Q. 精皆勤手当の導入・運用方法や注意点を教えてください。
- 精皆勤手当の考え方
- 精皆勤手当を導入するための手順と注意点
従業員の欠勤・遅刻・早退に悩んでいます。社会人として日々真面目に業務に取り組むことは当たり前だとは思うのですが、精皆勤手当のような制度を作るべきなのでしょうか?
精皆勤手当を導入する場合、必要な手順や注意点があれば教えてください。
A. 精皆勤手当の導入・運用を成功させるためのポイントを解説します
従業員の出勤意欲を高め、定着率を向上させるための有効な手段として、精皆勤手当を導入している企業があります。
近年では、人件費削減の動きから、手当の見直しを進めているケースが多くなっており、精皆勤手当は、従業員のモチベーションを高めたり、定着率向上を狙った手当ですが、その効果に疑問を呈する声も少なくありません。そのため、導入している精皆勤手当を廃止または減額するケースも増えています。
ただし、精皆勤手当を導入している企業もまだ多くあります。特に、運輸や製造、飲食・小売など、シフト制で働く従業員が多い業種では、欠勤・遅刻・早退を減らすために、精皆勤手当が有効だと考えられており、導入を続けている企業が多いようです。
精皆勤手当は、導入・運用を成功させるためのポイントを抑えなければ、期待した効果を得ることができません。今回は精皆勤手当の考え方から導入・運用を成功させるためのポイントについて順を追って解説しますので、ぜひ参考にしてください。
精皆勤手当とは?
「精皆勤手当」とは、「精勤」つまり、良好な勤務態度を持ち続けた人に対して支給される手当てを指します。精勤は「誠実に勤務する」という意味合いが強く、単なる出勤日数だけでなく、その質も評価されることもあります。
支給するルールは企業ごとによって違いますが、以下のいずれかの条件を満たした場合に支給されることが一般的です。
- 一定期間内に欠勤・遅刻・早退がなかった場合
- 一定期間内に欠勤・遅刻・早退が1回または2回程度の場合
- 一定期間内に欠勤・遅刻・早退が3回以上の場合でも、欠勤・遅刻・早退の回数が一定の基準以下の場合
精皆勤手当の支給額も企業によって様々ですが、厚生労働省の就労条件総合調査によると、2020年の精皆勤手当の平均支給額は月額9,000円とされています。
精皆勤手当と皆勤手当の違い
皆勤手当とは、欠勤日数がない、つまり全日出勤した人に対して支給される手当てを指します。一方、精皆勤手当は、出勤日数だけでなく、勤務態度や成果も評価の対象となります。例えば、チームワークを重視する企業では、協力的な態度やコミュニケーション能力が高い人に精皆勤手当が支給されることが考えられます。
精皆勤手当は、皆勤手当と精勤手当を合わせた手当として使われていることになります。
精皆勤手当の導入目的
企業が精皆勤手当を導入する目的は大きく二つあります。一つは、従業員のモチベーションを向上させ、生産性の向上を図ること。もう一つは、従業員の定着率を向上させることです。良好な勤務態度を評価し、それに対して報酬を提供することで、従業員がその企業で長く働き続ける意欲が高まります。
精皆勤手当の導入・運用のポイント
では、精皆勤手当の導入・運用するためのポイントはどのようなものがあるのでしょうか。企業と従業員双方にとってのメリットのある制度にするためには
- 支給条件の設定
- 金額の設定
- 運用ルールの明確化
これら3つをしっかり抑えることが重要になります。
支給条件の設定
精皆勤手当を導入する際、最も重要となるのが支給条件の設定です。どのような勤務態度や成果をもった従業員に手当を支給するのか、明確にルールを決める必要があります。
- 出勤率:基本的な条件として、欠勤が一定数以下であること。
- 遅刻・早退率:遅刻や早退の回数、時間が一定以下であること。
支給条件を設定する際は、公平性を保つことが大切です。全ての従業員が手当の受給を目指すための明確なルールとすることで、従業員への動機付けが期待できます。
金額の設定
精皆勤手当の金額は、企業の予算や他の手当・給与とのバランスを考慮して決定する必要があります。
高すぎると経営に負担となり、低すぎると従業員のモチベーション向上の効果が薄れる恐れがあります。また、金額を段階的に設定することも可能です。ただし、あまりに複雑な制度にすると日々の勤怠管理や給与計算業務が煩雑になりますので、できるだけシンプルな金額体系が望ましいでしょう。
運用ルールの明確化
精皆勤手当を導入する際には、その運用ルールを全従業員に明確に伝えることが必須です。
どのような条件で手当が支給されるのか、疑問や不明点が生じないように就業規則や賃金規程に明記しましょう。就業規則・賃金規程の整備後は、説明会を実施しルールの周知も忘れずに行ってください。
精皆勤手当の導入・運用には、上記のポイントをしっかりと押さえることが重要です。企業の目的や状況に応じて、適切な設定と運用を心がけることで、効果的な手当として機能させることができます。
精皆勤手当のよくある疑問と回答
精皆勤手当は企業によって支給ルールが異なります。そのため精皆勤手当自体に正解はありませんが、これから導入を検討している企業に向けて、一般的な質疑応答をまとめてみましたので、ご参考ください。
年次有給休暇を取得した場合は精皆勤手当を支給しないルールでも問題ありませんか?
年次有給休暇を取得した従業員に対しても、精皆勤手当はその他の支給要件を満たしているのであれば支給すべきです。従って、ルールの変更を推奨いたします。
労働基準法附則第136条において、年次有給休暇を取得した従業員に対して「賃金の減額やその他不利益な取り扱いをしないようにしなければならない」と明文化されています。
第百三十六条
使用者は、第三十九条第一項から第四項までの規定による有給休暇を取得した労働者に対して、賃金の減額その他不利益な取扱いをしないようにしなければならない。
e-GOV「労働基準法」
そのため、年次有給休暇の取得を理由に精皆勤手当を支給しないことは、法律に抵触すると考えられます。
精皆勤手当は毎月支給すべきでしょうか?
結論、支給するタイミングも企業により異なります。多くの企業では、毎月の勤務態度を基に、給与に上乗せして精皆勤手当を支給するケースが多いでしょう。しかし、定期的な評価のもとで四半期ごとや年に1回支給することも問題ありません。
精皆勤手当の廃止は違法になりますか?
従業員に支払っている精皆勤手当を廃止すると、今まで受け取っていた給与金額が減ることになりますので、労働条件の「不利益変更」に該当すると考えられます。
精皆勤手当を廃止すること自体は違法ではありませんが「不利益変更」となるとトラブルにつながりますので、慎重に進める必要があります。
手当の廃止や不利益変更について、別途解説記事がありますのでぜひご覧ください。
精皆勤手当は残業代の計算に含めますか?
残業代の計算単価から除外できるものは、
- 家族手当
- 通勤手当
- 別居手当
- 子女教育手当
- 住宅手当
- 臨時に支払われた賃金
- 一箇月を超える期間ごとに支払われる賃金
のみと、労働基準法によって定められています。そのため、残業代の計算単価に精皆勤手当も含める必要があります。
基本給に精皆勤手当を含めることはできますか?
通常、精皆勤手当は基本給の上乗せとして支給されるもので、基本給自体には含まれません。精皆勤手当が基本給に組み込まれていると、毎月の勤務状況によって基本給が変動してしまい、従業員が混乱してしまいますので避けましょう。
社会保険労務士によるワンポイント解説
精皆勤手当は、欠勤・遅刻・早退を減らすためのインセンティブとして導入される手当であり、従業員のモチベーションを高める効果も期待されています。
ただし、精皆勤手当に関しては企業ごとに異なる取り扱いがあります。今回は精皆勤手当制度設計の流れやよくある質問について解説いたしました。参考にしていただきつつ、具体的な運用や給与体系については各企業のルールに依存します。そのためより具体的な疑問や不明点が生じた場合にはぜひ弊社までご相談ください。
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矢野 貴大
TSUMIKI社会保険労務士事務所/代表・社会保険労務士
金融機関・社会保険労務士法人・国内大手コンサルティング会社を経て大阪で社会保険労務士事務所を開業。
25歳で社労士資格を取得した後、社会保険労務士・経営コンサルタントとして延べ200社を超える企業・経営者をサポートする。その経験を活かし「想いを組み立て、より良い社会環境を形づくる」というMISSIONに向かって日々活動中。