有給休暇の時季変更権とは?トラブル防止につながる事例を社労士が解説

働き方改革により、年次有給休暇が年間10日以上付与される従業員に対しては年5日の取得義務が会社・経営者に課せられています。そのため「忙しくても有給休暇を取得させなければ、法律違反になってしまう」「同僚と日を併せて有給申請をする従業員がおり、困っている」というお声はよく聞きます。
年次有給休暇をいつ、何日取得するのかは従業員が自由に決められる権利ですので「申請を拒否する」ことはできません。しかしながら会社側は唯一「時季変更権」を持っており、一定の理由がある場合には従業員の希望する有給休暇取得日を変更することができるのをご存知でしょうか。
今回は、会社側の権利である時季変更権について、法律の内容から実務上の取り扱いおよび、よくある質問を紹介いたします。有給休暇申請日の状況によっては、時季変更権を適切に行使しながら事業運営を行うことができますので確認していきましょう。
矢野 貴大
TSUMIKI社会保険労務士事務所/代表・社会保険労務士
金融機関・社会保険労務士法人・国内大手コンサルティング会社を経て大阪で社会保険労務士事務所を開業。
25歳で社労士資格を取得した後、社会保険労務士・経営コンサルタントとして延べ200社を超える企業・経営者をサポートする。その経験を活かし「想いを組み立て、より良い社会環境を形づくる」というMISSIONに向かって日々活動中。

時季変更権とは?法律・条文を確認
時季変更権は、労働基準法に定められている制度です。まずは記載されている内容を確認しておくことで、時季変更権の行使方法や注意点がわかりやすくなりますので、まずは法律の内容を見てみましょう。
年次有給休暇の取得申請日を変更できる権利
年次有給休暇は、労働基準法第39条で定められており、その条文によると
第三十九条
使用者は、前各項の規定による有給休暇を労働者の請求する時季に与えなければならない。ただし、請求された時季に有給休暇を与えることが事業の正常な運営を妨げる場合においては、他の時季にこれを与えることができる。
引用元:e-Gov「労働基準法」
とされています。
つまり、年次有給休暇は原則「従業員の請求する日(取得申請日)に取得させなければならない」ものであり、拒否することは法律上認められておりません。
ただし「事業の正常な運営を妨げる場合」のみ、従業員が請求している人は別日に取得させることができる権利を会社は持っており、それが時季変更権なのです。

時季変更権に強制力はある?
時季変更権の行使が適法通りですと、従業員の希望日とは異なる日に有給を取得させる強制力が発生します。
ただし条文に記載されている通り、時季変更権の行使は「事業の正常な運営を妨げる場合」に制限がされているため、強制力が働くケースは非常に限定的と言えますので注意をしてください。
例えば「世間がGWのときは稼ぎ時だから、有給休暇は認められない」「3日も連続で有給休暇を取られると他の従業員が忙しくなるから変更してくれ」のような理由では認められず、違法と判断されます。
社会保険労務士 矢野貴大後ほど「事業の正常な運営を妨げる場合」がどのようなシーンなのか解説いたしますが、原則難しいという理解をしておいてください。
時季変更権が行使できたらどうなる?
時季変更権を法律に則り行使できた場合、従業員が請求した有給休暇取得日を変更することができます。
そのため、従業員がその時季変更権を無視して当初の希望日に休んだ場合
- 労働日に欠勤したとして、給与から欠勤控除が可能
- 無断欠勤として、就業規則に定めている懲戒処分を行う
上記のような対応をすることが可能です。
ただし、従業員から「時季変更権は不当で、欠勤控除は法律違反だ」として労働基準監督署に通報されたり、トラブルにつながることがあります。そのため行使する前に時季変更権が適法・違法どちらに該当するのか確認しておきましょう。
時季変更権の取り扱いを誤ると罰則がある
「時季変更権は会社の権利だから」といって、無闇に行使したり、悪用していると実は会社側に罰則が適用される可能性があります。
年次有給休暇をはじめ時季変更権については、労働基準法第39条で定められていますが、この39条を違反すると6か月以下の懲役または30万円以下の罰金となります。
第百十九条
次の各号の一に該当する者は、これを六箇月以下の懲役又は三十万円以下の罰金に処する。
一 第三条、第四条、第七条、第十六条、第十七条、第十八条第一項、第十九条、第二十条、第二十二条第四項、第三十二条、第三十四条、第三十五条、第三十六条第六項、第三十七条、第三十九条(第七項を除く。)、第六十一条、第六十二条、第六十四条の三から第六十七条まで、第七十二条、第七十五条から第七十七条まで、第七十九条、第八十条、第九十四条第二項、第九十六条又は第百四条第二項の規定に違反した者
引用元:e-Gov「労働基準法」
また、従業員が「有給休暇を取得させてくれません」として労働基準監督署等に報告や相談があった場合、労働基準法違反が認められると会社に指導・是正勧告がされる可能性もあります。悪質だと判断されると書類送検につながりますので経営リスクは高いと言えます。



書類送検をされるとニュース等で取り上げられ「あの会社はブラック企業だ」という認識になることも考えられます。今後の採用活動や、従業員のモチベーションダウン・退職が相次ぐこともありますので、労基法違反は法律上の罰則以上にリスクがあることを知っておいてください。
時季変更権を巡る判例を紹介
時季変更権を行使する際、一番気をつけるべきポイントは従業員とのトラブルに発展しないかどうかに尽きます。
特に有給休暇関連はトラブルに繋がりやすいため、過去の判例を参考に余計なトラブルを招かないように取り扱うことが大切です。有効・違法だと判断されたポイントを抜粋してご紹介しますので、確認しましょう。
ただし、労務トラブルはケース・バイ・ケースであり、「判例で会社側が勝った事例があるのであればこの対応をしても問題ない」わけではないので、ご注意ください。
時季変更権が有効(適法)だとされた判例
まずは、会社が行った時季変更権が有効(適法)と判断された事例です。
- 使用者が当該請求に係る年休の期間における具体的な訓練の内容が、これを欠席しても予定された知識、技能の習得に不足を生じさせないものであると認められない限り、年休取得が事業の正常な運営を妨げるものとして時季変更権を行使することができる。(日本電信電話事件 最二小判平12.3.31 労判781-18)
- 鉄道郵便車における乗務事務は特殊事情にあり、厳密に計算された乗務定員一名を欠くことは一般に業務支障の発生が予想されるだけでなく、年次有給休暇の希望日が17名いた場合(新潟鉄道郵便局事件 最二小判昭60.3.11 労判452-13)
- 担当している物理の期末試験日に有給休暇の申請があり、学校長の時季変更の要請を行ったにも関わらず試験日に出勤しなかった場合(道立夕張南高校事件 最判昭61.12.18)
上記の判例を整理しますと
- 訓練の内容が今後の業務遂行にあたり必須である
- 同日に有給取得者が多く、代わりの人員確保ができない
- 業務の性質から一定の責任が有給申請者本人にある
こういった状況下において年次有給休暇を申請された場合、会社側が時季変更権を行使しても適法とされる可能性が高いと言えます。
時季変更権が無効(違法)だとされた判例
では、時季変更権が無効(違法)と判断された事例はどのようなものがあるのでしょうか。
- 勤務割(シフト表)に沿って勤務体制が整備されている場合、会社として従業員に配慮をすれば勤務割の変更ができる状況であるにも関わらず、それを行わなかった場合は事業の正常な運営を妨げることにならない(弘前電報電話局事件 最二小判昭62.7.10 )
- 慢性的な人手不足であるにも関わらず、これを放置しており、代替要員の確保が難しいことを理由とする場合(西日本ジェイアールバス事件 名古屋高金沢支判平10.3.16 労判738-32)
判例を整理しますと
- 勤務スケジュールの調整ができるにも関わらず、別の人材配置を行わなかった
- 常に人手不足で、採用活動をするなどでその解消に向けて動かなかった
このような場合には、会社側に責任があるとして時季変更権が無効と判断されると考えられます。



人手不足を根拠に時季変更権を行うのであれば、会社として「採用活動を行っているのか」「退職者が直近で発生している」等、取り組みやその理由が求められますね。中小企業では特に注意が必要かもしれません。
時季変更権を行使するには?条件や認められるケースとは
時季変更権が認められる条件の「事業の正常な運営を妨げる場合」とは、
- 会社の規模(従業員数)や業種
- 有給申請者が担当している業務の内容や性質および業務の繁閑状況
- 有給申請者が希望する有給予定日数(連続的な取得等)
- 有給申請日における代替要員の確保可否
このような観点で判断がされます。
そのため時季変更権行使は会社が置かれている時々で適法・違法を考える必要がありますが、最低限確認いただきたい内容を解説いたします。
時季変更権を行使する際のチェックリスト-事業の正常な運営を妨げる場合の事例とは-
判例解説でも一部触れていますが、時季変更権を行使する際は下記の状況をどう捉えているのか整理した後、問題ないと判断した場合に行うことをおすすめいたします。



ただし、少しでもリスクを感じた場合には専門家である社労士に相談しましょう。
条件①本当に代替要員が確保できないのか?
有給休暇は、原則従業員が希望する日に取得させなければなりません。しかしながら有給希望日が
- 前日や当日にされるなど、代替要員の準備やアサインのための調整時間が取れない
- 他の部門・チームも多忙であり、シフト調整が難しい
- 全社研修であり、そもそも代替要員の確保ができない状況
こういった背景にある場合に時季変更権を行使するのであれば、トラブルも防止できると考えられます。
条件②有給休暇の申請が他の従業員と重なっているのか?
条件①に類似しますが、有給休暇日が他の従業員と多数被っている場合には時季変更権の行使は適法となる可能性が高いです。
つまり「有給申請が少ない」のであれば時季変更権行使は難しいと言い換えられますのでご注意ください。
同日に有給申請を行う従業員が多数いる場合、時季変更権が行使できるのは「一部の従業員」のみです。「希望する全従業員」に対しての時季変更権は条件①や条件③に当てはめる必要があります。
条件③有給申請者がいなければならない業務なのか?
有給を申請する従業員に紐づく内容ですが
- 有給申請者しかできない業務が、その申請日にある
- 有給申請者が行っている業務の性質や特徴から、他の従業員のアサインが難しい
上記に該当するのかどうか、確認しておきましょう。
ただし「その従業員しかできない業務」が恒常的にあるのであれば、会社側の人材配置に問題があるとされ、違法性が高まります。
時季変更権を行使する際の手続き-できれば書面で通知しましょう-
時季変更権の行使について法律上問題がなく行使ができると判断した場合、次に必要になるのが従業員への説明です。
労務トラブルの多くは「会社と従業員のコミュニケーション不足」に起因しますので、しっかりと対応しましょう。また「言った・言わなかった」の水掛け論を防ぐためにも、時季変更は書面で伝えることが大切です。次の項目を参考に準備していきましょう。
時季変更権の理由
従業員に納得してもらうことがトラブル防止の一番の近道です。単なる
- 人手不足のため
- 代替要員が確保できないため
という一言ではなく、会社の状況や時季変更を希望する理由を明記しましょう。
有給休暇の変更候補日をいくつか提示する
時季変更権はあくまでも「有給取得日を希望とは別日にスライドさせる権利」であり、「有給休暇を拒否できる権利」ではありません。
そのため、変更する日を決める必要がありますので、従業員が変更後の有給取得日を選択しやすいように、いくつか候補日を用意しておくことも大切です。



会社から候補日が提示されると、従業員からすると「有給申請を拒否されたわけではない」と安心感が生まれますね。
行使するタイミングに注意する
時季変更の必要があるのであれば、有給申請がされた日からできるだけ遅滞なく時季変更権を行使しましょう。
有給申請が1ヶ月前にされていたにも関わらず、有給日の前日に時季変更権を行使すると「会社として従業員が年次有給休暇を取得できるように配慮して動いていない」と判断され違法になる可能性は非常に高いです。
時季変更権に関するよくある質問
では次に、時季変更権に関して経営者の方がよく疑問に思われる事項について見ていきましょう。
退職する従業員にも行使できる?
結論、退職する従業員が保有している有給休暇の日数と、退職日までの期間がどの程度あるのかによって異なります。下記表に取り扱いましょう。
| 時季変更権が可能なケース | 時季変更権が不可能なケース |
|---|---|
| 有給休暇の残日数が10日・退職日は30日後の場合、退職日までの間で「事業の正常な運営を妨げる」事由があるのであれば可能 | 有給休暇の残日数が30日・退職日は30日後の場合、退職日までの間で「事業の正常な運営を妨げる」事由があったとしても不可能 |



退職日以降はそもそも雇用契約が解約されているため、有給休暇の概念が消滅します。そのため退職日までの期間すべてを有給休暇申請されてしまうと、会社側は「指定できる別の日」がないため時季変更ができないのです。
公務員にも適用される?
公務員は、民間企業と違ってそもそも労働基準法の適用範囲が異なります。また、国家公務員・地方公務員でも違いがありますので簡単にご紹介します。
国家公務員
国家公務員については、前提として労働基準法の適用外とされています。そのため労働基準法上で定められている「年次有給休暇」や「時季変更権」も当然関係がありません。
関連する国家公務員法をみてみる
第十六条
労働組合法(昭和二十四年法律第百七十四号)、労働関係調整法(昭和二十一年法律第二十五号)、労働基準法(昭和二十二年法律第四十九号)、船員法(昭和二十二年法律第百号)、最低賃金法(昭和三十四年法律第百三十七号)、じん肺法(昭和三十五年法律第三十号)、労働安全衛生法(昭和四十七年法律第五十七号)及び船員災害防止活動の促進に関する法律(昭和四十二年法律第六十一号)並びにこれらの法律に基いて発せられる命令は、第二条の一般職に属する職員には、これを適用しない。
引用元:e-Gov「国家公務員法 附則抄」
地方公務員
地方公務員は国家公務員と異なり、労働基準法の一部を除き適用がされることになり、「年次有給休暇」や「時季変更権」も適用されます。
関連する地方公務員法をみてみる
第五十八条
3 労働基準法第二条、第十四条第二項及び第三項、第二十四条第一項、第三十二条の三から第三十二条の五まで、第三十八条の二第二項及び第三項、第三十八条の三、第三十八条の四、第三十九条第六項から第八項まで、第四十一条の二、第七十五条から第九十三条まで並びに第百二条の規定、労働安全衛生法第六十六条の八の四及び第九十二条の規定、船員法(昭和二十二年法律第百号)第六条中労働基準法第二条に関する部分、第三十条、第三十七条中勤務条件に関する部分、第五十三条第一項、第八十九条から第百条まで、第百二条及び第百八条中勤務条件に関する部分の規定並びに船員災害防止活動の促進に関する法律第六十二条の規定並びにこれらの規定に基づく命令の規定は、職員に関して適用しない。ただし、労働基準法第百二条の規定、労働安全衛生法第九十二条の規定、船員法第三十七条及び第百八条中勤務条件に関する部分の規定並びに船員災害防止活動の促進に関する法律第六十二条の規定並びにこれらの規定に基づく命令の規定は、地方公共団体の行う労働基準法別表第一第一号から第十号まで及び第十三号から第十五号までに掲げる事業に従事する職員に、同法第七十五条から第八十八条まで及び船員法第八十九条から第九十六条までの規定は、地方公務員災害補償法(昭和四十二年法律第百二十一号)第二条第一項に規定する者以外の職員に関しては適用する。
引用元:e-Gov「地方公務員法」



ただし、公務員の中でも一般職・特別職など分類がされており、取り扱いが異なる場合がありますので参考程度に捉えていただけますと幸いです。
有給休暇の受理・承認後でも問題ない?
一度有給申請を受理・承認した後は、時季変更権は違法となる可能性が高まるので注意をしてください。
過去の判例において
「年休が一旦承認された場合、その後に予測し得ない事情の変更が生じるなど、やむを得ない理由があれば時季変更権の行使は許されないわけではないが、時季変更権の行使は適切な時期に遅滞なくされるべきであり、特に、承認等によって労働者に休暇取得の期待を生じさせているような場合には、その期待を保護する必要がある」
(教員・時季変更権)事件(広島高判平17・2・16労判913号59頁)より引用
とされています。つまり、当初希望されている日において予測できないような業務が発生するなどしない限りは、時季変更権は速やかに行われるべきなのです。
また、従業員は有給休暇を希望する日に取得できる権利があるため、承認を求める必要は本来ありません。とはいえ実務上は「有給申請・承認」を行っている企業も多いと思います。従って、一度受理・承認をしたのであれば、「変更してほしい」というお願いベースで交渉をしましょう。
時間単位の年次有給休暇の申請にも行使できる?
事業の正常な運営を妨げる場合には、時間単位年休であっても時季変更は行使できます。ただし、
- 一日単位での申請に対して、時間単位の取得に変更すること
- 時間単位での申請に対して、一日単位の取得に変更すること
上記については不可とされています。



この内容については、厚生労働省労働基準局監督課「働き方改革関連法(労働基準法)の概要」にて説明がありますので、よろしければ御覧ください。
有給休暇直前でも行使できる?違法ではない?
有給休暇日の前日などに「急に忙しくなったため、有給を撤回して働いてほしい」となった場合、時季変更権は行使できるのでしょうか?
有給申請のタイミングに応じて適法・違法の判断軸が異なりますので注意しておきましょう。
以前から申請されていた場合
有給希望を以前からされていたのであれば、急な時季変更権は違法となる可能性が高いといえます。
会社側の責任として
- 有給日を知りながら代替人員をなぜ確保しなかったのか?
- 有給日を知りながら、業務量の調整をなぜしなかったのか?
これらについて、従業員が納得できるような理由・説明が必要です。
当日に申請された場合
有給申請が前日や当日にされた場合、会社側が代替要員確保のための時間が確保できないことから時季変更権は有効と判断される傾向にあります。
労働者の指定した年次有給休暇の期間が開始し又は経過したのちに使用者が時季変更権を行使した場合であつても、労働者の右休暇の請求がその指定した期間の始期にきわめて接近してされたため使用者において時季変更権を行使するか否かを事前に判断する時間的余裕がなかつたようなときには、客観的に右時季変更権を行使しうる事由があり、かつ、その行使が遅滞なくされたものであれば、適法な時季変更権の行使があつたものとしてその効力を認めるのが相当である。
此花電報電話局事件(最一小判昭57.3.18労判381号20頁)より引用
全社研修日の有給休暇申請にも行使できる?
全社的に行う研修や、会議については
- 他の従業員も出席するため代替要員はいない
- 研修の性質的に本人の参加が必要
という観点から時季変更権が適法になる可能性が高いと思われます。
関連する過去の判例には
訓練の期間中に年休が請求されたときは、使用者は、当該請求に係る年休の期間における具体的な訓練の内容が、これを欠席しても予定された知識、技能の修得に不足を生じさせないものであると認められない限り、年休取得が事業の正常な運営を妨げるものとして時季変更権を行使することができる
(NTT事件 最高裁判所判決平成12年3月31日)より引用
とされています。



このケースでは研修や会議自体の性質も重要な論点になりそうですね。経営上全員参加が必須なのかどうか、研修内容が業務に直結するためでなければならないのか、判断する際に考えてみましょう。
時季変更権の行使でトラブルを起こさないために
時季変更権の行使が必要な場合であって、トラブルを極力避けるにはどうすればよいのでしょうか。実務上で対応すべき方法を4つお伝えいたしますので、一つひとつ実施できているのか確認してみましょう。
前提として従業員への配慮が必要
従業員からすると「予定があるから有給を申請したのに」「前も申請したら忙しいと断られた。また希望日に取れないのはおかしい」と、時季変更権に不満がうまれます。
従って時季変更権を行使するのであれば
- 同じ従業員の有給申請にばかり時季変更をしていないか?
- 従業員が変更しても良い日をヒアリングできているか?
必ず気に留めておきましょう。
就業規則に記載して周知しておく
時季変更権を行使する可能性があるのであれば、就業規則に明文化しておきましょう。「忙し場合は変更があるかもしれない」ことを予め従業員に周知できるため、トラブル防止効果が見込まれます。
年次有給休暇は、従業員があらかじめ請求する時季に取得できます。ただし、従業員が請求した時季に年次有給休暇を取得させることが事業の正常な運営を妨げる場合は、従業員の希望を聞いた上で他の時季に取得させることがあります。



時季変更権に関する条文は、厚生労働省のWEBサイトでダウンロードができる「モデル就業規則」にも記載されているため、参考にしてください。
有給休暇取得カレンダーを作成し共有しておく
有給を希望する日を事前に共有できる体制を作ることも大切です。例えば部署やチーム単位で
- 誰が
- いつ
- 何日程度
有給休暇を希望・取得予定なのか、あらかじめ可視し共有することで日々の業務量の調整も容易になります。時季変更権の行使がそもそも必要ない職場環境を目指すことがトラブルの未然防止への近道です。
時季変更権ではなく「要請」してみる
時季変更権は法律で定められた「効力」のある制度です。一方で
- 事業の正常な運営に支障があるとは言い切れないが、他の従業員も忙しいため一人でも休まれると大変
- 会社全体で繁忙期間があり、この期間だけはどうしても出勤してほしい
こういった状況も当然考えられますし、時季変更権の行使自体が適法・違法のどちらに該当するのか判断できない場面は多々あるでしょう。
この場面においては、従業員に有給休暇の日を変更できないか?と打診するのも一つの手です。当然強制力はありませんので、拒否される可能性もありますが、従業員が納得し、同意があれば有給日の変更は問題ありません。



今回紹介した裁判例の多くは、会社の対応に不満を持ったことが要因で裁判に至ったケースばかりです。会社・従業員ともに納得できる落とし所を見つけられると労務トラブルは起こりにくくなりますので、話し合いも重要な施策なのです。
従業員からの有給休暇申請対応に困ったら
年次有給休暇は従業員の権利ですので、取り扱いを誤るとトラブルにつながるケースが大変多いです。
そのため、少しでも有給休暇の取り扱いで不安を感じられるのであれば、人事労務の専門家である社労士にご相談されることをおすすめいたします。
TSUMIKI社会保険労務士事務所では、経営者・人事労務担当者の参謀として労務管理のご相談を承っております。初回のご相談は無料で行っておりますのでお気軽にお申し付けください。
人事・労務の悩みは、従業員を雇用している限り常に発生する可能性があります。中小企業であっても、大企業であっても経営に必要な資産は「ヒト」ですので、人事・労務の悩みには向き合っていかなければいけません。
TSUMIKI社会保険労務士事務所では、経営を支えるコンサルタントとして人事労務領域の最適化・効率化につながるサポートをいたします。社会保険労務士をお探しの方はお気軽にお問い合わせください。
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