 業務に関係のないWEBサイトを閲覧しないこと
    4. 無断でパソコンを社外に持ち出さないこと
    5. 会社のパソコン及びソフトウェアを改ざんしないこと
    6. 会社に許可なくインターネット上からソフトウェアをダウンロードやインストールをしないこと
    7. 会社の機密事項(個人情報や顧客情報含む)を、CD、DVD、USBなどの記録媒体にコピーしたり、インターネット回線を利用して社外に持ち出さないこと
    8. インターネットおよびSNS等で不適切な書き込みをしないこと
    9. インターネットおよびSNS等に不適切な動画をアップロードしないこと
  2. 前条の規定に関して不適切な利用を防止するために、会社は備え付けのパソコンおよび貸与パソコンの使用状況を監視し、点検することができる。会社が請求した場合、従業員は監視や点検に協力しなければならない。

副業・兼業

新型コロナウィルス等の外部要因で景気が悪化しているため「ボーナスが例年よりも減って生活が苦しい」「昇給も見込めないため、頑張って仕事をしても意味がない」と感じ、副業や兼業をはじめる方も増えています。

一方で会社側からすると、

  • 競合他社で兼業をされると、企業情報の漏洩などによって本業先の企業利益に損失をもたらす可能性がある
  • 労働時間の把握が困難で、健康管理ができなくなる

こういったデメリットも考えられますので、副業や兼業は禁止したい企業も多数ございます。とはいえ、雇用契約上で定められた労働時間以外をどのように過ごすのかは従業員の自由ですので「副業や兼業は一律禁止するべきか」慎重に検討しましょう。

副業・兼業に関する条文例

第◯◯条(副業・兼業)
  1. 従業員は、あらかじめ会社に申請し、許可を得た場合にのみ副業を行うことができる。ただし、次のいずれかに該当する場合、会社は副業を認めない。
    1. 労務提供上の支障がある場合
    2. 企業秘密が漏洩する場合
    3. 会社の名誉や信用を損なう行為や、信頼関係を破壊する行為がある場合
    4. 競業により、企業の利益を害する恐れがある場合
  2. 副業の申請については、次の各号を所定の様式に記載して人事部へ提出するものとする。
    1. 副業・兼業先の名称
    2. 副業・兼業時の業務の詳細
    3. 1か月の目安となる副業・兼業時間
    4. 副業・兼業の開始日および終了日

秘密保持に関する取り決め(在職・退職)

会社の取引先情報や、技術情報が漏洩してしまうと事業運営に大きな支障をきたしてしまいます。そのため秘密保持についても服務規律として定めることが大切です。

秘密保持に関する取り決め(在職・退職)に関する条文例

第◯◯条(秘密保持)
  1. 従業員は、在職中および退職後において、業務上知り得た会社の秘密(顧客情報、取引先情報、従業員個人情報、技術的情報等)について、業務以外の目的を除き使用してはならない。
  2. 会社は、前項の定めにも関わらず会社の秘密を使用、漏洩により会社が損害を被った場合、従業員本人対して損害賠償を求めることがある。

社内秩序を防止するためのルール策定時のポイント

就業規則・服務規程を整備する際に「どこまで具体的に制限をすればいいのか」と疑問があるかと思います。従業員とトラブルになり、裁判所の判断に委ねられる場合、

  • 就業規則に規定されている内容を基本として判断する
  • 抽象的に記載されている場合は限定的に解釈がされる

という傾向があります。そのため、服務規律の内容はある程度具体的に記載しておきましょう。

服務規律や就業規則の内容にお悩みがある経営者様へ

人事・労務の悩みは、従業員を雇用している限り常に発生する可能性があります。中小企業であっても、大企業であっても経営に必要な資産は「ヒト」ですので、人事・労務の悩みには向き合っていかなければいけません。

TSUMIKI社会保険労務士事務所では、経営を支えるコンサルタントとして人事労務領域の最適化・効率化につながるサポートをいたします。社会保険労務士をお探しの方はお気軽にお問い合わせください。

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服務規程を作成・運用するチェックポイント

就業規則を作成・変更する場合には、一般的に、次の手順によって手続を行います。各種手続きは労働基準法で定められていますので、注意をしてください。

就業規則・服務規程作成における手順
  1. 従業員代表者から意見を聴く
  2. 労働基準監督署に届け出る
  3. 従業員に周知する

従業員代表者から意見を聴く

就業規則や服務規程を作成したら、従業員代表者から意見を聴く必要があります。

第九十条(作成の手続き)

使用者は、就業規則の作成又は変更について、当該事業場に、労働者の過半数で組織する労働組合がある場合においてはその労働組合、労働者の過半数で組織する労働組合がない場合においては労働者の過半数を代表する者の意見を聴かなければならない。

引用元:e-Gov「労働基準法

従業員から「服務規定が厳しすぎる」と反対意見が出た場合は規定の内容を修正する必要があるのでは?と感じる経営者の方もいらっしゃるかもしれませんが、法律上は「意見を聴く」ことが求められているだけで、同意を得る必要はありません。そのため就業規則の内容に反対意見があったとしても労働基準監督署では問題なく受理されます

服務規程の作成が、労働条件の不利益変更に該当するケースはないと考えられますが、万が一該当した場合は従業員からの同意が必要になりますのでご注意ください。

労働基準監督署に届け出る

服務規程という名称であっても就業規則の一種と考えられます。そのため従業員の意見を聴いた後、就業規則とその意見書を所轄の労働基準監督署に届け出る義務があります。

第八十九条(作成及び届出の義務)

常時十人以上の労働者を使用する使用者は、次に掲げる事項について就業規則を作成し、行政官庁に届け出なければならない。次に掲げる事項を変更した場合においても、同様とする。

引用元:e-Gov「労働基準法
社会保険労務士 矢野貴大

労働基準監督署へ届け出の義務はありますが、内容自体に許可を得る必要はありません。また、届け出の際には就業規則の内容はそこまで深く確認はされません。

従業員に周知する

就業規則の作成・届け出ができた後は、従業員への周知や説明を行う必要があります

第百六条(法令等の周知義務)

使用者は、この法律及びこれに基づく命令の要旨、就業規則、第十八条第二項、第二十四条第一項ただし書、第三十二条の二第一項、第三十二条の三第一項、第三十二条の四第一項、第三十二条の五第一項、第三十四条第二項ただし書、第三十六条第一項、第三十七条第三項、第三十八条の二第二項、第三十八条の三第一項並びに第三十九条第四項、第六項及び第九項ただし書に規定する協定並びに第三十八条の四第一項及び同条第五項(第四十一条の二第三項において準用する場合を含む。)並びに第四十一条の二第一項に規定する決議を、常時各作業場の見やすい場所へ掲示し、又は備え付けること、書面を交付することその他の厚生労働省令で定める方法によつて、労働者に周知させなければならない

引用元:e-Gov「労働基準法

就業規則の周知については

  • 見やすい場所への掲示する
  • 従業員が確認しやすい場所に備え付ける
  • 書面で交付する

上記のいずれかにて行いましょう。近年ではクラウドストレージに就業規則のデータを保管し、従業員が自由に閲覧できる環境を作っている企業もあります。

まとめ・服務規程の作成に困ったら

社内秩序の維持・向上をするためには就業規則や服務規程の作成が必要不可欠です。

  • 会社で禁止する問題行為を言語化し、従業員に周知することでコンプライアンス意識を高める
  • 問題行為を厳正に処罰し、再発を防止する

労務トラブルは従業員を雇用するとどのような会社でも発生する可能性があります。しっかりと会社で禁止・制限する行為を整理し、服務規律を作成しましょう。

また、就業規則は一度作成するだけでなく、会社の状況や時流に沿って見直すことが大切です。トラブルの発生しにくい、働きやすい職場環境を目指して規程の作成・運用を進めましょう。

服務規程・就業規則の作成は社労士に依頼しよう

服務規程の内容は会社の方針や経営者の想いによって様々です。一方で専門的な知識がなければトラブルを先読みした規程作成ができませんので、専門家に依頼することをオススメいたします。

TSUMIKI社会保険労務士事務所では、経営者の思い描く組織の実現に向かってサポートしておりますので、お気軽にご相談ください。

服務規律や就業規則の内容にお悩みがある経営者様へ

人事・労務の悩みは、従業員を雇用している限り常に発生する可能性があります。中小企業であっても、大企業であっても経営に必要な資産は「ヒト」ですので、人事・労務の悩みには向き合っていかなければいけません。

TSUMIKI社会保険労務士事務所では、経営を支えるコンサルタントとして人事労務領域の最適化・効率化につながるサポートをいたします。社会保険労務士をお探しの方はお気軽にお問い合わせください。

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