Q. 正社員からパートになる従業員の社会保険はどうすればいいですか?
- 正社員からパートになる従業員の社会保険の取り扱い方
- 雇用形態が変更したときの社会保険に関する注意点
現在正社員で働いている従業員がいます。働く時間、日程を柔軟にしたいという希望があり、正社員からパートへ雇用形態が変更になるのですが、社会保険は資格喪失になるのでしょうか?
雇用形態変更に伴う社会保険の取り扱いについて教えてください。
A. 正社員からパートに変更した場合は労働時間・労働日数に応じて社会保険は判断する
結論申し上げますと、正社員からパート勤務になる方の
- 1週間の労働時間
- 1ヶ月の労働日数
によって、社会保険の資格を継続できる・できないの判断は異なります。
通常、正社員であれば会社の社会保険に加入しますが、パートやアルバイトの場合であっても
- 1週間の所定労働時間
- 1カ月の所定労働日数
が、同じ会社(事業所)で同様の仕事をしている正社員と比べて4分の3以上ですと加入することになります。正社員からパート勤務になる場合の社会保険の取り扱い方について「資格を継続できるパターン」と「資格が喪失になるパターン」の2つ、具体的に確認してみましょう。
正社員からパートへ変更となるが社会保険が継続できるパターン
前提として、正社員からパートに雇用形態が変更になったとしても「退職」ではありません。
雇用契約上は確かに一度「正社員との契約」は終了し、新たに「パートとして契約」をするイメージですが、社会保険の考え方として「資格取得の要件を満たしている」のであれば、健康保険や厚生年金保険は引き続き加入となります。
従いまして、
会社側 | 従業員側 |
---|---|
資格の取得や喪失手続きは不要 | 同じ健康保険証を使える |
雇用形態が正社員からパートに変更になったとしても、社会保険の手続き自体は不要となります。
正社員からパートへ変更となり社会保険が喪失するパターン
一方で「資格取得の要件を満たさない」のであれば、当然社会保険の資格を喪失することになりますので、諸手続きが必要です。
例えば、正社員からパートに雇用形態が変更になることで、
【変更前】正社員 | 労働条件 | 【変更後】パート |
---|---|---|
1週40時間 | 労働時間 | 1週20時間 1週間の労働時間が3/4未満 |
1ヶ月20日 | 労働日数 | 1ヶ月10日 1ヶ月の労働日数が3/4未満 |
上記のような場合は「社会保険の資格取得の要件を満たさない」ことになりますので、社会保険の資格は喪失することになります。
雇用形態が変更になってから5日以内に、管轄の日本年金機構(事務センターまたは年金事務所)へ「健康保険・厚生年金保険被保険者資格喪失届/厚生年金保険70歳以上被用者不該当届」を提出しましょう。
正社員からパートに変更になった場合の社会保険の注意点
正社員からパートに雇用形態が変更になった場合、会社としては労働条件のうち
- 1週間の労働時間
- 1ヶ月の労働日数
がどのようになるのか注意すべきですが、「社会保険料」にも気をつけておきましょう。
正社員からパートに変更になっても社会保険料は3ヶ月間は変わらない
一般的に、給与の支払い方法は
- 正社員:月給制
- パート:時給制
ではないでしょうか。正社員からパートに雇用形態が変わることにより給与の支払い方も変更になる場合は「月額変更届」の対象になり、給与の支払い金額によっては社会保険料自体も変化します。
ただし月額変更は、給与体系に変動があってから3ヶ月の報酬平均を算出し、4ヶ月目から新しい社会保険料となる点を押さえておきましょう。
社会保険労務士によるワンポイント解説
正社員からパートに雇用形態が変更になったとしても、社会保険の資格を喪失するかどうか、労働条件によって判断が異なります。「パートになるから社会保険には入れない」わけではないので、注意してください。
また、正社員からパートに変更となる場合、給与は少なくなることが想定されます。その一方で給与から天引きされる社会保険料は3ヶ月の間は、正社員のときと同じ金額のため従業員からするとかなり負担に感じられると思います。正社員からパートに雇用形態が変わる際、しっかりと従業員に説明しておくことをオススメいたします。
社会保険の考え方や諸手続きは非常に煩雑です。そのため少しでも不安がある場合はぜひ社会保険労務士にご相談ください!
社会保険への加入は、
- 1週間の労働時間
- 1ヶ月の労働日数
によって判断が異なります。正社員からパートへと雇用形態が変わる場合、労働時間や労働日数がどのように変化するのかしっかりと確認してください。
労働時間や労働日数に問題がなく、社会保険の資格を継続できる場合はその旨を従業員に伝えましょう。その際、社会保険料が3ヶ月間は変更されない点も予め説明しておくことが重要です。
また、パートになってから3ヶ月の給与を支払い終えた後、月額変更届の手続きを忘れずに行いましょう。
社会保険の資格喪失手続きを速やかに行いましょう。協会けんぽなのか、健康保険組合なのか、所属している保険によっては提出機関が異なりますのでご注意ください。
無料相談をご希望される方へ
TSUMIKI社会保険労務士事務所では、経営者・人事労務担当者の方のお悩み・疑問にお答えする無料オンライン相談を実施しております。本記事に関する内容だけでなく、日々の労務管理に課題を感じている場合には、お気軽にお問い合わせください。
矢野 貴大
TSUMIKI社会保険労務士事務所/代表・社会保険労務士
金融機関・社会保険労務士法人・国内大手コンサルティング会社を経て大阪で社会保険労務士事務所を開業。
25歳で社労士資格を取得した後、社会保険労務士・経営コンサルタントとして延べ200社を超える企業・経営者をサポートする。その経験を活かし「想いを組み立て、より良い社会環境を形づくる」というMISSIONに向かって日々活動中。