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「際して」の正しく使えてる?意味・例文・「にあたって」との違いも紹介

本記事ではこのようなお悩みを解決いたします
  • 「際して」の正しい意味や使い方がわからない
  • ビジネス文書やスピーチでの自然な使い方を知りたい
  • 「にあたって」など類義語との違いに迷っている

ビジネスシーンやフォーマルな文章でよく使われる「際して」という言葉。丁寧で改まった印象を与える一方で、使いどころや意味が曖昧なまま使われているケースも少なくありません。

本記事では、「際して」の正しい意味や用法、実際の例文を交えながらわかりやすくご紹介します。また、似た表現である「にあたって」との違いにも触れ、文脈に応じた適切な使い分けができるようになることを目指します。正確な日本語表現を身につけたい方は、ぜひ最後までご覧ください。

このページの概要

前提:「際して」の意味は?

「際して」という表現は、日常会話ではあまり使われないものの、ビジネス文書や挨拶文、公式なスピーチなどで頻繁に登場します。文の中に自然に取り入れることで、文章全体が丁寧で品のある印象になります。このセクションでは、「際して」の読み方と基本的な意味について解説します。

読み方は「さいして」

「際して」は漢字で「際して」と書き、読み方は「さいして」です。

「際」という漢字には「ある事柄のちょうどそのとき」や「きわ」という意味があり、「〜する際(さい)」などでも見られるように、時間や場面を表す言葉として使われます。

「際して」は動詞に接続する形式で用いられ、「何かをするタイミングにあたって」というニュアンスを持っています。

基本的な意味:「ある行為・事態にあたって」「〜の折に」

「際して」は、ある行動や出来事が起こる直前またはそのタイミングに焦点を当てて使われる表現です。言い換えれば、「〜するにあたって」「〜の折に」といった意味を持ちます。

「際して」の例文
  • 入社に際して、多くの方々から祝辞をいただきました。
  • 海外赴任に際して、事前研修を受ける必要があります。

このように、「際して」はあらたまった場面で使用されることが多く、行為の開始や重要な転機に立ち会うときの丁寧な言い回しとして適しています。

「際して」の語源と文法構造

「際して」は格式ばった文章で使われることが多いため、その語源や文法構造を正しく理解しておくと、文脈に応じた自然な使い分けができるようになります。ここでは、「際して」がどのように構成されているのか、また「際」という漢字の意味との関係性について詳しく解説します。

「際する」の連用形+接続助詞「て」

「際して」は、動詞「際する」の連用形「際し」に、接続助詞「て」が付いた形です。

文法的には、「〜するタイミングに接する」という意味を持つ動詞「際する」に由来しています。

  • 「際する」=ある出来事・行為が始まる直前に関係する
  • 「際し」+「て」=「際して」

つまり、「ある行為に差し掛かる・直面する場面で」というニュアンスを丁寧に表現しているのが「際して」なのです。動詞に付けることで、「行動の開始時点」や「物事の境界線上」に焦点を当てた意味合いを持ちます。

「際(きわ)」漢字の意味とのつながり

「際」という漢字自体にも、「ある物事の境界」や「ぎりぎりの場面」「端(はし)」といった意味があります。この漢字は「国際」「交際」「実際」などの熟語でも見られるように、「接点」や「間際」のような感覚を持つ語として多用されています。

「際して」という表現も、この「きわ=境界」の意味合いから派生しており、「これから何かが始まる直前の場面」を強調する役割を担っています。

「際して」は単なるタイミングを示すだけでなく、「重要な節目」や「あらたまった局面」を示す際に使うことで効果的かと考えられます。

「際して」が使われる場面

「際して」は、文語的で改まった表現であるため、使う場面や相手を選ぶ必要があります。ここでは、フォーマルな文章における使用例と、日常生活における使い方や注意点について具体的に紹介します。

フォーマル/ビジネス文の例

「際して」は、ビジネス文書や公式スピーチ、あいさつ文などでよく使用されます。何かを始めるタイミングや重要な節目を強調するのに適しており、相手に敬意を示す表現として重宝されます。

フォーマル/ビジネス文の例
  • 「新規プロジェクトの立ち上げに際して、関係各位にご協力をお願い申し上げます。」
  • 「退職に際して、多くの方にお世話になったことを心より感謝申し上げます。」
  • 「入学に際して、学生生活の心得をご説明いたします。」

このように、「〜に際して」は「〜にあたって」と同様に、冒頭の挨拶や導入文で使用されることが多く、文章全体にかしこまった印象を与えることができます。

日常生活での使い方と注意点(カジュアルでは硬い)

一方で、「際して」は日常会話やカジュアルなメールなどではあまり使われません。

その理由は、語感が堅く、かしこまりすぎた印象を与えるためです。例えば友人同士のやりとりで「旅行に際して荷造りしたよ」などと言うと、不自然で違和感のある表現になってしまいます。

カジュアルな場面で言い換える場合は、

  • 「〜する前に」
  • 「〜のときに」
  • 「〜にあたって(少し柔らかめの敬語)」

上記のような表現が良いのではないでしょうか。

「際して」は、使いこなせば非常に上品で的確な表現となる一方、使いどころを間違えると堅苦しさや不自然さを感じさせてしまう言葉です。状況や相手に応じて、適切に使い分けることが大切でしょう。

「際して」と似た表現との違い

「際して」はフォーマルな場面でよく使われますが、似たような表現として「関して」「にあたって」「際しまして」「折に」などもよく登場します。これらの表現は、いずれも丁寧で改まった印象を持つため、使い分けに迷うことも少なくありません。このセクションでは、それぞれの違いや使い方のポイントをわかりやすく解説します。

「関して」との違い:「内容」と「タイミング」の違い

「際して」は行為のタイミングや局面に焦点を当てるのに対し、「関して」は話題や内容そのものに焦点を当てます。

際して関して
ある出来事が起こる直前やそのときの「タイミング」
例文:「入社に際して必要書類をご提出ください」(行為のタイミング)
あるテーマや対象についての「内容」
例文:「ご意見に関して検討します」(内容に対する対応)

このように、「関して」は「について」に言い換えられますが、「際して」は「するにあたって」などのタイミング表現に置き換えられる点が大きな違いです。

「にあたって」との違い:微妙なニュアンス比較

「にあたって」も「際して」と非常によく似た意味で使われますが、ニュアンスに若干の違いがあります。

際してにあたって
よりフォーマルで改まった印象
例文:「新規契約に際して、詳細な説明を行いました。」(丁寧で硬め)
やや柔らかく、準備や心構えに重点
例文:「新規契約にあたって、関係者と打ち合わせを行いました。」(実務的な準備感)

ビジネス文書ではどちらも使用可能ですが、より堅苦しい文脈では「際して」、やや実務寄りの文脈では「にあたって」が自然に感じられる場面もあります。

「際しまして」(敬語)や「にあたり」「折に」などの類義語

「際して」には、より丁寧な敬語表現や言い換えのバリエーションも存在します。以下の表現も状況に応じて使い分けられます。

「際しまして」(敬語)や「にあたり」「折に」などの類義語
  • 際しまして:丁寧語。「際して」の改まった形。
    • 「ご卒業に際しまして、心よりお祝い申し上げます。」
  • にあたり(にあたって):やや口語的だが丁寧。
    • 「応募にあたり、履歴書をご提出ください。」
  • 折に:やや詩的・文語的。感謝や思い出などを語る際に使用。
    • 「お会いする折に、お渡しいたします。」

これらの表現はいずれも丁寧さを保ちつつ、場面や相手に応じた微調整が可能です。文脈に応じて自然な表現を選ぶことが、文章力を高める鍵と言えるでしょう。

「際して」の使い方・例文集

「際して」は、文脈に応じて柔軟に使える表現ですが、特に改まった文章や丁寧なやり取りに適しています。ここでは、ビジネスメール、スピーチ、日常生活といったシーンごとに、実際の使用例を紹介します。用途に応じた言い回しを知ることで、表現の幅が広がるでしょう。

ビジネスメールや文書での利用例

ビジネスにおいては、「際して」は主に取引開始、契約締結、異動・退職の際などに使用されます。フォーマルな印象を与えつつ、敬意を示すことができます。

  • 新プロジェクトの開始に際して、関係各位のご協力をお願い申し上げます。
  • 異動に際して、これまでのご支援に心より感謝申し上げます。
  • ご契約に際して、必要書類をご提出くださいますようお願い申し上げます。

スピーチ・挨拶文での利用例

式典や公式な場でのスピーチやあいさつ文にも、「際して」は自然に使える表現です。聞き手に対して礼儀正しく、落ち着いた印象を与えることができます。

  • 入社に際して、一言ご挨拶申し上げます。
  • 本日の開会に際して、皆様にご挨拶申し上げます。
  • 創立記念式典に際して、多くの方々にご臨席いただき、誠にありがとうございます。

日常生活の例(引っ越し・入学など)

日常生活では、「際して」は少し堅い印象になりますが、案内文やお知らせ、少しかしこまった場面では自然に使うことができます。

  • 引っ越しに際して、近隣の皆様には何かとご迷惑をおかけするかもしれません。
  • 入学に際しての必要書類は、〇月〇日までにご提出ください。
  • 旅行に際して、体調管理に十分ご注意ください。

このように、「際して」は単なるタイミングを示すだけでなく、節目の場面で丁寧な印象を与える便利な表現です。シーンに応じて適切に使い分けることが大切です。

「際して」を使うときのポイント

「際して」はフォーマルで改まった場で映える表現ですが、使い方によっては硬くなりすぎることもあります。ここでは、使う際のポイントを3つの視点で解説します。

敬語表現としての「際しまして」の使い方

「際して」は敬語ではありませんが、目上の方やフォーマルな場面では 「際しまして」 と表現を丁寧にすることで、より礼儀正しい印象になります

「ご契約に際しましては、必要書類をご準備ください。」

カジュアル表現との使い分け:「とき」「場合」で代用

日常会話やカジュアルな文章では、「際して」は硬すぎる印象を与えます。このため、以下のように言い換えると自然です 。

「旅行に際して → 旅行 のときに荷造りした」
「出発に際して → 出発 の場合には注意してね」

時制の注意:過去より未来・現在の行為向け

「際して」は行動や出来事の直前・そのタイミングを指すため、未来や現在の行為に向けて使うのが適切です。
過去の出来事には不向きで、以下のように過去形で言い換えましょう。

×「台風が来た際して、家を出なかった。」
○「台風が来たときは、家を出なかった。」

まとめ:適切に使えば文章が引き締まる表現

「際して」は、フォーマルな場面で使うことで文章に品格と丁寧さを与える便利な表現です。「〜する際に」よりも改まった印象を持ち、スピーチや文書、ビジネスメールなどで重宝されます。一方で、日常会話では堅すぎる印象を与えるため、「とき」「場合」などのカジュアルな表現と使い分けることが大切です。

語源や文法、時制のポイントを理解したうえで使いこなせば、読み手に信頼感を与える文章が自然と仕上がるでしょう。

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