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助成金の不正受給とは?社名を公表される?【不正受給のリスクも解説】

助成金 不正受給 社名公表
本記事ではこのようなお悩みを解決いたします
  • 助成金不正受給のニュースを見かけるが、どのような場合に不正受給になるのか知りたい
  • 助成金を活用したいが、適切に申請できるのか不安。注意すべきポイントを知りたい

近年、新型コロナウィルスの影響で経営に打撃を受けた企業も多いためか、雇用調整助成金やキャリアアップ助成金の不正受給に手を染めてしまった報道が見受けられます。

公的制度である助成金は、補助金とは異なり「要件を満たせば必ず受給ができる」特徴があるため利用がしやすいものです。しかしながら、不正な受給をしてしまうと会社側には大きなリスクがあり、取り返しがつかないことになります。

今回は、助成金の不正受給となってしまうシーンや会社側が背負うリスク、不正受給をしないためのチェックポイントを解説いたします。

社会保険労務士 矢野貴大

助成金の不正受給は「自社で助成金の申請をする」場合だけでなく、「社労士に依頼する」場合であっても発生しますので、ご注意ください。

執筆者プロフィール

矢野 貴大

TSUMIKI社会保険労務士事務所/代表・社会保険労務士

金融機関・社会保険労務士法人・国内大手コンサルティング会社を経て大阪で社会保険労務士事務所を開業。

25歳で社労士資格を取得した後、社会保険労務士・経営コンサルタントとして延べ200社を超える企業・経営者をサポートする。その経験を活かし「想いを組み立て、より良い社会環境を形づくる」というMISSIONに向かって日々活動中。

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このページの概要

助成金とは

助成金とは、行政機関から支給される資金のことで、

  • 要件を満たせば必ず受給ができる
  • 受給した助成金は返済義務がなく、用途も自由

という大きく2つの特徴があります。その中でも「雇用に関する取り組み」が対象となる雇用関係の助成金は、毎年50種類以上公表されておりますので、経営上活用できるシーンは多々あります。

また、「補助金とどう違うのか?」というご質問をよくいただきます。助成金と補助金の違いについては下記の表に整理をしておりますので、ご参考にしてください。

スクロールできます
助成金補助金
管轄機関厚生労働省経済産業省・地方自治体
種類約50種類約100種類
目的雇用環境の改善・向上
例:従業員のキャリアアップや雇用制度の見直し等
経済の活性化
例:新しいビジネスへチャレンジするための販促費等
受給要件要件を満たすと
必ず受給
要件を満たしても審査があるため
不受給の可能性がある
募集時期随時
主に4月から新しい助成金の告知・受付開始
随時
公募開始から締め切りまで(補助金によって異なる)
受給時期後払い後払い
返済義務なしなし
相談先社会保険労務士税理士・中小企業診断士
助成金・補助金の違い早見表

なお、専門家視点で2022年度における活用をおすすめする助成金は下記にて紹介しておりますので、ぜひご一読ください。

助成金の不正受給とは?不正受給をするとどうなる?

助成金の不正受給に関するニュースを見たことがある方も多いのではないでしょうか。2023年2月には、愛媛県の会社が雇用調整助成金などをあわせて3,1000万円あまり不正受給をしていたと報道がありました。

助成金は要件(取り組み・申請時期)を守ることができれば受給ができる制度です。そのため積極的に利用する企業も多くある一方で、助成金の要件を守っているように偽造し助成金の不正受給を目論む方もいるのです。

では、助成金を不正受給してしまうとどうなるのでしょうか?企業だけでなく経営者も大きなリスクを背負うことになりますので、それぞれ確認しておきましょう。

不正受給のリスク①:社名が公表される

助成金の不正受給をしてしまうと、企業名だけでなく、事業内容や代表者の氏名まで幅広い情報が公表されてしまいます。

不正受給によって公表される内容
  • 事業主
    • 名称
    • 代表者氏名
  • 事業所
    • 名称
    • 所在地
    • 事業の概要
  • 不正受給の概要
    • 助成金名
    • 金額および返還状況
    • 支給決定等・取消年月日
    • 内容

各都道府県にある労働局のホームページでは上記の内容が公表される他、様々なニュース報道でも取り上げられる可能性が高く、今後の事業運営に大きな影響を及ぼすことは間違いありません

東京労働局および大阪労働局での公表事例について、下記クリックいただけますと実際のプレスリリースがご覧いただけますのでご確認ください。

東京労働局による公表事例をみてみる
大阪労働局による公表事例をみてみる

引用元:大阪労働局「令和5年1月公表事案」より

不正受給のリスク②:助成金の利用ができなくなる

不正受給が発覚した場合、

  • 支給前:不支給の決定
  • 支給後:請求金の納付が必要

となるだけでなく、支給前後問わずに「不正受給による不支給決定日または支給決定取消日から起算して5年間」については、その不正受給に係る事業主に対して雇用関係助成金は支給されません

請求金とは、①不正受給により返還を求められた額、②不正受給の日の翌日から納付の日まで、年3%の割合
で算定した延滞金、③不正受給により返還を求められた額の20%に相当する額(一部の場合は除く)の合計額により計算がされます。そのため、不正受給した金額以上に請求がされることになります。

社会保険労務士 矢野貴大

また、不正内容によっては、不正に助成金を受給した事業主が告発されます。詐欺罪で懲役判決を受けたケースもありますので、金額以上に重たい処罰があることを知っておきましょう。

不正受給のリスク③:組織力が低下する

不正受給を行ってしまうと、各種報道を通じてその企業に勤務する従業員の方に「まさか自分の勤め先が不正受給をしているなんて」「経営者や役員が虚偽の申請をしているとは恥ずかしい」このようにネガティブな印象を持たれてしまいます。

また「国のルールを守らない会社に従う必要はあるのか?」と社内規程に違反する働き方が発生する可能性もあり、結果として組織のエンゲージメントが低下したり、従業員の退職につながってしまいます。

助成金の不正受給はなぜばれる?

経営者の方から「助成金の不正受給はバレるのでしょうか?」とご相談いただくことがあります。2つの観点で不正受給はバレてしまうため、助成金への取り組みは真摯に行いましょう。

書類審査

助成金の申請書類は主に各都道府県の労働局等に提出することになりますが、厳格に書類のチェックが行われます。例えば提出された書類に対して

  • 書類の記入漏れはないのか?
  • 助成金の要件を満たす取り組みができているのか?
  • その他労務環境に問題はないのか?(助成金によっては未払いになっている残業代がないのか?など)

上記のように、細かく書類の中身が確認されます。少しでも疑義があると労働局から問い合わせがあり、口頭確認もしくは追加の書類提出を求められます。

社会保険労務士 矢野貴大

行政からの問い合わせに応じない場合、申請している助成金の審査はSTOPします。そのため書類審査をくぐり抜けるために、書類を偽造してしまうこともあるようです。

現地への聞き取り調査

書類審査が通り、無事助成金を受給したとしても、後日企業に立ち入り調査が行われることがあります。

例えば従業員の方に関連する教育訓練が助成金の対象だった場合「教育訓練は記録通りに実際に行われているのか?」確認のためのヒアリングが行われます。

審査のために助成金の申請書類を偽造していたとしても、現地訪問・本人へのヒアリングにより不正受給が発覚するケースは少なくありません。

助成金の不正受給の事例

令和4年における雇用関係助成金の不正受給について、

  • 主要都市における公表事例件数
  • 主に不正受給されている助成金の名称
  • 不正受給の内容

を調査いたしましたのでご紹介いたします。

大阪府での助成金不正受給事例

大阪労働局より公表されている不正受給公表事例としては28件ありました。

その中でも雇用調整助成金の不正受給が大部分を占めておりますが、新型コロナウィルス感染拡大が一つの要因となっていそうです。

雇用調整助成金を不正受給となった企業の取り組み

  • 休業手当を支給していないにもかかわらず、支給したとする虚偽の申請書類を作成し、当該助成金を不正に受給した。
  • 休業実績がないにもかかわらず、休業したとする虚偽の申請書類を作成し、当該助成金を不正に受給した。
  • 一部しか休業していないにもかかわらず、実際の休業日よりも過大に休業したとする虚偽の申請書類を作成し、当該助成金を不正に受給した。

東京都での助成金不正受給事例

東京労働局より公表されている不正受給公表事例としては21件(グループ会社などは1社として計上)ありました。

大阪と同様に雇用調整助成金が目立ちますが、緊急雇用安定助成金の不正受給もされております。

緊急雇用安定助成金の不正受給となった企業の取り組み

  • 雇用実績がないにもかかわらず、雇用したとする虚偽の申請書類を作成し、当該助成金を不正に受給した。
  • 適正な雇用管理がされていなかったにもかかわらず、実際には勤務をしていた従業員が休業したとする申請書類を作成、また休業手当を支給していないにもかかわらず、休業手当を支払ったとする書類を作成し、当該助成金を不正に受給した。

助成金を不正受給とならないように活用するには?

助成金の活用を考えるのであれば

  • 日々の労務管理を適切にすること
  • 申請書類は専門家(社会保険労務士)に依頼すること

を念頭に置いていただけると、不正受給となるリスクを減らすことができます。

日々の労務管理を適切にする

助成金は労働関係法令に違反していると受給することができません。

例えば、未払いとなっている残業代があるケースです。助成金によっては給与の支払い状況がわかる書類(タイムカードや給与明細)を申請時の添付書類として求められることがあり、残業代の支払いが適切に処理されていないと判断されると助成金の審査は中断されます。

日々の労務管理ができていなければ、助成金の活用自体は難しくなりますので、ご注意ください。

社会保険労務士 矢野貴大

実際に支払っていないのに、残業代を精算したような書類偽造もしてはいけません。

申請書類は専門家(社会保険労務士)に依頼する

助成金の申請書類の作成には、専門的な知識も必要です。就業規則の整備が必要事項となっている場合もあり、自社だけで取り組んだ結果不受給となってしまったお声もよくお聞きします。

取り組み自体に問題はなくとも申請書類に不備があると助成金は活用できませんので、社会保険労務士に相談・依頼されることをおすすめいたします。

社会保険労務士 矢野貴大

ただし、近年では社会保険労務士も共謀して助成金を不正受給しているケースもあります。「助成金は必ずもらえるので、取り組みましょう」と一方的に営業を掛けてくる事務所には気をつけてください。

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まとめ:助成金は適切に利用し、経営に有効活用しましょう

助成金は、適切に取り組むことができると必ず受給できるだけでなく、資金使徒は自由ですので経営に有効活用できる公的制度です。

一方で、申請から受給までには雇用環境の整備・手続きのための書類作成と多くの手間が必要なため、不正受給に手を染めてしまう経営者の方もいらっしゃいます。

TSUMIKI社会保険労務士事務所では、企業の方向性や取り組みをヒアリングした上で、安心して助成金を活用いただけるようにサポートいたしますので、少しでも助成金に興味のある方はご相談ください。

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