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Q. 就業規則の作成を考えていますが、就業規則にはどのような種類があるのか教えてください。

就業規則 規程例
この労務Tipsでわかること
  • 就業規則を作成する上での最低限求められる内容
  • 就業規則や各規程の種類や特徴
  • 就業規則や各規程を作成するための手順

これから就業規則を新しく作成する予定です。

調べてみると、就業規則だけでなく賃金規定や育児介護休業規定など、就業規則以外にも色々とあると知りました。どのような違いがあるのでしょうか?

A. 就業規則の種類や名称は会社に応じて作成いただけます。

就業規則は、労働基準法において従業員が10名以上の事業所は作成義務があると定められています。とはいえ「就業規則」という名前で作成しなければいけないわけではないのです。

つまり、法律上「就業規則として記載すべき内容」が網羅できれいれば、就業規則から「賃金のルールについては賃金規程に定める」「育児介護については育児介護休業規程に定める」のように切り分けて作成することは差し支えありません。

労働基準法で定められている就業規則の要件とは

では、労働基準法で定められている就業規則の要件から確認をいたします。就業規則を作成するときは

就業規則を構成する3つの要素
  • 絶対的必要記載事項:就業規則を作成するのであれば、必ずルール化をして記載する必要がある内容
  • 相対的必要記載事項:就業規則を作成し、社内でルールを設けるのであれば記載する必要ある内容
  • 任意的記載事項:法律上必要ではないが、組織を律する上で社内ルールを自由に記載できる内容

上記の「絶対的必要記載事項」と「相対的必要記載事項」は必ず守らなければなりません。その他「任意的記載事項」については、法律上定められていないため、会社が自由に作成することができます。

裏を返すと「絶対的必要記載事項」と「相対的必要記載事項」の掲載さえできるのであれば

  • 雇用形態や職種ごとに就業規則を分けて作成すること
  • 就業規則の記載事項とされている項目ごとに別規程として作成すること

など、法律上問題はありません。また、一つの就業規則ですべてを網羅的にルール化してしまうと

  • 法改正の際に就業規則全体を修正しなければならない
  • 一部ルールを改定する際も全体を修正しなければならない

このようなデメリットがありますので、実務上では給与の取り決めについては「給与規程」、育児や介護など複雑な休業については「育児介護休業規程」など、就業規則とは別の規程を作成することが多々あります。

絶対的必要記載事項とは?
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絶対的必要記載事項の種別記載する内容
始業及び終業の時刻雇用形態や職種別など、従業員の勤務時間のルール
休憩時間休憩時間の長さや、休憩を与えるタイミング
休日日数や与え方、週のうち何曜日を休日にするのか等
休暇年次有給休暇や産前産後休業および育児休業などの法律上定められている休暇・休業であったり、慶弔休暇や夏季休暇などの会社が独自で付与する休暇
就業時転換に関する事項従業員を二組以上に分けて交替に就業させる場合の交替期日や交替順序等
賃金(臨時のものは除く)の決定、計算方法賃金の構成(基本給や各種諸手当)やその賃金支給時の計算方法
賃金の支払方法賃金を直接支払うのか、銀行口座への振り込みを行うのか
賃金の締切り及び支払時期月給、週給、日給の区分。月給、週給は月の何日に締め切って、何日を支給日とするか
昇給に関する事項昇給の時期や、昇給するための要件
退職に関する事項(解雇の事由を含む)退職をする際の申請ルールや、解雇になり得る働き方、定年となる年齢等
相対的必要記載事項とは?
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相対的必要記載事項の種別記載する内容
退職手当の適用される労働者の範囲
退職手当の決定方法・計算方法・支払方法・支払時期に関する事項
退職金制度を設ける場合の退職金計算の方法や、支給対象者
臨時の賃金等・最低賃金額に関する事項
賞与(ボーナス)の制度を導入する場合の計算方法や支給対象者
労働者に負担させる食費・作業用品その他に関する事項業務上必要な備品の購入などを従業員に負担させる場合等
安全・衛生に関する事項
職場内の安全衛生を保つための取り決めや、労働災害防止に必要な施策
職業訓練に関する事項
従業員に教育訓練を命じる場合のルールや命じるタイミング等
災害補償・業務外の傷病扶助に関する事項
労働災害時の補償や、私傷病に対する補助を行う場合の取り扱い
表彰・制裁の種類・程度に関する事項従業員の功績を称える表彰や、懲戒処分の対象とする勤務不履行の種類など
その他事業場の労働者すべてに適用される事項転勤や配属転換など、従業員に対して適用する人事制度など
任意的記載事項とは?

「任意的記載事項」は、会社が独自で作成することができるルールとなります。そのため就業規則にどのように記載するのか会社によって様々ですが、下記についてはよく作成されている内容といえます。

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任意的記載事項の種別例記載する内容
採用時の提出書類やその目的従業員を採用する際に身元保証人や機密保持契約の提出を求める等
試用期間の長さや本採用への登用条件試用期間を設ける場合、その期間の長さや本採用への登用条件等
残業や休日出勤を行う際の手続き残業が発生する場合の諸手続き(上長への残業申請など)

会社のルールとして作成しておきたい規程

労働基準上で定められている内容の他に、円滑な組織運営を行う上ではルール整備は必要不可欠です。

これから就業規則を作成するのであれば、企業の組織風土を守るためにもぜひ下記のような規程作成をご検討ください、

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規程の名称例記載する内容作成を検討したい企業の特徴
ハラスメント防止規程ハラスメントに対する企業の方針や発生時の懲戒処分や対応フローなど全企業
通勤規程マイカーや自転車での通勤を許可する場合の申請フローや、自賠責保険などの加入を要件とするなど公共交通機関以外での通勤を認める企業
安全衛生管理規程労働災害が発生した際の対応フローや、誰がどのような責任を持って対応すべきなのか特に労働災害が発生しやすい建設・運輸・製造など
慶弔見舞金規程従業員もしくはその家族の慶弔事に対し支給する、祝い金や見舞金の金額や支給ルール福利厚生を充実させたい企業
在宅勤務規程在宅勤務時における連絡体制や業務報告の仕方、勤怠打刻のルール、光熱費の負担者などの取り決め在宅勤務を認める企業
SNS管理規程業務時間外であっても、会社の機密情報や内部情報をSNSで発信しないなどルールの取り決めや、違反した場合の懲戒処分など全企業
管理監督者規程管理監督者として任用する際の職務内容・権限と責任や、勤務方法、賃金など管理監督者を巡ってトラブルになりやすい中小企業

TSUMIKI社会保険労務士事務所では、就業規則・諸規程の作成を行っておりますのでお気軽にご相談ください。

社会保険労務士によるワンポイント解説

就業規則は「絶対的必要記載事項」「相対的必要記載事項」さえ遵守できていれば、規程を作成する上で制限はありません。そのため会社の実態に応じて就業規則や各種規程の作成が大切になります。

また、ルールは作成して終わりではなく日々の労務管理において運用し、アップデートしていくことが求められますので、しっかりと自社にあった就業規則・各種規程を導入しましょう。

就業規則・各種規程の作成フロー
STEP
社内の理想の働き方を整理する

ルールを作る上で意識いただきたいのは「どのような会社にしていきたいのか」「会社の理想像はどんな状態なのか」目標から逆算する考え方をご提案いたします。

会社で発生するトラブルに対応するためにルールを作っていると、後手に回ってしまいトラブルを未然に防ぐことは難しくなります。しっかりと会社の未来を考えて、従業員が働きやすいルールはどのようなものなのか考えることが大切なのです。

STEP
就業規則・各種規程を作成する

社内の理想の働き方が言語化・整理ができましたら具体的に就業規則・諸規程の作成に動きます。内容や種類にもよりますが、就業規則を作成するときは3ヶ月程度の期間は必要になります。

就業規則は一度作成すると変更時に従業員への説明や同意が求められることもありますので、慎重に進めましょう。また、ルールづくりには専門的な知識が必要ですので、社労士に依頼して共同で作り上げることをオススメいたします。

STEP
就業規則の届け出・周知を実施する

就業規則を作成したら、所轄の労働基準監督署に届け出をします。従業員数が10人未満の場合、労働基準監督署への届け出は義務ではありませんが、従業員が増えた際に届け出を忘れてしまうケースがあるため、事前に出しておいたほうが安心感があります。特に届け出をしたことによるデメリットはございません。

その後、従業員へ説明会などを通じて周知も忘れずに行いましょう。

STEP
運用・状況に応じてルールをアップデートする

就業規則を参考に、日々の労務管理を行っていきます。加えて、組織は日々変化をしていくものです。定期的に実態とルールを照らし合わせながら、必要であればルールを変更するなど柔軟に対応してください。

無料相談をご希望される方へ

TSUMIKI社会保険労務士事務所では、経営者・人事労務担当者の方のお悩み・疑問にお答えする無料オンライン相談を実施しております。本記事に関する内容だけでなく、日々の労務管理に課題を感じている場合には、お気軽にお問い合わせください。

執筆者プロフィール

矢野 貴大

TSUMIKI社会保険労務士事務所/代表・社会保険労務士

金融機関・社会保険労務士法人・国内大手コンサルティング会社を経て大阪で社会保険労務士事務所を開業。

25歳で社労士資格を取得した後、社会保険労務士・経営コンサルタントとして延べ200社を超える企業・経営者をサポートする。その経験を活かし「想いを組み立て、より良い社会環境を形づくる」というMISSIONに向かって日々活動中。

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