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労務管理を効率化する考え方・取り組み方法とは?社労士が解説します

労務管理 効率化 方法
本記事ではこのようなお悩みを解決いたします
  • 労務管理に課題を感じているが、何をどう改善すべきか分からない
  • 労務担当者を採用しているが、忙しくてすぐに退職してしまう
  • そもそも労務管理ですべきことがわからないため、効率化するにしても分からない

従業員を一人でも雇用すると、会社は労務管理業務を行う必要があります。一方で、労務管理は

  • 労働諸法令の知識がなければ適切に行えない
  • 従業員のライフサイクルに応じて書類作成が必要だったり、管理が大変
  • 社内のルールに従う必要があるが、そもそもルールと実際の働き方が異なっているケースがある

こういった課題や懸念を持っている会社は少なくありません。特に従業員の採用や定着に課題を持つ中小企業の場合は、労務管理をはじめとするバックオフィス業務に目を向ける余裕がなく、対応ができないのではないでしょうか。

また労務管理業務は多岐にわたる仕事の量に反して、中小企業では担当者は一人もしくは経営者が対応していることもありますのので「担当者が退職すると誰も労務管理ができない」「効率が悪い仕事だとわかっていても、改善するための時間がない」という状況に陥りがちです。

今回は、労務管理を効率化するための考え方や、実際に取り組むべき方法をお伝えいたします。

執筆者プロフィール

矢野 貴大

TSUMIKI社会保険労務士事務所/代表・社会保険労務士

金融機関・社会保険労務士法人・国内大手コンサルティング会社を経て大阪で社会保険労務士事務所を開業。

25歳で社労士資格を取得した後、社会保険労務士・経営コンサルタントとして延べ200社を超える企業・経営者をサポートする。その経験を活かし「想いを組み立て、より良い社会環境を形づくる」というMISSIONに向かって日々活動中。

このページの概要

労務管理は効率化できるのか?

労務管理は「従業員の働き方を記録して管理する業務」ですが、

  • 業務がルーティン化している
  • 知識を補うためのシステムやツールが普及している

という観点から効率化できる業務が実は多いのです。

労務管理業務は「日常的に発生する仕事」「毎月必ず行う仕事」「年間を通じて数回対応する仕事」のように、日・月・年で切り分けて考えることができます。

スクロールできます
対応が求められるシーン業務種別
打刻管理
残業・有給休暇申請対応
新規採用者・退職者の対応(各種保険手続き)
勤怠集計
給与計算
社会保険の随時改定届け
育児休業や高年齢者の雇用保険給付手続き
賞与計算
年末調整
労使協定届(36協定・変形労働時間制の協定)の更新
就業規則の見直し
労働保険の年度更新・社会保険の算定基礎届け
労務管理の業務内容と発生するタイミング

従業員を一人でも採用すると、上記のような業務が随時発生していきます。中でも「新規採用者・退職者の対応」や「勤怠集計」および「給与計算」については従業員が増えると比例して忙しくなる業務ですが、処理方法はほとんど同じですので、ツールやサービスを活用することで効率化を図ることができます。

例えば勤怠管理を紙のタイムカードで行っている場合、手作業でタイムカードに打刻された時間を集計しなければなりませんが、勤怠管理システムを導入することで毎月の業務を一気に効率化が可能です。

「効率化のために何かシステムを入れたい」となった場合、営業であれば取引先や関与先の企業との兼ね合いや関係性を考慮しなければならず、どうしても効率化ができない仕事がありますが、労務管理で対象とするのは「社内で働く従業員」のため、比較的柔軟に動くことができるのです。

また、労務管理業務は「労働基準法などの法的知識が必要なため効率化ができるイメージがない」とお聞きすることもあります。近年は様々なソフトやクラウドサービスが開発されており、深い知識がなくとも業務をサポートしてくれます。

給与計算業務で考えると「残業代」「保険料や税金」を計算する際、専門的な知識がなければ正しく算出できませんが、給与計算ソフトを導入することでシステム内で自動計算ができるため、安心して業務に取り掛かることができます。

とはいえ、従業員数もまだ少なく、労務管理業務自体を社内で行う必要がない場合、業務を社労士に外注する「労務管理業務のアウトソーシング」も可能です。

労務管理の業務をもっと詳しく知りたい、という方はぜひ下記の「労務管理とは?経営者・労務担当者が知っておくべき基本を社労士が解説」をご一読ください。労務管理の業務内容について解説をしておりますのでぜひご一読ください。

労務管理に強い専門家をお探しの方へ

人事・労務の悩みは、従業員を雇用している限り常に発生する可能性があります。中小企業であっても、大企業であっても経営に必要な資産は「ヒト」ですので、人事・労務の悩みには向き合っていかなければいけません。

TSUMIKI社会保険労務士事務所では、経営を支えるコンサルタントとして人事労務領域の最適化・効率化につながるサポートをいたします。社会保険労務士をお探しの方はお気軽にお問い合わせください。

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労務管理業務がブラックボックス化する理由とは

労務管理は効率化が可能とお伝えいたしましたが、多くの企業では推進ができていない現状があります。理由としては「労務管理はブラックボックス化・属人化しやすい」業務のためです。特に下記に該当する企業では陥りがちですので、予め注意をしておきましょう。

担当者が一人・少ないケースが多い

労務管理がブラックボックス化・属人化しやすい一番の原因として、企業内で労務管理を主担当とする従業員が少ないことが考えられます。

労務管理は雇用する従業員の人数によって煩雑さ・複雑さが増しますが、一般的な企業における労務担当者の配置は下記が一つの目安になるのではないでしょうか。

従業員数に応じた労務管理担当者の配置数
  • 従業員数:50人以下の場合
    • 基本的には専任の担当者は不在・経営者やその親族が業務の傍らで対応したり、信頼できる従業員が本業の片手間で担当することが多い。
  • 従業員数:50人以上-100人未満
    1. 総務担当者として1名を採用している・正社員と補佐のパートタイマーをそれぞれ1名配置することもある。
  • 従業員数:100人以上
    • 以降は従業員数がおおよそ100名前後増えるにあたり担当者が1名増加していくイメージ・人事部や労務部と部署が独立する。

中小企業では、労務管理を一人で行っていることが多々あり、仕事が個人に依存してしまうため独自のやり方になってしまい、業務内容がブラックボックス化してしまうのです。

社会保険労務士 矢野貴大

「担当者が突然退職して、どうすればいいのかわからない」というお話はよくお聞きします。すぐに別の労務担当者を採用できれば問題ありませんが、都合よく労務管理経験者を見つけることができるのか常に不安が残りますね。

専門的な知識が必要

労務管理は

  • 労働基準法や労働安全衛生法といった、従業員の働き方に関する法令に基づく法律知識
  • 健康保険法や雇用保険法など、従業員が加入する各種保険に基づく法律知識

について最低限の知識が必要です。そのため労務管理に携わらない従業員からすると、自社の労務管理業務の問題点や課題が分からないのです。

社会保険労務士 矢野貴大

営業職や事務職と比べて担当する従業員数が少ないことに加えて、一定の知識がなければ業務遂行ができません。従って、自分ひとりで対応を進めることにより効率化を考える余裕がないことになります。

労務管理システムの入力対応

労務管理を行う上で、勤怠管理システムや給与計算システムに必要なデータを入力したり、その内容が正しいのか確認をしていきます。この作業は

  • 入力されている勤怠データに間違いがないのか?(残業や有給休暇の申請内容と、実際の勤務記録に相違はないのか?)
  • システムで計算される給与計算の内容は正しくできているのか?(出退勤の実績に基づいた支給金額になっているのか?)

注意すべき点がいくつもありますが、

システムによっては「誰かがログインしていると触ることができない」「システム内の仕様が複雑で、慣れていなければ使い方が分からない」こういったデメリットがあります。また、給与計算の場合は他の従業員の給与金額がわかってしまうため、非常にセンシティブで「誰でも気軽に給与計算システムにアクセスさせられない」のです。

そのため特定の従業員に一任をするケースがあり、結果的に業務が属人化することになります。

社会保険労務士 矢野貴大

労務管理業務は「担当する従業員が少ない」「専門的な仕事のため他の従業員からすると業務内容が不透明」「システムの問題で特定の人しか触れない」といった特徴があるため、属人化・ブラックボックス化してしまう傾向にあります。

労務管理を効率化する考え方・取り組み5選

ブラックボックス化・属人化しやすい背景をお伝えしましたが、裏を返すとこのような状況を打破することができれば労務管理業務の効率化につながります。

今回は、経営者および労務担当者の方に知っておいていただきたい、具体的な5つの考え方・取り組みについてご紹介いたします。

労務管理を効率化する考え方・取り組み
  1. ペーパーレス化を推進する
  2. 労務管理をシンプルにする
  3. 労務管理クラウドシステムを導入する
  4. 社内効率化に向けたツールを導入する
  5. アウトソーシングを活用する
社会保険労務士 矢野貴大

すぐに実践ができなくても「自社で全くできていない」という課題があれば、その部分について少しずつ対応されることをオススメいたします。何事もベイビーステップの考え方が重要ですので、まずは一つでも取り組んでみましょう!

ペーパーレス化を推進する

労務管理業務の性質から、数多くの書類が必要です。例えば

  • 内定承諾書や雇用契約書、秘密保持契約書など従業員が入社する際の手続き
  • 従業員が加入する雇用保険や社会保険の資格取得届けなど、行政手続きの書類
  • 日々従業員が打刻するタイムカードや、それの集計表といった勤怠管理
  • 毎月従業員に配布する給与明細書

常に上記のような書類が発生するだけでなく、従業員数が増えれば比例して書類の量も増えていきます。また、労務関係の書類は法律で保存する期間が定められているため「社内で書類を管理するスペースがないから廃棄したい」ということはできません。

ペーパレス化ができている企業と、できていない企業では次のような差が生じますので、前向きにチャレンジすることをオススメいたします。

ペーパレス化ができている企業ペーパレス化ができていない企業
PC内を検索することで必要な書類がすぐに見つかる
書類の管理スペースを気にする必要がない
書類の郵送・返送作業が不要
書類を管理する際にファイリングする手間がかかる
書類が増える度に執務室を圧迫・廃棄するにも個人情報があると業者を経由する必要がある
書類の受け渡しに時間がかかる

2019年4月に「労働基準法施⾏規則」が改正され、労働条件の通知についても電子化で行うことが可能となりました。行政としてもペーパーレス化を推進していく意向ですのでしっかりと対応をしましょう。

労務管理をシンプルにする

社内で発生している労務管理業務は「法律に基づいて発生している業務」と「社内規定に基づいて発生している業務」の2つのパターンがあります。後者の「社内規定に基づいて発生している業務」を効率化するためには、労務管理のシンプル化により推進することが可能です。

労務管理における「シンプル化」とは

  • 社内フローのシンプル化
  • 社内ルールのシンプル化

この2つの領域で取り組むことができますので、それぞれ何を、どのような視点で「シンプル化」できるのか見ていきましょう。

社内フローのシンプル化

「社内フロー」のシンプル化とは、

  • 入退社時の諸手続き、産休育休手続き
  • 残業申請や有給休暇申請
  • 福利厚生制度の利用申し込み

このような従業員一人ひとりに密接に関わりがある業務の承認ルートをわかりやすく変更することです。

「残業申請は直属の上司にするが、有給休暇の申請は部長承認が必要」ように、部署や部門で業務の流れが異なっていると無駄な時間や工数が発生し、労務担当者の手元に書類が届くタイミングがズレることもあります。

そのため

労務管理をする上で、業務フローをシンプルにすることで書類のチェックミスを防ぐことができますので、検討してみましょう。

社内ルールのシンプル化

次に検討すべきは「社内ルール」のシンプル化です。

例えば従業員の給与計算において「支給する手当が複数あるため、毎月支給対象となる従業員の確認や計算が大変」ということはないでしょうか。

「今まで支給してきたから」という理由で支給する給与を考えるのではなく、

  • どういった目的や意図で支給しているのか?
  • 他の制度に代替することはできないのか?

本当にその手当は必要なのか、基本給や賞与で充当することはできないのか、制度をしっかりと見極めることが大切です。制度を複雑にしてしまうと、誤った対応をしてしまい法令違反につながることもあります。

自社のルールをもっとシンプルにして、わかりやすい制度に変更できないか考えてみましょう。

ただし、一度決めた労働条件を変更する際、その変更内容が従業員からすると損になるのであれば「労働条件の不利益変更」と呼ばれ、変更手続きが大変になります。詳細については下記の労務Tipsで解説しておりますが注意をしておきましょう。

労務管理クラウドシステムを導入する

労務管理をする上でシステムの導入は業務効率化・ヒューマンエラー防止と大きなメリットが見込めます。

特に「紙の書類が多い」「EXCELなど表計算ソフトを使っているが計算をよく間違えてしまう」ような課題がある場合、積極的に検討したい取り組みです。

入力作業不要による業務負担削減

連携可能なクラウドシステムを導入することで、システムに手入力する必要がなくなります。紙のタイムカードを利用していると、

  1. 紙のタイムカードを収集する
  2. タイムカードをEXCELなどに転記する
  3. 転記し、作成したデータに誤りがないか確認する
  4. そのデータを給与計算システムに取り込む

このような手順を踏まなければならず「タイムカードをEXCELに転記する」タイミングで集計ミスが発生すると、給与計算も正しく行うことができません。

勤怠管理システムを導入することで、日々の勤怠時間は自動で収集・計算されるだけでなく、給与計算システムと連動している場合はボタン一つでそのデータを取り込むことができるため、作業効率はグッと上がります。

不正打刻に対するエラー・抑制

従業員の勤怠を管理している立場ですと、

「残業申請をしていないにも関わらず、終業時刻を大幅に過ぎた時間に退勤打刻がされている」「在宅勤務や出張時、本当に仕事を行うべき場所で仕事をしているのか?」

こういった課題や不安があると思います。

勤怠管理システムの場合、

  • ルール違反の打刻をチェックし、アラートを出すことで不正な残業を防止
  • GPS機能を用いて、従業員が打刻している場所を特定する

このような機能を備えていることがあります。紙のタイムカードでは実現できない労務管理も、システム導入ですぐに対応が可能になるのです。

分析レポートの自動作成

労務管理で特に重要になるのが「残業時間管理」と「有給休暇の取得管理」ではないでしょうか。

  • 残業時間管理:36協定で定めている残業上限時間に対して、現在の残業時間数がどの程度あるのか
  • 有給取得管理:年5日取得義務に対応するために、従業員ごとに何日不足しているのか

リアルタイムで各数値を集計・分析ができなければ法令遵守ができません。

クラウドシステムを導入することにより労働時間は随時自動集計され、問題のある従業員をピックアップすることができます。

社内効率化に向けたツールを導入する

労務管理は従業員とコミュニケーションを取らなければいけません。そのため社内連絡のツールとしてビジネスチャット等のツール導入も効率化の手段となります。

ビジネスチャットは、チームや部署単位でグループを作れます。従業員からの労務管理における相談や、各種申請書類の提出窓口として「労務担当連絡チャット」というグループを作成することでスムーズなやり取りが可能です。

書類の確認のために内線やメールは報連相するにも時間的コストがかかります。社内コミュニケーションを円滑にするためにもビジネスチャット導入は検討しましょう。

社会保険労務士 矢野貴大

社内利用においては「Chatwork」「Slack」は非常にオススメです。チャットの場合は過去のログもすぐに確認できますので「提出書類の確認漏れ」や「伝達事項漏れ」も防ぎやすくなります。

アウトソーシングを活用する

働き方改革をはじめ、労働諸法令が続いて改正されています。そのため労務管理業務もより複雑になっているためアウトソーシングを利用する企業が増えています。

アウトソーシングとは、給与計算や労働・社会保険手続きを社労士と顧問契約をして代行してもらうサービスになります。自社にとって「業務効率化が難しい業務」や「担当者の負担となっている業務」について、専門家に丸投げをすることができますので、すぐに効率化につながります。

社会保険労務士にアウトソーシングをご検討されている方は、ぜひ下記のコラム記事をご一読ください。契約するメリットや、事前に知っておいていただきたい注意事項を解説しております。

まとめ:労務管理を適切に進めるにあたって

今回は「労務管理を効率化する考え方・取り組み方法」について紹介をさせていただきました。従業員数が少ない企業の場合「まだそこまで負担に感じない」かもしれませんが、従業員を採用すると対応しなければならない業務が増えていきます。

従って「従業員が少ない企業」も「すでにある程度従業員がおり労務管理に手間を感じる企業」もぜひ下記を参考に取り組んでみてはいかがでしょうか。

労務管理を効率化する考え方・取り組み
  1. ペーパーレス化を推進する
  2. 労務管理をシンプルにする
  3. 労務管理クラウドシステムを導入する
  4. 社内効率化に向けたツールを導入する
  5. アウトソーシングを活用する

「労務管理」は、労働基準法や労働契約法といった労働に関する法律が関わっているため、業務を行うためには注意すべきポイントがたくさんあります。自社のみで効率化をされたい場合であっても、不安がある場合は専門家に相談することをおすすめいたします。

TSUMIKI社会保険労務士事務所では無料相談会を実施しておりますのでお気軽にご相談ください。

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