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Q. 助成金を活用するためには就業規則の作成や見直しは必要ですか?

助成金 就業規則 作成 変更
この労務Tipsでわかること
  • 助成金の申請で就業規則の作成や見直しが必要な理由
  • 2022年度に人気のあった助成金を例に、就業規則の作成時・運用時に注意すべき内容

助成金の活用を考えているのですが、就業規則の作成や見直しは必要でしょうか?

父親から会社を引き継いだので、就業規則は新しく作成したいのですが、助成金も積極的に利用していこうと思っています。どうすればよいのかアドバイスいただきたいです。

A.助成金によっては就業規則の作成・見直し・運用は必須です。

助成金の申請をする際に、様々な提出書類があります。就業規則への制度導入が必要な助成金の場合は、添付書類として就業規則が求められますので、就業規則の作成・見直しをしなければ助成金は不受給となってしまいます。また、就業規則に記載されていたとしても正しく運用する必要もありますので注意してください。

就業規則の作成・見直し・運用が必要となる助成金で、2022年度に人気の高かった3つに絞ってご紹介いたします。

人気が高く就業規則の作成・見直し・運用が必要な3つの助成金
  • キャリアアップ助成金
  • 65歳超雇用推進助成金
  • 働き方改革推進支援助成金

各助成金の就業規則については、2023年度も同様の対応が求められると思いますので、今後の助成金活用時の参考にしていただけますと幸いです。

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キャリアアップ助成金

キャリアアップ助成金は、非正社員(有期雇用やパートタイマー等)のキャリアアップや待遇向上を促進する取り組みを行うことで助成金の受給が可能ですが、就業規則に導入する制度を明文化したり、適切な運用が必要となります。次の取り組みができていなければ、助成金の活用ができませんので注意しておきましょう。

従業員が 10 人未満の場合、就業規則の作成義務はありません。キャリアアップ助成金では「労働者が確認できる客観的な規定」に基づいた取り組みが必要となっているため、就業規則の作成義務がない企業であっても「就業規則」または「労働協約」を作成し、必要な規定の整備・従業員への周知・規定に基づいた取り組みをしなければなりません。

参考:厚生労働省「「キャリアアップ助成金Q&A(令和4年度)」より

就業規則の作成・見直しの注意点

例えばキャリアアップ助成金(正社員化コース)の場合、非正社員の方を正社員に登用することで受給ができます。ただし

  • 試験(面接試験・筆記試験)の手続き内容
  • 要件(対象者の勤続年数・人事評価の結果・上司からの推薦等の要件や基準)
  • 試験等の実施時期

について就業規則等に明示しなければならず、怠ったまま申請すると不受給となります。

転換規定(例えば、有期雇用契約の従業員を無期雇用や正規雇用に転換する規定)を転換日よりも後に定めていた

就業規則の運用の注意点

制度が記載できていたとしても、就業規則の内容に従って運用する必要があります。キャリアアップ助成金・正社員コースでは「賞与または退職金の制度」かつ「昇給」のある正社員への転換が要件ですが、

  • 4月に昇給されるはずが、昇給されていない
  • 7月に賞与支給されるはずが、支給がされていない

上記のように、就業規則の内容に沿った運用ができていない場合では行政から合理的な説明が求められることもありますので注意が必要です。

正社員に適用される就業規則等に「賞与または退職金制度」かつ「昇給」の規定を確認することができれば、支給対象とはなります。支給・不支給はケースバイケースで判断される点はご留意ください。

65歳超雇用推進助成金

65歳以降の定年延長や継続雇用制度の導入を行うことで助成されるため、高齢化社会の昨今では前向きな利用を検討したい助成金ですが、次の取り組みができていなければ助成金の活用ができませんので注意しておきましょう。

65歳超雇用推進助成金・65歳超継続雇用促進コースは、客観的に内容確認が可能な書面上で支給要件を満たしているのか判断されます。労働協約・就業規則に明記されていない場合は支給対象とはならないため慎重に進めましょう。

参考:独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構「「65歳超継続雇用促進コース 支給申請の手引き」より

就業規則の作成・見直しの注意点

65歳超雇用推進助成金(65歳超継続雇用促進コース)は制度助成のため、定年の引き上げ等の制度変更にあたり要した経費に対して助成金が支給されます。就業規則等に

  • 旧定年年齢を上回る65歳以上への定年の引上げ
  • 定年の定めの廃止
  • 希望者全員を対象とした旧定年年齢および継続雇用年齢を上回る66歳以上の継続雇用制度の導入

上記の制度を導入する必要があり、専門家に導入依頼および費用を支払うことが一つの要件となっています。しかしながら、就業規則で制度導入する場合、就業規則の作成は社会保険労務士の独占業務です。社会保険労務士以外(例えば株式会社)に就業規則の見直しを外注した場合は本助成金の支給対象にならないため注意しましょう。

就業規則の運用の注意点

65歳超雇用推進助成金(65歳超継続雇用促進コース)では就業規則等の条文内容により受給できるか行政審査が行われますので、運用実態は審査対象ではありません

しかしながら、支給申請の前日において「1年以上継続して雇用されている60歳以上の雇用保険被保険者」が1人以上いることが要件となっていますので、導入した制度の対象となる従業員がいなければ助成金の支給がありませんので注意をしておきましょう。

支給申請期間中に対象従業員が離職してしまい、他に支給要件を満たす従業員がいない場合も同様です。

働き方改革推進支援助成金

企業の生産性を高め、残業時間の削減や有給休暇の取得促進を図る中小企業が利用できる助成金です。導入する機器や設備によっては、掛かった経費に対して助成を受けられる特徴があります。ただし、本助成金も就業規則に制度導入や運用上で注意すべき点がありますのでご確認ください。

就業規則の作成・見直しの注意点

働き方改革推進支援助成金(労働時間短縮・年休促進支援コース)では、取り組み要件として

  • 年休の計画的付与制度の整備
  • 時間単位の年休の整備
  • 特別休暇の整備

のいずれかを制度導入することでも助成対象となりますが、就業規則に明文化しなければなりません。ただし、就業規則の状況に応じては助成を受けられない可能性もありますので、就業規則の整備をする際に社労士に相談しておきましょう。

例えば、助成金の交付申請時点で

  • 時間単位年休が規定されている場合
  • すでに規定されている時間単位年休制度を変更する場合

では当該制度に関して助成金の活用はできません。また、制度を新しく導入するとしても

  • 対象となる労働者の範囲や、時間単位年休の日数・取得した日の1日の所定労働時間数・1時間以外の時間を単位とする場合はその時間数・時間単位年休1時間あたりの賃金額について就業規則および労使協定に記載がない場合
  • 支給申請時点で就業規則及び労使協定に規定していない場合

これらの対応ができていることが求められますので併せて注意してください。

就業規則の運用の注意点

働き方改革推進支援助成金(労働時間短縮・年休促進支援コース)も制度導入が要件の一つであり、制度活用の実績までは求められていません。ただし、運用を想定した制度を導入しなければ、認められない可能性があります。

例えば、特別休暇の導入であれば

「使用者が取得可否を任意に決定することができる定めを置いた場合には、労働契約上特別休暇を付与すべき具体的義務が発生せず、任意に全ての申請を否認することも可能となることから、特別休暇を導入したものとは認められない。」

参考:厚生労働省「働き方改革推進支援助成金Q&A」より

とされており、規定作成の段階から運用時を想定した内容にしなければなりません。

労務管理の観点からも就業規則の整備・運用は必要です

今回は就業規則の整備や運用が必要となる人気の高い助成金をご紹介しましたが、前提として適切な労務管理ができておらず、労働関係法令を違反している会社は助成金の活用自体ができません

助成金の対象となる就業規則の箇所のみを整備するのではなく、適切な労務管理を目標として就業規則の作成・見直しをされることをおすすめいたします。

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社会保険労務士によるワンポイント解説

助成金の利用を検討されている方に向けて、最低限必要なフローを下記整理しましたので、参考にしてください。

助成金の適切な活用に向けた取り組みフロー
STEP
活用したい助成金の制度を調べる

助成金の種類によっては就業規則の作成や見直しが必要なのかどうか異なりますので、

  • どのような助成金を利用する予定なのか?
  • 助成金の申請に就業規則の添付が必要なのか?

しっかりと調べておきましょう。助成金の専門家である社労士に相談すると、自社で調べる手間も省くことができます。

STEP
就業規則の内容に不備がないのか確認する

助成金によっては添付書類として就業規則が求められますので、法令遵守の内容となっているのか就業規則を確認することが大切です。

助成金の支給申請を行うタイミングで不備が発覚すると、申請に間に合わない可能性もありますので事前に確認してください。

STEP
助成金の取り組みを進める

自社の労務管理に問題がなければ、助成金の申請に向けて取り組みを進めます。

各助成金によって進め方や書類作成の方法は異なりますので、行政が発行しているパンフレットを確認しながら慎重に行いましょう。

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執筆者プロフィール

矢野 貴大

TSUMIKI社会保険労務士事務所/代表・社会保険労務士

金融機関・社会保険労務士法人・国内大手コンサルティング会社を経て大阪で社会保険労務士事務所を開業。

25歳で社労士資格を取得した後、社会保険労務士・経営コンサルタントとして延べ200社を超える企業・経営者をサポートする。その経験を活かし「想いを組み立て、より良い社会環境を形づくる」というMISSIONに向かって日々活動中。

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