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専任・専属・選任の違いとは?ビジネスシーンでの使い方や法律での用例を解説

本記事ではこのようなお悩みを解決いたします
  • 「専任」と「専属」の意味の違いがよく分からず、使い分けに迷ってしまう
  • 契約書やビジネス文書で正しい表現を選びたいと考えている
  • 誤解のないコミュニケーションをしたいと感じている

「専任」と「専属」という言葉は、日常会話やビジネスシーンでよく耳にしますが、その違いを正確に説明できる人は意外と少ないのではないでしょうか。どちらも「特定の役割や相手に限定して関わる」という意味合いを持ちますが、ニュアンスや使われる場面には明確な違いがあります。

本記事では、「専任」と「専属」の意味の違いをわかりやすく解説するとともに、実際に仕事や日常生活で役立つ使い方の例を紹介しますので、ご参考になれば幸いです。

このページの概要

「専任」と「専属」の基本的な意味や使い方とは?

「専任」と「専属」は、似ているようで異なる意味を持つ言葉です。ここではそれぞれの定義を整理したうえで、両者の違いをわかりやすく解説していきます。

専任はどのような意味?

「専任」とは、特定の役割や職務を担当するように任命されることを意味します。

例えば「専任講師」「専任担当者」といった使い方があり、他の業務を兼ねず、その業務に集中して取り組むことが前提です。

「専任」の例

  • 専任の営業担当
    • 他部署の仕事を兼務せず、営業活動だけを担当
  • 専任講師
    • 非常勤や兼任ではなく、その学校に所属して教える立場

つまり「専任」は役割やポジションに対して任命されていることを示す言葉だといえるでしょう。

専属はどのような意味?

「専属」とは、特定の人物や組織にだけ属して活動することを意味します。

芸能人の「専属モデル」「専属契約」といった表現が代表的で、「その相手以外にはサービスを提供しない」という独占的な関係を指します。

「専属」の例

  • 専属モデル
    • 特定の雑誌だけで活動するモデル
  • 専属契約アーティスト
    • 特定の事務所に所属し、他には所属できない

つまり「専属」は相手や組織との独占的な関わり方を表す言葉といえるでしょう。

「専任」と「専属」の違いまとめ

両者の違いを整理すると次のようになります。

項目専任専属
基本的な意味特定の役割や職務を担当するように任命される特定の人物・組織にのみ属して活動する
焦点任務や役割の範囲所属先や契約関係
ニュアンス他の業務を兼ねず、その職務に集中する特定の相手に独占的に従事する
使用される場面学校・企業・医療現場など
(例:専任講師、専任担当者)
芸能界・契約関係
(例:専属モデル、専属タレント)
法制度での例専任産業医
(業務を兼務せず担当する)
専属産業医
(その事業場のみに属して活動する)

このように、「専任」は業務や役割の範囲に焦点があり、「専属」は所属や契約関係に焦点があるという違いがあるのです。

「選任」とは何か?意味と用例を解説

「選任」とは、一定の資格や要件を満たした人物を正式に任命し、その役割を果たさせることを指します。

「専任」や「専属」と異なり、必ずしも兼務を禁じるわけではなく、あくまで「任命」という行為自体に重点があります。

「選任」の意味や特徴

選任の特徴は、まず「資格や条件を満たした人を役職や職務に任命する」という点にあります。

ここでは「専任」や「専属」のように業務範囲を限定するニュアンスは必ずしも含まれず、あくまで任命そのものが主眼となっています。

また、法律や制度上では「事業者が責任を持って任命する行為」として定義されていることが多く、特に労働安全衛生法や会社法などでその用語が明確に使い分けられているのが特徴です。

「選任」の用例

選任が必要とされるシーンとしては、次のようなものがあります。

労働安全衛生法

(産業医等)第十三条

事業者は、政令で定める規模の事業場ごとに、厚生労働省令で定めるところにより、医師のうちから産業医を選任し、その者に労働者の健康管理その他の厚生労働省令で定める事項(以下「労働者の健康管理等」という。)を行わせなければならない。

会社法

(設立時役員等の選任)第三十八条

発起人は、出資の履行が完了した後、遅滞なく、設立時取締役(株式会社の設立に際して取締役となる者をいう。以下同じ。)を選任しなければならない。

このように「選任」は、役割を与えるための任命行為そのものを指すため、専任や専属の前提となる言葉と理解すると整理しやすいでしょう。

「専任」と「専属」のよくある誤解と使い分けのポイント

「専任」と「専属」は似た言葉であるため、ビジネスや日常会話の中で混同されやすい傾向があります。誤解を避けるためには、それぞれの言葉が持つ「視点の違い」に注目することが大切です。

「専任」と「専属」を混同しやすいシーンとは?

実際の現場では、以下のような場面で「専任」と「専属」を間違えて使ってしまうケースがよく見られます。

シーン混同の例本来の正しい使い分け
人事・役職「専属担当」と表記してしまう特定の業務を任されている場合は「専任担当」
契約書・業務委託「専任契約」と書いてしまう特定の相手と独占的に契約する場合は「専属契約」
教育現場「専属講師」と呼んでしまう学校に任命され授業を担当する場合は「専任講師」
医療現場「専属医」と説明してしまう病院に任命され特定業務を担当する場合は「専任医」

このように、場面ごとに適切な言葉を選べなければ、相手に誤解を与える可能性があるでしょう。

使い分ける際に意識すべき「属する」か「任されている」かの違い

両者を正しく使い分けるためには、「属する」のか「任されている」のかという視点で考えると整理しやすくなります。

視点専任専属
意味の焦点任されている役割や職務に注目属している相手・組織に注目
強調される点「何を担当しているか」「誰(どこ)に所属しているか」
判断基準業務や職務の範囲を限定する場合契約や所属先を限定する場合
使用例専任講師、専任担当者、専任産業医専属モデル、専属タレント、専属カメラマン

つまり、

  • 仕事の担当範囲を強調したいときは「専任」
  • 特定の相手との独占関係を強調したいときは「専属」

という意識を持って使い分ければ、表現が正確になり、誤解を避けられるでしょう。

具体的な使用例で「専任」と「専属」の理解を深めよう

「専任」と「専属」の違いを頭で理解していても、実際の事例に触れることでより一層イメージが定着します。ここでは企業や芸能界、さらには法律や制度上で使われるケースを取り上げ、言葉の使い方を具体的に見ていきましょう。

企業や団体での「専任担当者」の例

企業では「専任担当者」という表現がよく用いられます。

これは、他の業務を兼任せずに、特定の分野に集中して責任を持つ担当者を指します。

企業や団体での「専任担当者」の例

  • 人事部の専任担当者:採用活動だけを担当し、総務や経理の業務は行わない。
  • IT専任担当者:社内システムの運用やセキュリティ対策のみを担当する。
  • 営業専任担当者:特定の顧客層や地域に集中して営業を行う。

このように「専任」は、業務範囲を限定して責任を持たせるケースで活用されるのが特徴です。

芸能界・契約関係での「専属タレント」の例

一方で芸能界や契約関係では「専属」が頻繁に登場します。

「専属タレント」「専属モデル」という言葉が代表的で、これは特定の事務所や媒体と独占的な関係を結んでいる状態を意味します。

芸能界・契約関係での「専属タレント」の例

  • 専属モデル:特定の雑誌やブランドにだけ出演する。
  • 専属タレント:芸能事務所と契約を結び、他事務所には所属しない。
  • 専属カメラマン:ある有名人や企業に専属で契約し、他の依頼は受けない。

ここでのポイントは、どこに所属し、誰のために活動するかが限定されるという点です。

法令や制度で要求される「選任」「専任」「専属」の違い(例:産業医など)

法律や制度の中でも「専任」と「専属」は明確に使い分けられています。代表的な例が産業医です。

項目選任専任専属
基本的な意味事業者が一定の資格を持つ人を正式に任命し、その役割を果たさせる他の業務を兼務せず、衛生管理業務に専念特定の組織にのみ属して活動する
職業の例従業員が常時50人未満の事業場では「産業医」の選任は努力義務となります。常時50人以上の労働者を使用する事業場は、衛生管理者の専任が義務労働者数1,000人以上の大規模事業場では「専属産業医」を置く義務がある

この違いからも分かるように「選任」と「専任」、「専属」は法的にも明確に区別されており、誤用すると制度上の誤解やトラブルにつながりかねません。

このように具体的な事例を踏まえることで、「専任」は役割・担当の限定、「専属」は所属先や契約の限定という違いが、より明確に理解できるでしょう。

なぜ「専任」と「専属」の違いを知っておくべきか?

一見似ている「専任」と「専属」ですが、その意味を取り違えると誤解やトラブルを招く可能性があります。ここでは、違いを正しく理解することがなぜ重要なのかを掘り下げて解説します。

誤用による誤解やトラブルを防げる

契約書や業務マニュアル、ビジネスメールなどの正式な文書で「専任」と「専属」を誤用すると、思わぬ問題につながることがあります。

  • 契約上のリスク
    本来「専属契約」とすべきところを「専任契約」と記載してしまうと、契約の解釈が曖昧になり、双方の認識にズレが生じる可能性がある。
  • 組織内での混乱
    「専任担当者」と「専属担当者」を混同してしまうと、業務範囲や責任の所在が不明確になり、チーム運営に支障をきたす。
  • 社会的信用の低下
    公的文書や報告書で誤った言葉を使用すると、専門性や信頼性を疑われる恐れがある。

このように、正しい理解は単なる言葉の問題にとどまらず、トラブル回避や信頼維持につながる重要なポイントといえるでしょう。

正しい用語選びは文章の信頼性・読みやすさにもつながる

ビジネスや学術の場では、言葉の正確さがそのまま文章の信頼性に直結します。「専任」と「専属」を適切に使い分けることで、以下のような効果が期待できます。

  • 相手に安心感を与える:正しい用語を用いることで、知識や理解の深さを示すことができる。
  • 読み手の混乱を防ぐ:意味の取り違えがなくなり、文章全体の分かりやすさが増す。
  • 専門家としての印象を高める:特に契約書・規定・公式文書においては、適切な言葉選びが専門性の証明となる。

つまり、「専任」と「専属」の違いを意識して使うことは、自分の表現力を高めるだけでなく、読み手にとって理解しやすい文章を作るうえでも欠かせない要素といえるでしょう。

まとめ:正しい使い分けで誤解のないコミュニケーションを

「専任」と「専属」は一見似ていますが、意味や使われる場面には明確な違いがあります。

  • 専任は「特定の職務を兼務せずに担当する」こと
  • 専属は「特定の相手や組織にのみ属して活動する」こと
  • さらに法律上では「選任」という概念もあり、「任命する行為」として使われています。

これらの違いを理解しておけば、ビジネスや契約、日常会話においても誤解を避け、より正確で信頼性のある表現ができるでしょう。
言葉の正しい選び方は、円滑なコミュニケーションと信頼構築につながる大切なポイントなのです。

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