給与計算のアウトソーシングは社労士が最適?社労士活用のメリットや相場を解説
給与計算は従業員を一人でも雇用していると毎月欠かさず行う必要がある業務です。また、労働時間に応じて残業代を計算したり、給与の金額に応じて所得税や社会保険料の金額を算出しなければならず、複雑で時間もかかってしまいます。
そのため給与計算について「自社の売上に繋がらないのに、大変な業務」というイメージを持っている経営者の方もおられるのではないでしょうか。
そんな給与計算業務は、社労士を上手に活用することで、
- 給与計算業務自体の効率的な対応
- 計算間違いや法令遵守によるトラブルリスクの軽減
につなげることが可能です。
今回のコラム記事では、給与計算を社労士にアウトソーシングするメリットや、具体的に依頼する事務所の選び方、費用の相場などを解説いたします。給与計算のアウトソーシングを検討している経営者や人事労務担当者に知っておいていただきたい情報を「実際に給与計算をアウトソーシングされる立場」である専門家としてお伝えしますのでぜひ参考にしてください。
給与計算の最適化と法的遵守を目指して、実践的なアドバイスを提供します。
TSUMIKI社会保険労務士事務所では1名企業から100名前後の規模の企業様を中心に給与計算アウトソーシングを提供しております。勿論500名、1,000名といった企業様にも対応しておりますので、実体験をもとに解説いたします。
矢野 貴大
TSUMIKI社会保険労務士事務所/代表・社会保険労務士
金融機関・社会保険労務士法人・国内大手コンサルティング会社を経て大阪で社会保険労務士事務所を開業。
25歳で社労士資格を取得した後、社会保険労務士・経営コンサルタントとして延べ200社を超える企業・経営者をサポートする。その経験を活かし「想いを組み立て、より良い社会環境を形づくる」というMISSIONに向かって日々活動中。
給与計算のアウトソーシングは社労士に依頼すべき?
給与計算は、従業員に支払うべき金額を算出する業務ですが、従業員の日々の生活に直接的な影響があります。そのため計算を間違えてしまうと信頼に直結するため、慎重に行う必要があります。
業務効率化や本業に集中できる環境整備を行っている企業では、給与計算を外部にアウトソーシングすることを検討されており、社労士に白羽の矢が立つことは少なくありません。一般的なアウトソーシング会社ではなく社労士を選ぶメリットや依頼する価値としてはどのようなものがあるのか見ていきましょう。
なぜ社労士へ給与計算をアウトソーシングするのか?
社労士への給与計算委託が増加している背景には、複雑化する労働諸法令への対応の難しさと、自社で内製化した場合の給与計算ミスの発生率の高さがあります。
社労士は給与計算業務に必要な
- 労働基準法
- 雇用保険法
- 健康保険法
- 厚生年金保険法
といった知識を専門領域としており、所得税、地方税についても理解があります。
「人の専門家」として、従業員の労働状況に応じた正確な給与計算が可能であり、最新の法改正にも対応することができるため、社労士に給与計算を外注する場合は法的違反のリスクやその結果として生じる従業員とのトラブルが減らせるのです。
給与計算をアウトソーシングする社労士の選び方
給与計算代行の相場は、提供されるサービスの範囲や企業の規模によって異なります。一般的に、給与計算をアウトソーシングする際の費用は「従業員一人当たりの料金+月額基本料」として設定されることが多いです。
そのため社労士を選ぶ際
- アウトソーシングとしてどの部分を外注するのか?
- 外部委託として支払うことのできる費用の予算はどの程度なのか?
- 何名の正社員、パートやアルバイトを雇用しているのか?(企業規模はどの程度なのか?)
まずは自社の状況を正確に整理しておくことで、費用対効果の観点から依頼先の社労士が選定しやすくなります。これらの情報がまとまりましたら、
- サポート品質(誰がフロントで対応してくれるのか?)
- サポート範囲(計算だけなのか、給与計算上の課題提起までしてくれるのか?)
- サポート力(自社のルールに適した計算対応できるのか?)
上記の観点で社労士を探していきましょう。これらの情報は社労士事務所のWEBサイトだけでは収集しきれませんので、一度問い合わせ・打ち合わせをされることをおすすめいたします。
TSUMIKI社会保険労務士事務所では、オンラインで無料相談を実施しております。給与計算のアウトソーシングを検討されている場合、ぜひお気軽にご相談ください。
また自社にあった社労士の選び方は、下記コラム記事で詳しく解説していますのでぜひ併せてご一読ください。
給与計算における法的な落とし穴とは?活用すべき社労士の専門知識
続いて、より具体的に社労士に給与計算を依頼した場合のメリットを見ていきましょう。給与計算は一見「数字の計算作業」ですが、法令遵守の観点で考えると多くの企業にとって複雑かつリスクの高い業務です。
数多くの労働諸法令、所得税方や地方税法といった最低限の知識も必要であり、社労士へ依頼することで経営者は「専門的な知識」をフルに活用することが可能になるのです。
社労士による給与計算:違法リスクを回避する方法
給与計算の過程での違法な行為は、企業に重大な罰金や評判の低下をもたらす可能性があります。例えば、
- 残業時間への対応
- 法定外の労働時間、法定休日の労働時間、深夜の労働時間、月60時間を超える労働時間、これらに対して会社は割増賃金(残業代)を支払う必要がある
- 上記の割増賃金の割増率(通常の賃金に対して上乗せしなければいけない賃金)は異なっており、従業員一人ひとりに計算しなければならない
- 社会保険料への対応
- 雇用保険、健康保険や厚生年金保険に加入する従業員については、毎月の給与から各保険料を計算しなければならない
- 毎年料率が変更される可能性もあり、従業員の各保険手続きも状況に応じて随時対応が求められる
- 最低賃金への対応
- 近年、毎年10月ごろに全国的に最低賃金が引き上げられており、企業は最低賃金を上回る給与を支払う必要がある
- 時給で働くパートだけでなく、月給の正社員についても最低賃金は適用されるため、最低賃金を上回っているのか確認しなければならない
上記のように「様々な観点で正確に処理ができているのか?」確認しなければなりません。これらは一つでも対応が漏れていると「違法な行為」になってしまうため、従業員からの信頼も失うだけでなく行政指導の対象にもなり得ます。
社労士はこれらの法的リスクを理解し、適切な給与計算を行うためのサポートが可能なため、社労士からアドバイスを受けることで企業は法令遵守に繋げられるのです。
給与計算を行う人材の育成:社労士の役割と助言
社労士は、給与計算業務を行う人材の育成にも大きな役割を果たします。社労士から給与計算に関連する最新の法律知識やベストプラクティスの共有を受けることで、内製化に向けて企業内のスタッフを教育することが可能です。
また、給与計算プロセスにおける効率化やミスの低減に向けたコンサルティングも受けられる場合もありますので、社労士からのアドバイスとサポートを通じて、企業は内部の人材を育成し、長期的に給与計算業務の品質を向上させることができます。
税理士と社労士:給与計算での役割の違いとは?
給与計算のアウトソーシング先として税理士を選ぶこともあります。一見専門家として同じようなサポートが受けられそうですが、実は給与計算においては税理士と社労士の役割は異なります。
税理士は主に税務関連の専門家であり、給与計算においては所得税や住民税の計算に重点を置きます。一方で、社労士は労働法規と社会保険制度に関する専門知識を持ち、労働時間管理、社会保険料の計算、最低賃金法の遵守など、より広範な給与計算の問題を扱います。
そのため「従業員の労務・厚生業務は自社で対応できる」といった場合には税理士にアウトソーシングすることで効率化が図れますが、給与計算業務自体に不安がある場合にはしっかり選定されることをおすすめいたします。
給与計算を社労士に外注する?それとも内製化?
給与計算は、企業運営において重要な業務の一つです。この業務を社労士に外注するか、それとも自社で内製化するか、多くの企業にとって重要な経営判断であり意思決定のポイントです。
社労士に給与計算を委託することの費用対効果、自社で給与計算を行う場合のメリットとデメリットを確認しましょう。
社労士に給与計算を依頼する際の費用相場やコストパフォーマンス
社労士に給与計算を依頼する際のコストは、提供されるサービスの範囲や企業の規模によって異なりますが、一般的には従業員一人当たりの料金や月額固定費で計算されます。
TSUMIKI社会保険労務士事務所で独自に給与計算の月額相場を調べ、一例として下記にまとめておりますので参考にしてください。
社労士事務所A | 社労士事務所B | 社労士事務所C | |
---|---|---|---|
基本料金 | 20,000円 | 15,000円 | 15,000円 |
従業員1名あたりの単価 | 1,000円 | 1,200円 | 900円 |
従業員10名以下 の目安費用 | 30,000円 | 27,000円 | 24,000円 |
従業員11名から30名の目安費用 | 31,000〜50,000円 | 28,200〜51,000円 | 24,900〜42,000円 |
従業員31名から50名 の目安費用 | 51,000〜70,000円 | 52,200〜75,000円 | 42,900〜60,000円 |
これらの費用は、給与計算の複雑さや追加サービスの要求に応じて変動することがありますので注意が必要です。
社労士を利用する主なコストパフォーマンスは、法的遵守の確保、給与計算のミス減少、業務外注による管理の効率化にあります。自社で内製化する際は担当者の採用や教育が必要であり、当然ながら担当者への給与支払いが発生します。
人件費と社労士への外注費用を比べ、自社にとって内製化・外注どちらにかじを切るべきなのか検討しましょう。
TSUMIKI社会保険労務士事務所に給与計算を依頼した場合の費用は?
基本料金
11,000円/月
(税込み)
- 企業規模に関わらず、基本料金は一律
従量課金分
660円/月・1名
(税込み)
- 従業員10名の場合税込み17,600円
オプション
110円~/月
(税込み)
- オプションごとに各種都度加算
※初回ご契約時は、初期設定費用として月額料金分を加算させていただきます。
※人数は、役員・正社員・パート・アルバイト・嘱託社員等の雇用形態に関わりなくカウントいたします。
※上記金額は、弊社の指定するフォーマットにて実施する場合となります。オーダーメイド対応をご希望される場合は別途お見積りとなりますのでご容赦ください。
給与計算業務を自社で行うメリットは?
自社で給与計算を行う最大のメリットは、業務プロセスやスケジュールのコントロールと社内コミュニケーションによる対応力です。しかし、これには適切な専門知識とリソースが必要であり、誤りが発生した場合のリスクもありますので念頭においておきましょう。
コントロールとカスタマイズ
給与計算を内製化することで、企業側で
- 給与計算の業務プロセスを統一できる
- 業務をいつ行い、振込処理をどのタイミングで行うのか柔軟に決定できる
こういったメリットがあります。そのため自社で給与計算がしやすい環境が作りやすいことになります。
機密情報の保護
従業員の給与に関するデータを社内で管理することで、機密情報の漏洩リスクを抑えることができます。ただし、給与計算を経営者層で対応せずに担当者を配置する場合、情報管理の教育が重要になります。
直接的なコミュニケーション
労働時間や何かしらの問題や疑問が発生した場合、従業員と直接コミュニケーションが取れるためスムーズに解消することが可能です。
給与計算業務を自社で行うデメリットは?
内製化には特定のメリットがありますが、一方でコストやリソースの増加、専門性や経験の低さから伴う業務ミス、毎月の稼働時間の確保や、リスクの増加、および企業のスケール化に伴う対応の難しさなどデメリットもあります。
コストとリソース
給与計算の内製化には、専門知識を持つ人材の採用・研修、給与計算システムの購入・維持、そしてこれらシステムのセキュリティとプライバシー保護のための投資が必要になります。直接的な金銭コストのほか、人材管理や技術および知識のアップデートに関する時間や労力が欠かせません。
アウトソーシングにより、企業は一定の料金を支払うことで社労士から専門知識、システムのメンテナンス、アップデートの提供が受けられますので、本業をはじめとした戦略的業務にリソースを集中させることが可能になります。
担当者を配置できたとしても、退職されると採用活動から行う必要もあります。内製化の場合は退職のリスクが常にある点は気をつけておきましょう。
専門性と経験
給与計算は税法や社会保険、労働法など法律が複雑に絡む業務です。これらに精通し、常に最新の法改正に対応するためには、専門性の高い知識がなければ業務ミスは避けられません。
給与計算の正確性や正誤判断は経験値が求められますので、自社ですべて対応することは大変といえます。
毎月の稼働時間
給与計算業務は主に下記のような手順で対応しなければなりません。
- 従業員データの収集と確認
- 従業員からの基本情報(名前、住所、税金情報など)と雇用条件(役職、給与、労働時間など)を収集
- 収集した情報の正確性を確認し、必要に応じて更新
- 勤務時間と出勤状況の記録
- 従業員の勤務時間、残業時間、休暇などの出勤状況を記録
- 記録された時間が正確かどうかを検証し、問題があれば是正
- 給与計算
- 基本給、残業代、その他手当などを計算
- 所得税、社会保険料、その他の控除を計算して支給金額を決定
- 給与明細の作成と振込み
- 従業員に対して、受け取る給与額と控除額の内訳を示す給与明細書を作成
- 確定した給与を指定された支払い方法で従業員に振込む
内製化をする際には毎月これらの作業に時間を割り当てる必要があり、時間的負担が増えることになります。
リスクの増加
税法、労働諸法令は定期的に改正されますが、専門的な知識がなければ
- いつ改正がされたのか?
- 改正された内容が給与計算にどう影響を及ぼすのか?
- そもそも自社が対応しなければいけない改正なのか?
こういった状況に陥ることがあります。また、誤った対応をしてしまうと法的リスクに繋がります。
企業のスケール化
企業の成長に伴い、従業員数が増えたり拠点展開が行われると、給与計算に関連する作業量も増加します。
対応するためには追加の人員採用やシステムのアップグレードが必要になりますが、時間とコストを掛けなけば対応ができません。
まとめ:本業に集中したい企業は社労士に給与計算を依頼しよう
重ねてになりますが、給与計算は単に数字を扱う作業以上の重要性を持ちます。
法令遵守、従業員から企業への信頼を得るためには正確かつ効率的な処理が求められます。今回のコラム記事では給与計算を社労士にアウトソーシングする際に考えるべきポイントとして
- 委託先の選び方
- 社労士に依頼した際の費用の相場
- 内製化のメリットやデメリット
上記について解説をいたしました。しかしながら全ての経営者、人事労務担当者のお悩みの解消は難しいと思いますので、さらに詳しい情報や個別の相談が必要な場合は、ぜひTSUMIKI社会保険労務士事務所までご相談くださいませ。
弊社では給与計算をはじめとした人事労務の専門家として、貴社のビジネスに最適なソリューションを提案しております。会社特有のニーズに合わせて給与計算の効率化と法的遵守を実現するサポートいたしますので、ご不明な点や具体的なサポート内容についてはお気軽にお問い合わせください。