「尽力致します」を自然に使いこなすコツ【言い換えや類語・注意点も紹介】

ビジネスシーンでよく使われる「尽力致します」という表現。丁寧で誠実な印象を与える一方で、使い方を誤ると不自然に聞こえてしまうこともあります。
この記事では、「尽力致します」の正しい使い方や自然な使いこなしのコツに加えて、状況に応じた言い換え表現、使う際の注意点についても詳しく解説します。上手に使いこなせば、ビジネスメールや会話での印象アップにつながりますので、ぜひ最後までご一読ください。
「尽力致します」の意味とは
「尽力致します」という表現は、ビジネスや公的な場面でよく使われる丁寧語のひとつです。
聞き手に対して敬意を示しながら、「できる限りの努力をします」という意思を伝えるフレーズとして定着しています。ここでは、それぞれの語の意味を分解して理解していきましょう。
「尽力」とはどのような意味?
「尽力(じんりょく)」とは、文字通り「力を尽くす」ことを意味します。
具体的には、ある目的や課題のために、自分の持てる力や知識、時間を最大限に使って取り組むという姿勢を表す言葉です。日常会話ではあまり使われませんが、ビジネスやフォーマルな文脈では頻出する表現であり、誠実さや真剣さを伝えるために有効です。
例えば、
- 「プロジェクト成功のために尽力しました」
- 「地域社会の発展に尽力されている方です」
といった具合に、努力や貢献のニュアンスを含んだ使い方がされます。
「致します」が付くとどうなるか
「尽力」に「致します」が付くことで、より丁寧で謙譲の意味合いが強まります。「致します」は「する」の謙譲語であり、自分の行動をへりくだって表現する際に用います。
つまり「尽力致します」とは、「力を尽くして行動いたします」という謙虚な姿勢を込めた敬語表現なのです。
たとえば、
- 「今後とも全力で尽力致します」
- 「貴社の発展に尽力致します」
といった形で使うことで、丁寧かつ前向きな印象を与えることができるでしょう。
「尽力致します」の正しい使い方
「尽力致します」は、目上の人や取引先に対して、自分の努力や協力の意思を丁寧に伝えるための表現です。
しかし、正しく使わなければ、かえって堅苦しすぎたり、意味が通じにくくなったりすることもあります。ここでは具体的な用例と、言葉遣いの注意点について解説します。
自分の決意を伝える場合の用例
まず、「尽力致します」は、自分の意志や決意を丁寧に表現したいときに適しています。特に、ビジネスメールや挨拶文でよく使われます。
使用例
- 「今後もプロジェクトの成功に向けて尽力致します」
- 「お客様のご期待に応えられるよう、尽力致します」
- 「この任務を全うするため、誠心誠意尽力致します」
このように、「尽力致します」は自分自身の姿勢や誓いを表現する際に使うことで、真剣な姿勢を相手に伝えることができます。
謙譲語として正しく使うポイント
「尽力致します」は謙譲語であるため、使いどころを誤ると不自然な印象を与える可能性があります。適切に使うためには、以下の点に注意しましょう。
「いたします」と「致します」の違い
「致します」は「する」の謙譲語であり、「いたします」はそのひらがな表記です。意味や機能は同じですが、文章全体のトーンや形式に応じて使い分けることが求められます。
ビジネス文書やフォーマルな挨拶文では「致します」が一般的とされておりますが、ビジネスチャットのような会話調でのやり取りや、柔らかい印象を出したい場合には「いたします」を用いることが多いでしょう。
たとえば、
- 「引き続き尽力致します」→社外取引先とのやり取り向き
- 「これからも尽力いたします」→社内でのカジュアルなやり取り向き
といった使い分けが自然です。
丁寧度・敬意とのバランス
あまりにも丁寧すぎる表現を多用すると、堅苦しく距離感が出てしまうことがあります。
「尽力致します」は相手への敬意を表すには適切ですが、他の敬語と重ねすぎないようにしましょう。
| 自然な用例 | 不自然な用例 |
|---|---|
| 「今後とも尽力致しますので、何卒よろしくお願い申し上げます」 | 「誠心誠意、謹んで尽力させていただきます」 →敬語が重複し過ぎて冗長 |
敬意を示しながらも、簡潔でわかりやすい表現を心がけると良いでしょう。
ビジネスシーンで「尽力致します」を使う場面
「尽力致します」は、さまざまなビジネスシーンで活用できる便利な敬語表現です。
ただし、使うタイミングや文脈によってニュアンスが微妙に異なるため、状況に応じた使い方を知っておくことが重要です。ここでは代表的な3つのケースをご紹介します。
依頼・相談への返答
上司や取引先からの依頼や相談に対して、誠意を持って対応する意思を示したいときに「尽力致します」は効果的です。相手への敬意を表すと同時に、前向きな姿勢を伝えることができます。
使用例
- 「この件につきまして、全力で尽力致します」
- 「ご指示の内容を確認し、速やかに尽力致します」
このような表現は、単なる「分かりました」や「承知しました」よりも、能動的な姿勢を示すことができ、信頼感を高める効果があります。
プロジェクトや業務開始時の挨拶
新たなプロジェクトやチームに加わるときの挨拶でも、「尽力致します」は定番の表現として使われます。特にメールや挨拶文では、誠実な第一印象を与えるために適しています。
使用例
- 「本プロジェクトの一員として尽力致します。どうぞよろしくお願いいたします」
- 「新たな業務においても、これまで以上に尽力致します」
こうした挨拶においては、自身のやる気や責任感をさりげなく伝えることができるでしょう。
謝罪やフォローアップでの表現
トラブル対応や遅延など、謝罪を伴う連絡の際にも「尽力致します」は有効です。ミスをした後のリカバリーや信頼回復の場面では、前向きな対応姿勢を伝えることが大切です。
使用例
- 「ご迷惑をおかけし申し訳ございません。早急に改善に尽力致します」
- 「再発防止のために尽力致しますので、今後ともご指導のほどお願い申し上げます」
謝罪だけで終わらず、「今後どうするか」をしっかり伝えることで、相手に誠実さと信頼感を与えることができます。
「尽力致します」のよくある間違いと注意点
「尽力致します」は丁寧で誠実な表現ですが、使い方を誤ると逆効果になることもあります。ここでは、特に注意すべき代表的な誤用例と、使用上の注意点をご紹介いたします。
過度に使うと嘘に聞こえるリスク
「尽力致します」はあくまで“意思表明”であり、実際の行動を伴ってこそ意味があります。
そのため、あまりにも頻繁に使いすぎたり、実際に行動が伴わない場合には、口先だけの印象を与えてしまう可能性があります。
悪印象を与える例として遅延が続いているにも関わらず「引き続き尽力致します」とだけ返していると、実行力が伴っていない印象になります。
言葉に見合った行動をセットで示すことが、誠実さを伝えるコツです。
「ご尽力」と混同しやすい誤用
「ご尽力」は他人の努力に対して使う言葉であり、自分自身に使うのは誤りです。自分に対して「ご尽力致します」と言ってしまうと、敬語の使い方として不自然になります。
例えば「この件については私がご尽力致します」と表現した場合、自分に「ご」は不要のため不自然な文章となってしまいます。
正しい表現としては
- 「この件については私が尽力致します」
- 「この度はご尽力いただき、誠にありがとうございます」←相手に使う場合
上記のようになりますので敬語の主語が誰かを意識して使い分けましょう。
カジュアルな場での不自然さ
「尽力致します」は丁寧でフォーマルな言い回しのため、カジュアルな会話やメールでは堅苦しく感じられる場合があります。特に親しい同僚やフレンドリーな雰囲気のやり取りでは、違和感を与えてしまうこともあります。
TPOに応じて、表現を柔らかく調整することが信頼関係を築くうえで大切です。
「尽力致します」の丁寧な言い換えフレーズ
「尽力致します」は便利な敬語表現ですが、使い回しを避けたり、より柔らかく丁寧に伝えたい場合には、別の言い回しに置き換えることも効果的です。ここでは、意味を保ちつつ印象を変える丁寧な言い換え表現を紹介します。
「微力ながら尽力いたします」
自分の立場を控えめに表現しつつ、協力の意思を丁寧に伝えたいときに使われるフレーズです。「微力ながら」という謙遜の言葉を添えることで、より誠実で謙虚な印象を与えることができます。
使用例
- 「微力ながら、貴社の発展に尽力いたします」
- 「微力ながら、お力添えできれば幸いです」
特に初対面の相手や大きなプロジェクトの場面では、控えめながらも誠意を伝える表現として効果的です。
「全力を尽くします」「精一杯尽力いたします」
より強い意志や覚悟を伝えたい場合は、「全力」や「精一杯」といった強調表現を用いるとよいでしょう。「尽力いたします」だけではやや抽象的に感じられるときに、補足として使うことで伝わりやすくなります。
使用例
- 「この任務に全力を尽くします」
- 「精一杯尽力いたしますので、ご指導のほどお願いいたします」
いずれも、誠意とやる気を明確に伝えたい場面で効果を発揮する表現です。
「尽力して参ります」など類語比較
「尽力して参ります」は、今後も継続的に努力する姿勢を表す言い回しです。「参ります」は「行く・来る」の謙譲語であり、やや丁寧さが増します。
使用例
- 「引き続きプロジェクトの推進に尽力して参ります」
この他にも、以下のような類語があります。
| 表現 | ニュアンス・用途 |
|---|---|
| 努力いたします | 一般的で柔らかめな表現。初心者でも使いやすい |
| 尽くしてまいります | やや口語的。行動継続を強調したいときに |
| 尽力させていただきます | 丁寧だが、相手の許可が必要な場面でのみ自然 |
言い換えによって、伝えたい気持ちや相手との距離感を微調整できるのがビジネス敬語の魅力です。TPOに応じて使い分けることで、より信頼される印象を築けるでしょう。
実際の例文集
「尽力致します」は、メールや会話の中で具体的にどう使えばよいのか迷う方も多いかもしれません。ここでは、社内外のメール、対面での会話、さらに状況別のテンプレート形式で、実践的な使い方をご紹介します。
メールでの使い方例(社内・社外)
社内向けメール例
件名:新規案件対応について
お疲れ様です。〇〇案件につきまして、本日より対応を開始いたします。
精一杯尽力致しますので、ご指導のほどよろしくお願いいたします。
社内向けメール例
件名:業務提携に関するご挨拶
〇〇株式会社
△△部 △△様
平素より大変お世話になっております。〇〇株式会社の〇〇でございます。
このたびの業務提携にあたり、貴社のご期待に応えられるよう尽力致します。
今後とも何卒よろしくお願い申し上げます。
メールでは、冒頭の挨拶や結びの言葉と一緒に「尽力致します」を使うと、誠実な印象を与えることができます。
会話・対面での使い方例
上司との会話例
上司:「このプロジェクト、君に任せるよ」
あなた:「ありがとうございます。責任を持って尽力致します」
クライアント訪問時の例
「本日はお時間をいただき、ありがとうございます。今後も貴社の発展に尽力致しますので、よろしくお願いいたします」
会話では、丁寧ながらも自然な口調を心がけることで、形式的すぎず信頼感のある印象を与えることができます。
状況別テンプレート:依頼承諾・謝罪・フォロー
依頼を受けたときの返答
「ご依頼いただき、誠にありがとうございます。精一杯尽力致しますので、どうぞよろしくお願いいたします」
ミスへの謝罪・対応時
「このたびはご迷惑をおかけし、大変申し訳ございません。早急に原因を調査し、再発防止に尽力致します」
フォローアップ時
「その後の進捗につきまして、現在鋭意対応中でございます。引き続き尽力致しますので、今しばらくお時間をいただけますと幸いです」
これらのテンプレートは、少し手を加えるだけで多くの場面に応用が利きます。状況に合わせて語尾や語調を調整すると、より説得力のある表現になります。
まとめ|「尽力致します」を適切に使い、信頼されるビジネス表現を
「尽力致します」は、誠意や責任感を丁寧に伝えることができる、ビジネス敬語の中でも非常に有用な表現です。本記事では、その意味や正しい使い方、注意点、言い換え表現、そして実践的な例文までを幅広く紹介しました。
ポイントをおさらいすると
- 「尽力」は「力を尽くすこと」、「致します」は「する」の謙譲語
- 自分の意志や決意を表現する際に用いるのが基本
- 誤用を避けるには、「ご尽力」との使い分けやTPOに応じた敬語選びが大切
- 言い換え表現や例文を活用し、表現にバリエーションを持たせると効果的
形式的になりすぎず、自分の言葉として自然に使えるようになると、相手との信頼関係を深める助けにもなるでしょう。状況に応じた適切な表現を選び、「尽力致します」を自信を持って使いこなしていきましょう。



