「今般」と「この度」の意味の違いとは?ビジネスでの正しい使い分けを例文付きで解説

ビジネスメールや文書を作成する際、「今般」と「この度」のどちらを使うべきか迷ったことはないでしょうか。意味は似ているものの、使い方を誤ると、文章が不自然に堅くなったり、逆に場にそぐわない軽さを与えてしまうことがあります。
特に社外向けの連絡や正式な案内では、わずかな言葉選びが相手の受け取り方を左右することもあるでしょう。そこで本記事では、「今般」と「この度」の意味の違いを整理したうえで、ビジネスシーンに応じた正しい使い分けを、具体的な例文とともにわかりやすく紹介いたします。
「今般」と「この度」がビジネスで迷われやすい理由
「今般」と「この度」という言葉はどちらも改まった印象を持つ言葉であり、実際の業務では似た場面で使われることがあるため、ビジネス文書やメールを作成する際に「どっちを使えばいいの?」と手が止まった方もいらっしゃるのではないでしょうか。
意味や語感の違いを理解しないまま使うと、文章全体に違和感が生じたり、意図せず距離感のある表現になったりすることがあります。まずは、なぜこの二つの言葉が混同されやすいのかを整理していきましょう。
似た場面で使われるため混同しやすい
「今般」と「この度」は、どちらも「今回」「このたび」といった時間的な区切りを表す言葉です。
たとえば、案内文やお知らせ、報告メールの書き出しなど、文頭で使われるケースが多く、置き換えても文法上は成立してしまいます。そのため、「どちらでもよさそうだ」と判断されがちです。
ビジネスシーンにおいては、過去の文例を参考にして文章を作ることも多く、以前使われていた表現を深く考えずに流用するケースも見受けられます。その結果、フォーマルすぎる表現が日常的なメールに混ざったり、逆に軽く見える表現が正式文書に使われたりするなど、ちぐはぐな印象につながりやすくなります。
誤用すると違和感や堅すぎる印象を与えることがある
特に注意したいのは、言葉が持つ「硬さ」の違いではないでしょうか。
「今般」は公的文書や改まった通知で使われることが多く、やや硬質で距離のある表現です。一方の「この度」は、丁寧さを保ちつつも、相手への配慮や柔らかさを含んだ言い回しとして受け取られやすい特徴があります。
この違いを意識せずに使ってしまうと、社外向けの重要な案内には軽すぎる印象を与えたり、社内の簡単な連絡に対して大げさで堅苦しい文章になったりすることがあります。
「今般」の意味とビジネスでの使い方
「今般(こんぱん)」は、ビジネス文書や公式な案内で目にすることが多い表現ですが、日常会話ではほとんど使われていないと思われます。そのため、「何となく堅い言葉」という印象だけで使われがちですが、適した場面とそうでない場面を理解しておくことが重要です。ここでは、「今般」の意味と、ビジネスでの適切な使い方を整理してみましょう。
「今般」の基本的な意味と語感
「今般」とは、「今回」「このたび」「最近」といった意味を持つ言葉で、ある出来事や判断が“今まさに該当する事案”であることを示します。辞書的な意味だけを見ると「この度」と大きな違いはありませんが、語感には差があります。
今般は、感情や配慮を含まず、事実や状況を淡々と示す表現ではないでしょうか。そのため、文章全体が事務的で客観的な印象になりやすく、読み手との距離を一定に保つ言葉だといえます。
公的・フォーマルな文脈で使われやすい理由
今般がよく使われるのは、社外向けの正式文書や、組織としての立場を示す文章です。
たとえば、規程の改定、価格変更、制度変更など、「決定事項を通知する」場面では、個人の感情を排した表現が求められます。
そのような文脈では、「この度」よりも「今般」のほうが、私的なニュアンスが入りにくく、組織としての公式見解を示す言葉として適していると考えられます。結果として、読み手に対して公平で落ち着いた印象を与えることができます。
「今般」が適しているビジネスシーン
今般は、誰かにお願いをする場面や感謝を伝える場面よりも、事実や決定事項を伝える通知・案内で用いられることが多いように感じます。
具体的には、次のような場面が挙げられます。
通達・お知らせ・改定案内での使用例
- 規約や利用条件の変更を知らせる文書
- 組織としての方針や決定事項の通達
- サービス内容・料金改定などの公式案内
これらの文章では、読み手との距離を適度に保ち、冷静かつ正確に情報を伝えることが求められます。その点で、「今般」は文頭に置くだけで文章全体を引き締める役割を果たします。
「今般」を使う際の注意点
便利な表現である一方、使いどころを誤ると違和感が出やすいのも「今般」の特徴です。
たとえば、次のような場面では注意が必要です。
- 取引先への簡単なお礼メール
- 社内メンバーへのカジュアルな連絡
- 依頼や相談など、相手の協力を仰ぐ場面
こうした文脈で「今般」を使うと、必要以上に堅く、よそよそしい印象を与えてしまうことがあります。特にメールでは、文章量が少ない分、言葉の硬さが強調されやすいため、「この度」や「今回」といった柔らかい表現のほうが適しているケースも少なくありません。
「この度」の意味とビジネスでの使い方
「この度(このたび)」は、ビジネスシーンでも日常的によく使われる表現です。改まった言葉ではあるものの、「今般」ほど硬質ではなく、相手への配慮や丁寧さを自然に含められる点が特徴です。
ここでは、「この度」が持つ意味と、実務で使いやすい場面・注意点を紹介いたします。
「この度」の基本的な意味とニュアンス
「この度」は、「今回」「この機会に」といった意味を持ち、ある出来事や行為が“今起きたこと・行うこと”であると伝える表現です。時間的な区切りを示す点では「今般」と共通していますが、「この度」には、相手に向けた言葉としての柔らかさが含まれています。
文章にすると、出来事そのものだけでなく、「その件についてご連絡します」「ご報告します」といった、話しかける姿勢が感じられるのが特徴でしょう。そのため、読み手は一方的な通知ではなく、丁寧に説明を受けている印象を持ちやすくなります。
相手への配慮を含む表現である点
「この度」は、感謝・依頼・報告といった、人と人とのやり取りが前提となる文章と相性が良い言葉です。
単なる事実の提示ではなく、「相手がいる」ことを前提にした表現であるため、ビジネスメールの書き出しとして広く使われています。
その結果、多少形式張った文章であっても、冷たい印象になりにくく、無難で使いやすい言葉として定着しています。
「この度」がよく使われるビジネスシーン
ビジネスシーンでは、「この度」は非常に幅広い場面で使用されています。特に、相手との関係性を円滑に保ちたい場面で選ばれやすい表現です。
代表的な使用シーンには、次のようなものがあります。
依頼・報告・お礼での使用例
- 新しい取引や契約の開始に関する連絡
- 依頼や相談を持ちかけるメール
- 打ち合わせ後のお礼や進捗報告
これらの文脈では、「今般」よりも「この度」のほうが自然で、読み手に心理的な負担を与えにくい傾向があります。丁寧さを保ちつつも、過度に距離を感じさせない点が評価されている理由です。
「この度」を使う際の注意点
使い勝手の良い言葉ではありますが、万能というわけではありません。状況によっては、かえって不自然に感じられることもあります。
「この度」は便利な反面、メールの書き出しで繰り返し使われやすい表現です。短い文章や、やり取りの回数が多い相手との連絡で毎回使うと、やや大げさで形式的な印象を与えることがあります。
社内のやり取りや、すでに関係性が築かれている相手には、「今回」「先日の件ですが」など、少しくだけた表現に言い換えたほうが読みやすい場合もあります。丁寧さと自然さのバランスを意識することが重要です。
「今般」と「この度」の違いを比較整理してみよう
ここまで見てきたように、「今般」と「この度」は意味自体は近いものの、ビジネスで使ったときの印象や役割にははっきりとした違いがあります。実際の仕事上では感覚的に使い分けている人も多いですが、基準を言語化しておくと、文書作成の迷いが減りますので、両者の違いを整理し、判断しやすくするために言葉を比較してみましょう。
意味・使用場面・硬さの比較
最大の違いは、「誰に向けた文章か」「どの程度フォーマルさが求められるか」という点にあります。
「今般」は、出来事そのものに焦点を当てた表現で、組織としての立場や公式性を前面に出す言葉です。一方の「この度」は、出来事に加えて、相手への説明や配慮を含めて伝えるニュアンスがあります。
| 観点 | 今般 | この度 |
|---|---|---|
| 基本的な意味 | 今回・最近 | 今回・この機会に |
| 文体の硬さ | 硬い・事務的 | 丁寧だが柔らかい |
| 主な用途 | 通達・公式文書 | メール・依頼・報告 |
| 感情・配慮 | 含まれにくい | 含まれやすい |
| 使用頻度 | 限定的 | 非常に高い |
このように整理すると、「今般」は文章の性格を、「この度」は相手との関係性を重視した言葉だと捉えると分かりやすくなります。
用例で見る「今般」と「この度」の使い分け
「今般」と「この度」は意味が近いため、同じ文脈に当てはめても文法上は成立します。しかし、実際に並べてみると、読み手が受ける印象には明確な差が生まれます。ここでは、ビジネスでよくある場面を想定し、用例を通して使い分けの感覚を整理します。
通知・案内文での比較
まずは、決定事項を伝える通知文を見てみましょう。
今般、弊社サービスの内容を一部変更することとなりました。
この度、弊社サービスの内容を一部変更することとなりました。
どちらも誤りではありませんが、「今般」を用いた場合は、事実を淡々と伝える公式な通知という印象が強くなります。一方、「この度」は、読み手に向けて説明しているニュアンスが加わり、やや柔らかい文面になります。不特定多数への案内や規程変更の告知であれば、「今般」のほうが文書全体のトーンと合いやすいでしょう。
お礼・挨拶文での比較
次に、相手への感謝を伝える場面です。
今般は、お打ち合わせのお時間をいただき、ありがとうございました。
この度は、お打ち合わせのお時間をいただき、ありがとうございました。
この場合、「今般」を使うとやや不自然で、形式的すぎる印象を与えます。感謝や挨拶といった人間関係を前提とする文脈では、「この度」を選ぶほうが自然で、相手にも丁寧な印象が伝わります。
報告・連絡文での比較
報告メールでも、両者の違いははっきり表れます。
今般の件につきまして、下記のとおりご報告いたします。
この度の件につきまして、下記のとおりご報告いたします。
社外向けの正式な報告書や、組織としての立場を示す文書であれば「今般」が適しています。一方、個別のやり取りやメールでの報告では、「この度」のほうが相手に配慮した印象になり、読みやすくなります。
このように、同じ内容であっても、どちらの言葉を選ぶかによって文章の性格は変わります。用例を基準に、「通知かコミュニケーションか」という視点で判断すると、実務でも迷いにくくなります。
どちらを使うべきか迷ったときの判断基準
実際の業務では、「正解はどちらか」と悩む場面もあります。その場合は、次の二点を基準に考えると判断しやすくなります。
まず、その文章が通知・通達なのか、コミュニケーションなのかを考えてみましょう。決定事項を一方的に伝える文書であれば「今般」、相手に理解や対応を求める文面であれば「この度」が適しています。
次に、相手との距離感です。取引先や顧客など、配慮が必要な相手には「この度」を選ぶほうが無難です。一方、不特定多数に向けた案内や、公式性を優先する場合は「今般」を使うことで、文章全体が引き締まります。
この二つの軸で考えれば、迷った際も感覚に頼らず、文脈に合った選択がしやすくなるでしょう。
ビジネスメール・文書での具体的な使い分け例
「今般」と「この度」の違いを理解しても、実際の文章に落とし込む際に迷うことは少なくありません。このセクションでは、実務でよくある文面を想定しながら、それぞれの言葉が自然に機能する使い分け例を確認していきます。
「今般」を使った適切な例文
今般は、公式性や客観性が求められる文書で効果を発揮します。個人の感情を抑え、事実や決定事項を端的に伝えたい場合に適しています。
- 今般、弊社サービス内容の一部を変更することとなりましたので、お知らせいたします。
- 今般の組織改編に伴い、担当部署が変更となります。
- 今般の規程改定について、下記のとおりご案内申し上げます。
いずれも、「知らせる」「通知する」という目的が明確で、相手に何らかの感情的な反応を求める文章ではありません。そのため、「この度」に置き換えると、やや私的で説明的な印象になる場合があります。
「この度」を使った適切な例文
一方、「この度」は相手とのやり取りを前提とした文面に適しています。依頼や感謝、報告など、人を介したコミュニケーションで使うと自然です。
- この度は、お打ち合わせのお時間をいただき、誠にありがとうございました。
- この度、新しい担当としてご挨拶申し上げます。
- この度の件につきまして、下記のとおりご報告いたします。
これらの文章では、「今般」を使うと距離感が強くなり、形式的すぎる印象を与える可能性があります。「この度」は、丁寧さを保ちつつ、相手への配慮を示せる点が強みではないでしょうか。
不自然になりやすいNG例と改善ポイント
実務で見かけやすいのが、文脈に合わない使い方です。
たとえば、
という文章は、感謝を伝える場面としては硬すぎます。この場合は、「この度」や「先日は」に言い換えることで自然になります。
逆に、
という表現は間違いではありませんが、不特定多数への正式通知であれば、「今般」のほうが文書全体のトーンと合うケースもあります。
単語単体で正誤を判断するのではなく、「文章の目的」と「相手との関係性」を意識することが、違和感を避ける最大のポイントです。
「今般」や「この度」を使わないほうがよいケース
「今般」と「この度」は便利で無難な表現ですが、すべてのビジネスシーンに適しているわけではありません。状況によっては、かえって堅すぎたり、回りくどく感じられたりすることもあります。最後に、これらの言葉を避けたほうがよい場面と、代替表現の考え方を整理します。
口頭でのコミュニケーションの注意点
まず、口頭でのやり取りでは注意が必要です。会議や打ち合わせ、電話対応などで「今般」や「この度」を使うと、文章表現をそのまま読み上げているような不自然さが出やすくなります。
たとえば、「今般の件ですが」と切り出すよりも、「今回の件ですが」や「先ほどお話しした件ですが」としたほうが、会話として自然でしょう。口頭では、相手とのテンポや距離感が重視されるため、書き言葉特有の表現は控えめにするのが無難です。
社内チャット・カジュアルな文脈での代替表現
社内チャットや短文のメールなど、スピード感が求められる場面でも、「今般」「この度」はやや大げさに感じられることがあります。特に、日常的にやり取りしている相手に対して使うと、形式張った印象が強調されがちです。
そのような場合は、次のような表現に言い換えることで、読みやすさが向上します。
- 今回の対応についてご共有します
- 先日の件ですが、進捗をご報告します
- 下記の内容をご確認ください
大切なのは、丁寧さを保ちつつも、文脈に合った言葉を選ぶことです。「今般」「この度」を使うこと自体が目的になってしまうと、文章が硬直し、伝わりにくくなる可能性があります。
相手・媒体・目的を踏まえて表現を選ぶことが、ビジネス文書全体の質を高めることにつながります。
ビジネス文脈に応じた言葉選びが印象を左右する
「今般」と「この度」は、どちらもビジネスで頻繁に使われる改まった表現ですが、意味の近さだけで選ぶと、文章のトーンや相手に与える印象にズレが生じます。
今般は公式性や客観性を重視した通知・通達向きの言葉であり、この度は相手への配慮や丁寧さを含めたコミュニケーション向きの表現です。
重要なのは、「正しい日本語かどうか」ではなく、「その場面にふさわしいかどうか」という視点です。文書の目的が決定事項の周知なのか、相手とのやり取りなのかを見極め、相手との距離感や媒体に応じて言葉を選ぶことで、文章はより自然で伝わりやすくなります。
定型表現に頼りすぎず、状況に応じて「今回」「先日の件」なども柔軟に使い分けることが、ビジネス文書全体の質を高める近道といえるでしょう。



