【令和6年度最新版】業務改善助成金の制度や事例をわかりやすく解説【社労士監修】
近年、物価高騰や最低賃金の引き上げによる人件費増加など、企業経営はますます厳しいものになっています。そんな中で、設備投資や人材教育にあたり少しでも助成金・補助金が利用できるのであれば積極的に活用したい方もおられると思います。
弊社でも顧問・関与先様から「何か使えそうな助成金はないでしょうか?」とお問い合わせいただくことも多くありますが、令和6年度のおすすめとして数ある助成金の中でも業務改善助成金をご案内しております。
今回の記事では、業務改善助成金の制度について
- そもそもどのような助成金なのか?
- 対象となる企業や従業員、要件
- どういった経費が助成金の対象になるのか?
- PCや車の購入も使えるのか
- 業種ごとの活用事例
- 利用するにあたっての注意点やよくあるQ&A
企業が押さえておくべき上記ポイントについて、整理いたしました。
令和6年度の業務改善助成金の要件も厚生労働省から公表されており、その内容を踏まえて解説いたしますので、助成金の利用に悩まれている経営者・個人事業主の方はぜひご一読ください。
助成金は、対象となる要件を満たしていても適切に申請しなければ不受給になる可能性もあり注意が必要です。少しでもご不安ございましたら、専門家である社会保険労務士に相談しましょう!
矢野 貴大
TSUMIKI社会保険労務士事務所/代表・社会保険労務士
金融機関・社会保険労務士法人・国内大手コンサルティング会社を経て大阪で社会保険労務士事務所を開業。
25歳で社労士資格を取得した後、社会保険労務士・経営コンサルタントとして延べ200社を超える企業・経営者をサポートする。その経験を活かし「想いを組み立て、より良い社会環境を形づくる」というMISSIONに向かって日々活動中。
【令和6年度】業務改善助成金とは?わかりやすく解説
令和6年度の業務改善助成金の要件が厚生労働省から公表されています。内容をわかりやすく整理しましたので、それぞれ確認していきましょう。
業務改善助成金の基本情報
業務改善助成金は、企業が業務の効率化や生産性の向上、働き方改革などを推進するための投資を行う際に、その費用の一部を国や地方自治体が補助する制度です。
具体的には、
- 新たな設備投資、システム導入、働き方改革に必要な機材の購入
- 人材育成のための研修プログラム
- 専門家によるコンサルティング
このような業務改善に関わる様々な取り組みが対象になります。
業務改善助成金の目的は、中小企業を中心に生産性の向上や労働環境を改善することによって、経済全体の活性化を促すことにあると言えます。
業務改善助成金を活用するメリット
業務改善助成金は、
- 財務負担の軽減
- 助成金を活用することで、新しい設備の導入やシステムの更新、人材育成などにかかる費用の一部を補填できます。これにより、企業の財務負担が軽減され、資金を他の事業活動に回すことが可能になります。
- 生産性の向上と競争力の強化
- 最新の技術やシステムを導入することで、業務の効率化を図り、生産性を向上させることができます。これは、長期的に見て企業の競争力を強化することに繋がります。
- 働き方改革の推進
- 業務改善助成金を用いて、働き方改革に必要な設備やシステムを導入することで、従業員の働きやすい環境を整備できます。これにより、従業員の満足度が高まり、生産性の向上だけでなく、優秀な人材の確保や定着にも寄与することが期待されます。
活用することで企業にメリットの大きいものになります。そのため、特に費用が大きくなりがちな設備投資を考えている企業は、注目しておきたい助成金ではないでしょうか。
業務改善助成金に限らず雇用関係助成金は「返済不要」ですので、受給した資金を投資や人材育成に活用できます。
【令和6年度】業務改善助成金の助成額・対象にできる経費
業務改善助成金により、助成を受けることのできる金額は、
- 生産性向上に資する設備投資に掛かった費用 ✕ 一定の助成率
- 取り組みにより決まる助成金上限額
上記を比較し、いずれか安い金額となります。
設備投資の費用全額が助成されるわけではありません。
業務改善助成金の助成率
業務改善助成金の助成率は、事業場内最低賃金に応じて定められており、下記の通りです。
事業場内最低賃金 | 900円未満 | 900円以上950円未満 | 950円以上 |
---|---|---|---|
助成率 | 9/10 | 4/5(9/10) | 3/4(4/5) |
事業場内最低賃金は、事業場内で最も低い時間給のことで、法律に基づいて算定します。
時給者については時給単価になりますが、日給・月給・歩合給の場合は1時間あたりの単価を算出する必要があります。日給・月給・歩合給を含む場合それぞれの時給単価の考え方については、下記をご参考ください。
日給の場合の考え方
- 1日の所定労働時間で、賃金額を除算して時間あたりの賃金額を算定
- 例:日給1万円・1日の所定労働時
- 10,000÷8=1,250円(時間単価)
月給の場合の考え方
- 1ヶ月の所定労働時間で賃金額を除算して時間あたりの賃金額を算定
- 月によって所定労働時間数が異なる場合には、一年間における1ヶ月平均所定労働時間数で除算して時間あたりの賃金額を算定します。
- 例:月給180,000円・ 1ヶ月の所定労働時間(平均)が160時間の場合
- 180,000÷160=1,125円(時間単価)
歩合給を含む場合の考え方
- 歩合給については、申請直近の1年間(雇入れ後1年に満たない者については少なくとも3月間)の合計額を、その間の総実労働時間で除し、除した額に、固定給の時間当たりの額を加えて算定
なお、事業場内最低賃金の算出にあたって、下記賃金(手当)は最低賃金に算入しません。
- 臨時に支払われる賃金
- 1月を超える期間ごとに支払われる賃金(賞与など)
- 時間外労働・休日労働・深夜労働(22時から翌日5時までの労働)に対する割増賃金
- 精皆勤手当、通勤手当、家族手当、など
業務改善助成金の助成金上限金額
令和6年度の業務改善助成金の上限金額は、事業場の規模(従業員数)や、従業員の賃金をどの程度引き上げるのか、何人の最低賃金を引き上げるのかによって異なり、
- 30円以上引き上げるコース→30万円〜最大130万円
- 45円以上引き上げるコース→45万円〜最大180万円
- 60円以上引き上げるコース→60万円〜最大300万円
- 90円以上引き上げるコース→90万円〜最大600万円
となっています。
上限金額は最低賃金を引き上げる従業員数に応じて変動しますので、企業状況を鑑みながら賃金引き上げを検討してください。
対象となる経費
業務改善助成金は企業における「生産性の向上・労働能率の増進」に資する取り組みに対して、設備投資や専門家からコンサルティングを受ける場合、その費用の一部に対して助成を受けられる制度になります。
助成対象となる経費については、生産性向上、労働能率の増進に資する設備投資等であって、具体的に下記に該当する必要があります。
なお、生産性の向上や労働能率の増進に資する設備投資等であっても、助成対象外になる場合がありますので注意しましょう。
車やパソコンの購入に業務改善助成金は利用できる?
業務改善助成金では、事業者が「物価高騰等要件」を満たす特例事業者に該当する場合であって、生産性向上・労働能率の増進に資すると認められる場合は
- 乗車定員7人以上又は車両本体価格200万円以下の乗用自動車
- 貨物自動車(特種用途自動車を除く)
- パソコン(タブレット端末、スマートフォン及びその周辺機器を含む。)
の新規購入に関する費用が対象となる場合があります。
ただし、一般事業者については車両の購入費用は対象外になりますので、車両購入を検討されている経営者の方は「物価高騰等要件」に該当するのか確認することをおすすめいたします。
業務改善助成金の受給金額試算例
業務改善助成金は、
- 助成対象となる取り組みの費用×助成率
- 助成上限金額
上記を比較して、いずれか安い方の金額が支給されます。必ずしも助成上限金額が満額支給されるわけではありません。計算例を記載しておりますので、ご参考ください。
設備投資の金額が200万円・助成率が9/10、助成上限金額が230万円の場合
180万円(200万円×9/10)<230万円(助成上限額)のため、180万円が助成金として支給されます。
設備投資の金額が500万円・助成率が3/4、助成上限金額が300万円の場合
375万円(500万円×3/4)<300万円(助成上限額)のため、300万円が助成金として支給されます。
【令和6年度】業務改善助成金の対象となる企業・必要な取り組み
業務改善助成金を利用するために、企業に一定の要件が定められています。
- 助成対象となるための取り組みが実施できるのか?
- 対象となる企業の要件に合致しているか?
これらの要件を満たさない限り、業務改善助成金は活用できませんので自社で対応可能かどうか確認していきましょう。
業務改善助成金に必要な取り組み
業務改善助成金を利用するためには
- 雇用している従業員のうち、事業場内での最低賃金に該当する方の賃金を引き上げる
- 生産性向上に資する設備投資(機械設備の導入等)を行う
上記2つの取り組みが必須となります。
単に「設備投資」を行うだけでは、業務改善助成金は申請できませんのでご注意ください。また、事業場内最低賃金の引き上げについては雇入れ後3か月を経過している従業員を対象とする必要があります。
業務改善助成金の対象となる企業
業務改善助成金を活用できる企業は
- 中小企業・小規模事業者であること
- 事業場内最低賃金と地域別最低賃金の差額が50円以内であること
- 解雇、賃金引き下げなどの不交付事由がないこと
これら3つに当てはまる必要があります。特に「事業場内最低賃金と地域別最低賃金の差額が50円以内であること」は要注意です。
「中小企業・小規模事業者であること」とは?
中小企業・小規模事業者とは、次の①または②を満たす事業者となります。
業種 | ①資本金の額または 出資の総額 | ②常時使用する労働者数 | |
---|---|---|---|
小売業 | 小売業、飲食店など | 5,000万円以下 | 50人以下 |
サービス業 | 物品賃貸業、宿泊業、医療、福祉、複合サービス事業など | 5,000万円以下 | 100人以下 |
卸売業 | 卸売業 | 1億円以下 | 100人以下 |
上記以外のその他の業種 | 農業、林業、漁業、建設業、製造業、運輸業、金融業など | 3億円以下 | 300人以下 |
「事業場内最低賃金と地域別最低賃金の差額が50円以内であること」とは?
事業場で最も低い時間給(事業場内最低賃金)と、例年10月ごろに改定されている都道府県単位の最低賃金を比較して、その差額が50円以内であることを指します。
令和5年度の最低賃金をベースに例を上げますと
事業場A | 事業場B | 事業場C | |
---|---|---|---|
都道府県 | 東京 | 大阪 | 京都 |
地域別最低賃金 | 1,113円 | 1,063円 | 1,008円 |
事業場内最低賃金 | 1,150円 | 1,113円 | 1,049円 |
利用可否 | 利用できる | 利用できない | 利用できる |
上記のように、事業場内の最低賃金によって業務改善助成金の利用ができるのかどうか異なりますので注意してください。
「解雇、賃金引き下げなどの不交付事由がないこと」とは?
業務改善助成金には「不交付要件」が定められており、該当してしまうと助成金の対象から外れてしまいます。厚生労働省が発行している申請マニュアル内に、不交付要件は記載されております。自社の状況を予め照らし合わせてみましょう。
業務改善助成金の不交付事由
厚生労働省労働基準局賃金課「中小企業最低賃金引上げ支援対策費補助金(業務改善助成金)申請マニュアル」
- 交付申請書の提出日の前日から起算して3月前の日から実績報告手続を行った日の前日又は賃金額を引き上げてから6月を経過した日のいずれか遅い日までの間に、
- 当該事業場の労働者を解雇した場合(天災事変その他やむを得ない事由のために事業の継続が不可能となった場合又は労働者の責に帰すべき事由に基づいて解雇した場合を除く。)、その者の非違によることなく勧奨を受けて労働者が退職した場合又は主として企業経営上の理由により退職を希望する労働者の募集を行い、労働者が退職した場合
- 当該事業場の労働者の時間当たりの賃金額を引き下げた場合
- 所定労働時間の短縮又は所定労働日の減少(天災事変その他やむを得ない事由のために事業の正常な運営が不可能となった場合又は法定休暇の取得その他労働者の都合による場合を除く。)を内容とする労働契約の変更を行い、月当たりの賃金額を引き下げた場合
- 同一の助成対象経費や賃金引上げを対象として国又は地方公共団体から補助金等の交付その他これに類する助成等を受けている場合
- 過去に業務改善助成金の交付を受けた事業場であって、当該助成事業完了日以後の労働者の賃金額が当該助成事業において定めた事業場内最低賃金額を下回る場合
- 交付申請書の提出日の前日から起算して1年前の日から実績報告手続を行った日の前日又は賃金額を引き上げてから6月を経過した日のいずれか遅い日までの間に、労働関係法令に違反していることが明らか(司法処分等)となった場合
- 交付申請書及び事業実績報告書の提出日から起算して過去3年以内に事業場の所在地を所轄する都道府県労働局長(以下「所轄労働局長」という。)から補助金等に係る予算の執行の適正化に関する法律第17条に規定する補助金等の決定の取消しその他これに準ずる処分を受けている場合
- 事業者又は事業者が法人である場合、当該法人の役員若しくは事業場の業務を統括する者その他これに準ずる者のうちに暴力団員(暴力団員による不当な行為の防止等に関する法律(平成3年法律第77号)第2条第6号に規定する暴力団員をいう。)に該当する者がいる事業場、暴力団員が経営に実質的に関与している事業場及びこれらの事業場であると知りながら、これを不当に利用するなどしている事業場等であると認められた場合
- 事業主等又は事業主等の役員等(事業主等が個人である場合はその者、法人である場合は、役員又は支店若しくは営業所等の代表者、団体である場合は代表者、理事等、その他経営に実質的に関与している者をいう。)が破壊活動防止法(昭和27年法律第240号)第4条に規定する暴力主義的破壊活動を行った又は行うおそれがある団体等に属している場合
- 交付申請書の提出日の属する年度の前年度より前のいずれかの年又は保険年度において、労働保険の保険料の徴収等に関する法律(昭和44年法律第84号)に定める徴収金を滞納している場合
- 交付申請手続又は実績報告手続の時点で倒産(破産手続開始、再生手続開始、更生手続開始若しくは特別清算開始の申立てを行っていること又は手形交換所において、その手形交換所で手形交換を行っている金融機関が金融取引を停止する原因となる事実についての公表がこれら金融機関に対してなされていること)している場合
- 不正受給が発覚した場合に、所轄労働局長等が実施する事業主等の公表について同意していない場合 など
業務改善助成金は個人事業主でも利用できる?
個人事業主の方であったとしても、上述しております
- 中小企業・小規模事業者であること
- 事業場内最低賃金と地域別最低賃金の差額が50円以内であること
- 解雇、賃金引き下げなどの不交付事由がないこと
要件を満たし、業務改善の必要となる取り組みを達成することで活用することが可能です。
ただし、雇用している従業員が一人もいない場合は事業場内最低賃金の引き上げができないため対象外となります。
業務改善助成金の拡充を受けられる「特例事業者」とは
業務改善助成金は令和6年4月1日以降の申請において、
- 賃金要件:助成上限額の拡大が受けられる
- 物価高騰等要件:助成上限額の拡大に加えて、助成対象経費の拡大が受けられる
これらの優遇措置を受けられる特例事業者の制度があります。一般事業者に比べて非常にメリットがありますので、予め確認しておきましょう。
なお「物価高騰等要件」については、申請時に「物価高騰等要件に係る事業活動の状況に関する申出書」を作成しなければなりません。申出書の記入例を下記労務Tipsで解説していますので、併せてご一読いただければ幸いです。
賃金要件
賃金要件は事業場内最低賃金が950円未満の事業場が該当します。
都道府県によっては、そもそも地域別最低賃金が950円を上回りますので、賃金要件に該当する企業は限られます。
物価高騰等要件
物価高騰等要件とは、外的要因(原材料費の高騰や、経済的環境の変化等)により、申請を行う前3ヶ月間のうち、任意の1ヶ月における売上高総利益または、売上高利益率が、前年と同じ月に比べ3%ポイント低下している企業となります。
なお、事業開始から1年に満たない場合、事業開始日以降で適切と認められる期間の値と比較します。
物価高騰等要件はどのように確認されますか?
「利益率に係る事業活動の状況に関する申出書(売上高総利益率)」又は「利益率に係る事業活動の状況に関する申出書(売上高営業利益率)」を、申請時の添付書類として用意する必要があります。
業務改善助成金の申請から支給までの流れ
業務改善助成金は、事業場の所在地を管轄する都道府県労働局に対して申請を行います。申請書類は所定の様式がありますので、厚生労働省のWEBサイトからダウンロードして作成しましょう。
申請後、交付決定(申請書を労働局が審査し、その内容を認められること)されましたら、申請内容に基づいて事業(賃金の引き上げ・設備の購入等)を行います。
その後、労働局に「事業実績報告」および「助成金支給申請」をあげ、その報告内容の審査に問題がなければ助成金が支給されます。
申請書の作成・提出
業務改善助成金の利用に向けて「事業実施計画書」を作成します。
具体的には、
- 業務改善計画の策定(設備投資や器具購入などの実施計画)
- 事業場内最低賃金の引き上げ計画の策定
を行い、労働局に申請を行います。
業務改善計画の策定においては、その設備投資を行うことで生産性の向上・従業員の労働能率の増進にどのような効果があるのか明確に記入しなければいけません。
また、設備投資等を行う場合、助成対象経費の見積書だけでなく相見積り書も添付書類として求められますので、予め準備してください。
審査・交付決定
労働局にて、事業実施計画や添付書類を確認し、内容に問題なければ助成金の交付決定が行われます。ただし、申請書類に疑義があった場合、労働局から内容確認がされますのでしっかりと対応しましょう。
計画の実施
事業実施計画書に基づき、
- 業務改善(設備や器具の導入および助成金の対象経費の支払い)
- 事業場内最低賃金の引き上げ
を実施します。設備投資等、交付決定通知前に行うと助成金の対象外となります。
実績報告書の作成・提出
業務改善計画の実施結果と、賃金引上げ状況を記載した事業実績報告書および、助成金支払いのための支給申請書を作成し、労働局に申請を行います。
審査・助成金額の確定
労働局において実績報告書の審査が行われ、助成金の金額が確定されます。
助成金の受給・状況報告の提出
業務改善助成金は、助成金が支給された後も状況報告をしなければなりません。
もしも助成金が振り込まれてから賃金を引き下げるなど、助成金の不交付事由に該当すると助成金の返金となりますので注意してください。
事例で学ぶ業務改善助成金の活用法
業務改善助成金は設備投資に活用ができる一方で、業種・事業内容に応じてどのような設備投資が対象になるのか異なります。
厚生労働省から「業務改善助成金業種別事例集」が発行されておりますので、その事例を分かりやすく整理いたしました。下記事例を元に、自社であればどのような設備投資・機器導入に利用できそうかぜひ参考にしてください。
卸売・小売業
課題 | 設備投資・導入した器具等 | 導入結果 |
---|---|---|
入金・売上の集計や、領収書、釣銭支払等、作業時間が長くなっていた。 | POSレジシステム、自動釣銭機等 | 清算業務が自動化され時間短縮されることにより、顧客の回転率も向上した。 |
仕込みや調理等作業に時間がかかり、他の作業に手が回らず製造できる量も少なかった。 | 調理器具(ミキサー・食品断裁断機など) | 仕込み時間・調理時間が短縮され、一度に製造できる量も増えて効率が上がった。 |
荷物の運搬や積み下ろし作業に時間がかかっていた | フォークリフト・特種用途自動車類 | 一度に大量の重量物等を運ぶことができ、作業時間が短縮した。 |
特にDX化が進んでいない小売業では、旧型レジシステムの操作性・機能性が悪く顧客対応がスムーズにいかないケースがあります。入金・売上の集計を効率化するためにPOSレジシステムの導入は比較的推進しやすいため、検討したい設備といえます。
製造業
課題 | 設備投資・導入した器具等 | 導入結果 |
---|---|---|
手作業で食品を加工、計量、製造していたため、製品の出来具合にばらつきが生じていた。また、人員を多く割く必要があり、作業効率が悪かった。 | 調理器具類(原料充填機・食材カッターや食材皮剥き機・パン発酵機) | 出来具合にばらつきがなくなり、作業時間を削減することができた。また、人員を削減することができ、他の業務に回すことが可能となったことで作業効率が向上した。 |
包装を手作業で行っていたため、製品の出来具合にばらつきがあり、作業時間が長くなっていた。また、一度に生産できる量も限られていたため、作業効率が悪かった。 | 包装機(シュリンク包装機・菓子個包装機械) | 均一な仕上がりが実現し、一度に多くの量を生産することができるようになったことで、作業効率が向上した。 |
既存の設備では十分な冷凍が行えず、食材や製品の状態によって処理作業が生じていた。 | 冷凍・冷蔵庫類 | 十分な冷凍が行えるため、保存中の食材や製品の品質が改善され、処理作業が軽減され作業効率が向上した。 |
食肉製造業の場合、「真空包装機」を新しく導入することで、従来3~4時間かかっていた作業が約1時間30分に短縮につながった事例もあります。物理的に作業時間を効率化するために何が必要か考えると、業務改善助成金もより使いやすくなります。
医療・福祉業
課題 | 設備投資・導入した器具等 | 導入結果 |
---|---|---|
利用者の送迎に多くの時間がかかり、複数の従業員で対応しなければならなかった。 | 福祉車両(引き上げリフト付き福祉車両や大人数送迎可能福祉車両など) | 利用者が車椅子に乗ったまま乗降することが可能となり、送迎にかかる人員の削減や全体の送迎時間の短縮につながった。 |
給水管などの清掃に時間がかかり、場合によっては設備の分解や診察毎に清掃を行っていたため、作業効率が悪かった。 | 歯科用チェアユニット(清掃機能付など) | 自動清掃機能などにより、給水管などの清掃時間が短縮され、作業効率が向上した。 |
利用者の移乗や起き上がり補助を複数名で行う場合が多くあり、効率的に作業を進めることが困難であった。 | 施術ベッド・医療ベッド(調節機能付) | ベッドの高さ調節などが可能になったことで、1人でスムーズに作業を行うことが可能となり、作業効率が向上した。 |
介護業では、車いす搭載車両の増車することで、介護職員の送迎時の同乗回数を減らすことで生産性向上を図ることもあります。結果的に職員の在館時間が長くなって施設利用者に目が届きやすくなり、手厚いサポートができるようになるなど、事業への良い影響にも繋がっています。
業務改善助成金のQ&Aや注意点とは
業務改善助成金は、一定の要件を満たすことで車両の購入にも利用できる効果的な助成金ですが、労務管理がきちんと整備できていなければ審査に通らず、不受給となります。
ここでは、経営者の方からよくご相談いただく内容や、労働局が公表している質疑応答を整理してQ&Aとして下記整理しておりますので、これから業務改善助成金の利用を検討されている経営者・個人事業主の方はぜひ確認ください。
助成金は非常にセンシティブなもので、会社の状況によって判断が異なる場合があります。Q&Aは一例としていただき、気になる部分あればお気軽にお問い合わせください!
助成金の要件に関するQ&A
経費に関するQ&A
その他のQ&A
申請過程での注意点
業務改善助成金をはじめとして、助成金は申請過程において、所轄の行政機関(主に労働局)から書類や実態について確認が入ることが多々あります。
速やかかつ誠実に対応しなければ、助成金の申請も取り下げられることもありますので、助成金の利用は一筋縄ではいかないことを念頭においておきましょう。
また、近年助成金の不正受給を報じるニュースも多くなっているように感じます。
助成金の受給をするために書類を改ざんしたり、虚偽の報告については厳格に対処されるため、行ってはいけません。助成金の不正受給に関しては下記コラム記事で解説していますので、併せてご一読ください。
まとめ
業務改善助成金は、生産性向上につながる設備投資に有効な助成金です。
中小企業だけでなく、従業員を雇用していると個人事業主でも利用できる点や、場合によっては車購入の経費が助成金の対象になりますので、ぜひ自社が活用できるのか確認してみてはいかがでしょうか。
一方で、業務改善助成金は申請において数多くの書類が求められます。少しでも不安がある経営者・個人事業主の方は一人で悩まずに、専門家である社会保険労務士に相談した上で取り組みされることをオススメいたします。
弊社でも、業務改善助成金の申請サポートを行っておりますので、ぜひお気軽にお問い合わせください。