Q. 慶弔見舞金規程(慶弔規定)の作成を考えています。雛形はありますか?
- 慶弔見舞金規程(慶弔規定)とは?
- 慶弔見舞金規程(慶弔規定)の作成方法や手順、よくある規定例
従業員も増えてきたため、従業員の慶弔に対する福利厚生を整えたいと考えています。
慶弔見舞金規程(慶弔規定)の作成は必要でしょうか?また、他社がどのように 慶弔見舞金規程(慶弔規定)を作成したのか、手順や方法を教えていただきたいです。
A. 慶弔見舞金規程(慶弔規定)の考え方からお伝えします
慶弔見舞金規程(慶弔規定)を設けることで、従業員の福利厚生、主に福祉を支援することができるため働きやすい環境整備に繋がります。
ただし、慶弔見舞金規程(慶弔規定)として社内規程化する場合は設けておくべき条文もありますので、考え方から作成手順、また実際に導入されている企業の例を元に慶弔見舞金規程(慶弔規定)の条文を雛形形式でご紹介します。
慶弔見舞金規程(慶弔規定)とは?
慶弔見舞金規程(慶弔規定)とは、企業が従業員の
- 結婚
- ご本人もしくは配偶者の出産
- 親族の死亡
といった、慶弔事象が発生した場合に支給する見舞金・支援する範囲や条件を定めた社内規程のことを指します。
慶弔事象に対しての制度は、大企業に求められるイメージかもしれませんが、中小企業でも慶弔見舞金規程は従業員と企業双方にとって利益をもたらす重要な要素です。
経営資源とのバランスは確かに必要ですが、企業規模問わず従業員を大切にする文化を育て、企業の持続可能な成長を支えるために、慶弔見舞金規程の導入を検討する価値は大いにあると言えます。
慶弔見舞金の相場は?
慶弔見舞金規程(慶弔規定)では、どのような慶弔事象に対していくら支援(支給)するのか、可視化することが一般的です。
一方で、支給額は企業の業種、規模、地域の慣習、財務状態、によって大きく異なります。よくある費用相場として下記記載しておりますが、参考としてご確認ください。
事象 | 相場例 | 備考 |
---|---|---|
結婚 | 20,000~50,000円 | 従業員またはその子供の結婚に対して |
出産 | 10,000~30,000円 | 従業員の配偶者の出産に対して |
傷病 | 5,000~20,000円 | 病気や怪我に対して |
葬儀 | 20,000~50,000円 | 従業員やその直系親族の葬儀に対して |
慶弔見舞金規程(慶弔規定)の作成手順
では具体的に、 慶弔見舞金規程(慶弔規定)の作成を検討される際、どのようなSTEPで進めるべきなのか解説いたします。
- 基本方針を定める
- 対象となる慶弔事象の選定
- 支給条件と金額の決定
- 手続きの流れの明確化
- 内部承認の取得
- 従業員への周知
慶弔見舞金規程(慶弔規定)の作成方法として、弊社で実際にサポートしている手順を元に紹介いたします!ぜひ参考にしてください。
基本方針を定める
まず、規程を設ける主な目的を明確にします。
例えば従業員のモチベーション向上、福利厚生の充実、企業文化の醸成など、多岐にわたりますが、企業のビジョンや倫理観・方向性に基づいて、慶弔規定を通じて実現したい価値を事前に整理されることをオススメいたします。
対象となる慶弔事象の選定
次に、結婚、出産、家族の重大な節目や死亡など、規程でカバーする慶弔事象をリストアップしましょう。
ぜひ従業員の多様性を考慮し、異なる文化や習慣がある場合の対応策も検討してください。
支給条件と金額の決定
慶弔見舞金の対象とする事象が選定できましたら、支給を受けるための条件(雇用形態・勤続年数、親族の範囲など)を具体的に決定します。
なお、同業他社の規定や地域の慣習も考慮することも忘れずに、適切な支給金額の範囲を設定します。
手続きの流れの明確化
制度に該当する従業員がいた場合、どのような手続きを取ることになるのか、予めルール化しましょう。
- 申請手続き: 見舞金の申請方法、必要な書類や証明、申請の期限などを明確にします。
- 支給手続き: 支給の決定プロセス、支給までの時間軸、支給方法(現金、口座振込など)を定めます。
主に上記2つの流れの文章化が重要です。
制度確定・内部承認
具体的に慶弔見舞金規程(慶弔規定)が作成できましたら、会社規模に応じて制度確定に向けて決裁権者との合意形成を図りましょう。人事部門管轄であれば、経営層とのすり合わせにより最終決定になります。
また、このステップでフィードバックが発生することも考えられます。規程案の微調整・改善も忘れずに行います。
従業員への周知
作成した慶弔見舞金規程(慶弔規定)について、従業員に対して周知しましょう。周知方法として、説明会やQ&Aセッションを開催することが有効です。
また、必要に応じて規程自体を配布したり、従業員がいつでも閲覧できるように社内共有用のフォルダに保管することも同時に進めましょう。
慶弔見舞金規程(慶弔規定)の雛形・条文例
慶弔見舞金規程(慶弔規定)を作成する際、どのような条文を整備すればいいのか迷われる経営者・人事担当者の方もおられると思います。ここでは
- 対象範囲
- 事象と見舞金額
- 手続き・支給方法
上記ごとに設定すべき条文例を紹介いたします。会社の目的や方向性に応じて、文面は必ずカスタマイズしてください。もし制度設計でお困りごとがありましたら、お気軽にお問い合わせください。
対象範囲
(第◯条)対象範囲
1.慶弔見舞金は、勤続年数が1年以上の従業員に支給する。
2.本規程に定める従業員とは、正社員、契約社員、パートタイム・アルバイト、嘱託従業員とする。これ以外の雇用形態のものについては、本規程の対象外とする。
事象と見舞金額
(第◯条)慶弔見舞金の内容
1.慶弔見舞金の内容は、次のとおりとする。
- 結婚祝金
- 出産祝金
- 弔慰金
- 傷病見舞金
- 災害見舞金
結婚祝金
(第◯条)結婚祝金
1.本条における結婚とは、入籍を伴う結婚をいう。ただし、再婚までを対象とし、その後の結婚は対象としない。
2.従業員が結婚した場合は、勤続年数に応じて次のとおり結婚祝金を支給する。
- 勤続年数:1年以上3年未満
- 10,000円
- 勤続年数:3年以上
- 20,000円
- 勤続年数:5年以上
- 30,000円
3.結婚する双方が従業員の場合、それぞれに対して本条に定める祝金を支給する。
出産祝金
(第◯条)出産祝金
1.従業員又は従業員の配偶者が出産した場合は、一産児につき30,000円を支給する。
弔慰金
(第◯条)弔慰金
1.従業員が死亡した場合は、遺族に対して弔慰金を支給する。
- 業務上の死亡:基本給3ヶ月分の相当額
- 業務外の死亡:50,000円
2.従業員の配偶者が死亡したときは、30,000円を支給する。
災害見舞金
(第◯条)災害見舞金
1.従業員本人又は転勤により別居している家族が居住している家屋(自己所有かつ自己居住の建物に限る。)が天災その他災害により自然災害により損害を被ったときは、災害見舞金を支給する。
- 全損(全壊・全焼・全流失等、これらに類する被害)
- 50,000円
- 半損(半壊・半焼・半流失等、これらに類する被害)
- 20,000円
- 一部損等これに類する被害
- 20,000円
手続き・支給方法
支給手続きの条文例
(第◯条)慶弔見舞金の手続き
1.従業員が本規程により慶弔見舞金を受けようとする場合には、各対象事象ごとに定められる所定の様式に従い、申請書を所属する部署の上長もしくは管理部署を通じて会社に届け出なければならない。
2.従業員は、前項の申請書に加えて、当該事実を確認できる書類を添付しなければならない。ただし、会社が認めた場合には、添付する書類の全部又は一部を省略することがきる。
支給方法の条文例
(第◯条)慶弔見舞金の支給
1.会社は、 従業員から申請があった場合、支給事由を確認し、速やかに慶弔見舞金を支給する。
2.支給日は、承認日が属する賃金計算期間に応じて、次回給与支給日に手当として支給する。
社会保険労務士によるワンポイント解説
慶弔見舞金規程の作成と実施は、従業員へのサポートと企業文化の強化に貢献する重要な制度になります。
従業員のニーズと企業の目的に合致した規程を作成し、効果的に運用することで、従業員と企業双方にメリットをもたらすことができますので、これから導入を検討していたり、制度の見直しをお考えの経営者の方はぜひ本記事を参考にしてください。
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TSUMIKI社会保険労務士事務所では、経営者・人事労務担当者の方のお悩み・疑問にお答えする無料オンライン相談を実施しております。本記事に関する内容だけでなく、日々の労務管理に課題を感じている場合には、お気軽にお問い合わせください。
矢野 貴大
TSUMIKI社会保険労務士事務所/代表・社会保険労務士
金融機関・社会保険労務士法人・国内大手コンサルティング会社を経て大阪で社会保険労務士事務所を開業。
25歳で社労士資格を取得した後、社会保険労務士・経営コンサルタントとして延べ200社を超える企業・経営者をサポートする。その経験を活かし「想いを組み立て、より良い社会環境を形づくる」というMISSIONに向かって日々活動中。