Q. NPO法人を立ち上げました。社会保険に加入する必要はありますか?
- NPO法人の労災保険・社会保険の取り扱い
- 労災保険・社会保険に加入する必要がある企業
NPO法人の起業を考えています。
一般企業であれば労災保険や健康保険、社会保険に加入しなければならないと思うのですが、NPO法人でも同様なのでしょうか?
NPO法人における社会保険の取り扱いについて教えてください。
A. NPO法人も社会保険の適用事業所となります。
社会保険の場合は、個人事業なのか法人なのかによって、取り扱い方法が異なります。前提として社会保険とは一般的に
- 健康保険
- 厚生年金保険
- 労働者災害補償保険
- 雇用保険
の総称として使われることがあります。
そのため今回は4つの保険に対して、NPO法人を立ち上げた際に加入すべきかどうか解説いたします。
NPO法人の健康保険・厚生年金保険の取り扱い
まず結論から申し上げますと、NPO法人であっても従業員を一人でも雇用している場合は健康保険・厚生年金保険の加入義務が発生することになります。加入義務が発生する会社のことを健康保険・厚生年金では「適用事業所」と呼びますが、各保険とも根拠となる法律が異なりますので確認しましょう。
NPO法人の他にも、一般社団法人や財団法人、合同会社なども法人になります。従ってこれらも従業員を一人でも雇用していると事業所として社会保険に加入する必要があります。
健康保険の適用事業所とは?
健康保険では
- 次の業種において常時5人以上の従業員を使用する事業所
- 製造業・土木建築業・鉱業・電気ガス事業・運送業・清掃業・物品販売業・金融保険業・保管賃貸業・媒介周旋業・集金案内広告業・教育研究調査業・医療保健業・通信報道業・士業など
- 常時、従業員を使用する国、地方公共団体又は法人の事業所
参考:全国協会けんぽ「適用事業所」より
上記の①もしくは②に該当する事業所は「強制適用事業所」とされています。NPO法人の場合、②の「常時、従業員を使用する国、地方公共団体又は法人の事業所」になりますので、NPO法人も例外なく従業員を雇用する場合は健康保険に加入しなければなりません。
根拠となる法律については、下記クリックいただけると該当する文章が表示されます。
健康保険法における「適用事業所」をみてみる
この法律において「適用事業所」とは、次の各号のいずれかに該当する事業所をいう。
e-GOVE「健康保険法」より
一 次に掲げる事業の事業所であって、常時五人以上の従業員を使用するもの
イ 物の製造、加工、選別、包装、修理又は解体の事業
ロ 土木、建築その他工作物の建設、改造、保存、修理、変更、破壊、解体又はその準備の事業
ハ 鉱物の採掘又は採取の事業
ニ 電気又は動力の発生、伝導又は供給の事業
ホ 貨物又は旅客の運送の事業
ヘ 貨物積卸しの事業
ト 焼却、清掃又はと殺の事業
チ 物の販売又は配給の事業
リ 金融又は保険の事業
ヌ 物の保管又は賃貸の事業
ル 媒介周旋の事業
ヲ 集金、案内又は広告の事業
ワ 教育、研究又は調査の事業
カ 疾病の治療、助産その他医療の事業
ヨ 通信又は報道の事業
タ 社会福祉法(昭和二十六年法律第四十五号)に定める社会福祉事業及び更生保護事業法(平成七年法律第八十六号)に定める更生保護事業
レ 弁護士、公認会計士その他政令で定める者が法令の規定に基づき行うこととされている法律又は会計に係る業務を行う事業
二 前号に掲げるもののほか、国、地方公共団体又は法人の事業所であって、常時従業員を使用するもの
厚生年金保険の適用事業所とは?
厚生年金保険でも、健康保険と同様に
- 次の業種において常時5人以上の従業員を使用する事業所
- 製造業・土木建築業・鉱業・電気ガス事業・運送業・清掃業・物品販売業・金融保険業・保管賃貸業・媒介周旋業・集金案内広告業・教育研究調査業・医療保健業・通信報道業・士業など
- 常時、従業員を使用する国、地方公共団体又は法人の事業所
参考:独立行政法人日本年金機構「適用事業所と被保険者」より
上記の①もしくは②に該当する事業所は「強制適用事業所」になります。。NPO法人は当然②の「常時、従業員を使用する国、地方公共団体又は法人の事業所」になりますので、NPO法人も例外なく従業員を雇用する場合は厚生年金保険にも加入義務が発生することになります。
根拠となる法律については、下記クリックいただけると該当する文章が表示されます。
健康保険法における「適用事業所」をみてみる
次の各号のいずれかに該当する事業所若しくは事務所(以下単に「事業所」という。)又は船舶を適用事業所とする。
e-GOVE「厚生年金保険法」より
一 次に掲げる事業の事業所又は事務所であつて、常時五人以上の従業員を使用するもの
イ 物の製造、加工、選別、包装、修理又は解体の事業
ロ 土木、建築その他工作物の建設、改造、保存、修理、変更、破壊、解体又はその準備の事業
ハ 鉱物の採掘又は採取の事業
ニ 電気又は動力の発生、伝導又は供給の事業
ホ 貨物又は旅客の運送の事業
ヘ 貨物積卸しの事業
ト 焼却、清掃又はと殺の事業
チ 物の販売又は配給の事業
リ 金融又は保険の事業
ヌ 物の保管又は賃貸の事業
ル 媒介周旋の事業
ヲ 集金、案内又は広告の事業
ワ 教育、研究又は調査の事業
カ 疾病の治療、助産その他医療の事業
ヨ 通信又は報道の事業
タ 社会福祉法(昭和二十六年法律第四十五号)に定める社会福祉事業及び更生保護事業法(平成七年法律第八十六号)に定める更生保護事業
レ 弁護士、公認会計士その他政令で定める者が法令の規定に基づき行うこととされている法律又は会計に係る業務を行う事業
二 前号に掲げるもののほか、国、地方公共団体又は法人の事業所又は事務所であつて、常時従業員を使用するもの
NPO法人の労災保険・雇用保険の取り扱い
では続いて労災保険(正式名称は労働者災害補償保険)および雇用保険についてはどうなるのでしょうか。実はこの2つの保険に対しても従業員を雇用するとNPO法人であっても加入義務が発生しますので、それぞれ根拠となる内容を確認してください。
労働者災害補償保険の適用事業所とは?
労災保険の場合は従業員を一人でも雇用していると加入しなければなりません。個人事業・法人問わず適用事業所となります。ただし、労災保険については雇用している従業員が対象となり、経営者や役員などは原則加入対象とはなりません。
労働者災害補償保険法における「適用事業所」をみてみる
この法律においては、労働者を使用する事業を適用事業とする。
② 前項の規定にかかわらず、国の直営事業及び官公署の事業(労働基準法(昭和二十二年法律第四十九号)別表第一に掲げる事業を除く。)については、この法律は、適用しない。
e-GOVE「労働者災害補償保険法」より
雇用保険の適用事業所とは?
重複しますが、雇用保険の場合も従業員を一人でも雇用していると加入義務が発生します。個人事業・法人問わず適用事業所となります。ただし、農林水産業のうち5人未満の従業員を雇用する個人事業については、当分の間は暫定任意適用事業とされている点は労働者災害補償保険と異なります。
雇用保険法における「適用事業所」をみてみる
この法律においては、労働者が雇用される事業を適用事業とする。
e-GOVE「雇用保険法」より
まとめ
NPO法人の場合、従業員を雇用すると加入義務が発生します。ただし、健康保険・厚生年金保険の場合は経営者のみであっても加入するべきとされていますので注意してください。
社会保険の加入手続きは専門的な知識も必要であり、少しでもご不安な箇所がありましたらお問い合わせください。
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TSUMIKI社会保険労務士事務所では、経営者・人事労務担当者の方のお悩み・疑問にお答えする無料オンライン相談を実施しております。本記事に関する内容だけでなく、日々の労務管理に課題を感じている場合には、お気軽にお問い合わせください。
矢野 貴大
TSUMIKI社会保険労務士事務所/代表・社会保険労務士
金融機関・社会保険労務士法人・国内大手コンサルティング会社を経て大阪で社会保険労務士事務所を開業。
25歳で社労士資格を取得した後、社会保険労務士・経営コンサルタントとして延べ200社を超える企業・経営者をサポートする。その経験を活かし「想いを組み立て、より良い社会環境を形づくる」というMISSIONに向かって日々活動中。