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Q. 忙しい時期に有給休暇を取る従業員がいます。有給休暇の申請は拒否できますか?

有給休暇 拒否
この労務Tipsでわかること
  • 年次有給休暇の申請は拒否できるのか
  • 繁忙期に年次有給休暇を申請されたときの対応方法

毎年、会社の繁忙期にも関わらず有給休暇を取る従業員がいます。

他の従業員のモチベーションにも悪影響があるため、全員に出社してもらいたいのですが、有給休暇の申請を拒否してもよいのでしょうか?

A. 有給休暇の申請を断ることはできませんが、取得日の変更ができる可能性があります。

年次有給休暇は、従業員が希望する日に与えなければいけないルールとなっています。

ただし、会社の正常な運営を妨げる場合に限り、従業員が希望する日とは別の日に有給休暇を取得してもらうことができる権利が会社にはあります。

この会社が持つ権利を「時季変更権」と呼ぶのですが、

  • 従業員が休暇を取得することで人員不足が発生するか
  • その従業員しかできない重要な業務が予定されていないのか

上記のように有給休暇が希望されることで「事業の正常な運営を妨げる場合」に該当した際に、従業員から申請された日を別の日に変更することができる権利になります。裏を返せば、従業員が休んだとしても問題なく業務が回るのであれば時季変更権は使えないというわけです。

時季変更権はあくまでも「有給休暇の取得日の変更」をするものであり、有給休暇の取得を拒否することはできませ。そのため、従業員の希望を聞きながら日程調整することが望ましいとされており「忙しいのでしばらく有給休暇は取得できません」「他の従業員が納得できるような、有給休暇の取得理由を教えてください」といった対応をすると違法になる可能性もあります

繁忙期の年次有給休暇申請への対応方法について

では、繁忙期に年次有給休暇の取得申請が出された際、どのようにすれば従業員とのトラブルを避けることができるのか、会社で取れる対応策やその手順を具体的にお伝えいたします。

「年次有給休暇の時季変更権」を巡って、

  • 従業員が有給休暇を取得しようとする日の仕事が、担当業務や所属している部・課・チームなどの業務運営上、人員が必要不可欠で代替者の確保ができない
  • 業務運営の必要人数が決められている等で、事業の正常な運営が妨げられると考えられる

このような場合であって、業務に具体的支障の生ずるおそれが客観的に見える場合は「事業の正常な運営を妨げる場合」に該当すると判例がでています。

そのため単純に「忙しい」という理由では時季変更権は利用できないと考えられるため、

  • 従業員が一人休むことにより、他の従業員が長時間の残業が発生するのか?
  • 有給休暇を希望する従業員しかできない業務(技術・知識・資格等)はどの程度あるのか?

上記のように「休まれては困る理由」や「忙しい状況」を深堀りすることが第一歩ではないでしょうか。

また、時季変更権を行使する前に、就業規則で定められているのかについても確認をしておきましょう。

例えば「従業員より申請された時季に年次有給休暇を取得させることで事業の正常な運営を妨げる場合には、申請日の変更をすることがある」のように、予め時季変更の可能性を明文化し周知しておくことで、「時季変更権ってなんですか?労基法違反にならないのですか?」といったトラブルを事前に防止することにもつながります。

時季変更権は下記のコラム記事でトラブル事例を含めて解説をしておりますので、併せてご確認ください。

社会保険労務士によるワンポイント解説

繁忙期に有給休暇の申請があった場合、慎重に対応しなければ労使トラブルに発展する可能性があります。実務の観点でフローを整理しましたので、下記に沿って対応されることをご検討ください。

繁忙期の有給休暇申請対応フロー
STEP
有給休暇申請日の変更を依頼する

有給休暇の申請に対して、まずは従業員に申請日の変更可否を確認することは、何ら問題はありません。ただし、

  • 従業員から変更できないと言われた場合は、希望する日程通りに有給休暇を取得させなければならない
  • 有給休暇の日程を変更しないことを理由に、不利益な取り扱いはしてはならない

上記2点は必ず守りましょう。

STEP
時季変更権が行使できるか検討する

従業員との話し合いの末、希望日程は変えられないとなると、時季変更権が行使できるのか確認をしましょう。ケースバイケースになりますが、

  • 有給休暇の取得により事業の正常な運営に支障をきたすのかどうか
  • 代替要員の確保など、有給休暇を希望する従業員へ配慮ができないのか

要件を満たすのかどうか、具体的に考える必要があります。時季変更権が認められるのかどうか、認められる事情をどれだけ積み重ねられるのかによって、判断がされます。

STEP
時季変更権を行使する

時季変更権の行使に問題がないと判断した場合、速やかに従業員に通知しましょう。労務トラブルの要因となりやすいのは「言った・言っていない」の水掛け論です。「有給休暇時季変更通知書」のように、書面で伝えることをオススメいたします。そして、しっかりと従業員に説明した上で、理解をしてもらいましょう。

また、時季変更権を行使するタイミングは気をつけておくべきです。1ヶ月前に有給休暇の申請を出したにも関わらず、休暇予定の前日に時季変更権を伝えると問題になる可能性が高くなります。時季変更権を行使するのであれば、有給休暇の申請をされた数日以内が望ましいのではないでしょうか。

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執筆者プロフィール

矢野 貴大

TSUMIKI社会保険労務士事務所/代表・社会保険労務士

金融機関・社会保険労務士法人・国内大手コンサルティング会社を経て大阪で社会保険労務士事務所を開業。

25歳で社労士資格を取得した後、社会保険労務士・経営コンサルタントとして延べ200社を超える企業・経営者をサポートする。その経験を活かし「想いを組み立て、より良い社会環境を形づくる」というMISSIONに向かって日々活動中。

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