社会保険労務士と顧問契約は必要?社労士に依頼・外注時のメリットやデメリットを解説

経営者、人事労務担当者の方は社会保険労務士と聞いてどのようなイメージを持たれているでしょうか。
- 雇用保険や健康保険の手続きを代理で行ってくれる専門家
- 給与計算を外注できる士業の一つ
上記のように「人事・労務に関する業務をアウトソーシングできる専門家」とお考えの方も多いかと思います。
そのため当事務所にご相談をいただく際にも「従業員も数人しかいないから、社労士に給与計算を外注しなくても自分たちでできる」「新しく従業員を採用する予定もないので、社労士に頼める仕事がない」こういったお声も実際にお聞きいたします。
近年は「働き方改革」「雇用調整助成金」「リモートワークの制度導入」といった時流により、社会保険労務士に依頼できる仕事が「単なる手続き・給与計算以外にも多くある」という認知度が高まってきたように感じますが、社会保険労務士は弁護士や税理士のように深く知れ渡っている業種とは言い切れません。
本記事では、これから社会保険労務士との顧問契約を考えている方に向けて
- 社労士に依頼ができる仕事内容はどのようなものがあるのか?
- 社労士と顧問契約をするとどのようなメリットやデメリットがあるのか
こちらの内容について、実際に社会保険労務士事務所の運営している経験をもとに、解説いたします。事前に知っておくことで、社会保険労務士との付き合い方も円滑にできますのでぜひ参考にしてください。
矢野 貴大
TSUMIKI社会保険労務士事務所/代表・社会保険労務士
金融機関・社会保険労務士法人・国内大手コンサルティング会社を経て大阪で社会保険労務士事務所を開業。
25歳で社労士資格を取得した後、社会保険労務士・経営コンサルタントとして延べ200社を超える企業・経営者をサポートする。その経験を活かし「想いを組み立て、より良い社会環境を形づくる」というMISSIONに向かって日々活動中。

社会保険労務士事務所は全国で約25,000あると言われております。数年前は「近隣ですぐに訪問できるから」という事務所の場所を理由に選ばれていたことが多いようですが、近年「WEB会議」の発展で「場所」ではなく「サービス品質」で選ばれることが増えています。どういった事務所なのか、お話を聞くことからオススメしております。TSUMIKI社会保険労務士事務所では「自社を知ってもらうこと」を大切にしておりますので、まずはざっくばらんにお話しましょう。
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社会保険労務士とは?どのような業務が依頼・外注できるのか?
「知り合いの経営者から、そろそろ社会保険労務士と契約をしたら?とアドバイスをもらったが、社労士についてよく分からない」「そもそも社会保険労務士にどのような業務を任せることができるのか?」こういった方もいらっしゃるかと思います。
社会保険労務士がどのような仕事をしているのか事前に知っておくだけで、後ほど紹介させていただくメリットやデメリットがより理解いただけると思いますので、簡単にご紹介いたします。
社会保険労務士とは
社会保険労務士とは、経営者や人事労務担当者の相談相手となり、労働基準監督署や年金事務所、ハローワークへの提出する書類を代行して作成したり、労務トラブルの予防に向けたコンサルティングを行う専門家であり、社会保険労務士法に基づいた国家資格でもあります。
人事・労務に関するコンサルティングは、就業規則の作成等を除くと資格は不要ではありますが、
- 労働基準法
- 労働契約法
- 労働安全衛生法
といった労働諸法令の知識が必須のため、社会保険労務士が得意とする領域と言えます。
社会保険労務士に依頼・外注ができる業務について
社会保険労務士が行っている業務範囲・業務内容は非常に幅が広く、サービス内容も事務所によって異なりますが、下記が基本的な業務と言えます。
- 労務管理のアドバイス
- 人材の採用・定着のためのアドバイス
- 法改正情報の共有や会社で取り組むべき制度の解説
- 労務管理の一部代行
- 労働・社会保険手続きの作成および行政対応
- 助成金の申請書類作成・期日管理・行政対応
- 給与計算業務の適切な処理
- 労務環境の改善・向上に向けたコンサルティング
- 従業員が働きやすくなる環境に繋がる就業規則や社内ルールの見直し・設計
- 会社の実態に合わせた人事評価制度、労働時間制度の導入支援
参考:全国社会保険労務士連合会「社労士とは」を参考に当事務所にて作成
上記は一例であり、TSUMIKI社会保険労務士事務所では「顧問業務」と「スポット業務」に分けてサービス提供をしております。各種内容についてはぜひサービス一覧をごらんください。
社労士と契約や外注をするメリット
社会保険労務士には人事・労務に関する業務を依頼することができます。契約によるメリットとしては
- 本業に集中
- コンプライアンスの遵守
- 採用・雇用・退職とヒトに関する全てを相談できる
- 安心して労働基準監督署や年金事務所の調査に対応ができる
- 専任の担当者を採用するよりも安価
このように主に5つ考えられますので、それぞれ詳しくお伝えさせていただだきます。
本業に集中
従業員を雇用すると、
- 労働時間や残業時間に応じた給与計算
- 従業員のライフサイクルに応じた行政手続き(入社・退社・産休や育休等)
- 従業員が働きやすくするためのマネジメント
このような労務管理業務が発生するだけでなく、すべて正確に対応しなければならないため、経営者・労務担当者への負担は増えることになります。
社労士と契約をすると労働保険・社会保険の手続きや給与計算業務を外注することができるため、安心して本業に集中いただけます。
事業の規模に関わらず、手間がかかる業務が労務管理業務ですので、それらを丸投げできるのは大きなメリットと言えます。
コンプライアンスの遵守が可能
労務管理には法律の遵守が必要であり、対応ができていない場合には「従業員のモチベーションが下がり、退職に繋がる」「労働基準監督署や年金事務所からの是正指導が入る可能性がある」こういったリスクに繋がります。
社労士は、人事・労務の専門家のため、顧問契約をすることで労働諸法令を守るためのアドバイスを受けることが可能です。また、単に法律の解説だけでなく
- 守るために何を優先的に行うのか?
- 守れなかった場合にはどういった注意点やリスクが発生するのか?
会社によって「どのようにコンプライアンス遵守を進めていくのか」手順や流れは違いますので、社労士からレクチャーを受けることで、会社の労務管理が正しい方向に進むことは間違いありません。
採用・雇用・退職とヒトに関する全てを相談できる
従業員を一人でも雇用する経営者にとって、「ヒト」に関する悩みは大なり小なり発生いたします。信頼していた従業員から突然「サービス残業ばかりで疲れました。今まで未払いになっている残業代を支払ってください」とトラブルになる可能性はどの会社にも考えられます。
社労士には、日常的に発生する疑問や悩みについて気軽にご相談が可能ですので、少しでも社内の労務管理体制に不安があるのであれば、積極的に相談していきましょう。
労務に関するトラブルは潜在的なものが多いため、経営者の知らない間でリスクは大きく膨れているのです。こういったトラブルを防ぐために、事前に専門家に依頼しアドバイスを受けることが重要となります。
とは言っても「社労士に何を相談していいのか?」「他社はどのような悩みをもっているのか?」上手に社労士を活用できていない経営者の方もいらっしゃるかと思います。下記コラム記事では当事務所に寄せられる相談事例を様々なフェーズごとに紹介しておりますので、ご参考にしてください。

安心して労働基準監督署や年金事務所の調査に対応ができる
「コンプライアンスの遵守」という観点でもお伝えしましたが、行政指導への対応を自社のみで対応することは大変です。
従業員を雇用し、経営を行う以上は労働基準監督署や年金事務所といった行政機関からの調査を受ける対象になりますので、会社の規模や業種に関係なく、ある日突然「労務状況の監査」の連絡が来る可能性があります。
しかし、このような行政機関からの調査については、社労士が同席し、経営者と一緒に対応をすることが可能となっております。
特に労働基準監督署の調査においては
- どのような書類が調査ポイントになりやすいのか?
- 調査対応時、どう返答すればいいのか?
調査を円滑に進めるためのアドバイスを受けられます。
顧問社労士がいるのか、いないのかによって、事前準備から調査当日、調査後の対応まで安心してスムーズに進めることができるのです。
専任の担当者を採用するよりも安価
会社規模が小さい場合、給与計算や各種労務手続きをは経営者自身が対応することが多いと思われますが、ある程度規模が大きくなった場合、労務担当者の採用を検討されることでしょう。
労務担当者を採用すると、
- 毎月の給与や賞与の支払い
- 労働保険や社会保険の会社負担の発生
が必要であり、労務担当者の年収の相場としては中小企業では350万〜400万円、大企業では450万円以上が一般的と考えられます。社会保険労務士と契約する場合、担当従業員を当たらに雇用するよりも結果的に費用を抑えることが可能です。

せっかく労務担当者を新しく採用し、教育をしたとしても「退職」してしまうとまた採用活動から行わなければなりません。一方で社労士と契約した場合は継続して仕事を依頼できるため、安心感もありますね。
契約・外注によるデメリット
ここまでお読みいただくことで「社会保険労務士に色々お願いできそうだ」と感じていただていると大変嬉しいのですが、デメリットもしっかりお伝えしたいと思います。
実際に事務所を運営し、多くの社労士と交流する中で「顧問契約が社労士へ仕事を外注することにデメリットもある」と感じていますので、経験をもとに解説いたいします。
- 顧問料・費用がかかる
- すべての業務を丸投げはできない
- コミュニケーションの相性がある
顧問料・費用がかかる
士業もサービス業と同じですので、サービス提供の対価として報酬をいただいております。
社労士との契約は一般的に「業務委託」になりますので仕事を依頼するためには「顧問料」もしくは「スポット料」が必要になります。
従業員が少なく、労務トラブルも発生しない場合には「費用を支払っているのに、何もしてくれない」という不安につながりますし、売上が少ない企業においては社労士との顧問契約料金が資金繰りに影響を及ぼすこともあるでしょう。



いつでも気軽に専門家に相談ができる「お守り」という意味でご契約される経営者の方もいらっしゃいます。会社の状況に合わせて契約するのか判断しましょう。
すべての業務を丸投げはできない
社労士と契約する上で、
- どのような業務を依頼・外注したいのか?
- 仕事内容のどこまで頼みたいのか?
- 希望する仕事は頼むことができるのか?
このように契約の目的を定めておかなければ、契約をしたとしても社労士との関係性がぶれてしまい満足いくサービス提供を受けることが難しくなります。
また、社会保険労務士と契約をしているからといって自社の「労働時間の長さ」や「人件費がどのくらいになっているのか」をご自身の目で確認しない場合、組織風土の向上や改善はできないでしょう。
労務管理は、突き詰めると「会社でやるべきこと」です。社労士がどのようなアドバイスや提案をしたとしても、経営者による経営判断でしか決めることはできません。
社会保険労務士との契約は「会社組織をよりよくするための経営参謀」的な立ち位置と捉えていただき、一緒に会社の未来を考えるパートナーとして捉えていただけますと幸いです。
コミュニケーションの相性が重要
「今契約している社労士の先生は高圧的で、コミュニケーションが合わない」「法律一辺倒のことしか説明されないため、もっと自社を理解してアドバイスしてくれる社労士を探している」「トラブルが起こってるから相談しているのに、レスポンスが遅すぎる」こういったお声はよくお聞きいたします。
また、経営者が親から子供に代替わりした際には「父親の代から仕事を依頼している社労士。相談をしたいが、父親との関係もあるのであまり自分の意見を伝えられない」こういったケースもありますが、このような場合、社労士から良いアドバイスを受けられないため、契約をしている意味はないのではないでしょうか。
先程お伝えしたとおり社労士もサービス業です。そのため、同じ社会保険労務士であっても「得意な仕事」や「事務所のスタンス」「コミュニケーションの取りやすさ」は事務所によって大きく変わります
社会保険労務士を選ぶときには「会社に寄り添ったアドバイスを受けられる」「気持ちよく相談ができる関係性になれる」このように思える社労士と契約をしましょう。
「社労士と顧問契約をしたいけど、事務所はどのように選べばいいの?」という方については、下記コラム記事で解説しておりますので併せてご覧ください。





「法律の説明をされるだけで、相談しても悩みが増えるだけでどうすればいいのかわかりません」と、すでに社会保険労務士と契約をされている方から当事務所にご相談いただくこともあります。事務所によっては対応に違いがありますので、ご注意してください。
まとめ:社会保険労務士との契約におけるメリット・デメリットを踏まえて
今回の記事では「社会保険労務士と顧問契約は必要?社労士に依頼・外注のメリットやデメリットを解説」というタイトルでお伝えをさせていただきました。
顧問契約・外注のメリット | 顧問契約・外注のデメリット |
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本業に集中 コンプライアンスの遵守 採用・雇用・退職のヒトに関する全てを相談できる 安心して労働基準監督署や年金事務所の調査に対応ができる 専任の担当者を採用するよりも安価 | 顧問料・費用がかかる すべての業務を丸投げはできない コミュニケーションの相性が重要 |
上記が、メリット・デメリットのまとめになります。とはいえ、社会保険労務士を探す際に一番大切にいただきたいのは「社労士が自社の経営をしっかりと考え、共感した上でアドバイスをくれるのか?」という点に尽きると私は考えております。
社会保険労務士を探す方法は、
- WEBサイトによる検索
- 知り合いの経営者からの紹介
- 金融機関や士業からの斡旋
- セミナーや経営者団体に参加し、交流を持つ
この辺りしかありません。そのためしっかりと社労士と向き合い、「人事労務について、安心して相談をしたいと思える人なのか?」見極めることが重要になります。
今回ご紹介したメリット・デメリットは一例として念頭に置いていただき、お読みいただいた方が良い社会保険労務士とご契約できることをお祈りしております。
社会保険労務士事務所は全国で約25,000あると言われております。数年前は「近隣ですぐに訪問できるから」という事務所の場所を理由に選ばれていたことが多いようですが、近年「WEB会議」の発展で「場所」ではなく「サービス品質」で選ばれることが増えています。どういった事務所なのか、お話を聞くことからオススメしております。TSUMIKI社会保険労務士事務所では「自社を知ってもらうこと」を大切にしておりますので、まずはざっくばらんにお話しましょう。
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