「以降」は当日を含む?含まない?「以後」「以上」との違いも解説

ビジネス文書や日常会話でもよく目にする「以降」という言葉。一見すると簡単な日本語のようですが、「以後」や「以上」と混同されやすく、正確な使い方に迷う方も少なくありません。
この記事では、「以降」の正しい意味や使い方を丁寧に解説しつつ、「以後」「以上」との違いについても具体例を交えてわかりやすく紹介します。言葉のニュアンスを正しく理解し、文章力を一段と高めましょう。
「以降」の基本的な考え方:含むとはどういう意味?
「以降」という言葉は、ある基準となる時点や順序を起点として、その後のすべてを指す日本語表現です。
しかし、「以降にはその基準も含まれるのか?」と疑問に思う方も多いのではないでしょうか。ここでは、「以降」の基本的な意味と、実際にどこまでを指すのかを明確にしていきます。
「以降」の基本定義
「以降(いこう)」とは、「ある基準となる時点や順番を含めて、それよりも後のことすべて」を意味します。
たとえば、「4月1日以降に提出してください」という表現は、4月1日も含めて、それ以降のすべての日を対象としているという解釈になります。
「以降」と表現される例
- 「10時以降にお越しください」→ 10時ちょうども含む
- 「第2章以降を読んでおいてください」→ 第2章も含めて読む
この言葉は、ビジネスメール、契約書、学校のお知らせなど、正式な場面で幅広く使用されるため、正確な理解が求められます。
「以降」は基準日も含むって本当?
結論から言うと、「以降」は原則として基準となる日や時間も含まれる表現です。
つまり、「〇〇日以降」「〇〇時以降」と言った場合、その〇〇日・〇〇時も範囲に入るのが一般的な解釈とされています。
ただし、文章の文脈や話し手の意図によっては、基準を含まない意味で使われるケースもゼロではありません。そのため、誤解を避けるためには、明確な表現を心がけることが大切です。
明確に伝えるための工夫として、
- 「〇〇日を含む以降」:含まれることを強調
- 「〇〇日を除く翌日以降」:含まないことを明示
このように一言添えるだけで、より誤解のない伝達が可能になるでしょう。
「以降」と似ている言葉との違い
「以降」は便利な表現である一方で、「以後」「以上」「以前」「未満」など、似た意味を持つ言葉との違いが曖昧になりがちです。ここでは、それぞれの言葉との違いを明確にし、誤用を防ぐためのポイントを解説します。
「以後」「以上」との違い
まずは、「以後」と「以上」という、特に混同されやすい二つの語と「以降」との違いを確認しましょう。
- 以後(いご)
- 「以後」は主に“時間的な流れ”の中で「ある時点からその先」を表す言葉です。「以降」との違いは、より“未来志向”であり、物理的な順番というより“出来事や時間軸”を意識した言い回しである点です。
- 例:この件については4月1日以後に対応します。
- 以上(いじょう)
- 「以上」は数値や順序において「ある基準を含み、それより大きい・上の範囲すべて」を指します。「以降」が時間や順序に焦点を当てるのに対し、「以上」は量や数に関する表現が中心です。
- 例:体温が37.5度以上の方はご遠慮ください。
「以降」と「以後」や「以上」を整理すると、次のようになります。
- 「以降」=時点・順序を起点としたその後すべて(基準を含む)
- 「以後」=時点の“後”を指し、やや抽象的な未来表現
- 「以上」=数量や数値に関する“それを含む上限なし”の範囲
「以前」「未満」などと混同しやすい語との違い
次に、「以降」と対をなす言葉や誤解されがちな表現について見ていきましょう。
| 以前(いぜん) | 未満(みまん) | より前/より後 | |
|---|---|---|---|
| ニュアンス・意味 | ある基準の“前”を指す言葉で、「以降」とは対義語の関係にあります。 | ある数値や基準“未満”=「含まない」という点が特徴です。 | 口語的に使われる表現で、「以降」「以前」よりも会話に適しています。 |
| 例文 | 10時以前に集合してください(10時より前) | 18歳未満は入場不可(18歳を含まない) | 15日より後に発送します(=15日以降) |
「以前」「未満」などの注意点を整理すると、次のようになります。
- 「未満」は基準を含まない
- 「以降」「以前」は基準を含むのが一般的
- 文脈により解釈が変わる場合があるため、できるだけ明確な表現を選びましょう
これらの違いを正しく理解することで、ビジネスでも日常でも伝わる文章が書けるようになります。
「以降」が含むか判断するポイント
「以降」という言葉は原則として基準を含むとされますが、実際の会話や文章では曖昧さが生じることがあります。そこで、「以降」が基準を含むかどうかを判断する際のポイントや注意点、さらには誤解を避けるための具体的な表現例を紹介します。
数字や日付がはっきりしている場合の判断
「以降」が使われる際に、日付や数値など具体的な数値情報が明示されている場合は、基本的にその数値を含むと考えて差し支えありません。
「以降」と表記された例文
- 「7月1日以降にご来店ください」→ 7月1日も含まれる
- 「80番以降の答案を再確認します」→ 80番の答案も含まれる
このように、数値や日付が明示されているときは、比較的誤解が生じにくくなります。ただし、相手や場面によっては「含まれない」と解釈されることもあるため、文脈には注意が必要です。
数値以外の文脈での曖昧さと注意点
抽象的な表現や、数値以外の文脈で「以降」が使われるときには、基準を含むかどうかが曖昧になることがあります。
例えば、「この件については担当者変更以降、対応が異なります」という場合、担当が「変更されたその時点」なのか、「変更後すぐ」なのかが文脈によって異なることになります。
こうした場合、相手に誤解を与えるリスクがあるため、補足表現を用いるなどして、できるだけ明確に伝える工夫が求められます。
誤解を避けるための表現例
「以降」が含むかどうか不安な場合は、以下のような明確な表現に置き換えると安心です。
例えば、含むことを強調したいときは「◯月◯日を含む以降」や「◯◯時以降(◯◯時を含む)」、逆に含まないことを示したいときは「◯月◯日の翌日以降」や「◯◯時以後(◯◯時を除く)」のような表現が良いのではないでしょうか。
また、ビジネス文書では括弧などを用いて補足説明を加えることで、より丁寧で誤解のない表現になります。
「以降」だけに頼らず、「含む/含まない」を明示する言葉を添えることで、相手に伝わりやすくなります。特に契約書や社内通達などでは、この一言がトラブルを未然に防ぐ鍵になります。
「以降」のよくある場面別の使い方と表現例
「以降」は様々な場面で活用される言葉ですが、使用するシチュエーションによって適切な言い回しやニュアンスが異なります。ここでは、ビジネスや日常生活、英語での表現方法など、具体的な場面ごとの使い方とそのポイントを紹介します。
ビジネスメールや契約書での使用例
ビジネスシーンでは、相手に誤解を与えない明確な表現が求められます。「以降」は丁寧ながらも曖昧さが残る可能性があるため、補足表現と組み合わせて使うと効果的です。
例文1:メールでの使用
- 「7月10日以降(同日を含む)のご都合をお知らせください」
例文2:契約書での使用
- 「契約期間は2025年4月1日以降とする」
※必要に応じて、「2025年4月1日を含む」と明記すると明確です
ビジネスでは「明文化」が重要です。あいまいな表現は避け、含むかどうかを明記しましょう。
日常会話やSNSなどでの実例
カジュアルな場面では、やや曖昧な使い方でも通じることが多いですが、文脈によって誤解が生じやすいため注意が必要です。
- SNS投稿例
「今週金曜以降、時間空いてます!」→ 金曜からOKと解釈されるが、曖昧さは残る - 友人との会話
「3時以降ならいつでも大丈夫」→ 3時ぴったりも含む意図で使われることが多い
💬日常会話では、「〇〇から」「〇〇過ぎたら」など、より口語的な表現に置き換えてもOKです。
英語での対応表現(on or after/after の違い)
「以降」に対応する英語表現としては、主に「on or after」と「after」があります。それぞれ含意する範囲が異なるため、文脈に応じた使い分けが必要です。
- on or after:基準日を含む
例:This offer is valid on or after July 1st.(7月1日を含む) - after:基準日を含まない
例:We will contact you after July 1st.(7月1日の翌日以降)
英語では前置詞の選択が意味の分かれ目になります。ビジネス文書や契約書では「on or after」を使うことで誤解を防ぎやすくなります。
「以降」に関してよくある疑問をFAQ形式で解説
「以降」という言葉については、日常やビジネスでの実用において「どのような意味なのか?」と疑問を持つ場面もあるでしょう。ここでは、FAQ形式でご紹介いたします。
「本日以降」って「今日」も含むの?
「本日以降」という表現は、原則として今日を含む意味になります。
たとえば「本日以降、受付を開始します」とあれば、今日から受付が可能だと理解して問題ありません。
ただし、文章の流れによっては誤解が生じる場合もあるため、必要に応じて「本日を含む」と明記すると安心です。
「火曜日以降」って火曜日から行って大丈夫?
基本的に、「火曜日以降」は火曜日を含む表現とされています。
したがって、「火曜日以降に来てください」とあれば、火曜日に訪問しても問題ないでしょう。
ただし、厳密なスケジュール管理が必要な場面では、「火曜日を含む以降」「火曜日の翌日以降」などと補足するのが確実です。
「以降」と「以後」はどう使い分ければいい?
以降」と「以後」は非常に似た意味を持ちますが、使い方に若干の違いがあります。
- 以降:具体的な日時や順序とともに使われることが多く、書面や口頭での幅広い場面に適しています。
例:「7月1日以降に申請可能です」 - 以後:やや抽象的で、出来事の流れや状況の変化を強調する場面に向いています。
例:「その件以後、連絡は取れていません」
つまり、「以降」はより具体的で実務的、「以後」はやや感情や流れを含んだ表現と考えると使い分けがしやすくなります。
起点を含まないと書きたいときはどう表現する?
起点を含めたくない場合は、「以降」ではなく以下のような表現を用いるのが効果的です。
- 「〇〇の翌日以降」
- 「〇〇日を除いた以降」
- 「〇〇を含まない時点から」
- 英語であれば「after(〇〇の後)」と記載
このように、表現にひと工夫加えるだけで、相手との誤解を防ぐことができます。特に契約や公式文書では、含む/含まないを正確に記載することが重要です。
まとめ:「以降」を正しく使って伝わる文章を
「以降」という言葉は、基準となる時点を含む意味で使われるのが一般的です。しかし、似た表現である「以後」や「以上」、「未満」などと混同されやすく、文脈によっては曖昧さが生じることもあります。
- 「以降」は原則、基準を含む
- 「以後」は時間的流れを意識したやや抽象的な表現
- 数値や日時が明確なときは含む意味として使いやすい
- 曖昧さを避けるためには補足表現が有効
- 英語では「on or after(含む)」「after(含まない)」を使い分ける
ビジネスでも日常でも、相手に伝わる言葉選びが信頼につながります。「以降」をはじめとした時制表現を正しく理解し、状況に応じた使い分けができるようにしておきましょう。



