Q. 管理監督者に欠勤控除はできますか?
- 管理監督の従業員が欠勤した場合の取り扱い
- 管理監督の基本的な考え方

給与計算を担当しています。管理監督者である部長職の従業員が私用で欠勤したのですが、一般社員と同様に「欠勤控除」をしても問題ないのでしょうか?
有給休暇を代替して対応できればと思ったのですが、有給休暇の残日数もなく対応に困っています。

A. 管理監督であっても欠勤控除は可能と考えられます。
結論申し上げますと、管理監督者という立場の従業員であっても、労働日にまったく業務を行っていない(=1日欠勤をした)場合は一般従業員と同様に欠勤控除できると考えられます。

ただし、いくつか注意点がありますので
- 管理監督とは?
- 欠勤控除の考え方
上記について確認していきましょう。
管理監督とは?
管理監督にあたる従業員には原則「労働時間、休憩、休日に関する規定」が適用されないとして、労働基準法第42条に明文化されています。
(労働時間等に関する規定の適用除外)
第四十一条この章、第六章及び第六章の二で定める労働時間、休憩及び休日に関する規定は、次の各号の一に該当する労働者については適用しない。
e-GOV「労働基準法」
一 別表第一第六号(林業を除く。)又は第七号に掲げる事業に従事する者
二 事業の種類にかかわらず監督若しくは管理の地位にある者又は機密の事務を取り扱う者
三 監視又は断続的労働に従事する者で、使用者が行政官庁の許可を受けたもの
そのため、管理監督に該当する場合はそもそも「労働時間」という考え方がなくなることになります。管理監督になると「残業代が支払われない」ことが一般的な認識として広まっています。
また、管理監督として認められるためには
- 労働時間、休憩、休日等に関する規制の枠を超えて活動せざるを得ない重要な職務内容を有していること
- 上記のような重要な責任と権限を有していること
- 現実の勤務態様も、労働時間等の規制になじまないような立場にあること
- 賃金等について、その地位にふさわしい待遇がなされていること
上記の基準を満たしている必要があります。
管理監督に遅刻・早退の控除はできる?
では、管理監督者に対して、遅刻や早退といったことを理由に給与から控除することはできるのでしょうか?結論、給与控除できませんので注意してください。
管理監督の性質が認められるための条件の一つに「現実の勤務態様も、労働時間等の規制になじまないような立場にあること」が設けられており、仮に遅刻・早退時間に対して控除を行ってしまうと
- 出退勤の時間について、他の一般従業員と同じように制限を受けている
- 労働時間に対する裁量がある立場と言えない
上記のような判断となり、管理監督者としての立場自体否定される可能性があるため気をつけましょう。

管理監督に欠勤の控除はできる?
では、本題の「管理監督者に欠勤控除はできるのか?」というご質問ですが、前述しております通り欠勤控除の場合は「可能」と考えられます。
管理監督者を巡る裁判は過去にいくつもありますが、基本的には
- 労働時間の規制(他の従業員と同じように管理されていないこと)
- 遅刻や早退に対して、その時間分が給与から控除されていないこと
上記が論点となるケースが多いです。そのため、たとえ管理監督者であったとしても「1日単位での出勤義務が免除されている」わけではないのです。実際、労働基準法においても「労働時間、休憩、休日に関する規定」が適用されないとされており、出勤の義務まで免除されているとは言えません。
とはいえ、管理監督者は会社で定める休日(例えば、土曜日や日曜日)に出勤したとしても休日割増賃金の支給はしなくても良い点を鑑みますと、1日欠勤があったことを理由に欠勤控除を行うことはトラブルの種にもなります。
したがって、複数回の欠勤や長期間の休職の場合に欠勤控除を行うことが実務的に望ましいと考えられます。
社会保険労務士によるワンポイント解説
欠勤控除を行う場合は
- あらかじめ就業規則で計算式を明文化しておく
- 従業員全員に制度を周知する
上記の取り組みが大切です。
特に、管理監督者の取り扱いはトラブルになりやすいため、慎重に制度設計されることをおすすめいたします。
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矢野 貴大
TSUMIKI社会保険労務士事務所/代表・社会保険労務士
金融機関・社会保険労務士法人・国内大手コンサルティング会社を経て大阪で社会保険労務士事務所を開業。
25歳で社労士資格を取得した後、社会保険労務士・経営コンサルタントとして延べ200社を超える企業・経営者をサポートする。その経験を活かし「想いを組み立て、より良い社会環境を形づくる」というMISSIONに向かって日々活動中。



 
	


