【2026年最新】岩手県の最低賃金は?推移や引き上げ額・ランキングを解説

2025年12月、岩手県の最低賃金も改定されました。
最低賃金は毎年見直される制度ですが、今回の改定も、物価上昇や全国的な賃上げの流れを背景に、企業経営と労務管理のあり方を見直す重要なタイミングとなっています。
最低賃金制度は、労働者の生活を下支えするためのセーフティネットである一方、企業にとっては人件費・雇用設計・採用戦略に直結する法的ルールです。特に地方では、最低賃金の引き上げが経営に与える影響も小さくありません。
このような中で、
「自社の給与水準は、最新の最低賃金を下回っていないか?」
「パート・アルバイト・短時間勤務者にも最低賃金は適用されるのか?」
「今回の改定により、どのような実務対応が必要になるのか?」
といった不安や疑問を抱えている経営者・人事労務担当者の方も多いのではないでしょうか。
最低賃金は、「知らなかった」「うっかり下回っていた」では済まされない法律上の義務です。違反した場合には、是正指導や未払い賃金の支払いだけでなく、企業イメージの低下につながるリスクもあります。
本コラムでは、2025年12月以降に適用される岩手県の最新最低賃金を前提に、
- 最低賃金改定の背景とこれまでの推移
- 岩手県の最低賃金は全国でどの水準に位置しているのか
- 企業・労働者それぞれに生じる具体的な影響
- 最低賃金に正しく対応するための実務上のポイント
といった、経営と労務管理の両面から押さえておくべき重要事項を、社労士の専門的視点でわかりやすく解説していきます。
最低賃金改定を単なる「コスト増」として捉えるのではなく、人材定着・働きやすい職場づくり・持続可能な経営につなげるためのヒントとして、ぜひ本記事をご活用ください。
岩手県の最低賃金とは?
最低賃金とは、すべての労働者に共通して適用される「賃金の下限額」を定めた法律上のルールです。正社員だけでなく、パート・アルバイト・契約社員など、雇用形態を問わず原則すべての労働者に適用されます。
岩手県においても、国が示す目安や地域の経済状況を踏まえ、最低賃金審議会による審議を経て、毎年見直しが行われています。企業は、改定後の最低賃金額以上で賃金を支払う法的義務があり、これを下回る賃金設定は認められていません。
特に近年は、物価上昇の継続や深刻な人手不足といった社会経済環境の変化を背景に、最低賃金は全国的に引き上げ傾向が続いています。岩手県においても例外ではなく、従来の賃金水準や手当設計のままでは、最低賃金を下回るリスクが高まっています。
実務上は、基本給だけでなく、最低賃金に算入されない手当(通勤手当・皆勤手当・家族手当など)を除いたうえで、時間給換算で基準を満たしているかを確認する必要があります。この点を誤解していると、意図せず最低賃金違反となるケースも少なくありません。
ここではまず、最低賃金制度の基本的な仕組みと、岩手県における適用範囲・実務上の考え方について整理し、経営者・人事労務担当者が押さえておくべきポイントをわかりやすく解説していきます。
最低賃金制度の概要
最低賃金制度とは、使用者(企業)が労働者に支払う賃金の最低額を、国や都道府県が法的に定める制度です。目的は、労働者の生活の安定と、雇用環境の健全な維持とされます。
最低賃金には大きく分けて次の2種類があります。
- 地域別最低賃金:都道府県ごとに定められ、企業の所在地に応じて適用される。
- 特定(産業別)最低賃金:特定の業種に対して設定され、地域別最低賃金よりも高額になる場合がある。
つまり、岩手県で働く労働者には、原則として岩手県の地域別最低賃金が適用され、さらに該当する業種であれば特定最低賃金が優先される(特定最低賃金>地域別最低賃金の場合)ことになります。
最低賃金制度は単なる「時給の基準」ではなく、経営戦略や雇用維持にも密接に関わります。最低賃金の上昇に対応できる企業体制を早期に整えることが、人材確保と定着のカギになります。
前提確認:最低賃金の適用範囲と対象者
最低賃金は、すべての労働者に適用されるわけではありません。正社員やパート・アルバイトだけでなく、外国人労働者やインターンなど、多様な働き方がある中で、「自分が最低賃金の対象かどうか」を正しく理解することが大切です。
以下の表では、最低賃金が適用される人と適用されない人を一覧でわかりやすく整理していますので、ご参考ください。
| 適用される人 | 説明 | 適用されない人 | 説明 |
|---|---|---|---|
| 正社員 | 通常の労働契約に基づく労働者。最低賃金が当然に適用される。 | 無償インターン・ボランティア | 労働契約がなく、報酬も発生しないため対象外。 |
| パート・アルバイト | 雇用形態に関係なく、労働者であれば適用される。 | 自営業者・業務委託 (フリーランス) | 雇用契約ではなく、業務委託契約等に基づくため対象外。 |
| 契約社員・派遣社員 | 雇用されている限り、最低賃金が適用される。 | 同居の親族のみの 家族従業員 | 給与の支払いや労働の対価性が明確でない場合は対象外。 |
| 外国人労働者 (技能実習生・留学生含む) | 国籍や在留資格に関係なく、労働者であれば適用される。 | – | – |
| 試用期間中の労働者 | 試用中であっても雇用契約があれば適用される。 | – | – |
| 研修中の労働者 | 実務を伴う研修は労働とみなされ、最低賃金が適用される。 | – | – |
| 有償インターン (労働契約あり) | 労働契約があれば、インターンであっても適用対象。 | – | – |
岩手県の最低賃金はどこで勤務する人に適用される?
最低賃金は「働いている場所(=事業所の所在地)」によって決まります。つまり、岩手県に事業所を構えており、そこで働いている場合は、たとえ別の県に住んでいたとしても岩手県の最低賃金が適用されます。
ここでは、最低賃金が誰にどのように適用されるのか、よくあるケース別に整理してご紹介します。
原則:最低賃金は実際に働く「事業所の所在地」ごとに適用
最低賃金は「会社の本社所在地」ではなく、実際に労働者が働いている事業所の場所で判断されます。
| 本社事業所の所在地 | 勤務先事業所の所在地 | 適用される最低賃金 |
|---|---|---|
| 宮城 | 岩手 | 岩手 |
| 岩手 | 青森 | 青森 |
そのため、就業場所ごとに最低賃金をチェックすることが重要です。
ヘルプなどで都道府県をまたいで移動する場合は?
たとえば、普段は岩手県の店舗で働いているアルバイトが、1日だけ青森県の店舗に応援に行った場合であっても、その日の最低賃金は岩手県の最低賃金(=従業員が所属している就業場所)で判断されます。
従って、臨時の応援等で一時的に就業場所が変わったとしても、適用される最低賃金は変わらないという点に注意が必要してください。
テレワーク・在宅勤務の場合は?
テレワークや在宅勤務が増える中、「最低賃金はどこ基準で見るの?」という疑問もあるでしょう。この場合、従業員が所属している事業所の所在地が基準になります。
| 本社事業所の所在地 | テレワーク・在宅勤務の場所 | 適用される最低賃金 |
|---|---|---|
| 北海道 | 岩手県 | 北海道 |
| 秋田県 | 岩手県 | 秋田県 |
【2026年最新版】岩手県の最低賃金改定内容
2025年12月以降、岩手県の最低賃金は再度引き上げられました。最低賃金は毎年改定されますが、近年は特に、物価上昇・人手不足・全国的な賃上げ方針を背景に、引き上げ幅が大きくなる傾向が続いています。
今回の改定も、政府が掲げる「賃金と物価の好循環」や、地域で生活できる賃金水準の確保を目的として、労使・公益の三者による最低賃金審議会での議論を経て決定されたものです。企業にとっては、単なる金額改定ではなく、賃金制度全体の見直しが求められる局面といえるでしょう。
岩手県の新しい最低賃金額と発効日は?

岩手県の最低賃金は、時間額1,031円に改定され、2025年12月1日から適用されています。
- 改定前(2024年度):952円
- 改定後(2025年度):1,031円
- 引き上げ額:79円
- 発効日:2025年12月1日
これは、前年を大きく上回る引き上げ幅であり、岩手県においても最低賃金が1,000円台に本格的に到達したことを意味します。月100時間程度勤務するパート・アルバイトの場合、月額で約7,900円以上の人件費増となる計算です。
企業側にとっては、時給者だけでなく、月給制社員を時間給換算した場合に最低賃金を下回っていないかの確認が不可欠です。特に、固定残業代を含む賃金設計や、最低賃金に算入されない手当(通勤手当・皆勤手当等)が多い場合は、意図せず最低賃金違反となるリスクが高まります。
今回の改定を機に、単なる時給調整にとどまらず、賃金体系・評価制度・人材確保戦略を見直すことが、今後の安定した経営につながる重要なポイントとなるでしょう。
岩手県の最低賃金(1,031円)はいつの給与から反映?
2025年12月1日より岩手県の最低賃金は時間額1,031円に引き上げられました。最低賃金の改定にあたっては、「発効日」と「給与への反映タイミング」を正しく理解しておくことが、最低賃金違反を防ぐうえで非常に重要です。
最低賃金は、発効日以降に行われた労働について、新しい金額を適用する必要があります。給与の支払日ではなく、「いつ働いた分の賃金か」が判断基準となる点に注意が必要です。
以下では、締日・支払日の代表的なパターンごとに、最低賃金1,031円をいつから反映すべきかを整理していますので、ご参考ください。
| 締め日・支払日 | 締め日例 | 支払日例 | 12月1日以降の労働を含むか | 最低賃金の反映 |
|---|---|---|---|---|
| 末締め 末日払い | 11月30日 | 11月30日 | 含まない (11/1〜11/30の勤務) | 旧賃金でOK (まだ最低賃金は反映されない) |
| 10日締め 当月25日払い | 11月10日 | 11月25日 | 含まない (10/11〜11/10の勤務) | 旧賃金でOK (まだ最低賃金は反映されない) |
| 15日締め 当月末日払い | 11月15日 | 11月30日 | 含まない (10/16〜11/15の勤務) | 旧賃金でOK (まだ最低賃金は反映されない) |
| 15日締め 当月末日払い | 12月15日 | 12月31日 | 一部含む (11/16〜12/15の勤務) | 12月1日以降の 勤務分に反映必要 |
| 末日締め 翌月末日払い | 12月31日 | 1月31日 | 含む (12/1〜12/31の勤務) | 全期間で反映必要 |
例えば、月末締め・翌月25日払いの会社の場合、12月分給与(1月25日支給)には、12月1日以降に働いた時間すべてについて最低賃金1,031円以上を適用する必要があります。
実務上よくある誤解として、「支払日が発効日より後だから大丈夫」と考えてしまうケースがありますが、これは誤りです。発効日以降の労働に対して、旧賃金を適用してしまうと、最低賃金法違反となる可能性があります。
また、月給制社員や固定残業代制を採用している場合でも、時間給換算を行い、最低賃金1,031円を下回っていないかを必ず確認する必要があります。特に、最低賃金に算入されない手当(通勤手当・皆勤手当・家族手当など)が多い場合は注意が必要です。
最低賃金改定時には、賃金表・雇用契約書・給与計算設定を早めに見直すことで、未払い賃金や是正指導といったリスクを未然に防ぐことができます。
岩手県における過去の最低賃金推移と引き上げ幅
以下は平成14年以降の岩手県の最低賃金の推移となります。
| 年度 | 最低賃金額(円) | 引上額(円) | 引上率(%) | 発行月日 |
|---|---|---|---|---|
| 平成14年 | 605 | – | – | 平成14年10月1日 |
| 平成15年 | 605 | 0 | 0 | 平成14年10月1日 |
| 平成16年 | 606 | 1 | 0.2 | 平成16年10月1日 |
| 平成17年 | 608 | 2 | 0.3 | 平成17年10月1日 |
| 平成18年 | 610 | 2 | 0.3 | 平成18年10月1日 |
| 平成19年 | 619 | 9 | 1.5 | 平成19年10月28日 |
| 平成20年 | 628 | 9 | 1.5 | 平成20年10月30日 |
| 平成21年 | 631 | 3 | 0.5 | 平成21年10月4日 |
| 平成22年 | 644 | 13 | 2.1 | 平成22年10月30日 |
| 平成23年 | 645 | 1 | 0.2 | 平成23年11月11日 |
| 平成24年 | 653 | 8 | 1.2 | 平成24年10月20日 |
| 平成25年 | 665 | 12 | 1.8 | 平成25年10月27日 |
| 平成26年 | 678 | 13 | 2 | 平成26年10月4日 |
| 平成27年 | 695 | 17 | 2.5 | 平成27年10月16日 |
| 平成28年 | 716 | 21 | 3 | 平成28年10月5日 |
| 平成29年 | 738 | 22 | 3.1 | 平成29年10月1日 |
| 平成30年 | 762 | 24 | 3.3 | 平成30年10月1日 |
| 令和元年 | 790 | 28 | 3.7 | 令和元年10月4日 |
| 令和2年 | 793 | 3 | 0.4 | 令和2年10月3日 |
| 令和3年 | 821 | 28 | 3.5 | 令和3年10月2日 |
| 令和4年 | 854 | 33 | 4 | 令和4年10月20日 |
| 令和5年 | 893 | 39 | 4.6 | 令和5年10月4日 |
| 令和6年 | 952 | 59 | 6.6 | 令和6年10月27日 |
| 令和7年 | 1,031 | 79 | 8.3 | 令和7年12月1日 |
岩手県の最低賃金の推移を振り返るうえで、特に注目すべき点として挙げられるのが、令和2年(2020年)は前年から最低賃金が据え置きとなった点です。これは、新型コロナウイルス感染症の拡大により地域経済が深刻な影響を受けたことを踏まえ、当時は最低賃金を引き上げる環境にないと判断され、例外的に現行水準を維持する対応が取られたためです。
しかしその後は、経済活動の回復に加え、物価上昇の進行や慢性的な人手不足が顕在化したことを背景に、最低賃金は再び引き上げ基調へと明確に転換しました。岩手県においてもこの流れは例外ではなく、引き上げ幅は年々拡大しています。
具体的には、2024年度の改定において、岩手県の最低賃金は893円から952円へ(+59円)と、当時としては過去最大級の引き上げが実施されました。さらに、直近の2025年10月改定では、952円から1,031円へ(+79円)と、岩手県としてもこれまでにない大幅な引き上げとなっています。
最低賃金の引き上げの動向はどう考えるべき?
最低賃金の推移から読み取れるのは、最低賃金が例外的に据え置かれる制度ではなく、継続的に引き上げられることを前提に運用されるフェーズに入っているという点でしょうか。
引き上げ幅そのものも拡大傾向にあり、企業にとって最低賃金改定への対応は「毎年必ず発生する定例業務」として捉える必要があります。
特に、最低賃金に近い水準で賃金を設計している企業の場合、改定のたびに賃金テーブル全体の再調整が必要となります。その場しのぎで時給だけを合わせる対応を続けていると、翌年以降も同じ対応負荷が繰り返され、労務管理が不安定になるリスクが高まります。
そのため、最低賃金への対応は、都度の修正ではなく、中長期的な賃金設計の見直しとして捉えることが重要です。基本給水準・手当構成・昇給ルールまで含めて整理することで、最低賃金改定時の負担を抑えつつ、安定した雇用管理につなげることができます。
最低賃金の推移を正しく理解することは、単なる制度理解にとどまりません。人材確保・定着、そして持続可能な経営を実現するための重要な判断材料として、岩手県内企業にとって今後ますます重要性が高まっていくでしょう。
岩手県の最低賃金は全国で何位?【全国ランキング】
岩手県の最低賃金は、全国で第38位に位置しています。2025年12月に改定された最低賃金額は岩手県は1,031円で、前後では山形県の1,032円、佐賀県の1,030円です。
2026年最低賃金ランキング
| 順位 | 都道府県名 | 最低賃金額 | 順位 | 都道府県名 | 最低賃金額 | 順位 | 都道府県名 | 最低賃金額 | 順位 | 都道府県名 | 最低賃金額 | 順位 | 都道府県名 | 最低賃金額 |
|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
| 1位 | 東京 | 1,226 | 11位 | 広島 | 1,085 | 21位 | 石川 | 1,054 | 31位 | 香川 | 1,036 | 41位 | 鳥取 | 1,030 |
| 2位 | 神奈川 | 1,225 | 12位 | 滋賀 | 1,080 | 22位 | 福井 | 1,053 | 32位 | 大分 | 1,035 | 41位 | 佐賀 | 1,030 |
| 3位 | 大阪 | 1,177 | 13位 | 北海道 | 1,075 | 23位 | 山梨 | 1,052 | 33位 | 熊本 | 1,034 | 43位 | 青森 | 1,029 |
| 4位 | 埼玉 | 1,141 | 14位 | 茨城 | 1,074 | 24位 | 奈良 | 1,051 | 34位 | 福島 | 1,033 | 44位 | 鹿児島 | 1,026 |
| 5位 | 千葉 | 1,140 | 15位 | 栃木 | 1,068 | 25位 | 新潟 | 1,050 | 34位 | 島根 | 1,033 | 45位 | 高知 | 1,023 |
| 5位 | 愛知 | 1,140 | 16位 | 岐阜 | 1,065 | 26位 | 岡山 | 1,047 | 34位 | 愛媛 | 1,033 | 45位 | 宮崎 | 1,023 |
| 7位 | 京都 | 1,122 | 17位 | 群馬 | 1,063 | 27位 | 徳島 | 1,046 | 37位 | 山形 | 1,032 | 45位 | 沖縄 | 1,023 |
| 8位 | 兵庫 | 1,116 | 18位 | 富山 | 1,062 | 28位 | 和歌山 | 1,045 | 38位 | 岩手 | 1,031 | |||
| 9位 | 静岡 | 1,097 | 19位 | 長野 | 1,061 | 29位 | 山口 | 1,043 | 38位 | 秋田 | 1,031 | |||
| 10位 | 三重 | 1,087 | 20位 | 福岡 | 1,057 | 30位 | 宮城 | 1,038 | 38位 | 長崎 | 1,031 | |||
都市部の上位都道府県と比較すると水準差はあるものの、地方圏としては着実に引き上げが進んでいる地域といえます。
2025年度改定後の全国最低賃金を俯瞰すると、東京都・神奈川県・大阪府といった物価水準や経済規模の大きい都市部が上位を占めています。一方で、岩手県は全国加重平均額を意識しながら、段階的な引き上げが継続されてきた地域であり、最低賃金水準は年を追うごとに確実に底上げされていることが分かります。
岩手県の最低賃金は、全国を先導する「指標的な水準」という位置づけではありませんが、全国的な賃上げの流れを確実に反映しながら引き上げられるゾーンにあります。そのため、毎年の改定ごとに一定以上の引き上げが行われる可能性が高い点には、企業側として十分な注意が必要です。
【参考】2024年10月〜2025年10月改定までのランキングは?
2024年10月から2025年10月改定までの岩手県の最低賃金は、全国で第42位に位置していました。2024年度の最低賃金額は岩手県は952円で、前後では青森県や長崎県、鹿児島県の953円、秋田県の951円でした。

岩手県と近隣府県の最低賃金比較
岩手県の最低賃金(1,031円)は、全国的では下位に位置していますが、隣接する府県と比べてどうなのでしょうか?以下は主要な近隣府県との比較となりますので、ご参考ください(2026年1月時点)。
| 地域 | 最低賃金額 | 岩手県との差額 |
|---|---|---|
| 青森 | 1,029 | -2 |
| 宮城 | 1,038 | 7 |
| 秋田 | 1,031 | 0 |
| 山形 | 1,032 | 1 |
| 福島 | 1,033 | 2 |
東北地方内で比較してみても、岩手県は極端に低い水準にとどまっている地域ではなく、全国的な賃上げの流れを反映しながら引き上げが行われている県といえます。特に直近の改定では、1,000円台への到達を明確に意識した水準設定となっており、地方圏における最低賃金の位置づけは大きく変化しています。
この背景には、物価上昇の影響や人手不足の深刻化に加え、製造業・医療・介護・サービス業など、岩手県内に多い労働集約型産業の存在があります。最低賃金は単に地域の裁量で決まるものではなく、「地域で生活を維持できる賃金水準はいくらか」という観点から、国の目安と地域事情を踏まえて総合的に判断されています。
そのため岩手県においても、全国的な賃上げの流れを受けて、今後も一定以上の引き上げが継続される可能性が高いと考えられます。企業にとっては、過去の水準や近隣県の感覚だけで賃金を設定していると、気付かないうちに最低賃金を下回るリスクが生じやすい点に注意が必要です。
特に、岩手県内に複数の事業所を持つ企業や、他都道府県にも拠点を展開している企業の場合、就業場所ごとに適用される最低賃金が異なる点を正確に理解しておく必要があります。実務上は、「どこで働くか」を基準に最低賃金を判定し、地域別の賃金管理を行うことが、最低賃金違反を防ぐうえで欠かせません。
最低賃金と実際の賃金の比較方法
実は「最低賃金を守っているつもりが、実際には違反していた」というケースは、決して珍しくありません。というのも、最低賃金を正しく判断するためには、「正確な計算方法」と「どの賃金項目が対象になるか」という正しい理解が欠かせないからです。
この章では、自社の賃金が最低賃金を下回っていないかを確認するための具体的な比較方法をわかりやすく解説します。経営者や人事担当者の方はもちろん、自分の給与が基準を満たしているか不安な方にも、ぜひご活用いただきたい内容ですのでご参考になれば幸いです。
前提の整理:最低賃金の確認方法(給与形態別比較)
| 項目 | 月給制 | 日給制 | 時給制 |
|---|---|---|---|
| 最低賃金との比較方法 | 月給を時間単価に 換算して比較 | 日給を時間単価に 換算して比較 | 支払われている時給と 直接比較 |
| 計算式の概要 | 月給 ÷ 月平均の所定労働時間 | 日給 ÷ 1日の所定労働時間 | 時給 ≧ 最低賃金額 |
| 補足事項 | ・賞与、残業代、通勤手当などは除外 ・月平均の所定労働時間=年間所定労働時間 ÷ 12か月 | ・日によって労働時間が異なる場合は、平均的な所定労働時間を使用 | ・一番わかりやすく比較しやすい形態 ・最低賃金に含まれない手当は除外する必要あり |
なお、最低賃金の確認方法や、最低賃金に含むべき賃金・含まれない賃金については下記コラム記事で解説しています。ぜひ併せてご一読ください。

岩手県の最低賃金違反になるケース
「最低賃金は守っているつもりだった…」という企業でも、計算方法や手当の扱いを誤ることで、知らずに違反しているケースが少なくありません。
ここでは、2025年12月現在の岩手県の最低賃金(1,031円)を基準に、月給・日給・時給の各支払い形態ごとに、違法となる具体的な金額例を示してわかりやすく解説します。
月給者の場合
月給制の場合は、「月給 ÷月平均所定労働時間」で1時間あたりの賃金を算出し、最低賃金を下回っていないか確認します。
なお、月平均所定労働時間は年間休日数によって異なってきます。同じ月給額であっても、時給換算額も変動するため、注意しなければなりません。
| 労働条件等 | ケース① | ケース② | ケース③ |
|---|---|---|---|
| 暦日 | 365日 | 365日 | 365日 |
| 年間休日 | 120日 | 115日 | 110日 |
| 労働時間 | 8時間 | 8時間 | 8時間 |
| 所定労働時間月平均 | 164時間 | 167時間 | 170時間 |
| 対象賃金 | 169,300 | 169,300 | 169,300 |
| 時給換算 ※1円未満は四捨五入 | 1,032 | 1,014 | 996 |
| 違反状況 | 適法 | 違法 | 違法 |
つまり、岩手県では最低賃金の対象となる月給額が「169,300円」の契約においては、月平均所定労働時間が167時間以上の場合は最低賃金に違反していることになります。
日給者の場合
日給制の場合は、「日給 ÷ 1日の所定労働時間」で時間単価を算出し、最低賃金と比較します。
| 労働条件等 | ケース① | ケース② | ケース③ |
|---|---|---|---|
| 日給額 | 8,240 | 8,240 | 8,240 |
| 1日の労働時間 | 8時間 | 7.5時間 | 7時間 |
| 時給換算 ※1円未満は四捨五入 | 1,030 | 1,099 | 1,177 |
| 違反状況 | 違法 | 適法 | 適法 |
岩手県内において最低賃金の対象となる日給額が「8,240円」で1日の労働時間が8時間の場合は最低賃金に違反していることになります。
時給者の場合
時給制はもっともシンプルで、支払われている時給が岩手県の最低賃金1,031円を下回っていれば即違法です。
- 時給額:1,030円は違法
- 時給額:1,031円は適法
- 時給額:1,032円は適法
また、求人広告などで「交通費込みで時給1,100円」などと書かれていても、実際の基本時給が1,030円程度であれば違法になる可能性があります。
最低賃金引き上げが企業と労働者に与える影響
最低賃金の引き上げは、単なる数字の変更ではなく、企業経営や労働者の働き方に直接影響を及ぼす重要な経済政策の一環です。とりわけ近年は、物価上昇や人手不足への対応として、最低賃金の役割が一段と重視されています。
2025年12月の岩手県最低賃金改定では、前年度から79円の引き上げが行われ、最低賃金は1,031円となりました。これは、岩手県としても過去最大級の引き上げ幅であり、最低賃金が本格的に1,000円台に定着する転換点といえます。
企業にとっては、人件費の増加や賃金テーブルの見直しといった形でコスト構造の再設計を迫られる一方、労働者にとっては、生活水準を下支えし、就労継続や働き方の選択に影響を与える重要な節目となります。
最低賃金改定を一時的な負担として捉えるのではなく、人材確保・定着、生産性向上を見据えた経営判断の材料としてどう活用するかが、今後の岩手県内企業にとって大きなポイントになるでしょう。
この章では、最低賃金引き上げによって企業側と労働者側それぞれに何が起こるのかを整理し、社労士の実務視点から取るべき対応と注意点を解説します。
企業側の対応と注意点
最低賃金の引き上げにより、企業はまず人件費の増加という現実的な課題に直面します。岩手県では、サービス業や観光業、医療や介護分野など、人手に依存する業種が多いため、最低賃金改定の影響を受けやすい点が特徴です。
特にパートやアルバイトを多く雇用している中小企業では、経営への影響が大きくなりやすく、事前の確認と計画的な対応が欠かせません。
最低賃金を下回る賃金を支払っていた場合、行政指導や是正勧告にとどまらず、未払い賃金の支払い義務が生じるリスクがあります。知らなかったでは済まされない法的義務として、毎年の最低賃金改定時にチェック体制を整えておくことが重要です。
人件費の見直しと再計算
最低賃金の上昇は、特にパートやアルバイトを多く雇用する業種にとって大きな影響があります。全従業員の賃金が最低賃金を下回っていないかを確認し、必要に応じて賃上げを行う必要があります。
あわせて、人件費全体と売上や利益とのバランスを確認し、賃金水準、労働時間、配置の見直しを含めた総合的な検討が求められます。
労務管理の見直し
最低賃金を下回る給与は最低賃金法違反となるため、労働時間の管理方法、給与体系、手当の内訳まで細かく確認することが重要です。
特に固定残業代制度を採用している企業では、基本給部分が最低賃金を下回っていないか慎重にチェックする必要があります。
業務効率化と生産性向上の取り組み
人件費の上昇に対応するためには、業務効率化や生産性向上が欠かせません。ITツールの導入や業務フローの見直しなど、人を減らすのではなく仕事のやり方を変える視点が重要です。
中小企業には助成金の活用も視野に
賃金引き上げに伴う負担を軽減する手段として、業務改善助成金の活用も検討しましょう。
- 目的最低賃金の引き上げと生産性向上のための設備投資を支援
- 助成額最大600万円(企業規模や引き上げ人数等により変動)
- 対象経費例POSレジ、勤怠管理システム、パソコン、業務用ソフトなど
単にコストが増えると悲観するのではなく、助成金を活用しながら業務効率や生産性を高める契機とすることで、中長期的な競争力強化につなげることが可能です。
労働者が知っておくべきポイント
労働者にとって最低賃金の引き上げは、実質的な収入アップにつながる重要な制度改定です。一方で、現場では時給が変わっていない、手当で調整されているといった誤った対応が見られることもあります。
最低賃金はお願いするものではなく法律で守られた権利です。自分の賃金が適正かを確認することが、健全な働き方の第一歩といえるでしょう。
自分の賃金が最低賃金を下回っていないか確認
最低賃金は都道府県ごとに設定され、毎年改定されます。最新の金額を確認するとともに、交通費や一部手当は最低賃金の計算に含まれない点にも注意が必要です。
会社とのコミュニケーションも大切に
最低賃金を下回っている可能性がある場合は、まずは会社に事実を伝え、是正を求めることが望ましいでしょう。改善されない場合には、労働基準監督署などの行政機関に相談することも選択肢の一つです。
引き上げられる最低賃金への適切な対応策
最低賃金の改定は、企業と労働者双方にとって一時的な負担ではなく、将来につながる転換点です。
損か得かではなく、どうすれば働きがいのある職場をつくれるかという視点を持つことで、法令遵守と職場環境の改善を両立させることができます。
企業は定期的な賃金チェックの習慣化を、労働者は自らの労働条件への理解を深め、信頼と安心のある職場づくりに最低賃金制度を活かしていきましょう。
【岩手県版】最低賃金に関するよくある質問と回答
最低賃金は、一見するとシンプルな制度に思えますが、実際には「例外」や「誤解されやすいポイント」が数多く存在します。
そのため、企業・労働者を問わず、「このケースはどうなるの?」「違反した場合のペナルティは?」といった疑問の声が日々寄せられています。
ここでは、そうしたよくある質問を取り上げ、専門家の視点からわかりやすく解説しますので、ぜひ自社の状況やご自身の働き方と照らし合わせながらご活用ください。
まとめ:最低賃金改定への理解と今後の対応
2025年12月に実施された岩手県最低賃金の改定は、労働者の生活を下支えする制度改正であると同時に、企業にとっては経営戦略や人材戦略の見直しを迫られる重要な転機の一つといえるでしょう。
最低賃金制度は、単に時給の下限を定めるためのルールではありません。労働環境の公平性を確保し、地域経済の持続可能性を支える社会的インフラとしての役割を担っています。岩手県においても、最低賃金は地域で働く人々の生活基盤を支える重要な制度です。
最低賃金は毎年改定される制度ですが、重要なのは改定に追われることではなく、どう活用するかという視点です。賃金水準の見直しをきっかけに、人材の定着、業務効率の改善、働きがいの向上へとつなげられるかどうかが、今後の企業経営の成否を分ける重要なポイントになると考えられます。
今後も最低賃金を取り巻く環境は、物価動向や国の賃上げ方針を背景に、継続的な引き上げが想定される状況が続くでしょう。岩手県においても、最低賃金への対応は一時的な調整ではなく、中長期的な賃金設計や労務管理の課題として捉える必要があります。
本記事をきっかけに、企業と労働者双方が最低賃金制度を正しく理解し、実務に活かす視点を持つことで、法令遵守と持続可能な働き方・経営の両立につなげていただければ幸いです。



