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Q. 就業規則を作成したいのですが、専門家に依頼すべきでしょうか?

就業規則 社労士 依頼
この労務Tipsでわかること
  • 就業規則の作成は自分で行うべきか、専門家に依頼すべきか迷っている場合の判断方法
  • 専門家に就業規則作成を依頼する際の注意点や、専門家の選び方

従業員も10人を超えたため、これから就業規則を新しく作成しようと考えています。

厚生労働省のWEBサイトで雛形の就業規則がダウンロードできますし、知り合いの経営者から「最新の法令に対応している就業規則」を貰った為、それらを用いて自分で作ってみようと思いますが、何かリスクはありますか?やはり就業規則の作成は専門家に依頼すべきでしょうか?

A. 就業規則は社労士と一緒に作成することをおすすめします。

就業規則は会社のルールになりますので、経営者ご自身が作成することはもちろん可能です。

ただし、就業規則は一度度作成し、運用を開始した就業規則は変更が難しいため、就業規則をはじめて作成するのであれば専門家である社会保険労務士に依頼することをおすすめします。

また、就業規則には

  • 労働基準法
  • 労働契約法
  • 労働安全衛生法
  • パートタイム・有期雇用労働法
  • 男女雇用機会均等法
  • 育児休業・介護休業法
  • 高年齢者等雇用安定法
  • 労働施策総合推進法

こういった労働諸法令が密接に関わっておりますので、法律や条文を理解しなければ作成することができません。専門的な知識がなければせっかく就業規則を作成したとしても経営リスク増加に繋がることがあります。

会社秩序を保つために就業規則作成を考えている経営者の方に向けて、次の4つの注意点をご紹介いたしますので、ぜひ確認してください。

  • 雛形や市販されている就業規則を利用する
  • 他社の就業規則を利用する
  • 税理士や行政書士に就業規則の作成を依頼する
  • 就業規則に力をいれていない社労士に依頼する

上記は、就業規則の作成を検討している経営者の方が悩みとして持ちやすいものばかりです。一つでもあてはまるのであれば、再度就業規則の作成方針について考え直してみましょう。

雛形や市販されている就業規則を利用する

厚生労働省のWEBサイトにて「モデル就業規則」が自由にダウンロードすることができます。また、Amazonや書店でも「就業規則・規程集」「就業規則の作り方」といった書籍が販売されており、就業規則の雛形が添付されていることが多々あります。

経営者の方からすると

  • 厚生労働省の「モデル就業規則」:労働の分野を管轄する行政機関のため、法令遵守されている
  • 市販されている「就業規則の雛形」:社労士や弁護士が執筆しており、法令遵守されている

こういったイメージがあるのではないでしょうか。確かに厚生労働省のモデル就業規則は法改正の都度反映がされており、法令遵守の観点のみですと全く問題ありません。ただし、

  • 就業規則に記載されているルールが自社に合致していない可能性がある
  • カスタマイズすべき内容がわかりにくい

こういった背景から、ダウンロードした就業規則をそのまま利用することは控えるべきなのです。

就業規則に記載されているルールが自社に合致していない可能性がある

前提として、厚生労働省でダウンロードできる就業規則の雛形や、市販されている就業規則は「あくまでもサンプルとして作成されている」ことをご認識ください。実際、厚生労働省のWEBサイトを見ると

「モデル就業規則」の規程例や解説を参考に、各事業場の実情に応じた就業規則を作成・届出してください。

厚生労働省「モデル就業規則について」より

と、実情に応じて作成してくださいと記載がされています。就業規則を作成する上で

  • 労働時間の制度
  • 自社の方針に沿った服務規律や懲戒事由
  • 賃金の構成
  • 慶弔休暇や特別休暇といった福利厚生

このような制度やルールの検討は最低限必要ですが、各種雛形で記載されている内容が自社に当てはまる可能性はほとんどありません。

特に労働時間の部分でいくと「1日8時間・1週40時間」を超える労働時間については1分単位で残業代の支払いが求められますが、変形労働時間制度という個別ルールを導入することで残業代の支払いを調整することができます。

しかしながら雛形では、その制度の記載があったとしても「自社に導入した場合に要件を満たしていない」可能性もあり、良かれと思ったルールが実は経営上リスクでしかないということもあるのです。

社会保険労務士 矢野貴大

「行政が作成しているから」「専門家が販売しているから」といって、過信してはいけません。就業規則は会社の憲法と呼ばれるほど大切な書類ですので、慎重に作成しなければなりません。

カスタマイズすべき内容がわかりにくい

2つ目の注意点は「雛形を改訂しようにも変更すべき内容がわかりにくい」ことに尽きます。

厚生労働省の雛形であっても、市販されている就業規則であっても、先程解説しましたが自社用にカスタマイズして利用すれば問題ありませんが「そもそもどこを、どのように修正すればいいのかわからない」のです。

市販されている書籍であれば「添付している就業規則の解説」や「カスタマイズする際の要点」について執筆されています。つまり、市販されている就業規則を問題なく活用するためには

  • マニュアルを読み込み、添付就業規則で作られているルールを学ぶ
  • マニュアルを読み込み、就業規則の内容を自社用にカスタマイズする

ことが求められます。

しかしながら「就業規則は労働諸法令の知識がなければ書いてある内容が理解しにくい」という問題があるため、

どういった意味合いで条文が成り立っているのか、どういった場合にどのような効力を発揮するのか、一度の読書で覚えることは非常に難しく、結果として「どのように修正すればいいのか分からない」ことになるのです。

例え雛形就業規則のカスタマイズができたとしても「本当に変更した内容があっているのか?」「変更した条文が法令に違反した内容になっていないのか?」こういった不安は残ってしまいます。

経営リスクを最小限にするためにも、労務管理の専門家である社会保険労務士に依頼をして一緒に就業規則を作成する方が、

  • 時間的コスト
  • 就業規則の内容に対する安心感
  • 運用時の注意点や自社で活用するための方針
  • 最新の法改正や人事労務のトレンド

を考慮して進めることが可能です。

近年は、働き方改革の影響もあり労働諸法令は法改正が行われているため、市販されている就業規則の内容が法改正に対応していない場合もありますので注意しておきましょう。

社会保険労務士 矢野貴大

私も一人の社労士として「就業規則に関する解説書籍」は実務に活かすために何冊も購入していますが、知識を持っていても読み込み時はかなり頭を使います。日々経営をしながら、片手間で就業規則の書籍を読み込むことは体力をかなり使うと思いますのでオススメできかねます。

他社の就業規則を利用する

中小企業では「知り合いの経営者から譲ってもらった就業規則を利用している」ことがよくあります。経営者同士の繋がりがあることは大変良いのですが、就業規則に限ってはリスクでしかありません。就業規則に定める内容は

  • 経営者として従業員に求める働き方を言語化するツ
  • 社内の秩序を保つために一定のルールを設ける
  • 会社と従業員の労働条件を一律して決める

こういった役割・効力があります。従って、就業規則は会社によって定める内容は異なるのです。

「知人の経営者が利用している就業規則」と「自社で運用しているルール」が異なっている場合どうなるのか、具体例をもとに考えてみましょう。

他社の就業規則自社の実態
所定労働時間は7時間30分
、それ以降の時間は残業として1.25の割増手当を支払う
年次有給休暇が入社日に5日付与・半年後に5日付与

所定労働時間は8時間
、それ以降の時間は残業として1.25の割増手当を支払う
年次有給休暇は法定通り入社半年後に10日付与

実態として右側の制度を運用しているにも関わらず、就業規則は左側の記載になっていると仮定します。

すると、

「所定労働時間は7時間30分で、それ以降の時間が残業となっています。今の給与では30分の残業手当が未払いになっている」と労働基準監督署に報告されると、会社としては就業規則通りの給与支払いをしなければなりません。

また、入社直後の従業員から「就業規則に基づいて、年次有給休暇を取得させてください」と申請があった場合、「いや、就業規則に書かれた内容は誤っているので、まだ入社半年経過していないため年次有給休暇はありません」と伝えるとどうなるのでしょうか?

当然従業員からすると「就業規則に書いてあるルールは何なのか?」と疑問や不信感に繋がり、トラブル発生の要因となります。

就業規則は本来、会社の規模や業種・業態、経営者の方針や考え方によって変えなければならない書類です。しっかりと実態に沿った内容にしなければ経営リスクが高まることはぜひ念頭に置いてください。

また、一度作成・運用をはじめた就業規則は見直すことがかなり大変です。従業員に有利になる労働条件の見直しの場合は問題ありませんが、「労働時間の延長」や「休日の減少」のように、従業員が損をする制度へ変更するのであれば「労働条件の不利益変更」といって、従業員個別に説明・同意を得る必要があります。

例え「知り合いの経営者から譲ってもらい、間違った内容で運用をしていた」という言い訳は通用しませんので、最初から専門家に頼って作成することをご提案いたします。

労働条件の不利益変更については、下記の労務Tipsにて解説しておりますので今後の労務管理にお役立ていただけますと幸いです。

社会保険労務士 矢野貴大

「労働基準監督署に届け出したときに、何も言われずに受理されました」と仰る経営者の方もいらっしゃいます。就業規則を作成すると労働基準監督署への届け出しなければなりませんが、労基署が行っているのはあくまでも「届け出の受理」であり、「就業規則の内容を確認して問題ないと判断しているわけではない」ので注意してください。

就業規則に力を入れていない社労士に依頼する

同じ名前のスーパーやコンビニエンスストアであっても、

  • 店員の接客態度
  • 商品の品揃え
  • 店内の雰囲気や清潔さ

について店ごとの特色があるように、同じ国家資格をベースに仕事をする社会保険労務士事務所も事務所によって特色があります。「労働問題の対応に強みを持つ事務所」もあれば「給与計算の対応に特化している事務所」もあります。似たようなサービス提供をしていたとしても業務内容や品質は事務所ごとに違うのです。

従って「就業規則にこだわりを持ち、対応力の高い事務所」を選びましょう。

  • 極端に安価な就業規則の提案をしている
  • 法律ベースの提案しかされない

上記2つに注意いただけると、会社に寄り添ったサポートを受けられる確率は高まると思いますので、ぜひ念頭に置いてください。

極端に安価な就業規則の提案をしている

社労士事務所によってサポート内容が異なるということは、就業規則の作成や変更に必要な費用も当然違います。

近年、社労士をはじめとする士業でもマーケティングの一環として「低価格サポート」を打ち出す事務所が増えており、就業規則を例にすると「一律数万円程度で就業規則・諸規程を作成します」と広告を出している事務所もあります。

就業規則の作成をとにかく安く済ませたい経営者の方はこのサービスの利用をするべきですが、サポート範囲は制限されているため

「自社に応じた制度設計をして、しっかりと運用を行っていきたい」「トラブルを未然に防止し、経営に集中して取り組みたい」のであれば、あまりオススメはできません。

就業規則は、会社の実態を把握し、経営者のビションが経営方針を理解した上で作らなければ、運用が難しいものです。安価な就業規則の作成サービスにて「法令遵守できる最新の就業規則」は受け取ることができても、細かな調整は自分でやる必要があったり、メンテナンスは別料金となっていることが多々あります。

リスクヘッジを目的として就業規則の作成を考えられているのであれば、料金面で社労士事務所を選ぶのではなく、サポート範囲をしっかりと聞いた上で依頼をしましょう。

法律ベースの提案しかされない

ここまでお読みいただくと「社労士事務所がサービス業と同じいうことはわかった。しかし、品質面は契約しなければわからないのでは」と疑問を持たれる方も多いと思います。

まずは「人となり」を知るためにも無料相談の依頼をしましょう。社労士事務所の多くは、初回の相談であれば無料で悩みや課題の相談を受け付けていますので、積極的に利用してください。その中で「法律の話ばかりで、会社に寄り添った話題提供がない」場合、会社ごとに必要なエッセンスの提案ができない事務所の可能性があります。

人事・労務のコンサルティング能力があるのかどうか、見極めるためにも色々な社労士事務所とお話してみてはいかがでしょうか。

社会保険労務士 矢野貴大

すでに社労士と顧問契約をされている場合、その顧問社労士から情報提供がされるのかどうかも見極めのポイントになります。法改正の情報共有は最低限必須ですが、人事労務のトレンド情報発信などなければ、切り替えも検討したほうがよいかもしれません。

税理士や行政書士に就業規則の作成を依頼する

「顧問税理士に就業規則を作成してもらった」「許認可のついでに、就業規則も行政書士に依頼した」という話を何度もお聞きしたことがあります。特に税理士と顧問契約をされている場合、労働・社会保険の諸手続きや、労務管理について税務担当者に相談されている経営者もいらっしゃるのではないでしょうか。

税理士は税務の専門家であり、行政書士は行政手続の専門家で非常に頼りになる先生ですが、人事・労務管理の専門家ではありません。また、就業規則の作成や見直しで費用が発生している場合、法律違反になってしまいます。

餅は餅屋として、就業規則の作成について専門家を探すのであれば労働分野に注力している弁護士もしくは社会保険労務士に依頼をしましょう。

社会保険労務士 矢野貴大

士業は国家資格であり、業務範囲については「独占業務」として定められています。独占業務とは、その資格を持つ人だけその業務を実施できるため、各士業自身は理解をしておかなければなりません。独占業務の定めを知りながら業務を提案している事務所については、サービス品質に不安が残ると思いますので注意をしてください。

まとめ

今回は「就業規則の作成は専門家に依頼すべきかどうか」について解説をいたしました。

社内秩序を保つために、就業規則は大切な書類です。一方で、内容を誤ったまま作成してしまうと従業員とトラブルになることもあります。

安心した企業経営をしていくためにも、就業規則の作成に強みを持つ社労士事務所に依頼することをご検討くださいませ。

就業規則の作成について

これから就業規則を新しく作成される方は、ぜひ当事務所のサポートをご検討ください。コンサルティングに強みを持ち、法律対応だけでなく社内組織の活性化に繋がる就業規則や各種規程作成をご提案いたします。

就業規則の見直しについて

まずは現在運用をしている就業規則の内容について診断いたしましょう。当事務所では法対応だけでなくトラブル防止に向けたリスク分析を行っております。無料で実施しておりますのでお気軽にお申し込みください。

社会保険労務士によるワンポイント解説

就業規則を作成する上で、専門的に依頼をするかどうか迷われている方に向けて簡単なチェックポイントを作成いたしました。下記一つでも考えに合致する場合は、就業規則作成に強みを持つ社労士事務所に依頼することをオススメいたします。

就業規則依頼をするかどうかの判断基準
CHECK
従業員に自信を持って伝えられる制度にしたいか?

就業規則を作成すると、従業員へ周知しなければなりません。情報化社会により、法律について簡単に調べることができるため、定めた働き方やルールに問題があると「この就業規則は法令違反ではないか?」と従業員から質問されることもあります。

経営者として、自社で定めた就業規則に自信を持たれたい場合、専門家に相談しましょう。

CHECK
働きやすい制度を導入したいか?

単なる法令遵守であれば、厚生労働省の雛形をカスタマイズすると容易ではあります。ただし、自社で働く従業員にとって本当に合致している制度なのか、問題なく運用ができるルールなのか、見極めることが大切です。

また、あくまでも雛形は「法令対応がメイン」です。服務規律や福利厚生といった職場環境の維持・向上を目的として就業規則を定めるのであれば、自社のみの対応はオススメできません。

CHECK
就業規則を適切に運用したいか?

就業規則は「作成して終わり」ではありません。作成した後、日々の労務管理に活かすことが重要になります。そのためには、就業規則に定められているルールを知る必要があります。条文の意味・意図・どういったシーンでどのような役割を持つのか理解しておく必要があります。

専門家に依頼すると、各条文の仕組みや意図についてレクチャーを受けることができます。一緒に作成することで、今後の運用に役立つ知識が同時に得ることができます。

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執筆者プロフィール

矢野 貴大

TSUMIKI社会保険労務士事務所/代表・社会保険労務士

金融機関・社会保険労務士法人・国内大手コンサルティング会社を経て大阪で社会保険労務士事務所を開業。

25歳で社労士資格を取得した後、社会保険労務士・経営コンサルタントとして延べ200社を超える企業・経営者をサポートする。その経験を活かし「想いを組み立て、より良い社会環境を形づくる」というMISSIONに向かって日々活動中。

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